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化学と生物 Vol. 52, No. 12, 2014

ワックスマンと「農芸化学」

内海龍太郎

近畿大学農学部バイオサイエンス学科

巻頭言 Top Column

Top Column

本誌52巻5号の巻頭言(稲垣)に「農芸 化学ルネサンスの実現」が提案されてい る.改めて,「農芸化学」に思いを寄せて いると,ふと1962年発刊の岩波新書が目 にとまった.梅沢浜夫(カナマイシン発見 者で,微生物化学研究所の設立者)の「抗 生物質の話」である.この本を紐解きなが ら,「農芸化学」の御力(魅力)について,

話を進めてみたい.

1876年,チンダルは2種の微生物を同じ 培養基の中に発育させると,一方の発育が 止められ他方しか発育しない拮抗現象を見 いだした.その当時,微生物が生産する拮 抗物質がヒトの治療薬になるという哲学は なかったようである.1929年フレミング によるペニシリンの発見は,このような拮 抗物質をヒト治療のための抗生物質へと導 いた.抗生物質「antibiotics」という言葉 はストレプトマイシンを発見したワックス マンが1942年米国細菌学会に,「微生物が つくる物質で微生物の発育その他の機能を 阻止する物質」と提議したことに始まる.

その後,この概念に基づき世界中の土壌か ら微生物が探索され,臨床に使用された新 規な抗生物質が続々と発見された.まさに 20世紀の抗生物質ゴールドラッシュの時 代で,「農芸化学」の隆盛期でもあった.

このような微生物生産物の探索は「農芸化 学」のお家芸として,現在も継承されてい る.

その後も,引き続き,世界各国におい て,広範囲な探索が行われたが,単一な抗 菌性を指標にして,新規な抗生物質を探す のは,「泉が枯れたように」

,困難になって

いった.梅沢は微生物が多様な有機化合物 を生産する宝庫であることに着目して,い ち早く,抗菌以外の新しい生物活性物質の 開発研究を始め,抗がん,抗免疫剤などの

新たな治療薬の開発のイノベーションと なった.そして,今日,抗生物質は「微生 物その他の生物がつくり,微生物その他の 生細胞の発育その他の機能を阻止する物 質」と理解されるようになり,「農芸化学」

の重要な研究分野に発展している.

最後に,梅沢は次のような言葉を残し て,書を閉じている.「この研究は,微生 物の生産する有機化合物の宝庫の中で,細 胞機能を阻止する以外の物質を探す方向に も発展するのは当然である.それは「抗」

という文字に始まる抗生物質の概念をまっ たく飛び越えてしまう」

.抗生物質の概念

を超えた有機化合物を微生物が本当に,生 産しているのであろうか.1965年,Lilly とStillwelは 抗 生 物 質「antibiotics」 に 対 して増殖促進物質「probiotics」の存在を 示す論文を 誌に公表している.本 来,「probiotics」とは微生物の生産する有 機化合物で,増殖に抗さない,促進する物 質と定義されたが,1989年,Fullerによっ て,「probiotics」は 腸内フローラのバラ ンスを改善し体調を調節することができる 生きた菌 と再定義された.このように,

もし微生物が「anti」と「pro」という正 反対の概念を有する有機化合物を生産して いるなら,「antibiotics」の概念を超える

「probiotics」の世界があっても不思議では ない.そこには,いまだ,掘られていない 泉があるかもしれない.その泉には,微生 物がつくる無数の有機化合物が存在するか もしれない.それを掘り当てる力こそ,

「農芸化学」の御力(魅力)の一つである という思いに至った.それは,半世紀前 に,ワックマンや梅沢が期待した「農芸化 学」への思いと重なるものかもしれない.

Copyright © 2014 公益社団法人日本農芸化学会

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化学と生物 Vol. 52, No. 12, 2014 プロフィル

内海 龍太郎(Ryutaro UTSUMI)

<略歴>1982年京都大学大学院農学研究 科博士課程修了(農芸化学専攻)/同年近 畿大学農学部助手/1987年同講師/1991 年 同 助 教 授/1996年 同 教 授.こ の 間,

1989年から1年間米国NJ州立大学 Robert  Wood Johnson 医科大学にて,リサーチア ソシエート(フルブライター)<研究テー マと抱負>ヒスチジンキナーゼ阻害剤を用 いたケミカルバイオロジーと抗生物質の開 発,細菌の情報伝達ネットワークの分子機 構<趣味>愛犬との散歩,ゴルフ少々,ス キー

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