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荒々しい星か」という問い 掛けが、冒頭 - 日本国際問題研究所

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Academic year: 2023

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ある方の講演で「地球という星の本質は優しい星か、荒々しい星か」という問い 掛けが、冒頭にあった。その方の見解は地球は基本的に荒々しい星だということで あった。

その惑星の上で最も栄えた人類は安定を求めて試行錯誤を繰り返してきたが、18 世紀、イギリスの産業革命に端を発する工業化がもたらしたシステム、メカニズム が今日まで地球上の安定化に最も長く寄与してきた。それが人類の内外から、新興 国の台頭、グローバルな諸問題の生起というかたちでチャレンジを受けているのが 現在の姿である。そのなかで日本は日本モデルを如何に構築し、確立させていくべ きか云々と続くのであるが、私もこの考え方に同感する。

そして、今日まで荒々しい地球上で安定した秩序を維持するために第

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次世界大 戦後、第

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次世界大戦前からアメリカが果たしてきた役割には巨大なものがあった ことは間違いない。

そのような「超大国」アメリカの大統領選挙は世界の広汎な関心を呼ぶ。ひとつ には、アメリカの動向が世界の政治、経済、安全保障等に及ぼす影響如何という観 点からの関心であり、一方には

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年に

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回、同年に開催されるオリンピック同様、

「金メダル」の行方を追う野次馬的関心もある。現場でみる大統領選挙の党大会の規 模は大きく、スーパーボウルやワールドシリーズと同じ熱狂ぶりと色彩(赤青白)の 波である。壮大なお祭りだ。

そこにはアメリカの国柄が顕われる。

アメリカは永年そこで勤務したからといって、それだけで「アメリカ通」になる ことを許すような国ではない。それでも、アメリカに在勤したものの実感としてま ま思うところは、私にもないではない。

ひとつは、アメリカは超大国であっても、そこに帰るべき神話の故郷をもたない 国だということだ。

朝河貫一教授(1873―1948年)がつとに述べているように、「〔米国は〕民としては 過去欧州における経歴極めて古けれども、国としてはわずかに百三十年前〔筆者注:

国際問題 No. 619(2013年3月)1

◎ 巻 頭 エ ッ セ イ ◎

Kato Ryozo

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現在では二百三十数年〕新天地に建設せられたる新国」であり、それ故に伝説に乏し く、伝説めいたものがあっても多くは「人智の推究し得べき」事実にとどまり、「未 だ感情に孵化(純化)せられたる神秘冒すべからざる境遇」に達しない。従ってア メリカは「現在価値」に生きるほかない国である。

朝河教授は「暗々裡に国民の感情を構成する伝説」に乏しい民主国として、アメ リカは「人民自ら大統領を選びてこれに国事を委任し、かつその行為を監督批評せ ざるべからざる国体なり」、故にアメリカが自らに信をおく根本は「実に人民の智見 にあり。国民の智力、反省力を統合して……始めて国の機関を運転するを得べし。

これ米人が自国を批評するの、自由自在なる根本の理由なりと信ず」と述べる。

アメリカはあらゆる間違いを冒すが、最後は正しい決断をする、とのチャーチル の評もここら辺に関わりがあるのであろう。

そうしたアメリカを一体として束ねるのは価値観であり、従ってそれは神棚に祀 って毎朝拝む類いのものではなく、それが挑戦を受けたときはその回復・維持のた めにあらゆる力を用いて対抗するという意思と決意を伴うものである。

**

その国政を委される大統領は私の限られた範囲内で観察する限り、実生活たるや 想像を超えて多忙な人である。

大統領には

2つの側面がある。ひとつは国家元首

(大統領職、PRESIDECY)の側面、

今ひとつは行政の長(個々人としての大統領、PRESIDENTS)の側面である。

個々の

PRESIDENT

に対する批評、批判にアメリカ人は寛容であるが、それが部 外者からの

PRESIDENCYに対する侮辱と受け取られると強烈な反発を受ける。国

家的危機に際しては、「大統領の下に結集せよ」(RALLY AROUND THE PRESIDENT)

という心理が超党派で働くのがアメリカであるが、この場合は時の

PRESIDENT

PRESIDENCYがぴったり重なるのだと思われる。

もうひとつの特徴はアメリカは中心が

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つある(BINARY)国ということである。

二軸型とでも言うべきか。

あまたの例のなかから選び出せば、政党は民主党と共和党の

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つである(正確に言 えば、最初の「民主党」大統領は1829年のアンドルー・ジャクソンであり、初代「共和党」

大統領は1861年のエイブラハム・リンカーンであるが、党名はともかく2党が拮抗する実 態は変わらない)。アメリカのように人種的、宗教的、文化的に多様な国なら連邦、

州レベルで多数の党が乱立してもおかしくないと思うが現実に

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つであり、第三党 の芽は大きくならない。

そして、民主党、共和党がそれぞれ一貫した基本政策をとってきたかというと必 ずしもそうではない。1861年第

16代大統領となったリンカーンは、大規模な公共事

業、高税、奴隷解放を標榜し、当時の東海岸の各大学で人気の高い大統領だった。

巻頭エッセイアメリカ大統領選に寄せて

国際問題 No. 619(2013年3月)2

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「政府は問題を解決しない。否、政府こそが問題なのだ」という発言に象徴される第

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代の同じく共和党のロナルド・レーガン大統領の基本政策とは方向性がほとんど 正反対である。現在のオバマ大統領(第44代、民主党)の政策は相対的に言えばレー ガンよりもリンカーンに近いと言えよう。

このように、一定期の間に軸が入れ替わるのだ。

もとより、これが恣意的な転換だということではない。それは

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つの政党がその 時代時代の要請にどう応えるか模索するうちに起こった変化である。あまたの政治 的課題に

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つの党は解答をもたなくてはならない。そうした諸課題について当然、

時代を背景とした優先順位付けがなされ、その優先課題について国民に受容される 政策を打ち出したほうが選挙に勝つ。その繰り返しの間にいつか

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党の政策の方向 性がクロスすることがあるということなのであろう。

別の側面から言えば、アメリカという国自身が変動して止まない国ということが 言えよう。

日本には民主党、共和党に対する既成観念の如きものがある。それはすべて間違 いということはないが、「共和党イコール保守イコール親日」というほど簡単な図式 ではない。例えばアメリカの「保守」と言っても三種ほどある。国防安全保障面の 保守、社会政策面の保守、財政面の保守がそれであり、これと所属党派、対日観な どを掛け合わせれば幾通りもの組み合わせができる。

昨年12月に逝去したダニエル・イノウエ上院議員は特に晩年、強力な対日関係重 視派だったが、もとより彼は民主党の重鎮、領袖だった。

ブッシュ第

43代共和党大統領の下、

「ネオコン(ネオコンサバティブ)」という言葉 が紙面を賑わせ、それはおおかた否定的な響きを伴っていたが、ネオコンとされる 人士の多くの出自は民主党であり、当時彼らは概して親日派であった。

***

閑話休題。

アメリカの国防政策、対外政策をみると、アメリカには

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つの顔がある。大西洋 を向いた顔、太平洋を向いた顔、西半球を向いた顔である。

冷戦中は大西洋を向いた顔の比重が大きかったが、その後、日本、中国が主要プ レイヤーとなるにつれて太平洋を向いた顔のウエイトが増し、現在はヒスパニック 系人口の顕著な増加もあって西半球を向いた顔のウエイトが増大している。

アメリカの人口動態ひとつとってもそれがアメリカの国内政治(大統領選、北東か ら南へのパワーシフト)、外交、安保、経済・エネルギー政策、そして、文化、教育、

宗教、社会面に今後如何なる影響をもたらすかにわかに判じがたいとはいえ、必ず や相応の変化をもたらさないはずはない。

そうしたなかで、これまでのところ大統領選挙の仕組みは変わっていない。紙数

巻頭エッセイアメリカ大統領選に寄せて

国際問題 No. 619(2013年3月)3

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がないので省略するが、大統領選挙にしても、上院議員制度(各州一律2名)にして もアメリカ流の味のあるシステムだと思う。

変動を続けて止むことのないアメリカ、そのダイナミズム。そこで生ずる諸々の イシューの処理の責任・責務をわかりやすく

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つの党に集約して負わせ、変化すべ きアメリカ、変化せざるべきアメリカという観点から総括し、総合評価を下し、い ずれかの党から次の大統領を選ぶ。その任期として

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年というのはアメリカにはち ょうどよい長さなのかもしれない。

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いずれにしても、地球という本質的に荒々しい惑星の上で、その荒々しさと対抗 し、人類の将来を安定的に確保するシステムを考案し、構築し、維持していくため にはアメリカのような国の底力とリーダーシップはやはり必要不可欠である。そし て、そのアメリカが現実に如何なるアメリカであるかを

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年ごとに(その間の長いプ ロセスを含めると不断に)透明感をもって内外に示すのがアメリカの大統領選挙なの ではないかと私は感じている次第である。

巻頭エッセイアメリカ大統領選に寄せて

国際問題 No. 619(2013年3月)4

かとう・りょうぞう 元駐米大使

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