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2018 年度 第1回 6月 東大本番レベ ル模試 国語採点 基準
1文(文章)で解答する設問の答案については、次のA項の加点要素の合計から次のB項・C項の減点要素の合
計を引いた得点をその設問の得点とします。ただし最低点は0点としマイナスの得点はつけません。
A
a以下の採点基準では、模範解答をいくつかの要素に分割し加点要素とします。答案中にその加点要素に相当す
る部分があれば、その加点要素に配点された得点を与えます。
bある加点要素は、その加点要素に配点された得点か0点で採点することを原則とします。たとえば5点配点さ
れた加点要素であれば5点か0点で採点することを原則とします。
ただし、その加点要素中の部分点を認める場合もあります。その場合それぞれの採点基準の中に明記されていま
す。
cある要素に加点するか否かが、他の要素と無関係に決まる場合と、他の要素との関係で決まる場合があります。
前者の場合は、その要素を単独採点(独立採点)すると言いその旨必ず明記されています。後者の場合は、他の要
素との関係について以下の採点基準で具体的に指示されています。
d解答通りという条件がある場合はいかなる部分点も認めません。
B
a答案中に大きな誤読と判定される内容(語句)などがある場合は、その内容(語句)を減点要素として示され
ている場合もあります。
b加点要素でも減点要素でもない部分もありえます。その部分は加点も減点もしません。
C
次に該当するものは、答案の形式上の不備として、一箇所につき1点の減点要素とします。
a誤字。漢字などの文字の明らかな誤りは誤字とします。
b脱字。
c文末の句点の脱落。
*字数指定のない場合、句点の脱落は誤字とし1点の減点とします。
dその他不適切と判断せざるをえない箇所。
e不適切な文末処理。設問の問い方に対応していない形で答案の文末を結んでいない場合は、適切な文末処理が
行われていないと見て形式上の不備による減点要素とします。
たとえば「…とはどういうことか?」という問いに体言で結んでいないものなどは適切な文末処理が行われてい
ないと見て形式上の不備とします。
また、理由が問われているのに、「から」「ので」などで結んでいないものなども適切な文末処理が行われていな
いと見て形式上の不備と見ます。
*ただし、「ことである」などの表現も「こと」などで結んでいるものと同様適切な文末処理が行われていると見ま
す。また、「からである。」などの表現も「から」などで結んでいるものと同様適切な文末処理が行われていると見
ます。
また文末の表現を問わない場合もありますが、その場合はその都度明記されています。
2日本語の表現として不適切なものは程度に応じて減点します。
3次の各項に該当するものは、部分点の要素があっても、その設問の得点を0点とします。
a答案が解答欄の欄外にはみ出しているもの。
b一行の解答欄に二行以上書いた場合もその設問の得点を0点とします。
c字数指定のある設問で、字数をオーバーしたもの。
d答案の文章が最後まで完結していないもの。
4古文あるいは漢文の訳を記述する設問の場合も以上に準じますが、文末の句点や文末の処理あるいは答案の完
結にこだわらなくともよい場合はその都度明記されています。
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一 現代 文 評論文(40点)
(一)
9点
【模範解答 例 】希少性 がないもの と は、 (A 1 点 ) 生活必需 品のよ う な (B①1点 ) 「使用価 値」が高く (B②1点 ) 需要が多 いもの で ある ため、 (B ③ 1 点 ) 大量 生産 さ れ て (C ①1点) 市場に 出 回 る の で 、 (C②1点 、 X1点〈 分析=分ける こと 〉) 価格は上 昇し難いとい うこと。 (D1点、 Y 1点〈総 合=ま と め る こと〉 )
【構造点】
Xは、AをB、Cの因果関係の二条件に〈分析=分けること〉する仕組みへの評価である。ここでは、条件Aと、
条件B内および条件C内の要素がそれぞれ一つ以上あれば、この仕組みの骨組みが成立しているとみなして1点加
点。
X〈分析=分けること〉A+Bの要素+Cの要素○1点
Yは、B、Cの二条件をDに〈総合=まとめること〉する仕組みへの評価である。ここでは、条件B及び条件Cの
要素がそれぞれ一つ以上あり、それに条件Dがあれば、この仕組みの骨組みは成立しているとみなして1点加点。
Y〈総合=まとめること〉Bの要素+Cの要素+D○1点
◎採点のポイント
※A、B、C、Dは原則的に条件同士において、またB、Cは各条件内においても部分採点可能。(7点満点)
※ただし、【構造点】X・Yは、右に示した条件ないしは要素の組み合わせが成立している場合に限り加点する。
(2点満点)
A
「 希
少
性 が
な い
も の
と
は 、 」
( 1
点 )
※傍線部を説明するための話題提示の条件。
○「希少性のないものは」「希少性を欠くものとは」などでも可。
×「希少性」の成分がなければ×0点。
B
「
生 活
必
需 品
の よ
う な
「
使 用
価
値 」
と 需
要 の
高
い も
の で
あ る
た
め 、 」
(
3 点
)
※Aを説明する〈因果関係〉を構成する〈因〉の条件。
①「生活必需品のような」の要素に1点。
○「生活必需品として」「生活必需品であることが多く」などでも可。
×「生活必需品」の成分がなければ×0点。
②
「 『
使 用
価
値 』 (
が 高
く ) 」
の 要
素
に 1
点
。
○
「 『
有 用
性 』
と
」 で
も よ
し 。
×「使用価値」の成分のニュアンスがなければ×0点。
③「需要が多いものであるため、」の要素に1点。
○「需要が高いので」「需要が大きいため」などでも可。
×「需要」「多い/高い」の二成分がそろっていなければ×0点。
C「大量生産されて市場に出回るので、
」 (
2 点
)
※Aを説明する〈因果関係〉を構成する〈果〉の条件。
①「大量生産されて」の要素に1点。
○「大量生産されることで」「大量生産によって」などでも可。「生産」まで必要。
×「大量生産」の成分がなければ×0点。
3
②「市場に出回るので、」の要素に1点。
○「市場に供給されるため」「市場に流通するので」などでも可。
×「市場」「出回る」の二成分がそろっていなければ×0点。
D「価格は上昇し難いということ。」(1点)
※条件B、Cをまとめて結論づける条件。
○「価格は基本的には飛躍的には上がらないということ。」「価格は上がりにくいということ。」などでも可。
×「価格」「上昇し難い」の二成分がそろっていないと×0点。
4
(二)
7点
【模範解答 例 】現代ア ートは、 (A 1点) 自らを含 む美術品の (B①1点 ) 「使用価 値 」 から「 交 換価値」 へ の 変化を (B②1点 ) 暗示す る よ う に、 (B ③ 1 点 ) 例えば素 材そのもの を 表現とする な ど の (C①1点) 表現 上の価値の変化を含む こと。 (C ②1 点、X 1 点 〈 分 け る こ と〉 )
【構造点】
Xは、Aを矛盾しないB、Cの二条件に〈分析=分けること〉する仕組みへの評価である。ここでは、条件Aと、
条件Bおよび条件C内の要素がそれぞれ一つ以上あれば、この仕組みの骨組みは成立しているとみなして1点加点。
X〈分析=分けること〉A+Bの要素+Cの要素○1点
◎採点のポイント
※A、B、Cは条件同士で、またB、Cは各条件内においても原則的に部分採点可能であるが、答案の中でその
要素が適切に用いられていない場合は加点しないこともある。(6点満点)
※ただし、【構造点】Xは、右に示した条件ないしは要素の組み合わせが成立している場合に限り1点加点する。
(1点満点)
A
「
現 代
ア ー
ト は
、 」 (
1 点
)
※傍線部を説明するための話題提示の条件。
○「現代アートというものは、」「現代アートとは、」などでも可。
×「現代アート」の成分がなければ×0点。
B「自らを含む美術品の『使用価値』から『交換価値』への変化を暗示するように、」(3点)
※Aを説明する一方の条件。
①「自らを含む美術品の」の要素に1点。
○「美術品全体の」「自らを含む美術品総体の」などでも可。
×「自らを含む」「美術品」の二成分がそろっていなければ×0点。
②「『使用価値』から『交換価値』への変化を」の要素に1点。
○
「 『
有 用
性 』
か
ら 『
交 換
価 値
』 へ
の
転 換
を 」 「
『 使
用 価
値
』 か
ら 『
交 換
価 値
』 へ
の
飛 躍
を 」
な ど
で も
可
。
×「『使用価値』」「『交換価値』」「変化」の三成分がそろっていなければ×0点。
③「暗示するように、」要素の1点。
○「示唆するように」「パラレルに表示するように」「含意するかのように」などでも可。
×「暗示する」のニュアンスをもった成分がなければ×0点。
C「例えば素材自体を表現とするなどの表現上の価値の変化も含むこと。」(2点)
※Aを説明する他方の条件。Bとは比喩的な仕組みを作る。
①「例えば素材自体を表現とするなどの」の要素に1点。
○「素材自体を表現対象とするなどの」「素材そのものを表現してみせるような」などでも可。
×「素材自体」「表現とする」のニュアンスを持つ成分がそろっていなければ×0点。
②「表現上の価値の変化も含むこと。」の要素に1点。
○「作品自体における価値の変化も含むこと。」「作品表現上の価値の変化を含むこと。」などでも可。
×「表現上の価値の変化」「含むこと」の二成分のニュアンスががそろっていなければ×0点。
5
(三)
8点
【模範解答 例 】元々 原 価が低く (A ①1点 ) 「使用価 値」はないに等しい (A② 1 点 ) 円や軍 票 は、 (B1点) 国家の保 証 に よっ て (C ①1点 ) 表示 された「 交換 価値」と して 使用で き て い た の に、 (C ②1点 、 X ○ 1点 〈逆 説=矛 盾 を含 むこ と〉 ) その国家 が崩壊し てしまったから 。 (D1点、Y○1点〈逆説= 矛 盾 を 含 む こと 〉)
【構造点】
Xは、Bを矛盾する二条件A、Cに引き裂いて説明する〈逆説=矛盾を含むこと〉の仕組みへの評価である。ここ
では、条件Bと、条件AおよびC内の要素がそれぞれ一つ以上あれば、この仕組みの骨組みは成立しているとみな
して1点加点。
X〈逆説=矛盾を含むこと〉Aの要素+B+Cの要素○1点
Yは、傍線部を、〈A+B+C〉とDの矛盾する二成分に引き裂いて説明する〈逆説=矛盾を含むこと〉の仕組みへ
の評価である。ここではXの要件が満たされていて、かつDがあれば、この仕組みの骨組みは成立しているとみな
して〇1点加点。
Y〈逆説=矛盾を含むこと〉X+D〇1点
◎採点のポイント
※A、B、C、Dは条件同士、またA、Cは各条件内で原則的に部分採点可能である。(6点満点)
※ただし、【構造点】X・Yは、右に示した条件ないしは要素の組み合わせが成立している場合に限り加点する。
(2点満点)
A「元々原価が低く『使用価値』はないに等しい」(2点)
※条件B(後述)を説明する一方の条件。
①「元々原価が低く」の要素に1点。
○「それ自体の価値は低く」「そのものとしての原価は低く」などでも可。
×「原価」「低い」の二成分のニュアンスがそろっていなければ×0点。
②
「 『
使 用
価
値 』
は
な い
に
等 し
い 」
の 要
素
に 1
点
。
○「『使用価値』はほとんどゼロの」「有用性はほとんどない」などでも可。
×「使用価値」「ないに等しい(否定)」の二成分がそろっていなければ×0点。
B
「 円
や 軍
票 は
、 」 (
1 点
)
※話題提示の条件。
○「円や戦時中の軍票は、」「円も軍票も」「紙幣は」などでも可。
×「円」「軍票」の二成分が入っていなければ×0点。(「紙幣」と書いてある場合はそれだけで可)
C
「
国 家
の
保 証
に よ
っ て
表
示 さ
れ
た 「
交 換
価 値
」
と し
て
使 用
で き
て い
た
の に
、 」 (
2 点
)
※条件Bを説明する、Aとは矛盾する条件。
①「国家の保証によって」の要素に1点。
○「国家による価値設定によって」「国家の認定を通して」などでも可。
×「国家」「保証」の二成分のニュアンスがそろっていなければ×0点。
②「表示された「交換価値」として使用できていたのに、」の要素に1点。
○「印刷された『交換価値』として商品と交換できていたのに、」「設定された『交換価値』で使えていたの
に、」などでも可。
×「表示された『交換価値』」「使用できていた」の二成分のニュアンスがそろっていなければ×0点。
6
D「その国家が崩壊してしまったから。」(1点)
※傍線部を説明する、〈A+B+C〉とは矛盾する条件。
○「当の国家が滅びてしまったから。」「責任を持つべき国家が消滅してしまったから。」などでも可。
×「その(≒保証していた)国家」「崩壊」の二成分がそろっていなければ×0点。
7
(四)
13点
【模範解答 例 】画家 が 自らの価 値に従っ て描 いた (A ①1点) 絵画は、 (A ②1点 ) 有 用 性、 「使 用 価 値」は 低 い が 、 (B1点 ) 希少 性は高い ため (C① 1 点 ) 需要があ れば (C ② 1 点) 価格が跳 ね上がる可能性がある こ と で 、 (C ③1点 、 X ○ 1点 〈 分 析= 分 け る こ と〉 Y○1点 〈逆説=矛盾を 含 むこと 〉) 「使用価 値」が低いものほ ど (D ① 1 点 ) 「 交 換 価 値」が 急 上昇しう るという 、 (D ②1点) 資本主義の含む 矛 盾 を (D③1点) 象徴す る ものだということ 。 (1 2 0 字 ) (D④1点 、 Z○1点 〈分析=分 け る こ と 〉)
【構造点】
Xは条件C内を、C①を〈因果関係〉の〈因〉、〈C②+C③〉の〈果〉に〈分析=分けること〉する仕組みへの評
価である。ここでは、C①とC③がそろっていればこの仕組みの骨組みが成立しているとみなして1点。
X〈分析=分けること〉C①+C③○1点
Yは、条件Aを、矛盾する条件Bと条件Cに引き裂いて説明する〈逆説=矛盾を含むこと〉の仕組みへの評価であ
る。ここでは条件A内の要素が少なくとも一つ、条件B、そして条件C内の要素が少なくとも一つ入っていれば、
この仕組みの骨組みは成立しているとみなして1点加点。
Y〈逆説=矛盾を含むこと〉Aの要素+B+Cの要素○1点
Zは、「絵画」の〈A+B+C〉と、「資本主義」のDを、前者の具体的な内容が後者の抽象的な内容を「象徴」す
るように、二つの成分に〈分析=分けること〉する仕組みへの評価である。ここでは、Yが成立していて、かつD
③とD④があれば、この仕組みの骨組みは成立しているとみなして1点加点。
Z〈分析=分けること〉Y+〈D③+D④〉○1点
◎採点のポイント
※A、B、C、Dは条件同士において、またA、C、Dは各条件内においても原則的に部分採点可能である。(
10
点満点)
※ただし、【構造点】X・Y・Zは、右に示した条件ないしは要素の組み合わせが成立している場合に限り加点す
る。(3点満点)
※
「一〇〇
字以上一二〇字以内」という字数制限付きの設問であるから、字数不足・字数オーバーは採点対象外、
つまり総点0点である。
A
「
画 家
が
自 ら
の 価
値 に
従
っ て
描
い た
絵 画
は 、 」
(
2 点
)
※話題提示の条件。
①「画家が自らの価値に従って描いた」の要素に1点。
○「画家が自分の好きなように描いた」「画家が美という自分自身の価値に基づいて描いた」などでも可。
×「画家」「自らの価値に従って描いた」のニュアンスを持つ二成分がそろっていなければ×0点。
②「絵画は、」の要素に1点。
○「絵は、」「作品は」などでも可。
×「絵画」の成分が入っていなければ×0点。
B「有用性、『使用価値』は低いが、」(1点)
※Aを説明する一方の条件(マイナスの条件)。
○「『使用価値』は低いものの、」「有用性はあまりないが」などでも可。
8
×「有用性もしくは『使用価値』(有用性≒「使用価値」だからどちらか一方があればよい)」「低い」
の二成分がそろっていないと×0点。
C「希少性は高いため、需要があれば価格が跳ね上がる可能性があることで、」(3点)
※Aを説明する、Bとは矛盾する他方の条件(プラスの条件)。
①「希少性は高いため、」の要素に1点。
※C内で〈因果関係〉を構成する〈因〉の要素。
○「希少性の高さのために、」「高い希少性をもつため、」などでも可。
×「希少性」「高い」の二成分のニュアンスがそろっていないと×0点。
②「需要があれば」の要素に1点。
※C内で〈因果関係〉を構成する〈果〉の前半の要素。
○「需要によって」「需要次第で」などでも可。
×「需要があれば」の成分が入っていなければ×0点。
③「価格が跳ね上がる可能性があることで、」」の要素に1点。
○
「
価格が急上昇する可能性があることで、」「交換価値が飛躍的に上がる可能性があることで、」などでも可。
×「価格」「跳ね上がる(可能性)」の二成分のニュアンスがそろっていなければ×0点。
D
「 『
使 用
価
値 』
が 低
い も
の
ほ ど
『 交
換
価 値
』 が
急
上 昇
し う
る
と い
う 、
資
本 主
義 の
含
む 矛
盾 を
象 徴
す
る も
の だ
と い
うこと。」(4点)
※傍線部を、「絵画」の側の〈A+B+C〉とともに分けて説明する、「資本主義」の側の条件。
①
「 『
使 用
価 値
』 が
低
い も
の
ほ ど
」 の
要 素
に
1 点
。
○「有用性が低いものほど」「『使用価値』がとるに足らないものであるほど」などでも可。
×
「 『 使
用 価
値
』 」 「
低 い
」 の
二 成
分 が
そ
ろ っ
て い
な け
れ ば
×
0 点
。
②
「 『
交 換
価
値 』
が
急 上
昇
し う
る と
い う
、 」 の
要 素
に 1
点 。
○「『交換価値』が飛躍的に上がりうるという、」「『交換価値』が急激に上昇する可能性があるという」など
でも可。
×
「 『 交
換 価
値
』 」 「
急 上
昇 し
う る
」
の 二
成 分
が そ
ろ っ
て
い な
い と
× 0
点
。
③「資本主義の含む矛盾を」の要素に1点。
○「資本主義が内包する矛盾を」「資本主義が包摂する逆説を」などでも可。
×「資本主義」「矛盾」の二成分がそろっていなければ×0点。
④「象徴するものだということ。」の要素に1点。
○「具体的に表現するものだということ、」「表象するものだということ。」などでも可。
×「象徴する」のニュアンスを持つ成分がなければ×0点。
(五)
各1 点×3 = 計3点
a=装飾 b=衝撃 c=精巧
9
二 古文(文 科3 0点・理 科 2 0点)
(一) 文科ア・ 理 科 ア 3点
【模範解答 例 】あまりにすば ら しく信じがたい ものに (A 1点) 思われ (B 1 点 ) たの で 、 (C 1点)
◎採点のポイント
A【1点】あまりにめでたく不思議に→あまりにすばらしく信じがたいものに
※「家隆(宮内卿・藤原家隆・家隆朝臣・壬生の二品)には、土御門院(院・上皇・土御門上皇)の歌が」とい
う主体と対象の補いの有無は不問。
ただし、補っていて、人物が間違っている場合・誤字がある場合はAは得点できない。
※「あまりに」は「たいそう・たいへん」等、「度を超して」すばらしいことが言えていれば可。
※「めでたく」は「すばらしい・見事だ・立派だ」等は可。「美しい・喜ばしい・めでたい」等は×。
※「不思議に」は「信じがたく・意外に・思いもよらぬことに・驚くべきことに」等でも可。
あるいは「不思議に」のままでも可。
※「信じがたいほどにたいそうすばらしい」など語順を変えていても可。
※あまりに、めでたく、不思議にの三要素がなければA不可。
B【1点】おぼえ→思われ
※Aが×の場合は得点できない。ただし、誤字等で×になっている場合は得点できる。
※「おぼゆ」の意味(思われる・感じる)が不正確なものは×。「思う・お思いになる」等は×。
C【1点】ければ、→たので、
※Aが×の場合は得点できない。ただし、誤字等で×になっている場合は得点できる。(AができていればBは
できていなくてもよい)
※「過去+原因・理由」で訳されていないものは×。
10
(一) 文科イ・ 理 科 イ 3点
【 模 範解答例 】院 の御詠で あ る こと を 言 わないで 、 (A1 点 ) 何で もない 人 の作 のよう に (B 1点) 装っ て 、 (C 1点)
◎採点のポイント
A【1点】御製のよしをば言はで、→院の御詠であることを言わないで、
※「御製」は、その歌が「院の歌・院が詠んだ・院が作った」等が言えていれば可。
※「院」は「土御門院・上皇・土御門上皇」でもよく、「土御門天皇・土御門帝」でもよしとする。
「土御門」が明らかでない「天皇・帝」は×。
※「よし」は「こと」以外に「事情・いきさつ・事実」等でも可。ただし、「~とは(いわないで)」という表現
でも可とする。
※打消の接続助詞「で」(〜ないで・〜なくて・〜ずに)が正しく訳せていないものは×。
ただし、「ふせて・隠して」等となっていれば、右の訳はなくてもよい。
※御製、院、よし、言はで、すべての要素がなければA不可。
B【1点】なにとなき人の詠のやうに→何でもない人の作のように
※「なにとなき人」が「何でもない人・どうということのない人・ただの人」の意で訳せていないものは×。
「普通の人・一般の人・普通の身分の人・高貴な人ではない人」等でもよしとする。
※「詠」が「作・歌・作ったもの・詠んだもの」等の意味でとれていないものは×。「詠」のままでも可。
※「やうに」は「として」等でもよい。
※なにとなき人、詠、やうにすべての要素がなければB不可。
C【1点】もてなして、→装って、
※「もてなす」が「装う・取り扱う・つくろう・ふりをする・ふるまう」の意味で訳せていないものは×。
※「して・行って」等は×。
11
(一) 文科カ・ 理 科 エ 3点
【模範解答 例 】ま だた いそ う幼 く て (A 1点) いらっし ゃった (B 1点) 折の御事 である。 (C1 点 )
◎採点のポイント
A【1点】いまだむげにをさなくて→まだたいそう幼く
※「いまだ」「むげに」が正しく訳されていないものは×。
※「むげに」は「非常に・たいへん・ひどく・まったく」などは可。
「むやみに・やたらに」や、打消と呼応すべき「全然」は×。
※「幼くて・幼少で」等の「て・で」はなくてもよしとする。
※いまだ、むげに、をさなくの三要素がなければA不可。
B【1点】わたらせ給ひける→いらっしゃった
※「わたらせ給ふ」が補助動詞「あり」の尊敬表現(いらっしゃる)になっていないもの(「渡る・行く・来」の
尊敬表現にしかとれないもの等)は×。
※「けり」の訳(〜た)がないものは×。
C【1点】御事なり。→折の御事である。
※「御」の有無は不問。
※「折の」は「時の・頃の・際の・時分の」等でもよい。この補いがないものは×。
※断定(〜だ・〜である)の助動詞「なり」として訳されていないものは×。丁寧表現(〜です・〜でございま
す等)になっていてもよい。
※末尾が過去(〜であった)になっていてもよしとする。
12
文科
(二) ・理科
(二)
5点
【模範解答 例 】「 雲の うへに な れにし」 で (A2点) 詠み手 が 宮 中 の 生 活 に 慣 れ てい た 人 とわかる から。 (B 3 点 )
◎採点のポイント
A【2点】「雲のうへになれにし」で
※「にし」がない「雲のうへになれ」でもよい。
※「雲のうへ」はあるが、「なれにし」がない場合は【1点】。
※「雲のうへになれ」や「雲のうへ」が具体的に示されていない「句中の表現で」等は×。
※Bがない場合で「とあるから・と書かれているから・と詠まれているから」等がある場合
・ 「 雲
の う
へ に
な れ
」
と あ
る か
ら 。
【2点】
・ 「 雲
の う
へ 」
と
書 か
れ て
い る
か ら
。 【 1
点 】
※説明になっていない次のような解答は×。
・雲のうへになれにし
・雲の上だから
B【3点】詠み手が宮中の生活に慣れていた人とわかるから。
※Aが0点の場合は得点できない。ただし、誤字等で0点になっている場合は特点できる。
※1「宮中と分かるから・宮中のことだから」等、または「院を示している・天皇を表している」等があれば【1
点】。(完全に間違えた人物を書いている場合は加点しない)
※21の意がある上に「慣れている・親しんでいる・暮らしている」等の意もある場合は【2点】。
※32の意がある上に「慣れていた・親しんでいた・暮らしていた」等、過去表現になっている場合は【3点】。
13
文科
(三)
文科 のみ 5点
【模範解答 例 】私の よ うに (A 1点) それ ほど和歌 に堪能 で はな い者、 と いう 意味。 (B4 点 )
◎採点のポイント
A【1点】私のように
※Bが0点の場合は得点できない。ただし、誤字等で0点になっている場合は特点できる。
※Bが全く書かれていない「自分のこと・私のこと・編者のこと」等は×。
※「私」は「自分・編者・作者・筆者・語り手」等でもよい。
B【4点】それほど和歌に堪能ではない者、という意味。
※「それほど」の有無は不問。
※「和歌に」は「歌に・歌道に・和歌の道に・和歌を詠むことに」等でもよい。文意が通れば「に」は「を・の・
に関して」等でもよい。
これに相当する表現がない「堪能でない人」等は【2点】。
※「堪能ではない」は「達者でない・熟達(精通・練達)していない・・至らない・詳しくない・知識(能力)
がない・よくわかっていない」等でもよい。
「和歌の趣がない・和歌の趣を持たない」は文意が通らないので×。ただし、右の表現がある上で、この表現
がある場合は【3点】。
※「者」は「人・人々」等でもよい。
※文末表現は、「こと・者・人」等でもよい。
14
文科
(四)
文科 のみ 5点
【模範解答 例 】後嵯峨 院の歌が (A2点) 土御門院の 歌 に 少 し も 劣らず (B 3 点 ) 素晴らし い こ と に 感激 したから 。 (A)
◎採点のポイント
※「大納言(通方)が見せた」や「家隆が見た」という説明の有無は不問。
A【2点】後嵯峨院の歌が〜素晴らしいことに感激したから。
※「感激した」がない、「後嵯峨院の歌が素晴らしかったから」でもよい。
※「素晴らしかった」がない、「後嵯峨院の歌に感激したから」でもよい。
※「素晴らしかった」に相当する表現も「感激した」に相当する表現もない場合は×。
※「素晴らしかった」は「趣深かった・立派だった・秀逸であった」等でもよい。
※「感激した」は「感動した・胸に染みた」等でもよい。
※「後嵯峨院」は「後嵯峨上皇・当院」でもよく、「後嵯峨天皇」でもよい。
「皇子・幼帝・幼い天皇」は【1点】。
「後嵯峨」が明らかでない「院・上皇・天皇」等は×。
歌の主である「後嵯峨院(後嵯峨上皇・当院・後嵯峨天皇・△皇子・幼帝・幼い天皇)」が明らかでない「歌が
素晴らしいことに感激したから。」は×。
B【3点】土御門院の歌に少しも劣らず
※1「土御門院」との比較で「劣っていない・似ている」の意、もしくは、「土御門上皇を偲ばせる」の意が言
えていれば【2点】。
※2右の意があり、それが「歌」のことであると分かる「土御門院の歌に少しも劣らず」「土御門上皇の歌を偲
ばせるから」等は【3点】
※「土御門院」は「土御門上皇・故院」でもよく、「土御門天皇」でもよしとする。
※「土御門院(土御門上皇・故院・土御門天皇)」がなく「父院(父帝・父)」となっている場合は1・2からマ
イナス1点。
※「歌」は「百首歌」でもよしとする。
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文科
(五) ・理科
(三)
6点
【模範解答 例 】通方 が (A 3点 ) 存命なら、 (B1点 ) 今の 後嵯 峨 院 の 歌 を さ ぞ賞賛 し 感 激 した だ ろ う と いう こ と 。(C 2 点 )
◎採点のポイント
※説明問題なので通方に対する敬意はいらないが、その有無は不問とする。
A【3点】通方が
※Cが0点の場合は得点できない。ただし、誤字等で0点になっている場合は特点できる。
※「通方」は「源通方・大納言・御めのとの大納言」でもよい。「かの卿」のままは×。
※「宮内卿(家隆)・故院(土御門院)」等、人物が違っている場合ば×。
B【1点】存命なら、
※Aが0点の場合は得点できない。ただし、誤字等で0点になっている場合は特点できる。
※「生きていたら」等でもよい。
※右の意がない「もし歌を見たら」等は×。
C【2点】今の後嵯峨院の歌をさぞ賞賛し感激しただろうということ。
※「後嵯峨院」は「後嵯峨上皇・当院」でもよく、「後嵯峨天皇」でもよしとする。
「皇子・幼帝・幼い天皇・息子」や、「後嵯峨」が明らかでない「院・上皇・天皇」等は×。
※「今の(現在の・成長した)」か、「歌を(和歌を)」のいずれかがない場合は【1点】。両方ともない場合は×。
※「さぞ」に相当する表現(どんなにか・さぞかし等)の有無は不問。
※「賞賛し感激した」は「賞讃した」「感激した」のいずれかに相当する表現が一つあればよい。
※「だろう・にちがいない」(反実仮想の推量部分の意味)がない場合は×。
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三 漢文 (文科30点 理科20点)
(一)
a 2点
【模範解答 例 】認め る につい て ( 評 価 す る の に)
※「認めるについて」、「認めるにあたって(は)」、「認めるに際して」、「評価するのに」、「評価するにあた
って(は)」などは○(2点)
※「認める」、「評価する」などは△(1点)
※「許す」のままは×(0点)
(一)
b 2点
【模範解答 例 】性急 で (急ぐ ば かり で )
※「性急で」、「急ぐばかりで」、「急いで(いて)」などは○(2点)
※「急ぐ」、「せく」などは△(1点)
※「急だ」、「忙しく(て)」、「こだわって」などは×(0点)
(一)
c 2点
【模範解答 例 】いつ ま で も (永 遠に)
※「いつまでも」、「永遠(永久)に」、「ずっと」、「とこしえに」などは○(2点)
※「長く」は△(1点)
※「長(た)けている」は×(0点)
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(二)
7点
【模範解答 例 】孔明が頼み としたのは徳 では なく力 で あるから、 (A 3点) 孔明に王 者 を 補佐 する 才がある とは言えない。 (B4 点 )
A「(孔明)其の自ら恃む所の者は、力に在りて徳に在らず」の要素……3点
※「孔明が、徳でなく力によるやり方をした」ことが言えればよい。
※「孔明は力に頼ったので」のように、対比する「徳によらず」の要素がないものは△(
- 1点)とする。
※「孔明が(は)」は欠けていても可。
B孔明に「王佐の才」があるとは言えないこと……4点
※「王佐の才」をそのまま用いているものは△(
- 2点)とする。
※「先儒」たちの、孔明は「王佐の才」があるという評価に対する否定になっていることが必要。疑問でも
可とする。
※「孔明に王者を補佐する才があったとは言えない」、「王者を補佐する才能(能力)があったという評価は
あたらない」、「王者を補佐する才があったかは疑問である」などは○(4点)。
※「王者を補佐する才」が「王を」になっているものは△(
- 2点)とする。
※「~は疑問である」はよいが、「まだわからない」、「よくわからない」などは△(
- 3点)とする。
※孔明自身を「王者ではなく覇者である」のようにしているものは×(
- 4点)
。
18
(三) 文科の
み 10 点
【模範解答 例 】孔明が、 (A2 点 ) 根本で あ る 徳 に (B 3点) 立ち 返っ て世を 治 めよ うと せ ず 、 (C 1点 ) 末 節 である力に頼って 敵を倒 すこと (D 3 点 ) ばかりに目 を 奪 われていた こ と 。 (E 1点)
A「誰が」の答=「孔明が」……2点
※2点の配点としておくが、ここが間違っていたら全体×(0点)
B「本」の言い換えと内容(徳)……3点
※「本」の言い換えは、「根本」「基本」「本望」「本来大切なこと(もの)」など○。言い換えに相当する表
現がないものは△(
- 2点)
※「徳」が明言されていないものは△(
- 2点)
C「反るを知らず」に相当する要素……1点
※ 「 (
~ に
) 立 ち 返 ろ う と せ ず
」 、 「 (
~ を
) 省 み ず
」 、 「 (
~ に よ っ て
) 世 を 治 め ず
」 、 「 (
~
) を
軽 ん じ て
」 な ど
○
D「末」の言い換えと内容(力)……3点
※「末」の言い換えは、「末節」「拠るべきでない(拠ってはならない)もの」「大切でない(もの)」など○。
言い換えに相当する表現がないものは△(
- 2点)
※「力」が明言されていないものは△(
- 2点)
※「~に頼って敵を倒すこと」の要素は「~による政治をする」のようでもよいし、なくても可とする。
E「唯だ……視る」に相当する要素……1点
※「~ばかりに目を奪われていた」、「~だけに頼っていた」、「~による政治を行っていた」、「~で戦うこと
ばかり考えていた」など○
※「~によって戦っていた」は×
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(四)
(理科 は
(三) ) 文理 とも7点
【模範解答 例 】ま だ漢 を再興 す べ き 時 で ないの な らば、 (A 3点 ) ただ蜀 の 民 の 生活を 安 定させ る こ と だけを 考 え る べき な の で ある。 (B4点)
A「否則(しからずんばすなはち)」の内容……3点
※「まだ漢(漢家・漢王朝)を再興すべき時でないのならば」という内容があること。
※Bへのつながりが仮定の表現になっていること。
※「戦いを起こすべきでないときは」「天下が漢氏のものでないのならば」「漢を再興すべきならば」など×
B「唯だ当に吾が民を安んずべきのみ」の訳……4点
※「唯だ……のみ」の限定の要素1点
※「当に……べし」の「~(す)べきだ」の要素1点
※「吾が民」の内容の要素1点
※「安んず」の解釈の要素1点
※「唯だ……のみ」は「~だけ」があれば分党に「ただ」がなくても可。
※「当に……べし」は「~すべきだ」であるが、「~したほうがよい」とか、「~しなければならない」でも
よい。「~することができる」は×
※「吾が民」は「蜀の民(人民)」あるいは「自国の民」。ただの「民」「自分の民」は×
※「安んず」は「生活を安定させる」「安泰をはかる」など。「安全にする」「安心させる」などは×
20
四 現代 文 随筆(文科のみ 20点)
(一)
5点
【模範解答 例 】犀星に馬込の道 を私のた めに案 内 して もら って いる光 栄 に 加 え、 (A 1点) 犀星の特 異 で 鋭い文 学的 な眼が傍にある と い う 意識が、 (B1点、 X ○1点〈 分析=分ける こと 〉) 道の 光景 を見た こ との ないもの に し ていた こ と。 (C 1点、 Y ○1点 〈 総 合 =ま とめる こ と〉 )
【構造点】
Xは、傍線部の説明を、A、Bの矛盾しない二条件に〈分析=分けること〉する仕組みへの評価である。二条件が
そろっているとみなされれば1点加点。
X〈分析=分けること〉A+B○1点
Yは、A、BをCに〈総合=まとめること〉する仕組みへの評価である。A、B、Cの三条件がそろっているとみ
なされれば1点加点。
Y〈総合=まとめること〉A+B+C○1点
◎採点のポイント
※A、B、Cは条件間において原則的に部分採点可能である。(3点満点)
※ただし、【構造点】X・Yは、右に示した要件を満たしている場合に限り加点する。(2点満点)
A
「
犀 星
に 馬
込 の
道
を 私
の
た め
に
案 内
し て
も ら
っ
て い
る
光 栄
に 加
え 、 」
(
1 点
)
※傍線部を説明する一方の条件。
○「犀星が私一人だけのために馬込の道を案内してくれているという光栄とともに、」「馬込の道を私だけのた
めに犀星に案内してもらっている幸福感に加えて、」などでも可。
×「犀星に馬込の道を私のために案内してもらっている」「光栄」の二成分がないと×0点。
B
「
犀 星
の
特 異
で 鋭
い 文
学
的 な
眼 が
傍 に
あ
る と
い
う 意
識 が
、 」 (
1
点 )
※傍線部を説明する他方の条件。
○「特異な鋭さのある犀星の文学的な眼がすぐ傍にあるという意識が、」「特異で鋭い犀星の文学上の眼が傍で
働いているという意識が、」などでも可。
×「犀星の特異で鋭い文学的な眼」「傍にあるという意識」の二成分のニュアンスがそろっていなければ×0
点。
C「道の光景を見たことのないものにしていたこと。」(1点)
※A、Bをまとめて結論づける条件。
○「道をまだ見たことのない風景として浮かび上がらせていたこと。」「道の景色をまだみたことのない世界と
して現前させていたこと。」などでも可。
×「道の光景」「見たことのないもの」の二成分のニュアンスがそろっていなければ×0点。
21
(二)
4点
【模範解答 例 】犀星 は 、昔の貧 乏 と 、 (A ①1点) 有名のなかった自分 を 、頭の中から 離す ことがで き な かっ たし 、 (A ②1点 ) また母の な い子供 で あ っ た哀しみ をいつも 心の底に抱 い ていたか ら 。 (B1点、 X ○1点〈 分析=分ける こと 〉)
【構造点】
Xは傍線部を、矛盾しないA、Bの二条件に〈分析=分けること〉して説明する仕組みへの評価である。ここ
では、条件Aの要素が少なくとも一つ入っており、かつ条件Bがあれば、この仕組みの骨組みは成立している
とみなして1点加点。
X〈分析=分けること〉Aの要素+B○1点
◎採点のポイント
※A、Bは条件間において、またAは条件内において原則的に部分採点可能である。(3点満点)
※ただし、【構造点】Xは、右に示した要件を満たしている場合に限り加点する。(1点満点)
A「犀星は、昔の貧乏と、有名のなかった自分を、頭の中から離すことが出来なかったし、」(2点)
※傍線部を説明する一方の条件。
①「犀星は、昔の貧乏と、」の要素に1点。
○「犀星は、昔の貧しさと」「犀星は、昔貧しさの中にいたことと」などでも可。
×「犀星」「昔の貧乏」の二成分がそろっていなければ×0点。
②「有名のなかった自分を、頭の中から離すことが出来なかったし、」の要素に1点。
○「有名ではなかった自分を、頭の中から消し去ることが出来なかったし、」「有名のなかった自分を忘
れ去ることができなかったし、」「無名であったころの自分を忘れ去ることはできなかったし、」など
でも可。
×「有名のなかった自分」「頭の中から離すことができなかった」のニュアンスの二成分がそろってい
なければ×0点。
B「また母のない子供であった哀しみをいつも心の底に抱いていたから。」(1点)
※傍線部を説明する、Aとは矛盾しない他方の条件。
〇「また母のない子であったことの哀しみを胸に抱き続けてきたから。」「また母のいない子どもであった
哀しみを心の奥に常に抱いていたから」などでも可。
×「母のない子供であった哀しみ」「こころの底に抱いていた」の二成分がそろっていなければ×0点。
22
(三)
6点
【模範解答例 】若い老書生 に見え て い た 犀星が 、 (A 1点) 痩せて 立 ち上がれずに金魚を覗 き込む 姿 に、 (B1点X ○ 1点 〈逆 説=矛盾 を含 むこと〉 ) 幼少からの貧しさと母への悲慕 がもたらした「あわれ」 を 感じて、 (C ①1 点) 深く悲 し む気 持 ち 。 (C ②○1 点 、Y ○1 点〈総 合 = ま とめる こ と〉 )
【構造点】
Xは、傍線部を、矛盾するA、Bの二条件に引き裂いて説明する〈逆説=矛盾を含むこと〉の仕組みへの評価
である。A、Bがそろっていれば1点加点。
X〈逆説=矛盾を含むこと〉A+B○1点
Yは、A、Bの二条件を条件Cに〈総合=まとめること〉する仕組みへの評価である。ここでは、条件
A、Bと、条件C内の要素が少なくとも一つ入っていれば、この仕組みの骨組みは成立しているとみな
して1点加点。
Y〈総合=まとめること〉A+B+Cの要素○1点
◎採点のポイント
※A、B、Cは条件間において、また条件Cについては内部においても原則的に部分採点可能である。(4
点満点)
※ただし、【構造点】X・Yは、右に示した要件を満たしている場合に限り加点する。(2点満点)
A「若い老書生に見えていた犀星が、」(1点)
※傍線部を説明するための一方の条件。ちなみに「若い老書生」の部分に小さな〈逆説=矛盾を含むこと〉
の仕組みを含むがここでは採点対象とはしない。
○「老いてはいるものの若い書生のように見えていた犀星が、」「老いてはいても若い書生のように行動す
る犀星が、」などでも可。
×「若い老書生に見えていた」「犀星」の二成分がそろっていなければ×0点。
B「痩せて立ち上がれずに金魚を覗き込む姿に、」(1点)
※傍線部を説明するための、Aとは矛盾する他方の条件条。
○「痩せて力なく横座りのまま金魚に見入る姿に、」「痩せすぎて立ち上がれぬままに金魚を覗き込む後姿
に、」などでも可。
×
「痩
せて立ち上がれずに」「金魚をのぞき込む姿」の二成分のニュアンスがそろっていなければ×0点。
C「幼少からの貧しさと母への悲慕がもたらした『あわれ』を感じて、深く悲しむ気持ち。」(2点)
※A、Bをまとめて結論的な心情に至るという条件。
①「幼少からの貧しさと母への悲慕がもたらした『あわれ』を感じて、」の要素に1点。
○「小さい頃からの貧しさと死んだ母への悲慕が湛えさせた『あわれ』を感じさせて、」「貧しさと死ん
だ母への悲慕のために子供の時から溜め込んできた『あわれ』を感じて、」などでも可。
×「幼少からの貧しさ」「母への悲慕」「もたらした」「『あわれ』を感じて」の四成分のニュアンスがそ
ろっていなければ×0点。
23
(四)
5点
【模範解答 例 】犀星 は 、文学を我 が もの とし、したた かさを示す一方 で 、 (A1 点 ) 母への悲慕 と 女への 思 慕と 、そ こに蓄えられた「あわれ」 で 一 杯の、 (B1点、 X ○1点 〈 逆説=矛盾 を 含 む こと〉 哀し みの人間で あ った と 思 っている。 (C ○1点 、 Y ○ 1点 〈総 合=ま と める こ と 〉)
【構造点】
Xは、傍線部をA、Bの矛盾する二条件に引き裂いて説明する〈逆説=矛盾を含むこと〉の仕組みへの評価である。
A、Bがそろっていればこの仕組みは自動的に成立していると判断し1点加点。
X〈逆説=矛盾を含むこと〉A+B○1点
Yは、A、BをCに〈総合=まとめること〉して結論づける仕組みへの評価である。A、B、Cがそろっていれば、
この仕組みは自動的に成立していると判断し1点加点。
Y〈総合=まとめること〉A+B+C〇1点
◎採点のポイント
※A、B、Cは条件間において部分採点可能である。(3点満点)
※ただし、【構造点】X・Yは、右に示した要件を満たしている場合に限り加点する。(2点満点)
A「犀星は、文学を我がものとし、したたかさを示す一方で、」(1点)
※傍線部を説明するための一方の条件。
○「犀星は、文学を征服し、そこにしたたかさを示したが、」「犀星は、文学を己のものとし、そこでしたたか
さを示したが、」などでも可。
×「犀星」「文学を我がもののとし」「したたかさを示す」の三成分がそろっていなければ×0点。
B「母への悲慕と女への思慕と、そこに蓄えら
れ
た 『
あ わ
れ 』
で
一 杯
の
、 」 (
1
点 )
※傍線部を説明する、Aとは矛盾する他方の条件。Aのプラスのニュアンスに対するマイナスのニュアンスを
帯びる。
○「母への悲慕と女への思慕と、そこに溜られてきた『あわれ』で一杯の、」「母への悲慕と女への思慕によっ
て蓄積されてきた『あわれ』で満たされた」などでも可。
×「母への悲慕」「女への思慕」「蓄えられた『あわれ』で一杯」の三成分がそろっていなければ×0点。
C「哀しみの人間であったと思っている。」(1点)
※A、Bを〈総合=まとめること〉して結論づける条件。
○
「一人
の哀しみの人間であったと思っている。」「哀しみに浸された人間であったと思っている。」などでも可。
×「哀しみの人間であった(と思っている)」の成分が入っていなければ×0点。