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溶液中の短寿命反応活性種のレーザー誘起蛍光 (LIF).

溶液中の有機化合物の化学反応において生成す る反応中間体としての不安定分子,ラジカルやイ オン種は,その反応性の高さのため通常の熱反応 では検出できるほどの濃度では生成しない。 しか し, レーザーなどの強い短パルスのエネルギー源 により反応を引き起こすと,それらの中間体が何 らかの物理的な方法により検出可能な濃度で生成 し,化学反応により消滅するまでの短時間の間で その物理・化学的挙動を観測できる 。過渡吸収分 光法は最も 一般的な化学反応中間体の検出方法で あり,光吸収をする中間体の濃度と吸光度とは比 例関係にあるために吸光度の時間応答から中間体 の濃度の時間変化を追跡できる。この方法の初期 の時間分解能は放電フラッシュランプを利用して いたため

l

ミリ秒程度であったのが, 現在ではレ ーザー技術の進歩により

IO

14

s   (1 0

フェムト秒)

程度の時間分解能での測定が可能となってきてい る。 さらにレーザーの使用により中間体検出の可 能性が拡がり,検出方法は多岐に及んでいる 。

レーザー誘起蛍光法

(Laser‑Induced Fluorescence: 

LIF)

は,パルスレーザーにより低濃度でも多くの 光子によって確実に励起を行うことができるため,

商速,高感度で中間体を検出できる手法の 一つで ある 。蛍光強度は中間体の濃度が低い場合には中 間体の濃度に比例し,エンジン内の燃焼現象や気 相などの反応におけるラジカルなどの検出あるい

N 0 2

など微量の物質の検出において広く使われ

ている 。光化学や放射線化学反応により生成する 化学中間体の

LIF

では

2

つのパルスエネルギー源 を,中間体発生と励起のそれぞれに用いて蛍光測 定を行うことになる 。筆者が用いた装置(図

1)

は紫外および可視のナノ秒パルスレーザーをほぼ

ー ノ 瀬 暢之"

L•ns

 

' '   L•ns

• ̀  .. 

Optical Fib•r

Delay Generator  P C   Polychromtor 

図1. L  IF 測定装置の概略図

同軸にガラスセルに入った溶液に入射させ, 中間 体の光化学的生成と励起を行い,励起中間体から 放出される蛍光をレンズ光学系により分光器に導 くようにするようになっている 。

2

つのパルスは,

時間的にナノ秒からミリ秒まで可変制御できる 。 放射線化学反応の場合では,第一のパルスエネル ギー源を電子線とすることが可能である 。筆者ら はこれを溶液中の化学反応中間体に適用し,検出 だけではなく蛍光スペクトルなどの特性から励起 状態の反応中間体の性質や構造に関する情報も得 ることを目的として研究を進めている 。 この手法 そのものはそれ程新しいものではなく,溶液中の ラジカルについての測定は

1 9  8  0

年頃にほぼ確 立しており,この方法でジフェニルメチルラジカ ルのようなラジカルなどについて蛍光ス ペ クトル や蛍光寿命が測定されている!)。筆者らも

2

台の パルスレーザーを用いて

2

ーナフチルメチルフェニ ルエーテル誘導体の光

Claisen

転位反応

(Scheme I)

における中間体である卜置換_2‑ナフチルメチ ルラジカルを蛍光により検出することに成功した

・京都工芸繊維大学 工芸学部 物質工学科

18 

海洋化学研究 第16巻第1 平成154
(2)

こ 00Y 二 尋

L ̲   Io&・  9l  J  

心二[ 土 ] ・‑ 三+げ

X  

=  

H, C 0 2 C H 3;  Y  

=  

H ,  C H 3, Cl, Br,  OCH,, •tc.

Sch•m• I  

・ n・

qa

lsua‑

u‑8u a32

Onu

500  550  600  650  700 

Wavelength (nm) 

図2. 1ーカルポメトキシー

2

ーフェノキシメチルナ フタレンの

308 nm

レーザー光照射によって生成す る 1ーカルポメトキシー2ーナフチルメチルラジカル の

355 nm

レーザー励起によって観測される蛍光ス ペクトル。

(Scheme I)

。 この光化学反応においては反応が

速く,効率良く生成物を与えるために測定を繰り 返すナノ秒過渡吸収法では反応中間体を捕らえる ことは難しかったが,蛍光検出の感度が裔いこと か ら予想されていたラジカル中間体を観測するこ とが可能 となった (図

2 )2

)。この反応に ついては,

反応初期に電子移動過程が含まれていることが溶 媒効果から示唆されており,ラ ジカル対のスピン 状態に ついても不明な点が多 く今後さらに検討が 必要である 。 このような蛍光性が良く知られてい るラ ジカルとは別に,筆者は 主 として蛍光性がほ とんど知 られていない溶液中での有機分子の 一電 子酸化体(ラ ジカルカチオ ン)の励起状態につい

ての情報を吸収 ・蛍光から調べ ることを進めてい る。

有機分子のラジカルイオンは,有機分子の一電 子酸化還元により容易に発生することができるが,

その励起状態の性質についてはほとんど知られて いない。 この理由は主にラジカルイオンの励起状 態の寿命が短いことにある。寿命が短い理由とし て,(

1

)励起エネルギーが低い(通常

I e V

程度,

吸収ス ペ クトルとして

1000 n m

前後の近赤外領域 に観測される)ために無輻射失活過程が速いこと,

( 2 )

励起エネルギーを得てラジカルイオンから

中性分子への酸化還元反応が促進されること,

( 3 )

励起によりラジカルやイオン部位の化学反

応活性が増大することなどが挙げられる 。 これら の理由によりラジカルイオンの蛍光を測定するこ とは非常に困難であるにも関わらず,

1 9 7 0 ‑ 8  0

年代に有機分子のラジカルイオンの蛍光を測 定する試みが数多く行われ,論文として発表され ている 。 これらの論文においてラジカルイオンの 発生方法は,化学試薬による酸化還元や電気化学 的酸化還元によるもので,蛍光観測は通常の蛍光 分光光度計を用いているため,ラジカルイオンの 速い副反応による生成物中性分子あるいはイオン の蛍光を測定していると考えて良い。また,

Fox

らによ っても同様な事が指摘 されている))。実際,

それら観測例では蛍光励起スペクトルはラジカル イオンのス ペ クトルとは異なっている 。 したがっ て,溶液中の励起ラジカルイオンからの蛍光の正 しい測定例は ,筆者らのグループを含めて数例程 度と考えられている 。筆者は

1 9  9  8

年に

1,3,5‑

トリメトキ シベ ンゼン

(T M B )

という非常に対称 性の良い(擬 D 3 h対称,メチル基まで考慮すると 正確には

C3

対称性だが,筆者は電子的には酸素ま

でのほぼ D l h対称として取り扱うことができると

考えている)分子を用いて励起ラジカルカチオン からの蛍光ス ペ クトルの測定をおこなうことに成 功し4 ),さらに類似した化合物 (図

3 )

について 研究を進めている5‑10)0  

Trnsction• of T h e  R u erch  ln,titute  of 

cenochemi,try Vol.16,  No.I, April,  2003  19 
(3)

H3c o : O C H 3   X D M B  

X  

=  

H, CH3, F, Cl,  O C H 3 ( T M B ) ,   NH2, N(CH3)z  O C O C H 3  ( A C D M B )  

O C H J   H J CO O C H 3  

M T M B  

H 3co : O C H J   H M B  

3 .

ラジカルカチオンの蛍光測定に用いた化合物 Q C H 3  

H J C O

口 こ

(・

・qJ 8g q

osqv

550  600  650  Waelengtb (n m)  

4.

室温アセトニトリル中の 1, 3,  

5

ートリメトキ シベンゼンラジカルカチオンの吸収および蛍光ス

450 

Q C O C C H3  

D A C M B ,  T A B   X  

=  

O C O C H  3  (TAB), 

O C H3( D A C M B )  

700  750 

ペクトル。

の吸収帯を 532

Fluo resc ence ten In sity ( arb.

.C 

室温アセ トニ トリ ル中, T M B ラジカルカチ オ n m付近に吸収極大を示し,こ

レーザー光により励起する n m  

と620n m付近に極大を持つ蛍光が観測された (図

4 )

。 この場合,ラジカルカチオンの発生は,

生収率を高くするために波長 308 n m のバルスレ

ーザーによって引き 起 こされる光誘起ー電子移動 反応と 二次的な電子移動反応を組み合わせて行っ

(Schem e 2)

。光化学反応によるラジカルカチ

オンの生成は

1

μ秒以内に起こり,初期濃度も

l

M

オーダーであるため,電気化学的あるいは

O CN  

BP+ ● +  

TMB• + 

T M B  +  .. 

h v  

1DCN• +  BP ‑ ‑ ‑ DC N  • +  BP~

T M B

D C N  • +  0 2  ̲̲̲̲̲̲̲̲̲.,  h V  

H  3  c  

E   ゜c  H  3  

I  DCN•

BP +   DC N  

TMB• + 

+  0 2•

+ 

TMB• + +  hv''  

i:0:: 「[三:

Delay  Time (•)

ビフェニル (BP) , 1,  3,  5ートリメトキシペ ンゼン (TMB), 1,  4ージシアノナフタレンを含む

0.25 

0.05 

図 5

T M B  

̀│CNDC N 

Scheme 2  

0 ‑ 0  

Fluo resce nce l nten,i ty(arb.  

u.)  00 00 00   32

1 

空気飽和アセトニトリルを308

nm

レーザーによ り励起し ,BP のラジカルカチオンを発生させる と670

nm

にその吸収が現れる 。TMB からこのラ ジカルカチオンヘの電子移動により TMB ラジカ ルカチオンが生成ために670

nm

の吸収が減衰す る。532

nm

レーザーにより TMB ラジカルカチオ ンを励起し ,蛍光強度を308

nm

と532

nm

のレー ザーパルスの時間差を変化させると TMB ラジカ ルカチオンの生成減衰に対応するプロットが得 られる 。

試薬による発生法と比べて極めて短時間に非常に 低い濃度である 。 したがって, 副反応による生成 20  海洋化 学 研 究 第16巻算1号 平成15年 4

(4)

物を励起する可能性はほぽ完全に除外できる 。実 際に蛍光強度を発生に用いた

3 0 8 n m

レーザーパ ルスと励起に用いた

532

時間差(遅延時間)に対して調べると

Scheme 2  

により得られるラジカルカチオン濃度の時間変化 によく対応した(図

5 )

。一方,この分子のラジ カルカチオンが蛍光性であり,他のメトキシベン ゼン類のラジカルカチオンは無蛍光性であること は長らく筆者の頭を悩ませたが,これらラジカル カチオンの基底状態

(D

。状態。 この

D

は二重項

Doublet

の頭文字)および第一,第二励起状態

(D1,

防状態)における電子構造,遷移の振動強度の理 論計算を行うことにより氷解した。 これと同時に 気相におけるフルオロベンゼン類のラジカルカチ オンの蛍光についての研究II) が

1 9 7 0 ‑ 8 0

年代に行われていることを知り,文献調査を行っ たことも大いに助けとなった。すなわち,

T M B

の擬

D)h

対称性のため に7t電子は二重に縮重した 軌道を最闇被占準位として持ち,

D

。状態のラジカ ルカチオンはその一つの電子が欠けたものと考え ることができる(図

6 )

。電子が欠けた準位への 縮重した準位からの電子遷移

(D。 ‑D1

遷移)は対 称性のために禁制となるが,次の準位からの遷移 は対称許容となる。したがって

D1

準位は存在しな いに等しく(実際は

Jahn‑Teller

変形やメチル基の

n m

レーザーパルスの

寄与による

D3h

構造からのずれのため

D1

状態は

0.8  e V   (1500 nm)

付近に存在するが,

D

。状態から その状態への遷移は完全に禁制である),

D

‑D2

H 3 c o ̀凡

T M B● +  

6. Hocke I

レベルにおける

1, 3,  5

ートリメトキシ ベンゼンラジカルカチオンの擬%対称性に基づ

く縮重した電子構造と対応する遷移。

準位間の高い励起エネルギーを要する遷移が事実 上の励起状態への遷移となる。 これに対して他の 対称性を持つメトキシベンゼンでは縮重軌道は無 く,ラジカルカチオンの

D

‑D1

遷移は

I e V   (1240  nm)

付近に現れることになる 。このため,

4 5 0 n m

付近に現れる紫外可視領域におけるラジカルカチ オンの吸収

(D

‑D2

遷移)においてラジカルカチ オンを励起しても防状態から

D1

状態への内部転 換を経て

D

。状態まで速やかな無輻射過程が進行

し蛍光過程は観測することができないことになる 。 さらに後に

D3h

対称性と同じ縮重軌道を与える 四 対 称 性 分 子 で あ る ヘ キ サ メ ト キ シベンゼン

の蛍光を観測したことからまさに群論の予測する 通りの挙動を示すことが判った。ま た,

1‑

置換

‑3,5‑

ト キ シ ベ ン ゼ ン の ラ ジ カ ル カ チ オ ン ジメ

換基

(X) が X =   O H ,  NH2,  N ( C H

山,

C l, F

のよ うな不対電子を持つ原子の場合蛍光を示し,

X =  

H,  C H 3

のような不対電子を持たない置換基では

蛍光性を示さない(図

7 )

ことからも電子構造が

D3h

対称性に近いことが重要であることが結論さ

2.0xlO 

.J 

50   II

 

0.5 

O O H  

O C H ,  

NH,  ゜

N(CH3)2 

゜ Fo   Clo  CH3 

‑0.5  ‑0.4  ‑0.3  ‑0.2  ‑0.1 

Resonanc• param<ler /  /ia‑R   H  

0.0  0.1 

図7 .1ー置換ー

3,5

ージメトキシベンゼンのラジカル

カチオン (XDIIBうの置換基の共鳴パラメーター

と蛍光量子収率。置換基の共鳴パラメーターがメ トキシ基の値を外れると指数関数的に蛍光量子収 率が低下することが判る。

Tr•nsclion• of The Re,erch  ln5tilule  of 

Ocenochemi,1ry Vol.16,  No.I, April, 

2003  21 

(5)

れる 。 また,置換基の性質がメトキシ基か ら離れ るにつれて蛍光量子収率が下がり,計算された

DI

状態のエネルギー準位が

D

。状態から離れて縮重 が解けることが

D2

状態の

D1

状態を経由する無輻 射失活過程の促進につながるものと考えられる 。 気相のフルオロベンゼン類のラジカルカチオンと は異なり,凝縮相におけるラジカルカチオンでは 無輻射過程の影響が大きく,対称性が低いラジカ ルカチオンではまった<蛍光性を示さないことが 特徴である 。

一般に吸収,蛍光ス ペ クトル測定は,遷移のエ ネルギーの他にスペクトル形状の解析から遷移に 関係する分子内振動,その振動モードにおける平 衡核配置の違いなど構造に関する情報を与える 。 また,吸収,蛍光の遷移確率を示す振動子強度,

蛍光量子収率から蛍光過程の速度定数(自然放射 速度定数)および蛍光寿命(励起状態の寿命)が 得られる 。特に励起状態の寿命は,そこから起こ る化学反応の速度を見積もる上で非常に重要なパ ラメーターとなる 。

LIF

測定および過渡吸収スペ クトル測定によりこれらのラジカルカチオン励起 状態の光物理化学的性質について判 ったことは,

蛍光量子収率が

l0"4‑1

炉程度であり,この値と吸 収ス ペ クトルから見積もった放射速度を基に寿命

20‑200 ps

程度であることである 。つまり,励起

状態に上げたラジカルカチオンはほとんど無輻射 的に失活するのであるが,わずかに

0.01‑0.1

%程の 励起ラジカルカチオンが蛍光を発し,貴重な励起 状態の情報を与えるのである 。次に,励起状態の ラジカルカチオンの構造についての情報について 考えるためには吸収および蛍光ス ペ クトルを つぶ さに見る必要がある 。通常の芳香族化合物は吸収 と蛍光ス ペク トルは互いに鏡像関係にあるが,観

ほぼ鏡像関係を示した。観測された蛍光ス ペ クト ルの幅は吸収ス ペ クトルよりやや狭いが,

検出器が長波長において感度が低くス ペク トルは 感度に対して未補正であるためである 。観測を行 これは

った擬 D)h, D 6 h対称性を持つラジカルカチオンは

三電子により占め られる 二重縮重軌道を持つため に基底状態において

Jahn‑Teller

変形を受け対称性 を低くすることが予想される 。一方,防状態にお いて縮重軌道は四電子を持つために

Jahn‑Teller

変 形を受けず,ラジカルカチオンの構造は中性分子 の基底状態と同様に擬D3h, D 6 h対称性を持つこと

(図

8 )

。電子スピン共鳴法により

D

0 6 h対称性を持つラジカルイオンの

Jahn‑Teller

形は低温において確認されているが,室温では変 形運動が平均化されるために変形を示す信号を与 になる

えない。そこでラジカルカチオンの対称性とスペ クトル形状の関係を調べてみた。T M B のベンゼ ン環にメチル基を導入した対称性の低い

2,4,6‑

リメトキシトルエン

( M T M B )

のラジカルカチオ

( M T M Bりでは吸収と蛍光ス ペ クトルの極大

さく,

S

2

U3

h v   h v  

O = o  

D2 State 

D 。 State

Molecular Coordinate 

図8. 03h,  06h 対称性を持つラジカルカチオンの

Jahn‑Teller

変形と付随するポテンシャルエネル

ギー。励起状態では

Jahn‑Teller

変形を受けず,

Jahn‑Teller

変形を受けた状態ではポテンシャル

曲面は左右に分裂する。

Stokes Shi ft 

(= 

hv ‑

hv'

)は,

Jahn‑Teller

変形が大きいほど大きくな

ることが判る。

22 

海 洋 化 学 研 究 第16警第1 平成154
(6)

Stokes‑Shiftは大きくなっていることが判った。こ れは対称性が裔いほど基底状態と励起状態の核配 置の差が大きくなっていることに起因し,間接的 ながら室温におけるJahn‑Teller変形の大きさを表 しているものと考えられる 。また,同じT M B

打こ

つ い て も , 強 く 溶 媒 和 す る 極 性 溶 媒 ほ ど

Stokes‑Shiftが小さくなることが観測された。この

場合では,通常極性分子の吸収・蛍光とは全く逆 の挙動であり,ラジカルカチオンの溶媒和が電子 状態の対称性を崩すことでJahn‑Teller変形の大き

さが小さくなるものと考えられる 。

さらに

LIF

測定により励起状態ラジカルカチオ

ラジカルカチオンの生成においては必ず対イオ ンの生成を伴うため,イオン対の挙動に関する情

報が T M B +*の蛍光から得られるはずである 。

T M B ・十の生成を極性の高いアセトニトリル中で行

うとイオン対は溶媒和により解離するが,極性の

低い

1,2ージクロロエタン中で行うとイオン対を形

成する方向の挙動を示す8,9)。それぞれの溶媒中で

のT M B'+の生成方法は,アセトニトリル中では光

化学的な

2

分子反応であるのでイオン対を初めに 生成し,

1,2‑

ジクロロエタン中では放射線化学反 応によりフリーなT M B・十と塩素アニオンが初めに 生成する 。詳細な記述は省くがイオン対では励起 ンの化学的性質についてもいくつかの知見を得た。 エネルギー移動や電子移動相互作用が起こるため 一つは,ラジカルカチオンの励起による酸化力増

強効果であるが,これは従来から予想されている て, T M B・十の生成と励起のタイミングを変化させ 通りの挙動である 。 ラジカルカチオンを与えるイ ることによりイオン対の動的挙動に対応した蛍光 オン化ポテンシャル

(/P;IP 

( T M B )  

=   8.11 

eV) 以下 強度の観測時刻による変化,すなわちアセトニト の

IP

を持つ中性分子はラジカルカチオンにより リル中では蛍光は増大,

1,2‑

ジクロロエタン中で 酸化を受ける 。 さらに励起状態ラジカルカチオン は減少が観測されることになる ( S c h e m e

3)

。 こ は

IP

に励起エネルギー

(2.03

のイオン対に関する挙動は,溶媒効果とともに凝 子エネルギー)を加えた値

(10.04

e V ) よりも低 縮相でのラジカルイオンの蛍光挙動において重要 い

IP

を持つ分子まで酸化を行うことができる 。こ な要素となり,気相における研究との違いが顕著 れはラジカルカチオンの蛍光を調べる上で溶媒効

果の一つ として観測されており,水,アセトン,

ベ ン ゾ ニ ト リ ル , ア ル カ ン 中 で は 励 起 T M B・+

媒ラジカルカチオンを生成するが,再び速やかに

秒オーダーの分光においては見かけ上何も起こら ないことになる 。 この 一連の過程の速度に関して は,フェムト秒からピコ秒の時間領域の測定が望

セトキシ基にすると,アセチル基の冗電子による 分子内蛍光消光により蛍光量子収率が低下し,ジ アセトキシ体, トリメトキシ体で蛍光観測が不能 となった(アセトキシ基の数=

0,1,2,3:

T M B ,   A C D M B ,  D A C M B ,  T A B ,

図 3

参照) 。

Transactions of The Restarch Institute of 

ceanochemistry  Vol.16,  No.I, April,  2003 

23 

となる。詳しくは,原報8,9) あるいは既報の総説5‑7) を参照されたい。

我々が行ったレーザー誘起蛍光法による蛍光性 ラジカルカチオンの研究例は,光化学,放射線化 学の長年の謎であった溶液中におけるラジカルイ オン種の無蛍光性についての説明を与えるととも

(TMB• /  + ーX  (   Radical Ion Pair 

. 

h  > 

(TMB•* 十 一/  X  

I  

(Less Fluorescent) 

Solvation  Coulombic Force 

TMB• + +  X   Fee Radical Cation 

. 

h  > 

TMB•• +  +  X   (Fluorescent)  (CICH2CH2CI)  Solvent Polaity (CH3CN) 

Scheme3 

(7)

に,その原理がHUckel レベルの分子軌道法で十分 説明ができるため群論や量子化学,あるいは光化 学,放射線化学の良い教材として活用できるので はないかと思われる。また, さらに分子を検討す ることにより,微量分子の一電子移動現象を蛍光 により検出できるプロープの開発につながるもの と期待している。

24 

参考文献

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海 洋 化 学 研 究 璽16巻第1号 平 成154

Referensi

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mRNAの細胞内局在化解析が報告されている.しかし, FISH法は固定化と洗浄という2つのプロセスにより, 細胞が死んでしまうため,生きた細胞内のRNAが検出 できない点が課題となっている. 一方,細胞内のRNAの挙動を解析するためには生細 胞内における検出が必要不可欠である.細胞内のRNA を生きたまま観察するためには,FISH法のような細胞

3 単元1 化学変化とイオン 1章 水溶液とイオン① 教科書p.2~15 ●練習問題··· 1 純粋な水(蒸留水)にさまざまな種類の物質をとかし, その水溶液に電流が流れるか下の図のようにして調べ た。次の問いに答えなさい。 ⑴ 電流が流れるものを次のア ~オからすべて選びなさい。 電流が流れるものがないと判 断した場合は「なし」と答え なさい。

界面の分光学的研究法としての全 内部反射分光法 背景:全内部反射分光法 Total In‑ ternal Reflection Spectroscopy, TIRS は1960年の初頭、 Barrick 及び Fahrenfort らにより赤外領域の減衰全 反射法 Attenuated Total Reflection, ATR として開発された。装置の開発と

CMLは、HSA-Glucose糖化反応モデルにホエイを終濃 度0.5 mg/mLとなるよう添加し、糖化反応終了後、反応 液中に生成されたCMLを測定キット(CircuLex CML / Nε-carboxymethyl lysine、MBL、名古屋)を使用して、 enzyme-linked immunosorbent assay(ELISA)で測定した。

■ 氏名 原田 久志 Hisashi Harada 超音波または光が照射することによっておこる化学反応についての研究を行っている。具体的な研究内容としては、 超音波照射を利用した化学反応(ソノケミカル反応)およびその反応速度制御について研究を遂行している。また、

不均一系・均一系の触媒反応 有機金属化学第7回 2021 年度 不均一触媒 ・担持された金属、金属酸化物 ・触媒の耐久性、活性が高い ・生成物と触媒の分離が容易 ・選択性は低い ・主にバルク化学品の製造に用いられる 均一系触媒 ・反応系に可溶な金属錯体を利用 ・分子性で単一の反応点を有し、選択性が高い 金属原子種類、濃度、酸化状態