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巻頭言 Top Column - J-Stage

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化学と生物 Vol. 55, No. 12, 2017

ジェンダーと農芸化学会

藤原葉子

お茶の水女子大学基幹研究院自然科学系

日本農芸化学会

● 化学 と 生物 

巻頭言 Top Column

Top Column

今年のイグ・ノーベル賞も11年連続で 日本人が受賞し,昆虫の雌雄逆転の発見と いう生物学的な性差を改めて問うもので あった.性差は古くからすでに研究されて いるようではあるが,栄養化学分野におい ては,個々の栄養素や食品成分の生体内代 謝の性差による違いについても,未知の部 分がかなり多く残されているように思う.

ビタミンや脂肪酸の代謝や体内動態も雌雄 でかなり異なっており,ホルモンの影響だ けでは説明できない部分もある.ヒトを対 象とした介入研究でも,動物実験のように 性腺除去や多様なホルモン補充療法でカテ ゴリー分けした研究論文を目にすると,そ のような対象者数をある程度確保できるほ ど,トランスジェンダーや多様性が広く認 められる社会になったことを改めて感じ る.

男女共同参画や女性の活躍が叫ばれるよ うになって久しいが,私自身は栄養学を専 門とし,女子大に勤務してきたことから,

実はそれほど研究や働く環境に男女差を意 識したことがなかった.昨年,男女共同参 画学協会連絡会を手伝う機会を得て,自分 の研究教育環境がいかに恵まれているかを 再認識しているところである.学協会連絡 会が開催した昨年のシンポジウムのテーマ の一つに,Unconscious Bias(無意識の偏 見)がある.たとえばオーケストラの採用 で,相手を見ずに演奏だけで選択した場合 は女性が含まれるのに対し,演奏する人を 見て選考された場合には女性の採択率は減 る.このような社会科学研究は多く,疲れ ていたり忙しかったりしたときには特定の バイアスがかかりやすいことも知られてい

る.筆者の勤務する大学では,学長をはじ め執行部に占める女性比率も高く,教員数 や教授の数も女性が多い.それでも教員採 用時選考委員会に必ず女性を加えることに な っ た の は 最 近 の こ と で あ る.Uncon- scious Biasを判定できるハーバード大学 のIATテストも公開されており,Web上 で自分がどのようなカテゴリーのバイアス をもっているのかを知ることができるの で,興味のある方はぜひ一度試されたい.

農芸化学会では昨年から女性賞が設立さ れた.男女参画学協会連絡会のなかでも女 性賞をもっている学会はあるが,農芸化学 会の女性賞は種類や研究費支援などの点で 破格であり,連絡会で発表されたときには 驚きと羨望の声が上がった.産学連携や男 女参画は農芸化学とは比較的馴染みやすい 印象もあるが,本会の女性賞は今後多くの 学協会にとって目標となると思う.本会か ら一歩外の立場で参加していた私は,一会 員として大変誇らしい気持ちであった.

今年度から和文誌『化学と生物』の編集 委員にも女性が増えた.新体制で多様な視 点からの和文誌にもご期待いただきたい.

また,次年度の農芸化学会大会ではこれま でになかった女性研究者による企画のシン ポジウムなども計画されていると聞いてい る.「農」ははるか昔より男女共同で行っ てきたものである.農芸化学会が多様化す る社会の中で日本の学術界をリードし,さ らに発展していくことを楽しみにしていき たい.

Copyright © 2017 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.55.787

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プロフィール

藤原 葉子(Yoko FUJIWARA)

<略歴>1981年お茶の水女子大学家政学 部食物学科卒業/1988年同大学大学院家 政学研究科食物学専攻修了/1993年同大 学人間文化研究科より博士(学術)取得/

1994年長寿科学財団派遣研究員/1995年 Baker  Medical  Research  Institute(豪)

客員研究員/1996年ヒューマンサイエン ス研究財団流動研究員/1997年お茶の水 女子大学生活科学部専任講師/1999年同 大学生活科学部助教授/2010年同大学大 学院人間文化創成科学研究科教授/2015 年同大学基幹研究院自然科学系に配置換 え,現在に至る<研究テーマと抱負>脂質 栄養,ビタミンEや食品成分の生理作用と 生活習慣病との関連<趣味>音楽鑑賞

日本農芸化学会

● 化学 と 生物 

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