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真菌感染における自然免疫 活性化の分子機構 - J-Stage

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【解説】

真菌感染における自然免疫 活性化の分子機構

石井恵子,川上和義

近年の化学療法や移植医療の進歩およびエイズの拡大などを 背景に真菌感染症が増加しており,真菌感染に対する生体防 御機構の解明が重要な課題となっている.感染防御には,貪 食細胞を中心とする自然免疫応答とTヘルパー細胞サブセッ トのバランスによって形成される獲得免疫応答が総合的に機 能する.どのタイプの免疫応答が形成されるかは感染する真 菌の種,形態(酵母型や菌糸型),感染部位,宿主の免疫状 態 に よ っ て 左 右 さ れ る が,そ の 過 程 で 重 要 な 働 き を す る

Toll様受容体やC型レクチン受容体の役割が動物モデルやヒ

トの研究から明らかになってきた.

はじめに

真菌の大部分は土壌などの環境中に存在しており,空 気中には真菌の胞子や乾燥した酵母が浮遊している.こ れらは体表に付着したり,吸入されて体内に侵入するこ とがあるが,ほとんどは感染を起こすことはなく,感染 を起こしたとしても免疫機能が正常であれば,排除され

るか常在菌として存在する.ほかの常在菌とのバランス の乱れや宿主免疫力の軽度の低下によって感染症を起こ す場合もあるが,体表にとどまり,深部にまで広がるこ とはない.しかし,免疫抑制剤の使用やエイズなどの基 礎疾患により免疫力が極度に低下した患者では感染が急 激に進行し,致死率も高い(1)

.このように真菌の感染に

は宿主の免疫力が大きく影響する.本稿ではこの免疫応 答の開始点である真菌認識機構にフォーカスを当て,自 然免疫活性化の分子機構について概説する.

免疫力の低下と深在性真菌症

病原微生物が皮膚・粘膜バリアを超えて侵入すると,

生体は自然免疫と獲得免疫からなる一連の免疫応答シス テムによって感染の拡大を阻止しようとする.自然免疫 では,マクロファージが侵入した微生物を認識して  TNF-

α

 (tumor necrosis factor-

α

) をはじめとする炎症 性サイトカインを産生し,それによって惹起された炎症 局所で,集積した好中球が細胞外増殖病原体を貪食・殺 菌する.樹状細胞は微生物を認識するとともに貪食して リンパ節へ移行し,CD4陽性のナイーブ(まだ抗原に Molecular Mechanism for Activation of Innate Immunity in Fun-

gal Infection

Keiko ISHII, Kazuyoshi KAWAKAMI,  東北大学大学院医学系研 究科

(2)

出会ったことがない)T細胞に抗原を提示することで獲 得免疫を誘導する.ナイーブT細胞は周囲のサイトカ インに影響されて Th (T helper) サブセットに分化し,

侵入微生物の排除に適切な獲得免疫が誘導される.Th1 型の獲得免疫ではマクロファージやCD8陽性T細胞が 活性化され,細胞内増殖微生物が排除される.Th2型で は抗体産生が活性化され,ウイルスや毒素の中和やオプ ソニン効果が高まる.またTh17型では,好中球の炎症 部位への集積や貪食・殺菌能が活性化される.

このような免疫システムが十分に機能しない糖尿病や 悪性腫瘍の患者,ステロイド剤投与患者,エイズ患者な どでは,健康な宿主には害を及ぼさないような微生物が 容易に増殖し,日和見感染症を起こす.近年,このよう な易感染性宿主の増加に伴って,カンジダ属,アスペル ギルス属,クリプトコックス属による深在性真菌症が増 加している(2)

.カンジダ属は健常人の皮膚・粘膜に常在

しており,皮膚・粘膜バリアの破綻が起こると血中に移 行し,カンジダ血症や播種性カンジダ症を起こす.アス ペルギルス属は空中を浮遊する分生子(胞子)が吸入さ れて到達した肺胞内で増殖し,肺アスペルギローマ,慢 性壊死性アスペルギルス症,侵襲性アスペルギルス症を

起こす.カンジダ属,アスペルギルス属ともに好中球に よる貪食殺菌が感染防御の中心であるため,好中球減少 がリスクファクターになる.クリプトコックス属は鳥類 の糞中などで増殖し,乾燥して舞い上がったものが吸入 により肺胞内に到達するが,貪食されたマクロファージ 内で殺菌に抵抗して増殖するため,基礎疾患のない宿主 でも肺クリプトコックス症を起こすことがある.クリプ トコックスの感染防御にはマクロファージの殺菌能を高 める細胞性免疫が重要であり,CD4陽性T細胞が減少 するエイズ患者では,クリプトコックス脳髄膜炎が高頻 度で起こる.これらの深在性真菌症は診断・治療ともに 困難であり,死亡率が高い(3)

.代表的な深在性真菌症の

リスクファクターを表

1

にまとめた.

自然免疫における真菌の認識

自然免疫応答は病原体に対する生体防御の第一線であ る.マクロファージ,好中球,樹状細胞をはじめとする 自然免疫細胞が病原体を認識することによりスタートす る.マクロファージや好中球による貪食・殺菌は細胞外 の微生物を直接排除し,樹状細胞による抗原提示と自然

表1深在性真菌症のリスクファクター(文献3より作成)

代表的な原因真菌 深在性真菌症 重要な免疫機能 リスクファクター

カンジダ血症

播種性カンジダ症 好中球 遷延する好中球減少,同種造血幹細胞移植,悪

性腫瘍,透析,細胞性免疫,免疫抑制薬,臓器 移植

慢性壊死性アスペルギルス症 

侵襲性肺アスペルギルス症 好中球 遷延する好中球減少,同種造血幹細胞移植,ス テロイド大量投与,細胞性免疫抑制薬,臓器移 植,糖尿病,低栄養,CD4リンパ球数の減少 

(<50/μL)

クリプトコックス脳髄膜炎 細胞性免疫 糖尿病,悪性腫瘍,膠原病,腎疾患,ステロイ ド投与,CD4リンパ球数の減少 (<200/μL)

表2パターン認識受容体 PRRs

グループ 受容体 所在

TLRs TLR1 〜11 (human),

TLR1 〜13 (mouse) 細胞膜 (TLR1, 2, 4, 5, 6)

エンドソーム膜 (TLR3, 7, 8, 9)

CLRs Dectin-1, Dectin-2, MR,

Mincle, DC-SIGN 細胞膜 RLRs

(RIG-I-like receptors) RIG-I, MDA-5 細胞質

(NOD-like receptors)NLRs NOD1, NOD2, NLRC4, NALP1 inflammasome, NALP3 inflammasome

細胞質

TLRs : Toll-like receptors, CLRs : C-type lectins, MR : mannose receptor, RIG : retinoic acid-in- ducible gene I, MDA : melanoma differentiation-associated gene 5, NOD : nucleotide-binding  oligomerization domain, NLR family, CARD domain containing 4, NALP : NTPase-domain  named after NAIP, CIITA, HET-E and TP1-LRR-PYD-containing protein

(3)

免疫細胞が産生するサイトカインは病原体特異的な獲得 免疫応答の性格を決定するために重要である.これらの 貪食細胞は,糖や核酸など病原体に存在する繰返し構造 の多い成分 (pathogen-associated molecular patterns :   PAMPs) を認識する複数種のパターン認識受容体 (pat- tern recognition receptors : PRRs)(表

2

) を 発 現 し て おり,PRRsを介して病原体を感知し,サイトカインを 産 生 す る.真 菌 の 認 識 に か か わ るPRRsに はTLR2,

TLR4などのToll様受容体 (Toll-like receptors : TLRs),  Dectin-1や Dectin-2, Mincle, マンノースレセプターなど のC-型レクチン受容体 (C-type lectin receptors : CLRs) 

などがある.

PRRsによるPAMPsの認識

真菌は真核細胞であり,動物細胞と多くの共通点をも つが,環境ストレスから細胞を守る硬い細胞壁をもつ点 や,酵母型から菌糸型へと形態を変えるもの(二形性真 菌や糸状菌)がある点で大きく異なる.真菌の細胞壁は 主にマンナン,

β

-グルカン,キチンといった動物細胞が 持たない多糖で構成されており(図

1

,これらが真菌

のPAMPsとしてPRRsに認識される(4)

β

-グルカンは 

β

-1,3-グルカンに 

β

-1,6-グルカンの側鎖が 結合したもので,真菌に豊富に含まれる.Dectin-1のリ ガンドであり,自然免疫細胞を含む多くの細胞を活性化 する.しかし,透過性や多孔性が低いマンナン層の内側 に位置するため,真菌の状態によっては認識されにく い. では酵母の出芽痕のような限定された 部位にわずかに露出したもののみがDectin-1によって認 識され,菌糸はほとんど認識されない(5)

の休止分生子 (resting conidia) もRodAタンパク質に よって形成された疎水性物質ハイドロフォビン (hydro- phobin) に覆われており,

β

-1,3-グルカンがDectin-1と 結合しにくくなっている.しかし,休止分生子が肺胞で

膨潤して膨潤分生子 (swollen conidia) となり,さらに 発芽分生子 (germinating conidia) から菌糸 (hypha) 

になって 

β

-1,3-グルカンが露出されると,Dectin-1に認 識されるようになる(6)

.生体内で酵母型のみをとる

はグルクロノキシロマンナンとガラクトキ シロマンナンからなる厚い莢膜をもっており,自然免疫 応答による貪食や認識,殺菌に抵抗する.また,

β

-グル カンは主に 

β

-1,6-グルカンからなっており,莢膜欠損株 であってもDectin-1によって認識されない.ほかの CLRsによる認識が想定されるが,現在まで確定されて いない(7)

.カンジダ属,アスペルギルス属,およびクリ

プトコックス属の 

β

-グルカンの存在位置を図

2

に示し た.

マンナンは糖タンパクの糖鎖として,あるいは遊離し た状態で細胞壁の最外層に存在するため,多くのPRRs により認識される. では酵母と菌糸でマン ナンの特性が異なっており,菌糸のマンナンのみが Dectin-2に認識される(8)

.マンナンのうち, α

-マンナン はDectin-2によって認識され,N-結合マンナンは単球・

マクロファージではマンノース受容体やMincleなどに よって,樹状細胞ではDC-SIGNなどによって認識され る.O-結合マンナンはTLR4に,リン脂質マンナンは TLR2によって認識される.

キチンやキトサンも免疫応答の活性や抑制に関与する 表3真菌の認識にかかわる代表的なPAMPsPRRs

PAMP(真菌) PRR

β-1,3-グルカン Dectin-1

α-マンナン Dectin-2

グリセロ糖脂質,マンノシル脂肪酸 ( ) Mincle

マンナン, -マンナン MR

マンナン,ガラクトマンナン DC-SIGN

リン脂質マンナン ( ) TLR2

-マンナン ( ) TLR4

DNA ( , , ) TLR9

RNA ( ) TLR3

RNA ( ) TLR7

図1 の細胞壁(文献18を改変)

図2真菌における β-グルカンの所在

カンジダ属 (A) やアスペルギルス属 (B) クリプトコックス属 

(C) の菌糸を除く形態における β-グルカンの所在を示した.

(4)

ことが報告されているが,まだ不明の点が多い(5)

真 菌 のDNAは メ チ ル 化 さ れ る 頻 度 が 低 い の で,

TLR9によって非自己のDNAとして認識される.われ われは   や   のDNAがPAMPs としてTLR9によって認識されることを示したが,

についても同様のことが示されている(9〜11)

真菌のRNAもPAMPsとして機能し, では TLR7によって, ではTLR3によって認識 されることが報告されている(12, 13)

シグナル伝達 1.  TLRs

TLRsはマクロファージ,樹状細胞,NK細胞,B細 胞のような免疫細胞だけでなく,繊維芽細胞や上皮細 胞,血管内皮細胞などの非免疫細胞でも発現が見られ る.TLR1, 2, 4, 5, 6 は細胞膜にあり,TLR3, 7, 8, 9 はエ ンドソーム膜に発現する膜貫通型糖タンパク質で,いず れも細胞外の LRR (leucine-rich repeat) ドメイン,膜 貫通ドメイン,細胞質側の TIR (Toll/IL-1-receptor) ド メインからなる.真菌の細胞壁多糖がTLR2やTLR4 に,DNAがTLR9に,RNAがTLR7に 結 合 す る と,

TIRド メ イ ン を も つ MyD88 (myeloid differentiation  primary response protein 88)  ア ダ プ タ ー 分 子 か ら  IRAK (IL-1 receptor-associated kinase) 1, 2, 4  にシグ ナルが伝えられ,転写因子 NF-

κ

B (nuclear factor kap- pa-light-chain-enhancer of activated B cells) が活性化 される(図

3

.このときのNF- κ

Bは標準的なサブユ ニットc-Relとp65からなり,炎症性サイトカインであ

る IL-12 (interleukin-12) や TNF-

α

 (tumor necrosis fac- tor-

α

) を発現させる(14)

.TLR3からのシグナルはTIR

ドメインをもつ TRIF (Toll/IL-1 receptor-domain-con- taining adaptor-inducing interferon 

β

) を介してNF-

κ

B を活性化する一方,IRF3/IRF7を活性化し,インター フェロン (IFN)-

α

 および 

β

,  すなわちI型IFNを発現さ せる.TLR7のMyD88からのシグナルもIRF7を活性化 し,I型IFNの産生を誘導する.最近,TLR7からのシ グナルがIRF1を活性化することが  感染にお けるIL-12の産生に必要であることが報告された(12)

MyD88を欠失したマウスは各種の真菌感染に強く感 受性となるが,その上流の個々のTLRsの関与について はさまざまな結果が報告されている(14)

.ヒトでは逆に,

TLR1  やTLR4, TLR6, TLR3, TLR9  に遺伝子多型をも

つ患者で  や  感染による深在性

真菌症が発生し,MyD88や下流の IRAK-4 (interleu- kin-1 receptor-associated kinase 4) を欠損した患者では 真菌感染防御に異常がない.このくい違いは宿主による シグナル伝達メカニズムの違いやTLRsとほかのPRRs とのクロストークなどによるものと考えられており,解 明が必要である.

2.  CLRs 1) Dectin-1

Dectin-1は樹状細胞,マクロファージや好中球のほ か,

γδ

T細胞や粘膜上皮細胞などに発現する.細胞外に 1個の CTLD (C-type lectin domain), 膜貫通ドメインと シグナルモチーフである ITAM (immunoreceptor tyro- sine-based activation motif) を含む細胞質ドメインから

図3真菌の認識にかかわるTLR およびCLRによるシグナル伝達と サイトカイン・ケモカイン産生(文 献12, 14, 16, 20, 25 より作成)

真菌の認識にかかわるTLRやCLR,  直接シグナルを受けるアダプター分 子,シグナル伝達経路で重要な分子,

活性化される転写因子,さらにシグ ナル伝達の結果発現が増加するサイ トカインやケモカインをまとめた.

p65, p50, c-Rel, Rel-Bは転写因子NF- κBのサブユニットである.DC-SIGN およびDectin-1からRaf-1を経由して 伝達されるシグナルはp65をリン酸 化することで,TLRなどのほかのシ グナル伝達とクロストークし,NF- κBの機能を変調する.

(5)

なる膜貫通型糖タンパク質である(14)

.Dectin-1は  β

-1,3- グルカンを認識し,複数のシグナル伝達経路により各種 サイトカインやケモカインの複雑制御された産生に関与 する(図3)

.アダプタータンパク Syk (spleen tyrosine 

kinase) を介する経路では,2分子のDectin-1の細胞質 ドメインにあるITAMのリン酸化により1分子のSykが 活 性 化 さ れ,PKC

δ

を 介 し て Card9 (caspase recruit- ment domain-containing protein 9)

・BCL-10 (B cell 

lymphoma 10)

・MALT1 (mucosa-associated lymphoid 

tissue lymphoma translocation gene 1) の複合体が形成 さ れ る(15)

.MALT1に よ り 標 準 的 な 構 成 の NF- κ

(p65/p50, c-Rel/p50) が活性化され,IL-6や pro-IL-1

β

,  IL-12, IL-10, IL-23  などが産生される.Syk経由で NIK 

(NF-

κ

B-inducing kinase) へシグナルが伝わると標準的 でない構成の NF-

κ

B (p52/RelB) が活性化され,pro- IL-1

β

 やIL-12が抑制される一方,ケモカインのCCL17 やCCL22が産生される.Sykから転写因子 NFAT (Nu- clear factor of activated T-cells) が活性化される経路で はIL-2やIL10が産生される.Sykを介さずRasを介して Raf-1にシグナルが伝わる経路では,Raf-1がp65をリン 酸化することによりNF-

κ

Bの構成分子の作用の調整が 行われる(16)

.リン酸化p65はRelBと強く会合して不活

型のNF-

κ

Bを構成するため,活性型のp52/RelBが減少 し,CCL17やCCL22の発現が抑制される.一方,リン 酸化されたp65がさらにアセチル化されてp50と会合す ると,転写活性が増強したNF-

κ

Bとなり,IL-6やIL-10,  IL-12 の産生が増加する.このような多様なシグナル伝 達経路はDectin-1がどのようなリガンドで活性化される か,その際,ほかのPRRsとのクロストークがあるかな どによると考えられている(16)

Dectin-1が 

β

-グルカンの機能的な受容体であること

は,Dectin-1欠損マウスの骨髄由来樹状細胞やマクロ ファージが 

β

-グルカンによって活性化されないことで 示されている. を経気道感染させたDec- tin-1欠損マウスでは,Th17型のサイトカイン (IL-17,  IL-12p40, IL-23) の産生が低く,Th17型獲得免疫が誘導 されないため,真菌が排除されない(14)

.しかし,

に よ る サ イ ト カ イ ン 産 生 がDectin-1で は な く MyD88に依存していたことから,CLRsの役割は大きく ないと考えられた(8)

.一方,Dectin-1欠損マウスの細胞

は に結合しないという逆の報告があり,使 用した株の違いによるものと説明されている.

ヒトでは,Dectin-1遺伝子多型 (Y238X) が侵襲性ア スペルギローシスに関与することが示された.また,下 流のCard9の多型 (Q295X) はTNF-

α

 産生やTh17細胞 数に影響を与え,カンジダ粘膜感染を起こすこと,I

κ

B

α

 (NF-

κ

B inhibitor 

α

) 欠失患者も  感染に 感受性であることが示されている(14)

2) Dectin-2

Dectin-2は樹状細胞,組織マクロファージ,炎症性単 球などに発現しており,

α

-マンナンを認識する.細胞外 ドメインは1個のCTLDからなり,細胞内ドメインはク ラシカルなシグナルモチーフをもたない(14)

.Dectin-2

からのシグナルはシグナルモチーフの ITAM (immuno- receptor tyrosine-based activation motif) をもつ FcR

γ

 

(Fc receptor 

γ

 chain) によって伝達される.

α

-マンナン を認識したDectin-2からのシグナルはFcR

γ

 からSyk/

Card9経路を通って伝えられ,c-Relとp65で構成される 標準的なNF-

κ

BによってIL-1

β

 やIL-23p19が産生され る.その結果Th17細胞の増殖が促進され,IL-17が産生 される.IL-17は血管内皮細胞,末梢リンパ球,線維芽 細胞や上皮細胞,マクロファージなど種々の細胞に作用

図4自然免疫から獲得免疫へ PRRsでPAMPsを認識した自然免疫 細胞はシグナルを転写因子に伝え,

シグナルに応じたサイトカインやケ モカインなどの遺伝子を発現する.

樹状細胞はサイトカインを産生しつ つ,ナイーブCD4陽性T細胞に抗原 を提示する.ナイーブCD4陽性T細 胞は環境中のサイトカインによって Th1, Th2, Th17などのサブセットに 分化する.サブセットによって異な るサイトカインが産生され,異なる 機能をもつ獲得免疫応答が誘導され る.

(6)

し,炎症性サイトカインやケモカイン,細胞接着因子な どを誘導して好中球や単球の動員,増殖を促し,炎症を 誘導するとともに真菌を排除する. では,

菌糸だけでなく酵母もDectin-2依存的にTh17応答を誘 導することが示された(8)

.ヒトのDectin-2遺伝子多型は

見つかっていないが,ヒト樹状細胞に抗Dectin-2抗体を 作用させるとIL-23p19の発現が低下することが示され ている(14)

3) Mincle

Mincle (macrophage inducible C-type lectin) は1個 のCTLDを も つ 膜 貫 通 タ ン パ ク で,活 性 化 マ ク ロ フ ァ ー ジ や 樹 状 細 胞 に 発 現 す る.Dectin-2と 同 様 に FcR

γ

 と会合しており,SykからCard9を介するシグナ ル伝達経路により IL-6, IL-10, TNF-

α

, KC, MIP-2 などの 産生を誘導する(14)

.カンジダ属,マラセチア属,サッ

カロミセス属などの 

α

-マンナンがMincleによって認識 されるが,最近,マラセチア属におけるMincleのリガ ンドとして,グリセロ糖脂質とマンノシル脂肪酸が同定 された(17)

4) マンノースレセプター MR

マンノースレセプターはマクロファージや樹状細胞の ほか,血管内皮細胞など多種の細胞に発現する膜貫通タ ンパクで,8個のCTLDからなる細胞外ドメインと膜貫 通ドメイン,シグナルモチーフを欠く細胞質ドメインか らなる.マンノースレセプターは  -マンナンを認識し,

オプソニン化されていない真菌の貪食受容体として機能 する.酵母型の を結合してエンドソーム内 に取り込むことが示されている(16)

.シグナル伝達経路

はまだ不明であるが,Th17誘導型のサイトカインが産 生される.マンノースレセプターの欠損によって,マウ スは   感染に感受性になるが,

や の感染に対してはわずかな影響

を示したのみであった.しかし,   の感染で IL-17の産生が高まり, の感染でIL-8が産生さ れることから,マンノースレセプターからのシグナルが 好中球による真菌排除にかかわっていることが示唆され る.

5) DC-SIGN

DC-SIGNは樹状細胞や一部のマクロファージで発現 する(14)

.ヒトでは2種の,マウスでは8種の相同分子種

がある.DC-SIGNは1個のCTLDをもつ細胞外ドメイ ンと膜貫通ドメインおよびYXXXLモチーフをもつ細胞 質内ドメインからなる分子がテトラマーを構成してい る(14)

.マンナンを認識することによって

や など多くの真菌を認識するが,DC-SIGN

自体はサイトカインの発現を誘導しない.Raf-1を介し てNF-

κ

Bのp65をリン酸化することにより,TLRsによ り活性化されるNF-

κ

Bのサブユニット構成変え,サイ トカイン産生を変調する(18)

.DC-SIGNプロモーターに

変異 (−139A/G) をもつヒトは侵襲性アスペルギロー シスに抵抗性になることが示されている.

3.  NLRs

NLRsは 細 胞 質 内 に 存 在 す るPRRsで,NLRP3と NLR4Cが 真 菌 の 感 染 防 御 に か か わ る.細 胞 質 内 の NLRsがどのように真菌を認識するかは明らかになって いないが,ひとたび活性化が起こると,caspase-1を含 むインフラマソームが形成され,pro-IL-1

β

 やpro-IL-18 がcaspase-1に切断されて活性型のIL-1

β

 およびIL-18に なる(15)

.IL-18はTh1の分化に,IL-1 β

 はTh17の増殖に 重要である.NLRP3欠損マウスではTh17応答が成立せ ず, の粘膜感染から全身感染への播種を抑

制できなくなる. や  感染にお

けるNLRP3インフラマソームの活性化にはSykが関与 するとされるが,詳細は不明である.一方,

や で刺激した樹状細胞で,Card9/Bcl-10/

MALT1にcaspase-8が加わった複合体がIL-1

β

 の成熟の 中心となっていることが最近示された(15)

CLRTLRのクロストーク

真菌の認識には多数のTLRsやCLRsが関与する.そ れぞれが独立にリガンドと結合してシグナルを伝える一 方,異なるPRRsが協働して免疫応答を誘導する場合が ある.Dectin-1は 

β

-グルカンを認識して,主にSykを介 した経路により IL-6, IL-10, IL-23 などのサイトカインの 産生を誘導するが,TNF-

α

 やIL-12の産生のためには TLRsからのMyD88を介したシグナルが必要である(15)

ま た,ヒ ト の 末 梢 血 単 球 PBMC (peripheral blood  mononuclear cells) の系で がマンノースレ セプターを介してIL-17産生を誘導する際,Dectin-1と TLR2による活性化が必要であることが示された(19)

DC-SIGNは などのマンノースを含む病原体 を認識して活性化すると,別のリガンドによるTLRか らのシグナルで活性化されたp65をRaf-1によりリン酸 化し,NF-

κ

Bの作用に影響を与えることによりクロス トークする.Dectin-1もほぼ同じ機構をもち,自身の Syk経路のシグナルとTLRからのシグナルにより活性 化されたp65をリン酸化する(20) (図3)

(7)

獲得免疫の誘導

TLRやCLRからのシグナルはサイトカインやケモカ イン,MHCクラスIIや共役分子の産生を通してナイー ブT細胞の分化を方向づける(図3)

.真菌感染,特に

播種性感染に対する感染防御には,Th1型獲得免疫の誘 導によって貪食細胞が感染局所にリクルートされ活性化 されることが必要である.Th1型サイトカインである IL-12やIFN-

γ

 遺伝子欠損マウスやヒトは , 

,  ,   など

に感受性になる.TNF-

α

, IL-6, CXCL10, CXCL2 などの サイトカインやケモカインの欠損でも同様のことが報告 されている(21)

逆にIL-4やIL-13といった免疫抑制性サイトカインの 産生やTh2免疫応答の誘導は貪食細胞の抗菌活性の低 下を来たすとともに,Th1細胞の分化を抑制するため,

真菌感染に感受性になる(22)

.実際,IL-4やIL-10の産生

が亢進するような遺伝子多型をもつヒトはアスペルギル ス感染やカンジダ感染を起こすリスクが高い(23)

.しか

し,IL-4がTh1応答の誘導に必要であるという報告や,

IL-10が制御性T細胞 (Treg) の活性化によって炎症反 応を抑制するなどの報告があり,サイトカインの複雑な 働きが推測される.

Th17細胞は樹状細胞やマクロファージの Syk-Card9,  MyD88, マンノースレセプター経路で産生される IL-1

β

,  IL-6  やIL-23により活性化され,Th17細胞から産生さ れるIL-17は細胞外病原体の排除に重要である.実際,

高IgE症候群 (hyper-immunoglobulin E syndrome) 患 者やI型自己免疫性多腺性内分泌症候群 (autoimmune  polyendocrine syndrome I) 患者ではTh17応答の低下 と真菌感染に対する感受性に関連が見られた(21)

.しか

し,Th17応答が好中球の過剰な活性化を引き起こした り,Th1応答を抑制することによって,真菌に対する感 受性を増加させることも報告されている(24)

おわりに

真菌感染に対する生体防御機構において,自然免疫細 胞による真菌認識は重要な役割をもつ.本稿では真菌の 特徴的なPAMPsとそれを認識したPRRsからのシグナ ル伝達を中心に概説した.マウスの遺伝子欠損やヒトの 遺伝子多型を用いた研究から多くのことが明らかになっ てきたが,リガンドや受容体,シグナル伝達分子の作用 機序に関して不明の点がまだ多く残されている.真菌は 真核生物であるため,抗真菌薬には副作用が強いものが

多く,治療が難しい.自然免疫活性化分子の作用機序を 解明していくことで,治療薬ターゲットの発見やワクチ ン開発へつながることを期待している.

文献

  1)  P. G. Pappas : , 340, 253 (2010).

  2)  泉川公一,河野 茂: , 49, 275 (2008).

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  24)  T. Zelante  : , 37, 2695 (2007).

  25)  H. Kumar  : , 420, 1 (2009).

(8)

プロフィル

石井 恵子(Keiko ISHII)   

<略歴>1978年九州大学理学部生物学科 卒業/同年同大学理学部生物学科研究生/

1979年同大学大学院理学研究科生物学専 攻(理学博士取得)/1984年日本学術振興 会特別奨励研究員/1986年宮崎医科大学 医学部助手/1993年米国ハーバード大学 医学部生物化学分子薬理学教室へ留学/

1997年東北大学医学部附属病院検査部助 手/1998年同大学医学部附属病院検査部 講師/2006年同大学医学部保健学科助教 授/2008年同大学大学院医学系研究科准 教授,現在に至る<研究テーマと抱負>専 門は分子遺伝学,ウイルス学,感染免疫 学.クリプトコックスに対するT細胞受 容体のトランスジェニックマウスを作製 してT細胞サブセットの分化およびメモ リー T細胞の誘導と機能を研究する一方,

網内系による捕捉を回避するナノ粒子の開 発に参加している<趣味>生活情報収集

川上 和義(Kazuyoshi KAWAKAMI) 

<略歴>1983年長崎大学医学部医学科卒 業/同年同大学医学部附属病院研修医/

1985年熊本大学大学院医学研究科(医学 博士取得)/1990年米国マサチューセッツ 大学医学部分子遺伝微生物学教室へ留学/

1992年国立療養所長崎病院内科医/1993 年琉球大学医学部附属病院第一内科助手/

1998年同講師/2002年同助教授/2005年 東北大学医学部保健学科教授/2008年同 大学大学院医学系研究科教授,現在に至る

<研究テーマと抱負>専門は感染症学,免 疫学,微生物学,特に,エイズなど免疫不 全に合併する日和見真菌感染症の発症病態 の解明と新規治療・予防法の開発,肺炎球 菌感染防御およびワクチンの効果における 自然免疫リンパ球の役割,ARDS, SIRSの 発症病態の解明と新規治療法の開発に関す る研究を行っている<趣味>音楽鑑賞

Referensi

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ティクス」とする概念が2003年にClancyにより提唱さ れた(4)ことからも,乳酸菌の免疫調節作用に対する期待 の高さが伺える.実際に,乳酸菌のもつ免疫調節作用の 探索が各研究機関で精力的に行なわれ,乳酸菌の摂取が NK細胞の活性化,抗体産生の増強,サイトカイン産生 の制御といった様々な作用を介して,各種の免疫疾患や