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老化におけるオートファジーとサーカディアンリズムの協奏

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448 化学と生物 Vol. 55, No. 7, 2017

老化におけるオートファジーとサーカディアンリズムの協奏

オートファジーはどのようにして老化に関与しているのか?

記憶に新しい2016年ノーベル賞.東京工業大学の大 隅良典名誉教授がオートファジーを発見したことにより 受賞された.オートファジーは近年,生命の基本的なシ ステムとしてだけでなく,健康や老化,さまざまな疾患 に関与する現象として注目されている.

細胞内では多くのタンパク質が作られるが,その役割 を果たすと,アミノ酸に分解され,再利用される.その 経路は大きく分けて2つあり,一つがタンパク質をユビ キチンで標識し,プロテアソームで分解するユビキチ ン・プロテアソーム系,もう一つが細胞内を脂質膜で区 画化し,複数のタンパク質を一度に分解するバルク分解 経路オートファジーである.オートファジーは特に細胞 内に蓄積した異常タンパク質や不要になったオルガネ ラ,侵入した病原性微生物などを分解する役割を担って いる.その保存性は高く,酵母からヒトまで広く保存さ れており,ヒトにおけるオートファジーの異常はがん,

アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾 患,筋ジストロフィーなどの筋疾患,クローン病などの 消化器疾患,がんなどさまざまな疾患と関与することが 報告されている.そのため,真核細胞の基本的,かつ重 要な機構だと考えられている.

オートファジーの進行過程としては以下のような経路 をたどる.細胞が栄養の飢餓,不要タンパク質やオルガ ネラの蓄積,病原性微生物の侵入などのストレスにさら されると,隔離膜と呼ばれる脂質二重膜が細胞質内の不 要な物質を取り囲み,オートファゴソームと呼ばれる小 胞を形成する.その後,リソソームと融合し,オートリ ソソームと呼ばれる状態となり,膜内の物質を分解す る.

これまでの研究により,ヒトにおけるオートファジー はULK1複合体(Atg13, Atg101, ULK1, FIP200)とタ ンパク質キナーゼmTOR,隔離膜伸長に関与するLC3 を中心とするAtg因子群により制御されていることが 知られている.通常,mTORがAtg13とULK1をリン 酸化し,オートファジーを抑制しているが,飢餓ストレ ス条件下ではmTORが不活性化され,ULK1複合体の リン酸化状態が変化する.そしてLC3-Iがリン脂質であ るフォスファチジルエタノールアミンと結合し,LC3-II

となり,Atg反応系により形成される隔離膜に輸送され ることでオートファジーが進行する.

現在,日本を含む世界中の国々が急速に高齢化社会に 向かいつつあり,いかに健康的に長生きをするかという ことが課題となっている.そのため,老化のメカニズム を解明し,なぜ老化が起こるのか,また老化を食い止め るためにはどうしたら良いのかという研究が重要となっ てきている.この状況において,細胞内の不要タンパク 質リサイクリング機構であるオートファジーが老化と関 連性があることが近年になり報告されてきている.特に 注目されてきたのが,加齢によるミトコンドリアのオー トファジーであるマイトファジー活性の低下,そして長 寿遺伝子であるSirt1との関連性である.

ミトコンドリアは細胞内でATPを生み出す重要なオ ルガネラだが,その機能が低下すると,膜電位を保つこ とができなくなり,ATPを産生する反応で生み出され る活性酸素がミトコンドリアから放出されるようにな る.通常,このようなミトコンドリアはマイトファジー により取り除かれ,細胞の恒常性が保たれているが,マ イトファジー活性が低下すると,異常なミトコンドリア が蓄積し,老化の原因となる(1)

Sirt1はヒストン脱アセチル化酵素であり,遺伝子発 現の調節を行うことで細胞の分化やエネルギーの恒常性 の維持,DNA損傷の修復,寿命の伸長,加齢に伴う疾 患などに関与していると考えられている.オートファ ジーとの関連性としては,長寿関連因子であるFoxO1,

免疫反応や炎症反応に関与するNF-

κ

B,腫瘍形成抑制 因子であるp53などの転写因子がSirt1により脱アセチ ル化され,オートファジーが活性化されると同時に,

ATG5, ATG7, ATG8が脱アセチル化されることにより オートファジーを誘導することが報告されている(2)

このように老化とオートファジーの関連性が報告され て い る な か,2016年 に はKalfalahら が,オ ー ト フ ァ ジーは体内時計であるサーカディアンリズムを司る遺伝 子 や の発現と関連があるという興味深い 論 文 を 発 表 し た(3).サ ー カ デ ィ ア ン リ ズ ム は , 

,  ,  などの遺伝子発現によるネガ ティブフィードバックループ機構が提唱されている.そ

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化学と生物 Vol. 55, No. 7, 2017

の機構としては, と は と の

負の転写因子であるため,この2つの遺伝子の発現量が 増加すると, と の発現を抑制する.ま

た と は と の正の転写因子で

あるため, と の減少に伴い, と の発現量が低下する.すると今度は と の発現量が増加し, と の遺伝子量が 増加するという仕組みである.

彼らの論文では,ヒトの皮膚の線維芽細胞において加 齢に伴い の発現量の増加と ,  の発現 量の減少,さらにオートファジーを進行させるリン脂質 修飾されたLC3(LC3-II)の量が減少していることを明 らかにしている.その関連性のメカニズムを明らかにす るため,マウスの皮膚線維芽細胞であるNIH3T3細胞の

,または をノックダウンする実験を行っ ている.その結果, のノックダウンではLC3-II の量に変化は見られなかったが, をノックダウン では,LC3-IIの量が有意に減少することから, が LC3-IIの量,すなわちオートファジーの進行をコント ロールしていることが明らかとされた.さらには線虫の ホモログである を過剰発現させた場合,線 虫の寿命は有意に延び,ノックダウンすると線虫のLC3 ホモログであるLGG-1の異常な蓄積,そして寿命が極端 に短くなるというということから,オートファジーと サーカディアンリズム,そして寿命に関連性があること

が示唆された.

ヒトにとって基本的な機構であるオートファジーが健 康や寿命に関連していることは想像に難くないが,まだ まだ不明な点も多く存在しており,多くの研究が世界中 で進められている.オートファジーがかかわる経路の全 容が明らかになることにより,より健康的で長寿な世界 に貢献に結びつくと期待される.

  1)  G. Twig, A. Elorza, A. J. Molina, H. Mohamed, J. D. Wik- strom, G. Walzer, L. Stiles, S. E. Haigh, S. Katz, G. Las 

:  , 27, 433 (2008).

  2)  G. Qiu, X. Li, X. Che, C. Wei, S. He, J. Lu, Z. Jia, K. Pang 

& L. Fan:  , 589, 2034 (2015).

  3)  F. Kalfalah, L. Janke, A. Schiavi, J. Tigges, A. Ix, N. Ven- tura, F. Boege & H. Reinke:  , 8, 1876 (2016).

(鈴木博紀,イムラ・ジャパン株式会社)

プロフィール

鈴木 博紀(Hironori SUZUKI)

<略歴>2005年名城大学農学部応用生物 科学科卒業/2010年名古屋大学大学院生 命農学研究科博士課程修了/同年高エネル ギー加速器研究機構物質科学研究所構造生 物学研究センター研究員/2012年Univer- sity of Canterbury Postdoctoral Fellow/

2014年イムラ・ジャパン株式会社研究員,

現在に至る<研究テーマと抱負>バイオ技 術の産業・工業への応用と実用化の研究

<趣味>グルメ探索,旅行

Copyright © 2017 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.55.448

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演者略歴 氏名 小林弥生 (こばやし やよい) 平成9年3月 弘前大学 教育学部 中学校教員養成課程理科専攻 卒業 平成11年3月 北海道大学大学院 地球環境科学研究科 修士課程 修了 平成14年9月 千葉大学大学院 薬学研究科博士後期課程(総合薬品科学専攻)修了 平成14年10月 財団法人長寿科学振興財団 リサーチ・レジデント (国立環境研究所