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天敵の育種 - J-Stage

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Academic year: 2023

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はじめに

わが国では,農業害虫の防除はお もに化学農薬が使われている.一方,

農産物の安全・安心に対する消費者の 関心が高まっていること,化学農薬の 散布が生産者にとって負担であるこ と,重要害虫において化学農薬に対す る抵抗性の発達が深刻化していること などから,化学農薬に代わる防除手法 の開発が求められている.天敵など,

生物の機能を利用して害虫を防除する 方法,すなわち生物的防除法はその一 つであり,有望な天敵種の探索とその 実用化のための研究開発は急務であ る.しかし,生物が厳しい自然環境で 生き残るために重要な特性が,農業現 場で天敵として利用するうえでは思わ ぬ足かせになることがある.たとえば 多くの昆虫で見られる休眠は,野外で の活動に適さない時期を乗り切るため の役割を果たしているが,冬期のビ ニールハウスでは低温・短日条件によ り天敵が休眠しやすく,防除効果が低 下する原因になる.一方,天敵の機能 にかかわる特性に遺伝的変異(集団中 に個体差があって,それが遺伝的要因 により生じていること)が維持されて いれば,人為選抜によってその特性を 改良し,上記の問題を解決できる.こ のような「天敵の育種」という考え方 は,作物や家畜の品種改良に比べて目 新しいように聞こえるが,昆虫学者は 100年も前から天敵の育種の有効性に

ついて議論してきた(1〜3).本稿では,

近年になって研究が活発化している飛 ばないテントウムシの育成事例につい て紹介する.

テントウムシの飛翔能力と遺伝的変異 テントウムシはアブラムシを食べ る天敵として以前から利用されてきた が,成虫は飛翔による分散能力が高い ため,作物に放してもすぐに飛んで逃 げられてしまう問題があった(4, 5).害 虫が増えてから天敵を放しても手遅れ になるため,テントウムシにおいても アブラムシが増える前に放されること が多い.しかし,それはテントウムシ にとって餌が少ない状況であり,その ような条件ではアブラムシの多い場所 を求めて移動するため飛翔行動が誘発 されやすい.テントウムシの活発な飛 翔行動は,広大かつ変動的な野外にお いて生存,繁殖していくには重要な特 性であると考えられているが(6〜8),農 業現場ではその高すぎる飛翔能力ゆえ に作物上にうまく定着せず,防除に失 敗するケースが多発している.

テントウムシの飛翔分散を抑制す ることによって,天敵としての有効性 が向上できる可能性は以前より指摘さ

れていた(4, 5).Ignoffoら(4)は,遺伝的

に飛翔能力を欠く系統を育成すること により,テントウムシの定着率を改善 できると提案した.目的とする系統を 育成するには,改良したい特性に遺伝

的変異があることが必要であるが,テ ントウムシでは飛翔能力にかかわるさ まざまな特性において遺伝的変異が確 認されている.たとえば,

では翅多型(同一種内において 翅の長さにはっきりした多型が生じる 現象で,バッタやウンカなど多くの昆 虫で観察される)(9),フタモンテント

ウ では鞘翅および

後翅が欠失した個体(10)が観察されて いる.ナミテントウ

においては,1982年に中国からフ ランスに導入され,実験室内で維持さ れている系統において,飛翔不能の個 体が15%ほどいることが観察されて いる(11).飛翔は昆虫において非常に 重要な行動特性であるにもかかわら ず,飛翔能力を欠く特性が集団内に維 持されているのは興味深い.一般に野 外での適応に重要な特性には強い自然 選択がかかるため,遺伝的変異は小さ くなると思われるが,実際には適応に 関連する多くの特性にかなりの遺伝的 変異が観察されている.その理由とし ては,突然変異や拮抗的多面発現(あ る遺伝子がある形質を通じて生物のパ フォーマンスに正の効果をもたらす一 方,別の形質を通じて負の効果をもた らすこと)など,さまざまな要因が提 唱されている(12)

飛ばないテントウムシの育成

ヨーロッパでは,1990年代の後半か

天敵の育種

飛ばないテントウムシ

(2)

ら遺伝的に飛翔能力を欠くテントウム シ系統を育成し,生物的防除に利用す るための研究が進められている(13, 14). わが国においても,農業・食品産業技 術総合研究機構(農研機構)において 遺伝的に飛翔能力を欠くナミテントウ 系統(飛ばないナミテントウ)の育成 が試みられた.系統を育成するために は,多数の個体の中から飛翔能力の低 い個体を検出する必要がある.しかし 野外から採集されたナミテントウ成虫 はほぼすべての個体が飛翔できるた め,「飛ぶ個体」と「飛べない個体」

を定性的に分離することはできなかっ た.そこで昆虫の飛翔能力の測定に使 用されるフライトミル(図1)という 装置を用いて,各個体の飛翔能力を定 量的に測定することにより飛翔能力の 個体差を検出し,その中から飛翔能力 の低い個体を選抜し,交配させて次世 代を得るという操作を世代ごとに行っ た.世代が更新されるにつれて系統内

の飛翔能力は低下したが,飛翔能力が 前の世代に比べて回復することもあっ た.原因は不明だが,本来は高い飛翔 能力をもっていながら測定時にたまた ま飛ばなかった,あるいは発育上何ら かの異常で飛翔能力が失われた個体が 混ざることなどが起きたと考えられる.

選抜を開始して30〜35世代経過した 後には,系統内のほぼすべての個体が 飛翔不能になっている系統が育成され た(15).この成虫の外部形態は飛翔能 力をもつナミテントウのものと変わら ないが(図2),後翅をはばたかせるこ とができなくなっていることで飛翔不 能になっている.系統が育成された後 は「品質」,すなわち育種によって付 与された「飛ばない」特性をはじめ,

生存率や産卵数などの天敵としての機 能にかかわる諸特性をいかに安定的に 維持するかが課題となった.飛ばない ナミテントウは複数の系統が育成され たが,そのうちのいくつかは近親交配

の進行によって生存率や産卵数が低下 していた.これらのパフォーマンスの 低下は,大量増殖の際のコスト増加だ けにとどまらず,アブラムシ防除効果 の低下にもつながる恐れがあった(16). また人為選抜を中止すると,世代の更 新とともに系統内の飛翔能力が回復 し,せっかく付与した「飛ばない」特 性が消失する現象が観察された(3).そ こで生存率や産卵数を高いレベルで維 持するために,雑種強勢効果を活用し

1

ナミテントウの飛翔能力を測定する装 置(フライトミル)の概要

ナミテントウ成虫をフライトミルのローター に接着剤で貼り付けて宙づり状態にすると,

翅をはばたかせて飛翔を開始する.その推進 力でローターが回転すると,センサーがロー ターの回転を感知し,回転数を記録する.1時 間あたりの回転数が少ない個体を飛翔能力の 低い個体として選抜.

2

飛ばないナミテントウ成虫 周りにある緑色の粒はすべてアブラムシ.

(3)

た系統間交雑による品質管理法を開発 した(17).また「飛ばない」特性が失 われるのを防止するため,容器の中に 入れておくだけで「飛翔できる個体」

と「飛翔できない個体」を選別できる 簡易選抜法を開発した.これは,円筒 形の容器の内側にワセリンやテフロン などナミテントウの歩行を妨げる物質 を塗布しておくと,ナミテントウは容 器の底に立てた棒を登り,頂上から飛 翔を試み,飛翔できる個体は容器の外 に出て行き,飛翔できない個体は落下 して回収されるという仕組みである(18)

飛ばないナミテントウの有効性を 確認するため,はじめに飛翔不能化す ることによってどの程度作物上での定 着率が向上したのかを調査した.開放 系である露地ナス栽培圃場において飛 ばないナミテントウ成虫と飛翔能力を もつナミテントウ成虫を60頭ずつ放 して定着率を調べたところ,飛翔能力

をもつナミテントウは翌日にはほとん どいなくなったのに対し,飛ばないナ ミテントウ成虫は長く圃場内に滞在 し,アブラムシの増殖を抑制する効果 が確認された(19)(図3).飛ばないナ ミテントウは遺伝的に飛翔不能になっ ているため,1頭あたりの生産コスト が低い幼虫の段階で生物農薬として製 剤化することができる.幼虫は,発育 して成虫になった後も定着するので

(図4),成虫を放すよりも防除効果が 持続する(20).また,その子孫も飛翔 能力がないので,次世代以降も防除効 果が期待できる.

次に,農研機構,大学,民間企業,

近畿中国四国地域の農業試験研究機関 の産学官連携による共同研究プロジェ クト「多種多様な栽培形態で有効な飛 ばないナミテントウ利用技術の開発」

が実施され,生物農薬として実用化す るための研究開発が行われた(3, 21).本

プロジェクトの成果により,飛ばない ナミテントウは2013年9月に施設野菜 類用の天敵製剤として登録され,翌年 6月から販売されている(2齢幼虫200 頭入り).また本製剤の販売に合わせ て,施設栽培のコマツナ,イチゴ,ナ スを対象に飛ばないナミテントウ製剤 の効果的な利用法をまとめた技術マ ニュアルを発行した(18).2015年時点 では,本製剤は施設野菜類での利用に 限られているが,筆者らは露地野菜類 でも使えるようにするための取り組み を進めている.わが国において,これ までに農薬登録されている天敵製剤の ほとんどは施設栽培用のものに限られ ており,露地野菜で使用できる天敵製 剤は非常に少ない.海外では天敵の放 飼増強法(天敵を人為的に放すことに より害虫密度を減らす方法)はさまざ まな露地作物を対象に行われている が,栽培面積が狭いわが国において

3

露地ナス圃場における飛ばないナミテ ントウの定着性とアブラムシ防除効果 飛ばないナミテントウと飛翔能力をもつナミ テントウ(飛ぶナミテントウ)の定着数(a) および葉あたりワタアブラムシ数(b)の推 移.文献19を改変.

4

飛ばないナミテントウ製剤の利用イ メージ

放した幼虫がアブラムシを捕食し,羽化した 飛ばないナミテントウ成虫が作物上に定着す ることで防除効果が持続する.

(4)

は,放虫後の天敵の定着率が低い問題 はより顕著に生じやすく,露地での天 敵製剤の実用化における大きな制約と なっている.飛ばないナミテントウは 露地においても有効性が確認されてい るので,露地栽培で実用化できれば,

これまで化学農薬に頼らざるをえな かった多くの栽培環境での利用が期待 される(22)

行動特性に注目した天敵の育種を目指 して

天敵の育種は,これまで化学農薬と の併用を可能にする薬剤抵抗性系統や 短日条件でも休眠しにくい系統などの 育成事例を除いて実用化に至ったケー スが少なく,長い間天敵の育種が生物 的防除の成功に貢献するのかどうかが 不明であった(3) .一方,ヨーロッパ や日本で行われた飛ばないテントウム シの研究開発では,飛翔不能化によっ てテントウムシの定着性が向上するこ とが確認され,実用レベルの段階に到 達している.飛ばないテントウムシの 研究開発が成功した大きな要因は,定 着に失敗する原因がテントウムシの高 い飛翔分散性にあることが,翅の切除 や接着剤での固定などによる操作実験 によって明らかにされていたことが大 きい(3).天敵育種を成功させるには,

天敵のどのような特性が生物的防除の 失敗につながるのか,そして対象とな る特性を改良することでどの程度天敵

の働きが向上するのかを,あらかじめ 検証しておくことが重要である(3).ま た,フライトミルなどを応用して飛翔 能力の低い個体を検出できる技術が確 立されたことも成功の要因として挙げ られる.節足動物において,多くの特 性にはある程度の遺伝的変異が維持さ れているので(23),系統を育成できるか どうかは多数の個体の中から目当ての 特性をもつ個体を拾い上げることがで きるかどうかにかかっている.

これまでは,テントウムシ類の飛 翔不能化のように,行動特性の改良を 目的とする育種はほとんど試みられて こなかった.近年ではビデオカメラで 撮影された昆虫の行動を追跡して歩行 距離などを測定できるソフトウェア や,数十個体分の昆虫の歩行活動量を 一度に測定できる機器など,天敵の行 動を解析するためのツールが発達して きている(3).そのような技術を活用す れば,天敵の働きを高めるのに有効な 行動特性を解明し,系統育成に必要な 選抜法を確立することが可能になるで あろう.飛ばないテントウムシに関す る一連の研究は「飛翔能力の喪失」と いう一見,非適応的に思える特性が集 団内に低頻度ながら存在しており,そ れを活用することで天敵の働きを向上 させることができることを示してい る.今後,集団中に維持されている意 外な行動特性に着目することによっ て,新たに行動特性を改良した天敵の 育種ができるかもしれない.

  1)  野 田 隆 志:植 物 防 疫,57,524

(2003)

  2)  矢野栄二: 天敵  生態と利用技

,養賢堂,2003, p. 296.

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17)  T. Seko, T. Miyatake & K. Miura: 

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21)  世 古 智 一:植 物 防 疫,65,  705

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& D. C. Herzog,  Academic Press,  1985, pp. 167‒187.

(世古智一,農業・食品産業技術総合研究 機構近畿中国四国農業研究センター)

プロフィル

世古 智一(Tomokazu SEKO)

<略歴>2002年岡山大学大学院自然科学 研究科博士前期課程修了/同年農研機構 近畿中国四国農業研究センター,2003年4 月から飛ばないナミテントウの研究を開 始.岡山大学大学院環境学研究科に社会 人 入 学 し,2007年3月 に 博 士 号(学 術)

を取得/2013年より1年間,オランダの ワーヘニンゲン大学に留学.帰国後,飛 ばないナミテントウの研究を継続すると ともに,寄主探索行動に着目した捕食性 天敵の育種の研究に着手,現在に至る

<研究テーマと抱負>現在の研究テーマ:

生物的防除(主に天敵の育種と利用技術 の開発).抱負:ナミテントウ以外の天敵 類においても有用系統を確立し,実用化 を目指したい<趣味>SFアニメ鑑賞 Copyright © 2015 公益社団法人日本農芸化学会

DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.53.542

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