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遺伝子探索による耐熱性キチン分解酵素の開発 - J-Stage

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化学と生物 Vol. 50, No. 10, 2012

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今日の話題

遺伝子探索による耐熱性キチン分解酵素の開発

構造学的アプローチによる機能解明

キチンは地球上でセルロースに次ぐ生産量を占めるバ イオマス資源である.キチンの分解産物であるグルコサ ミンには関節痛改善や美肌効果といった優れた特性が見 いだされており,近年食品や医薬品といった幅広い分野 に用いられている.ゆえに,カニやエビの大量投棄され ている甲殻を構成する結晶性キチンを効率よく分解でき るキチン分解酵素を発見・開発できればキチン系バイオ マスの有効利用に役立つと考えられる.自然界に存在す るさまざまな微生物の未利用遺伝子の中で,100℃近い 高温環境で生育できる超好熱菌由来の酵素はたいへん高 い安定性を有し,産業用酵素としての可能性を秘めてい る.しかしながら超好熱菌由来のキチン分解酵素群に関 する報告は,田中らによる超好熱菌

の遺伝子および酵素学的性質に関する報告 のみであった(1).ここでは,超好熱菌由来のキチン分解 酵素について,最近の知見を紹介する.

 のキチン代謝経路は既知のものと大 きく異なる(図1-A).すなわち,キチナーゼによるキ チン分解①は他の生物でも見られるが,次の,2糖の部 分的脱アセチル化②, -アセチルグルコサミンとグルコ

サミンへの水解③,そして, -アセチルグルコサミンの 脱アセチル化反応②,は新たに見いだされた代謝経路で ある.では,他の超好熱菌も同じ代謝経路を利用してい るのか? また,各経路の詳細な反応機構はどのように なっているのであろうか?

近縁の超好熱菌 属に着目すると,①のキ チナーゼ遺伝子に相当する配列が

ゲノム上にも見いだされる.しかしながら,この遺伝子 はゲノム上でフレームシフトを起こして,自然界では機 能していない.おそらく進化の過程で不要となり休眠状 態となったのであろう.このフレームのギャップを遺伝 子工学的手法で合わせると人工キチナーゼ遺伝子 ( - ChiA)を得ることができる(2, 3).そして,この遺伝子を 発現させると,至適温度100℃で,優れた耐熱性を有 し,自然界で大半を占める

α

型結晶性キチンを効率的に 分解できるキチナーゼを得ることができる. -ChiAは 全長1,075残基からなり,分子内に2つの触媒ドメイン 

(AD1, AD2) と2つ の キ チ ン 結 合 ド メ イ ン (ChBD1,  ChBD2) が存在する(図1-B).基質との結合は,他の 生物由来キチン結合ドメイン同様に,タンパク質表面上

図1超好熱菌のキチン代謝経路お よ び 由 来 キ チ ナ ー ゼ 

-ChiA の構造

(A) 超好熱菌 にお

けるキチン代謝経路.近縁の超好熱 においても同じ代謝経 路を利用しているが,①のキチナー ゼはゲノム上でフレームシフトを起 こしているので自然界では発現して い な い.(B)  由 来 キ チ ナーゼ ( -ChiA) のドメイン構造.

自然界では矢印部分にstop codonが 存在する.(C)  由来キチ ナーゼ ( -ChiA) の立体構造.触媒 ドメインAD1は構造未発表.1分子 内に基質結合力の異なる結合ドメイ ンChBD1, ChBD2および基質分解機 構が異なる触媒ドメインAD1(エキ ソ 型,bacterial-type)(未 発 表 デ ー タ ),AD2(エ ン ド 型,plant-type)

が存在するため効率よく結晶性キチ ンを分解できると考えられる.

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今日の話題

に露出した芳香族アミノ酸とキチンの疎水面との相互作 用による(4) (図1-C).しかし,ChBD1とChBD2間でア ミノ酸配列の相同性はなく,構造類似性もない.興味深 いことに基質結合力はChBD2のほうがChBD1より3倍 強い.これはChBD2の芳香族アミノ酸がすべてトリプ トファン (WWW) であるのに対し,ChBD1ではそのう ち2つがチロシン (WYY) であるのが原因と考えられ る. -ChiAがコードするキチナーゼを,アミノ酸配列 相同性に基づいて分類すれば,細菌や真菌,植物,動物 など多種多様な生物から見いだされるファミリー 18に 属する.ファミリー 18キチナーゼの特徴を詳しく見て いくと,活性部位に高度に保存された共通配列が存在 し,さらに構造的特徴から深い活性クレフト部位構造を もつ「bacterial-type」,浅くフラットな活性部位構造を もつ「plant-type」に分類される. -ChiAの触媒ドメ インAD1は「bacterial-type」,AD2は「plant-type」で あるが,これまで「plant-type」キチナーゼの基質との 反応様式は不明であったため,両者は構造的な特徴だけ で区別されてきた.しかし,最近,AD2/基質複合体の 構造解析が進み,「bacterial-type」と「plant-type」は 触媒機構が異なることが明らかとなった(5, 6).そこで,

「bacterial-type」と「plant-type」の分類が,活性部位 の構造および反応機構の違いからなされることが示唆さ れている.AD2の結晶性キチンに対する活性はAD1よ り2倍高いが(3),これは立体構造や反応機構の違い,さ らには触媒ドメインに隣接する結合ドメインの基質結合 力の差が影響していると考えられる.このように - ChiAは機能の異なるドメイン同士の相乗効果により,

結晶性キチンを効率よく分解していることが推測される

(図1-C).

さらに, および のゲノム上

には,脱アセチル化酵素,グルコサミニダーゼの遺伝子 配列もあり,それぞれが活性を有するタンパク質として 発現されることが明らかとなっている.ところで,

にはキチナーゼ遺伝子が見つかっていない.

また, の遺伝子は休眠状態である.それにも かかわらず脱アセチル化酵素,およびグルコサミニダー ゼが存在するということは①のキチナーゼに相当する酵 素が別に存在する可能性を示唆している.そうなると 属から新たなキチン代謝経路が発見されるか もしれない.

ここまで,超好熱菌のキチン代謝経路について筆者ら の知見を中心に紹介してきた. -ChiAは休眠状態の遺 伝子であり,それがコードするタンパク質の発現と構造 解析は,好熱菌由来キチナーゼとしては初めてのもので ある.

このように超好熱菌の代謝経路をタンパク質構造学的 アプローチで明らかにし,有用な情報を得ていくこと が,バイオマスの有効利用につながっていくと期待して いる.

  1)  T. Tanaka  : , 279, 30021 (2004).

  2)  T.  Nakamura  : , 61,  476 

(2005).

  3)  T. Oku & K. Ishikawa : , 70

1696 (2006).

  4)  S. Mine  : , 381, 670 (2008).

  5)  S. Mine  : , 63, 7 (2007).

  6)   H. Tsuji  : , 277, 2683 (2010).

(峯 昇平,中村 努,上垣浩一,産業技術総合研究 所)

池田 郁男(Ikuo Ikeda) <略歴>1975 年九州大学農学部食糧化学工学科卒業/九 州大学大学院農学研究科博士後期課程修 了,農学博士,九州大学農学部助手,助教 授を経て2005年より東北大学大学院農学 研究科教授<研究テーマと抱負>食品成分 および栄養素の肥満,動脈硬化症予防作用 に関する研究,ステロール吸収機構に関す る研究<趣味>バドミントン

池田 彩子(Saiko Ikeda) <略歴>1998 年名古屋大学大学院生命農学研究科博士後 期課程満期退学,博士(農学)取得/1998 年椙山女学園大学生活科学部助手/2002 年名古屋学芸大学管理栄養学部講師/2006

年同助教授/2010年同教授,現在に至る

<研究テーマと抱負>抗酸化ビタミンの代 謝と生理作用に関する研究

上 垣  浩 一(Koichi Uegaki) 略 歴1988年大阪大学理学部生物学科卒業/

1994年大阪大学大学院理学研究科博士後 期課程修了(理博)/1993年日本学術振興 会特別研究員/1996年NEDO産業技術研 究開発部最先端分野技術研究員/1996年 科学技術振興事業団,科学技術特別研究 員 /1998年 大 阪 工 業 技 術 研 究 所 入 所 / 2001年(独)産業技術総合研究所主任研究 員/2012年同研究所生体分子創製研究グ ループ長,現在に至る<研究テーマと抱

負>タンパク質の高機能化研究

鎌 形  洋 一(Yoichi Kamagata)  歴>1986年北海道大学大学院農学研究科 農芸化学専攻博士課程修了(農学博士)/

1986年微生物工業技術研究所/1993年ミ シガン州立大学研究員/2001年産業技術 総合研究所生物プロセス研究部門研究グ ループ長/2006年同研究所生物プロセス 研究部門長/同年北海道大学大学院農学研 究院客員教授,現在に至る<研究テーマと 抱負>古典微生物学の時代の研究に脱帽.

そしてそれを現在微生物学の俎上で調理

(?)すること<趣味>古典から民族音楽ま で聴き流すこと

プロフィル

Referensi

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