韓国における「住民自治会」設置と 住民自治センターをめぐる動向
浅 野 かおる
は じ め に
韓国では、1991年に地方自治制度が復活され、1991年に地方議会議員、
1995年に地方自治体の首長選挙が再開された。2014年1月現在、韓国の人口 は5,114万人余りで、広域自治体は、ソウル特別市、広域市6、道8、済州特 別自治道、世宗特別自治市の計17であり、基礎自治体は、市75、郡83、自治 区69の計227である。人口50万以上の基礎自治体の市には自治区ではない行 政区をおくことができ(33区)、済州特別自治道には基礎自治体は存在せず、
一般市(2市)が置かれている。また、教育自治は広域自治体にのみ設置され ており、基礎自治体には存在せず、一般行政の中に教育支援課などの部署が置 かれている。
広域自治体-基礎自治体の下部行政組織として、邑・面・洞がある。邑は 216(平均人口20,769人)、面は1,196(同4,112人)、洞は2,076(同20,105人)
存在する。邑・面・洞には行政事務を担う邑・面・洞事務所(洞の場合は住民 センター)が設置されている。
近年、韓国では行政体制の改編に伴うものとして、邑・面・洞での「住民自 治会」の設置に関する規定をした法律が制定され、その試行的事業が進められ ている。
一方、邑・面・洞事務所には、コミュニティ施設として住民自治センターが
設置されており、そこには「住民自治委員会」が置かれている。住民自治セン ターは、2,765か所設置(2014.1.1現在)されており、邑では66.7%(144か 所)、面(農村部)では52.8%(632か所)と設置率が低く、洞(都市部)で は95.8%(1,989か所)と設置率が高い。住民自治センターの数と等しく、住 民自治委員会が設置されているとみてよいだろう。
以下では、まず、法による地域住民組織についてふれるとともに、住民自治 センターおよび住民自治委員会の基本的な枠組みを整理していく。そして、
「住民自治会」という新たな住民組織の上からの組織化をとりあげ、それらと 住民自治センターの関連を考察する。また、近年の住民自治センターをめぐる 動向として、邑・面・洞平生学習センターについてもふれていく1)。
1.法による地域住民組織
韓国では、日本の町内会、自治会のような住民組織は存在しない。韓国に は、「班」、「統」といった各世帯を包含する組織があるが、それらは洞や里
(里は邑・面に置かれる)の下部組織と法的に規定されている。地方自治法第 4条の2第5項では、「行政洞・里にその地方自治体の条例で定めるところに より下部組職を置くことができる」とされており、それに基づいて各基礎自治 体では「統・班設置条例」を定めている。
例えば、「仁川広域市延壽(ヨンス)区統・班設置条例」では、「行政施策の 円滑な末端浸透と洞行政を効率的に遂行するために洞に統を置き、統には班を 置く」(第2条)とし、その基準は、「班は、共同住宅の場合、40から80世帯 で、一般住宅及び国民基礎生活保障受給者密集居住共同住宅地域は30から60 世帯で構成する。ただし、80戸を超えない範囲で自然部落、集落形態などを 考慮し、現地実情に合うよう調整することができる」、「統は、4から8の班で 構成する」(第3条)とされている。農村部を有する公州市の場合、「公州市 統・班設置条例」では、「行政施策の円滑な推進と一線行政洞・里の行政を効
率的に遂行するために、洞に統・班を置き、里に班を置く」(第2条)とし、
その設置基準は、「1.班は10から5世帯で構成する。ただし、自然村集落形 態を考慮し、現地の実情に合わせるよう調整することができる。2.統は4か ら6班で構成する。ただし、建物の構造、集落形態等を考慮し、現地の実情に 合うように調整する」(第3条)とされている。
統・班には統長・班長が置かれるが、その基準には、「安保観が透徹し」と いう表現が用いられている。その任務は、洞長の指導監督を受けて、「行政施 策の広報と住民の世論、要望事項の報告」、「住民の居住、移動状況の把握」、
「マウルづくり推進事業の協助・支援」、「戦時広報及び住民啓道(戦時に限 る)」、「戦略資源の動員と戦時生活必需品配給(戦時に限る)」などの業務を処 理することである。班長は、月1回定期的に「班常会」を開催し、「仁川広域 市延壽区統・班設置条例施行規則」では、班常会の「討議」事項として、「セ マウルづくり事業に関する事項」、「行政施策の広報及び公共機関の公示事項伝 達」、「班員の移動事項把握及び非常連絡に関する事項」、「受恵対象者の選定」、
「防犯申告網の運営」、「公開行政処理事項」、「その他住民生活改善に関する事 項」があげられている。
また、韓国では「アパート自治会」などと呼ばれる住民組織もある。これは 高層マンション群など共同住宅に対して、住宅法で設置が定められた「入居者 協議会」のことである。
そして、韓国には特別法で設立され、国や地方自治体の出捐や補助を受ける
「国民運動団体」として、セマウル運動協議会、パルゲサルギ(=正しく生活 する)運動協議会、韓国自由総連盟がある。政府により組織されたこれらの団 体は、「職能団体」、「官辺団体」、「社会団体」などとよばれている。その下部 組織が、セマウル指導者協議会、セマウル婦女会、セマウル文庫、パルゲサル ギ委員会などとして、基礎自治体や邑面洞レベルでも組織化されており、自治 体から補助金を受けている。
その他、各地域には防衛協議会などの団体もあり、そうした団体や統長連合
会、職能団体のメンバーが、住民自治センターの住民自治委員会の委員の一定 数を占めることがしばしばみられる。
2.住民自治センターと住民自治委員会
(1)住民自治センターの規定と機能2)
住民自治センターの設置は、1999年から始められる。1997年の金融・通貨 危機による構造改革における公共部門改革で、その中核である地方組織の改編 では、機構・定員の削減、地方行政階層の縮小、邑面洞事務所の機能転換など の改革が進められた。1999年に、地方行政の階層縮小のために邑面洞事務所 を廃止して、邑面洞事務所を住民自治センターに転換することが推進方向とし て出されたが、それは邑面洞事務所の事務と職員の削減によって空いた空間を 住民自治センターとして活用することに変更される。
住民自治センターの設置を推進した行政自治部は、「住民自治センター設置 及び運営条例準則」(最初は2000年1月)を示し、各基礎自治体はそれを基に 条例を制定し設置・運営を進めていく。住民自治センターの法的基盤は弱い。
「住民自治センター」は、地方自治法施行令第8条(地方自治体の種類別事務)
<別表1>の中の「2.住民の福祉増進に関する事務」において、「市・道事 務」及び「市・郡・自治区事務」の中で「邑・面・洞事務所の住民自治セン ター設置・運営」と例示されているのみだからである。こうした法的基盤の弱 さもあり、行政自治部で作成(改正)された「条例準則」で、住民自治セン ターの目的や機能、住民自治委員会など、住民自治センターの基本的枠組みを 規定している。各基礎自治体がそれに則り条例を制定・改正し、住民自治セン ターは設置・運営されているのである。
こうした条例において、住民自治センターとは、「地方自治法第8条および 同法施行令第8条に基づき、住民の便宜および福利増進を図り、住民自治機能 を強化し地域共同体形成に寄与」するため、「邑面洞に設置された各種の文化・
福祉・便益施設とプログラムを総称」するものと規定されている。住民自治セ ンターの機能としては、住民自治機能、文化余暇機能、地域福祉機能、住民便 益機能、市民教育機能、地域社会振興機能の六つがあげられている。住民自治 センターの施設管理及びプログラム運営は、邑面洞長(地方公務員)が行なう ことになっているが、運営に関する事務は所属公務員、住民自治委員会の委 員、ボランティアに遂行させることができるとされており、住民自治委員が運 営に関する事務を担うことも可能としている。
政府が2007年に洞事務所の名称を「洞住民センター」に変更したことに伴 い、「住民自治センター」の名称を、釜山広域市各区では「住民自治会」に、
ソウル特別市各区では「自治会館」にそれぞれ条例を改正し変更している3)。 こうした動向とは関係なく、京畿道利川市、大田広域市大徳区などは、自主的 に基礎自治体レベルで名称を変更している。
上から設置された住民自治センター、住民自治委員会に対して、真の住民自 治を発展させようと市民運動が取り組んでおり、特に、2001年から全国住民 自治センター博覧会(2008年から全国住民自治)の開催を始め、住民自治委 員教育などに取り組んできた「開かれた社会市民連合」の果たしている役割は 大きい4)。
(2) 住民自治委員会の運営と機能
住民自治委員会は、住民自治センター運営に関する事項を審議するために置 かれ、25人以内の構成で、邑面洞長が委員を委嘱する。定例会議を月1回開 催し、臨時会議も開催できると規定されている。住民自治委員会では、通常、
いくつかの「分科委員会」(部会)に分かれて、住民自治委員はいずれかの分 科委員会に属して活動に携わる。住民自治委員は、住民自治委員会で審議に加 わるだけでなく、先にみたように住民自治センターの運営に関する事務に従事 する場合もある。邑面洞事務所には、住民自治センターを担当する職員もいる が、他の業務と兼任していることがほとんどで、人事異動も頻繁である。
また、どの自治体の条例でも、「受講料」は、住民自治委員会が徴収・管理 などを行うことになっており、次のように規定されている。①使用料は洞長が 徴収し、受講料はプログラムを利用する場合に住民自治委員会で徴収するこ と、②受講料は定められた基準と範囲内で委員会が洞長と協議して決めるこ と、③徴収した受講料は委員会が洞長と協議して住民自治センターの運営に必 要な経費として使用しなければならず、その収入・支出内訳を半期別に住民に 公開しなければならないこと、④委員会は受講料の徴収・管理・支出等のため に委員の中から会計責任者を指定し、受講料の徴収・管理・支出等は委員会の 名義とすることである。これは、自治機能を強化する方向で改正された、
2002年1月の条例準則改正において加えられたものである5)。低所得など特別 な事由があると認められる場合には基準に基づき受講料が減免されるという規 定もある。
プログラムを利用する場合の受講料とは、「定期プログラム」とよばれる、
3か月間ほど毎週1~2回1時間ずつ講師から学ぶプログラムの受講料のこと と説明を受けた。プログラムには、例えば、大人を対象としたヨガ、ダンス、
卓球などの健康増進やギターやオカリナなどの楽器演奏、子ども対象のものも ある。定期プログラムの講師費に対して、一定額が自治区から予算が配分され ている。徴収した受講料による収益分は、センター運営で必要な資材や機材の 購入やプログラム発表会に使用し、また、住民自治センターの業務に従事する 実務者(常勤)への補助金としても支出している。「定期プログラム」以外の 年に1回のみ(数回の講座など)実施するプログラムで経費を必要とするもの は、計画書を作成し自治区庁に申請しているという。申請先は、住民自治セン ターを担当している総務課、平生教育を担当している教育支援課である6)。
3. 「住民自治会」の法的導入
(1) 「地方行政体制改編に関する特別法」における「住民自治会」
2010年9月制定の「地方行政体制改編に関する特別法」(以下、「2010年特 別法」)で、邑・面・洞に「住民自治会」を置くことができると規定された。
同法附則に基づき、住民自治会の試行的な設置・運営に向けて進められてい く。朴槿恵政権に入り、同法は廃止され、2013年5月に「地方分権及び地方 行政体制の改編に関する特別法」(以下、「2013年特別法」)が新たに制定され たが、住民自治会に関する規定は、基本的に内容上の変更を加えられていな い。2010年特別法では住民自治会は「第3章 地方行政体制改編の基準と範囲」
「第4節 邑・面・洞住民自治」と節が設けられていたが、2013年特別法では そのような節がなくなり、「第3章 地方行政体制改編 」「第1節 地方行政体制 改編の基準と課題」の中の27条から29条で規定された<表1>。
2010年「特別法」で住民自治会の設置が規定された背景として、同法にみ られる基礎自治体の「統合」(合併)の促進があげられる。基礎自治体の「統 合」は、2013年特別法でも確認できる(<表2>、第3章第1節第22条~第 26条、第2節)。2010年特別法制定に関わって、次のように指摘されていた7)。 「ハンナラ党および民主党は、…市と郡を統合して現在の230基礎自治体を 100あるいは60 ~ 70の広域市につくることで意見一致」をみており、こうし た基礎自治体の広域化に対して「邑面洞も広域化を免れることができない」と みなされていた。そして、「政治圏で提起されている邑面洞の改編方案は、民 願機能、住民自治支援機能などを除いた全ての機能を市郡区に移管し、住民自 治機能を強化するものである。したがって、邑面洞の主要機能は住民が中心に なり、マウルのことを議論し、自ら解決する住民自治機能になるであろう。こ のような住民自治の求心点は、既存の住民自治センター」がなると考えられ た。
すなわち、基礎自治体の統合による広域化とともに邑面洞の統廃合・広域化 も行われ、その一方で邑面洞事務所の行政事務の大部分を基礎自治体(市・
郡・区)本庁に移管して、広域化された邑・面・洞では住民が地域の問題解決 にあたるという「住民自治」機能が主とされているのである。そのため、住民 自治会の新設、住民自治センターや住民自治委員会の再編が必要とされ、「特 別法」で住民自治会に関して規定する条項が入ったのである。
2010年「特別法」制定時には、同法での住民自治会の設置規定に対して次 のような批判があった。「住民自治会の設置目的を草の根自治の活性化と住民 の民主的参加意識高揚においている。しかし、自治会構成方式は設置目的とは 全面で衝突する。それは、…住民自治会委員を住民の選出ではなく、自治体の 長が委嘱する委員で構成するようにしているためである。…自治体の長の委嘱 は住民自治会が住民組織ではなく、官治組織の性格を帯びており、この法の精 神や趣旨にも合わない」、「自治体が(事務を)委任・委託する形式をとること は、…住民自治会設置の趣旨に反する等様々な疑問や問題点が予想される」8)。 すなわち、「特別法」では、住民自治会に関する規定において、委員の選出 方法や自治体行政事務の委任・委託が、住民自治会の設置目的・趣旨と矛盾す るものとなっているのである。しかし、この矛盾は、住民自治会設置の背景と して先に言及した基礎自治体や邑面洞の統合による広域化、邑面洞事務所での 事務の縮小に対応するものとしての「住民自治」機能の重視ゆえに、生じたも のとみることができよう。
<表1>地方分権及び地方行政体制の改編に関する特別法(2013.5)における 住民自治会の規定
第27条(住民自治会の設置)草の根自治の活性化と民主的参加意識高揚のため に、邑・面・洞に当該行政区域の住民で構成される住民自治会を置くことが できる。
第28条(住民自治会の機能)① 第27条により住民自治会が設置される場合、
関係法令、条例または規則で定めるところにより、地方自治団体事務の一部
を住民自治会に委任または委託することができる。
② 住民自治会は、次の各号の業務を遂行する。
1.住民自治会区域内の住民和合及び発展のための事項
2.地方自治団体が委任または委託する事務の処理に関する事項 3.その他関係法令、条例または規則で委任または委託した事項
第29条(住民自治会の構成等)① 住民自治会の委員は、条例で定めるところ により地方自治体の長が委嘱する。
② 第1項により委嘱された委員は、その職務を遂行する時には地域社会に対 する奉仕者として政治的中立を守らなければならず、権限を濫用してはなら ない。
③ 住民自治会の設置時期、構成、財政等、住民自治会の設置及び運営に必要 な事項は別に法律で定める。
④ 安全行政部長官は、住民自治会の設置及び運営に参考とするために、住民 自治会を試行的に設置・運営することができ、このための行政的・財政的支 援をすることができる。
<表2>地方分権及び地方行政体制の改編に関する特別法(2013.5)の構成 第1章 総則
第2章 地方分権 第1節 地方分権の基本原則/第2節 地方分権の推進課題 第3章 地方行政体制改編 第1節 地方行政体制改編の基準と課題 第18 条(地方行政体制改編の基本方向)/第19条(過小区の統合)/第20条(特別市 及び広域市管轄区域の中に置いている区と郡の地位等)/第21条(道の地位及 び機能の再確立)/第22条(市・郡・区の改編)/第23条(統合地方自治体の設 置)/第24条(市・郡・区の統合手続き)/第25条(統合推進共同委員会)/第 26条(統合地方自治体の名称等)/第27条(住民自治会の設置)/第28条(住民 自治会の機能)/第29条(住民自治会の構成等)/第2節 統合地方自治体に対 する特例 / 第3節 大都市に対する特例 / 第4章 推進機構及び推進手続き
(2)「住民自治会」試行事業
「地方行政体制改編に関する特別法」(2010)に基づき、大統領直属「地方 行政体制改編推進委員会」において住民自治会の三つのモデルが提起されるに
至る(<表3>)。端的にいえば、「統合型」においては、住民自治会は基礎自 治体の下部行政機関とし、「協力型」では、邑面洞事務所は現行行政機能を維 持、住民自治会は邑面洞行政機能に対する協議・審議及び住民自治会の事務を 直接遂行することとされ、「住民組織型」では、邑面洞事務所を廃止し、邑面 洞行政機能は基礎自治体本庁で遂行するものである。この中で試行的事業とし て実施することになったのは、「協力型」であった。他の二つは地方自治法等 の法改正が必要とされたからである。
モデル案の段階では、「住民自治委員」という用語が用いられていたが、モ デル案では「住民自治会」の中に住民自治委員会と事務機構が置かれていると いう案であった(住民自治会の中で住民総会も想定されていたようである)。 「協力型」を試行実施する段階で、「住民自治会(委員)」と事務機構として の邑面洞事務所という構図となり、「住民自治会」の概念が「住民自治委員会」
の廃止を必然とするものに変容したのである。
<表3> 住民自治会3モデルの比較
区分 統合型 協力型 住民組織型
構 成 住民自治委員、公務員 住民自治委員
権 限
・住民自治機能及び行 政支援機能の遂行
・邑面洞行政機能の遂 行
・住民自治機能及び行 政支援機能の遂行
・一部邑面洞行政機能 の協議・審議
住民自治機能及び行政 支援機能の遂行
住 民 自 治 委 員 の役割
住民自治機能及び邑面 洞行政機能に対する決 定(議決機能)
・住民自治機能の決定 及び執行
・行政機能の講義・審 議
住民自治機能の決定及 び執行
邑面洞事務所 住民自治会の事務機構 へ転換
存置(行政機能の維持) 邑面洞行政機能を地方 自治体が直接遂行 地 方 自 治 体 と
の関係
市郡区の下部行政機関 の性格
邑面洞と連携・協力(協 議・審議事項に対する 履行要求など)
市郡区と連携協力(住 民意見の提出など)
事務機構 公務員 住民(公務員派遣要請機能)
(出典:キム・ビルドゥ『邑面洞の近隣自治機能強化方案』韓国地方行政研究院、2013.12、p.61 <韓国語>)
「協力型」による試行事業が、1年間(2013.5月~2014年下半期)、31の邑 面洞が選定され、進められている。2013年「特別法」では、「住民自治会の設 置時期、構成、財政等、住民自治会の設置及び運営に必要な事項は別に法律で 定める」とされており、試行実施を経て、「住民自治会の構成と運営に関する 法律」を制定し、2015年から住民自治会を公式スタートする予定とされた9)。 住民自治会を住民自治委員会と比較したものが<表4>である。住民自治会 の代表性と専門性の向上のために委員選定委員会を設置し、そこで20~30人 規模の住民自治会の委員を選出し、住民自治会の権限と機能を強化するために 委員は地方自治体の長による委嘱とされた。主要業務は、「事前協議」、「委託 業務」、「住民自治固有業務」の遂行である。「事前協議」では邑面洞単位地域 発展計画、迷惑施設設置周辺の住民の意見集約、「委託業務」では住民自治セ ンター運営、公園・公衆トイレなど公共施設物管理、「住民自治固有業務」で はまち便り発刊、自律防犯及び安全帰宅活動などが例示されている。また、住 民自治会の自主的力量強化のために、公園、公衆トイレなど公共施設委託事業 手数料、自主収益事業などを通した財源をつくり、運営させる計画も示されて いる。
<表4> 住民自治委員会と住民自治会の比較
住民自治委員会 住民自治会
・住民自治センター運営
・邑面洞行政業務に対する諮問 主要機能
・邑面洞業務の事前協議
・委託業務の遂行
・住民自治業務の遂行
・各級機関、団体推薦及び公開募集
申請者の中から邑面洞長が指名 委員選出
・地域代表、一般住民及び職能代表 公開募集
・委員選定委員会で公正な選出
・邑面洞の長 委員委嘱 ・地方自治体の長(市郡区)
・邑面洞の支援金および運営プログ
ラム受講料 財源調達 ・自主財源 ( 収益・委託事業の収益)、 寄付金など
(安全行政部「報道資料」2013.4.11<韓国語>より作成)
<表5> 住民自治会試行実施における基本モデル・選択モデル
基本モデル
地域福祉型 地域内に散在する福祉財源配分の求心体の役割を遂行するこ とにより、地域福祉共同体を活性化
安全マウル型 自発的な生活安全の強化及び地域特性を考慮した安全管理ネ ットワーク構築の求心体の役割を遂行
選択モデル
マウル企業型 住民自治会中心の収益事業を推進することにより、地域問題 に対する問題解決能力及び自生的力量を強化
都心創造型 小規模まち再生事業などを通して住みやすいまちづくりを推 進
平生教育型 地域住民の需要、階層別特性に合う平生教育プログラムを主 導的に運営
地域資源型 地域の名所、特産物などの地域資源を活用して地域ブランド 価値創出及び向上
多文化交流型 多文化人の地域社会定着及び共同体形成のために地域社会ネ ットワークを構築
(安全行政部「報道資料」2013. 4.11<韓国語>より作成 )
実施にあたり、基本モデルとして「地域福祉型」、「安全マウル型」を必須と し、選択モデルとして「マウル企業型」、「都心創造型」、「平生教育型」、「地域 資源型」、「多文化交流型」の五つの中から一つ以上選択することを課している。
住民自治会試行事業に選定されると、その基礎自治体では、すでに制定され ている「住民自治センターの設置及び運営に関する条例」に加えて、住民自治 会試行事業実施のために別途の条例、「住民自治会試行的実施及び設置・運営 に関する条例」を制定することになる。これには、行政自治部で作成(改正)
された「条例準則」がある。基礎自治体の中には住民自治会試行実施をしてい る邑面洞と、従来の住民自治センター・住民自治委員会がある邑面洞があるた め、二つの条例が必要とされたのである。資料として、「仁川広域市延壽区住 民自治会試行実施及び設置・運営に関する条例」を後掲した(資料1)。また
「仁川広域市延壽区住民自治センター設置及び運営条例」も後掲した(資料 2)。
仁川広域市延壽区延壽2洞住民自治会、ソウル特別市恩平区驛村(ヨクチョ ン)洞住民自治会では10)、いずれも住民自治委員会で話しあって応募すること
にしたとのことであった。住民自治会を設置するにあたり、住民自治委員会は 廃止された。
必須とされる基本モデル二つに加え、延壽2洞は平生教育型、驛村洞はマウ ル企業型を選択していた。驛村洞では、2年前に住民自治委員が中心となり、
ヨンマウル協同組合を設立(マウル企業)した。そこでは、居住者優先駐車の 管理、公園管理を恩平区からの委託を受けている。経済的に困難な高齢者の仕 事づくりとしてリサイクル事業を予定しており、その事業を住民自治会で受託 し、協同組合が実質的に実施することを計画しているという。延壽2洞では、
住民自治会試行的事業の予算で<表5>のような事業を実施する計画を提出し た。
<表6> 延 2洞の住民自治会試験的事業予算での事業
主要事業 細部事業 実践計画
す き 間 階 層 を 援 助 す る た め の 愛 の分かち合い運動
<地域福祉型>
パークコンサート ・地域住民との疎通と和合の場を用意
・地域内の才能ある住民の文化公演 すき間階層への援助 ・すき間階層および障害者の発掘
・物品及びオムツ世帯訪問配布
お年寄り孝行宴会 ・お年寄りへの参鶏湯のふるまい及び公演 おかず分かち合い
・障害者、少年少女家庭、独居老人世帯の 発掘
・季節別おかず計画 誰 も が 住 み た い
安全できれいな 延壽2洞
<安全マウル型>
私たちのマウルを守る ・商店街で周辺環境浄化活動
・青少年善導活動及び巡察 環境祭り ・グリーンエネルギー広報
・ローカルフード広場運営
ソランマルの人々 ・管内の多様なニュースなど1年間の活動 整理
学 び 分 か ち 合 う 平生学習教室
<平生教育型>
青少年ナンタ教室 ・無料プログラムの運営
・サークル運営及び無料公演行事 美術心理相談士2級養
成課程
・無料プログラムの運営
・シルバー世代のための資格証取得及び奉 仕活動連携
マウルリーダー養成
・自生団体長など関連団体との和合を図る
・先進地見学と力量強化教育を通したマウ ルリーダー養成
(『延壽2洞住民自治会試行実施基本計画』より)
4.幸福学習センター(邑・面・洞平生学習センター)と住民自 治センター
(1) 幸福学習センター(邑・面・洞平生学習センター)の登場
教育部の平生教育政策では、邑・面・洞単位の平生学習センターの運営(設 置・指定)が進められている。「2013年地域平生教育活性化支援事業」では、
国家-市・道(平生教育振興院)-市・郡・区(平生学習館)というこれまで の平生教育推進体制に対し、その下に「邑・面・洞(幸福学習支援センター)」 が加えられた。その事業の中の平生学習都市造成事業に「幸福学習支援セン ター」設置支援事業が新設され、16基礎自治体(その中の84邑・面・洞)が 選定された。「第3次平生教育振興計画(2013-2017)」(2013.9)においても、
幸福学習センターの設置・指定及び支援があげられており、16基礎自治体
(2013年 )、60基 礎 自 治 体(2014年 )、152基 礎 自 治 体 (2015年)と 拡 大 し、
2016年には 227全ての基礎自治体にまで広げる計画である。
2014年1月の平生教育法一部改正において、第21条の2(邑・面・洞平生学 習センター運営)が新設される。そこでは、「市長・郡主・自治区長は、邑・
面・洞別に住民を対象として平生教育プログラムを運営し、相談を提供する平 生学習センターを設置するか、指定して運営することができる」とされ、邑・
面・洞平生学習センターの法的基盤が整えられた。2014年の「地域平生教育 活性化支援事業」において、幸福学習センターとして60自治体(1自治体3 か所)が選定された。こうしたことに伴い、基礎自治体では平生教育・平生学 習に関する条例を改正する動きもみられる。
幸福学習センターは、「地域平生教育活性化支援事業」(2014.3)では次の ように示されている。幸福学習センターの概念は、「邑・面・洞住民の平生教 育要求を集約し、地域社会に合わせた平生教育事業を実施する住民のための平 生学習センター」とされる。運営に関しては、「邑・面・洞の遊休施設の機能
を転換して設置するか、住民自治センター、平生教育機関などを指定」するも のとされ、その対象として住民自治センターがあげられている。運営人材とし て、「幸福学習マネージャー」を養成して配置することとし、基礎自治体の平 生学習館や平生教育士が運営を支援することとされている。
学習内容は、共通教育課程と地域別に合わせた教育課程に区分され、共通教 育課程では、 ①個人成長次元(生涯成長)として健康、財政、安全、家族関係 など、②社会参加次元(生涯現役)としてささやかな仕事、地域リーダー、社 会的寄付など、③地域共同体次元(生涯隣人)として地域、環境、マウル共同 事業などをあげており、ここには地域づくりと関連する内容が含まれている。
(2) 住民自治センターによる幸福学習センター実施
2013年に行われた幸福学習センター造成事業では、選定された16の基礎自 治体のうち8自治体で、複数設置している幸福学習センターの一部または全部 を、住民自治センターを指定している11)。
ここでは、仁川広域市延壽区延壽2洞に関してふれておきたい12)。延壽区 は、教育部による2014年度の「地域平生教育活性化支援事業」の幸福学習セ ンター支援事業に選定された。この事業では一つの基礎自治体に3か所しか予 算支援がなされないが、延壽区では区独自の予算も用いて12か所の住民自治 センター全てを「幸福学習センター」に指定している。延壽2洞住民自治セン ターでは、区独自の幸福学習センター指定による予算で、グリーン式生活マ ネージャー養成課程(全10回)を受講料無料で実施した。
延壽区では、2013年から「幸福学習マネージャー」の養成を行っていた。
延壽区教育支援課(平生教育チーム)により実施された養成教育は、2013年 9月から3か月間、毎週金曜日に3時間行われた。養成教育には住民自治委員
(実務者など)に参加が求められ、また「一般人」も参加した。養成教育に参 加した住民自治委員の実務者が「幸福学習マネージャー」となり、2013年に 住民自治センターで「幸福学習プログラム」の計画を立て区に提出し実施し
た。予算の増額ではなく、前年度までは他の名称だった予算が転用されていた ようである。
お わ り に
住民自治委員会を廃止して住民自治会を設置することにより、必ず生じるこ とは、住民自治センターの住民自治会への委託である。それは住民自治セン ターの基本的性格に二つの点で変質をもたらすと考えられる。
第一に、住民自治センター運営の基本枠組みが変質すると考えられる。住民 自治センターには、住民自治センター運営責任者としての洞長(運営主体)と 制度的に審議機能を保障された機関としての住民自治委員会(審議機関)とい う、運営主体と審議機関の二つの立場が存在し、運営の民主性を保持していた とみることができる。しかし、住民自治会が事業主体になることにより、住民 自治センターには、その運営を審議し、チェックする機関が制度的には存在し なくなることが予想される。
第二に、住民自治センターの諸機能の中に「住民自治機能」があるが、住民 自治会が住民自治センターを受託し、住民自治センターの諸機能をはたそうと する場合、住民自治センターでの「住民自治機能」と住民自治会での「住民自 治固有業務」との重複、区別は、どのようになされていくのかという問題があ る。住民自治センターの「住民自治機能」は存続するのであろうか。
また、行政事務の委託を受ける団体となることに関わる疑問は、なぜ、例示 されているような「公園・公衆トイレなど公共施設物管理」の受託団体が、住 民自治会でなければならないのかである。地域に存在する諸団体、「マウル企 業」と呼ばれる協同組合など仕事の受託可能な団体は他にもあるにもかかわら ずにである。行政の下請け機関のように住民自治会が事業を委託され、それを さらにマウル企業に委託(2次下請け)するような形態も想定されうる。
一方、邑面洞平生学習センター(幸福学習センター)の登場は、一定の専門
性をもつ「幸福学習マネージャー」の配置を生み出している。住民自治セン ターが、幸福学習センターの指定を受けることは増加すると予想される。「幸 福学習マネージャー」は平生学習分野を担当するものであるが、住民自治セン ターでの様々な事業の間での構造的関連性に対して、どのような影響を与えう るのだろうか。住民自治委員(住民自治会委員)が幸福学習マネージャーを担 う場合もあるが、そのことは幸福学習マネージャーと住民自治委員会(住民自 治会)との関係性と関わってくるであろう。幸福学習センターの学習内容の共 通教育課程では、「地域共同体次元(生涯隣人)」として地域、環境、マウル共 同事業などがあげられている。「地域共同体」づくりは、住民自治センターの 重要な機能であり、住民自治委員会(住民自治会)がその中心的な担い手とし て期待されている。両者に共通する「地域共同体」づくりをめぐり、学習と活 動が連結されて構造化される諸契機に今後注目したい。
※本稿は、科学研究費補助金による研究(基盤研究(C)「コミュニティ施設と地域自 治組織の構造的変容に関する日韓の実証的比較研究」(代表者:長澤成次))の成果の 一部である。
[註]
1)本稿は、浅野かおる「韓国の住民自治センターをめぐる再編動向」『住民自 治力を高める学びとまちづくり』日本公民館学会第13回研究大会日韓セミナー
(2014年12月6日)に加筆修正したものである。
2)住民自治センターの構想とその背景、2005年までの政策的展開については、
浅野かおる「韓国における地方自治体の組織改編と住民自治センターの機能」『行 政社会論集』第19巻第1号、福島大学行政社会学会、2006、参照のこと。
3)浅野かおる「韓国における自治体改革と生涯学習」日本社会教育学会編『自 治体改革と社会教育ガバナンス』東洋館出版、2009、p.116。
4)同上書、pp.117 ~ 118。
5)浅野かおる・前掲書(2006)、参照のこと。
6)仁川広域市延壽区延壽2洞住民自治会長、住民自治会委員、住民自治センター 担当職員への聞き取り(2014年11月1日)。
7)김필두「지방행정구역개편 논의와 사회복지전달체계의 연관성」『복지동향』
제132호、2009.10(キム・ピルドゥ「地方行政区域改編論議と社会福祉伝達体 系の連関性」『福祉動向』第132号)
8)권순복「특별기획: 읍・면・동제는 어떻게 개혁되어야 하는가? 주제발제」『자 치행정』276、2011.3、지방행정연구소、pp.10 ~ 11(クォン・スンボク「特 別企画:邑面洞制はどのように改革されなければならないか? 主題発表」『自 治行政』地方行政研究所)
9)「地方分権及び地方行政体制の改編に関する特別法」に基づく大統領直属「地 方自治発展委員会」の行政体制改編分科委員会では、2015年1月16日の会議の 案件に「2015年度住民自治会試行事業計画報告(行政自治部)」があげられており、
2015年度も継続して試行されるようである。(http://www.clad.go.kr/index.
html)
10)仁川広域市延壽区延壽2洞住民自治センターおよびソウル特別市恩平区驛村 洞住民自治センターにて、洞長、住民自治会長などへの聞き取り(2014年6月 19日、20日)。延壽2洞の人口は24,895人、驛村洞の人口は49,200人(訪問時 提供資料より)。
11)『2013 평생교육백서』국가평생교육진흥원、2014(『2013平生教育白書』国 家平生教育振興院)
12) 仁川広域市延壽区延壽2洞住民自治会長、住民自治会委員、住民自治センター 担当職員への聞き取り(2014年11月1日)。
<資料1>
仁川広域市延 区住民自治会試行実施及び設置・運営に関する条例
(制定)2013.9.30条例第802号、(一部改正)2014.7.28条例第833号
第1章 総 則
第1条(目的)この条例は、「地方分権及び地方行政体制改編に関する特別法」(以下、
特別法)第27条の規定により、草の根自治の活性化と民主的参加意識高揚のために、
洞に置く住民自治会の設置及び運営に関する事項と同法第29条による延壽2洞住 民自治会の試行実施に関する事項を規定することを目的とする。
第2条(定義)この条例に使用する用語の定義は、次の各号の通りである。
1.「住民自治会」とは、第1条の目的達成のために延壽2洞に設置され、住民の
代表で構成され住民自治センター運営など住民の自治活動強化に関する事項を 遂行する組職をいう。
2.「住民自治会委員」とは、該当する洞の住民を代表する住民自治会の構成員を いう。
第3条(運営原則)住民自治会は、次の各号の原則により運営されなければならない。
1.住民の福利増進と地域共同体形成の促進 2.住民参加の保障及び自治活動の振興 3.洞別の自律的な運営
4.政治的利用目的の排除 第4条(設置等)
① 仁川広域市延壽区長(以下「区長」という)は、管轄地域のうち延 2洞に住民 自治会を設置する。
② 住民自治会の名称は「延壽2洞住民自治会」という。
第5条(機能)住民自治会は、特別法第28条により次の各号の業務を遂行する。
1.洞行政機能のうち住民生活と密接な関連がある業務に対する協議
2.洞行政機能のうち住民自治会に委託して処理することが望ましいと判断され る業務の受託処理
3.その他各種の教育活動、行事など純粋な近隣自治領域の住民自治業務
第2章 住民自治会の構成及び運営
第6条(住民自治会の定数)住民自治会は30人以内の委員で構成する。
第7条(委員の資格)
① 住民自治会の委員は、第9条による推薦または公開募集した日現在、満19歳以上 の者で次の各号のうちいずれか一つの資格を備えなければならない。ただし、「公 職選挙法」第19条により被選挙権がない者と地方議会議員及び委員選定委員会(以 下「選定委員会」という) 委員は、住民自治会委員に選定されることができない。
1.該当する洞に住民登録されている者 2.該当する洞に事業場住所を持っている者
② 第1項各号にかかわらず、二つ以上の住民自治会の委員に選定された者及び第 20条第1項第3号の事由で解職された者は、該当の事由が発生した日から住民自 治会の委員資格がないものとみなす。
第8条(権限)住民自治会は、洞の行政機能に属する事務のうち次の各号の事項を
遂行することができる権限を持つ。
1.協議権限:小規模な住民宿願事業など邑面洞との対等な関係で住民生活と密 接な関連がある邑面洞機能に対する協議権限
2.受託権限:住民自治センター運営など邑面洞行政機能のうち住民自治会に委 託して処理するのが望ましいと判断される業務の受託処理権限
3.住民自治会関連権限:マウル祭り、マウル新聞・便りの発刊など純粋な近隣 自治領域において住民自治会維持のための業務を遂行することができる権限 第9条(委員の選定)
① 住民自治会の委員は、次の各号の方法で選定委員会において選出する。
1.地域代表委員:各洞別統長自律会及びアパート自治会で推薦した候補のうち 選定委員会で選定した10人以内
2.住民代表委員:公開募集後、選定委員会で選定した10人以内
3.職能代表委員:専門家、職能団体代表などを対象に公開募集後、選定委員会 で選定した10人以内
② 選定委員会は第1項により委員候補者名簿を作成し、第1項第2号または第3 号に該当する代表委員候補者のうち5人以下を順位を決めて予備候補として選定 する。
③ 第2項の委員候補者名簿は、選定委員会構成後30日以内に区長に提出しなけれ ばならない。
④ 区長は、委員候補者名簿の中から住民自治会の委員を委嘱する。
⑤ 住民自治会委員の辞任などで欠員が生じた場合には、区長が次の各号の方法に より委嘱する。ただし、前任委員の残任任期が 6か月未満の場合には委嘱しない。
1.地域代表委員は第1項第1号により再選定する。
2.住民代表委員及び職能代表委員は第2項により選定された予備候補のうち先 順位から順序通り委嘱する。
⑥ 区長は、住民自治会構成後、住民自治会委員に対する主要人的事項を1か月以 内に公告などの方法により住民に公開しなければならず、委員を新たに委嘱した 場合にも主要人的事項を同じ方法により直ちに住民に公開しなければならない。
⑦ 住民自治会委員構成及び選出方法などに関して必要な詳細事項は選定委員会で 定める。
第10条(委員選定委員会)
① 住民自治会委員の公正な選出のために、区に選定委員会を置く。
② 選定委員会は、次の各号の通り9人以内の委員で構成し、区長が委嘱する。
1.洞長推薦委員 3人 2.統長連合会推薦人員 2人
3.地域関連機関及び地域団体推薦人員 4人
③ 選定委員会は、第2項の規定により推薦された委員の中から委員長と副委員長 をそれぞれ互選する。
④ 選定委員会は、次の各号の業務を遂行する。
1.委員の選定方法と第9条第1項の各号による代表委員別定数の決定 2.住民自治会委員選定基準の設定及び選定管理などに関する事項 3.その他住民自治会委員選定に関する事項
⑤ 選定委員会は、性別・年齢・所得水準などを均衡あるように考慮して住民自治 会委員を選定しなければならず、女性委員の参加を積極的に奨励して全体委員の 100分の40 以上になるように努力しなければならない。
第11条(住民自治会の長)
① 住民自治会に洞住民自治会の長(以下「自治会長」という)1人と副会長 2人 を置くが、自治会長と副会長は委員の中から互選する。
② 自治会長は、住民自治会を代表して住民自治会業務を総括する。
③ 自治会長がやむを得ない事由で職務を遂行することができない場合には、副会 長のうち年長者がその職務を遂行する。
第12条(幹事)
① 自治会長は、住民自治会委員のうち幹事1人を指名し、住民自治会の事務を処 理させることができる。
② 自治会長は必要な場合、自願奉仕者を置いて幹事を補助させることができる。
③ 自治会長は、第1項及び第2項による幹事と自願奉仕者に業務量と勤務時間を 勘案して実費を支給することができる。
第13条(監査)住民自治会に監査2人を置き、住民自治会委員の中から互選する。
監査は住民自治会の会計と住民自治会で決定した事項の執行に対して監査する。
第14条(分科委員会)住民自治会の機能を効率的に遂行するために、必要な場合、
分科委員会を置くことができる。
第15条(運営)
① 住民自治会は、定期会議と臨時会議を運営し、定期会議は月1回開催して、臨 時会議は自治会長が必要と認める時と洞長の要請があるか委員の3分の1以上の
要求がある時、開催することができる。
② 第1項による会議開催通知は自治会長名義とし、会議は在籍委員過半数の出席 で開議し、出席委員過半数の賛成で議決する。
③ 住民自治会は、洞の関係公務員に会議出席を要求することができ、洞長は住民 自治会の会議に出席して発言することができる。
第3章 住民自治会の委員
第16条(委員の義務)住民自治会の委員は、住民自治会運営に対して住民たちの意 見を集約するために努力しなければならず、住民自治会運営と関連した各種の教 育、研修などに積極的に参加しなければならない。
第17条(政治的中立)住民自治会の委員は、特別法第29条第2項により政治的中立 の義務を持ち、「公職選挙法」第60条第1項第7号により選挙運動をすることがで きない。
第18条(委員の任期)委員の任期は2年とし、再任することができる。
第19条(住民自治会の委員の待遇)住民自治会の委員は名誉職とする。ただし、必 要な場合には予算の範囲内で実費及び手当てを支給することができる。
第20条(住民自治会の委員の解職)
① 区長は、住民自治会の委員が次の各号のいずれか一つに該当する場合には、該 当委員を解職することができる。ただし、第3号及び第4号の場合には、住民自 治会の議決を経なければならない。
1.該当の洞の管轄区域外に居住するようになったり、事業場を離れるようになっ た場合
2.第7条第1項ただし書き及び第2項の欠格事由に該当する場合
3.特別法第29条第2項及び「公職選挙法」 第60条第1項第7号を違反した場合 4.職務怠慢やその他の事由により住民自治会委員として適合しないと認められ
る場合
② 住民自治会の委員は、他の委員に第1項第3号または第4号の事由が生じた場 合、在籍委員3分の1 以上の連署で委員の解任要求を自治会長に発議することが でき、解任要求発議がある時には、住民自治会は在籍委員3分の2以上の賛成で 該当委員を解任することができる。
第4章 地方自治体との関係 第21条(地方自治体の支援)
① 区長は、住民自治会が洞住民のための公共事業を推進したり、第5条第2号の 事務を遂行する場合、行政的・財政的支援をすることができる。
② 区長は、住民自治会委員及び住民の資質涵養と力量強化のために、教育など必 要な施策を樹立・施行しなければならない。
③ 第2項による施策樹立のために、洞長及び自治会長は区長に意見を提出するこ とができる。
第22条(関係機関等との協助)自治会長は、住民自治会の業務遂行のために専門的 知識と経験がある関係公務員または専門家の意見を聞いたり、関連機関・団体な どに対して資料または意見の提出などを要請することができる。
第5章 補 則 第23条(監督)
① 区長は、住民自治会に委託した業務と財政支援分野などに関して、関連事項を 報告させることができ、関係公務員にその業務に関して調査させたり、帳簿及び その他の書類を検査させることができる。
② 第1項によりその職務を遂行する関係公務員は、その権限を表示する証票を持 ち、これを関係者に示さなければならない。
第24条(運営細則)その他住民自治会の構成及び運営に必要な事項は、住民自治会 の議決を経て自治会長が定める。
付則(2013.9.30 条例第802号)
第1条(施行日)この条例は公布した日から施行する。
第2条(有効期間)この条例による住民自治会試行設置・運営は延 2洞に限り 2014年12月31日まで適用する。<改正2014.7.28>
第3条(経過措置)最初に構成される住民自治会は、既存の住民自治委員会を承継 することを原則とする。
付則(2014.7.28 条例第833号)
第1条(施行日)この条例は公布した日から施行する。
<資料2>
仁川広域市延壽区住民自治センター設置及び運営条例
制定 2000.3.23 条例第288号 最終改正(一部改正)2011.03.03 条例第694号
第1章 総 則
第1条(目的)この条例は、「地方自治法」第8条及び同法施行令第8条に基づき、
住民便宜及び福利増進を図り、住民自治機能を強化して地域共同体形成に寄与す るようにするために、洞に置く住民自治センターの設置及び運営に関する事項と 住民自治委員会の構成及び運営に関する事項を規定することを目的とする。
第2条(定義)この条例で使用する用語の定義は次の通りである。
1.「住民自治センター」とは、第1条の目的のために住民が利用することができ るように洞に設置された各種の文化・福祉・便益施設とプログラムを総称する。
2.「団体」とは、管轄区域内にある非営利目的の各種の民間団体、職能・自生団体、
趣味・同好会等の住民組職をいう。ただし、非営利民間団体は「非営利民間団 体支援法」で規定する民間団体をいう。
第3条(原則)住民自治センター(以下「自治センター」という)と住民自治委員会(以 下「委員会」という)は、各号の原則により運営しなければならない。
1.住民の福利増進と地域共同体形成の促進 2.住民参加の保障及び自治活動の保障 3.洞別自律的運営の誘導
4.健全な育成及び発展のための行・財政支援 5.政治的利用目的の排除
第2章 住民自治センター 第4条(設置等)
① 自治センターは洞事務所に設置することを原則とする。ただし、必要な場合には、
当該洞の管轄区域内にある他の施設及び空間を自治センターの施設等として活用 することができる。
② 自治センターの名称は○○洞住民自治センターまたは ○○住民自治センターと する。
第5条(機能)
① 自治センターは、住民自治機能及び住民のための文化・福祉・便益機能を遂行し、
その機能は次の各号の通りである。
1.地域問題の討論、マウル環境づくり、自律防災活動など、住民自治機能 2.地域文化行事、趣味教室、展示会、生活体育など、文化余暇機能 3.健康増進、マウル文庫、青少年勉強ルームなど、地域福祉機能 4.平生教育、教養講座、青少年教室など、市民教育機能
5.会議場、お買い得売場、生活情報提供など、住民便益機能
6.私の家の前の掃除、不遇隣人援助、青少年指導など、地域社会振興機能
② 第1項の機能のうち、当該洞の実情により適合した機能を特化して重点的に遂 行することができる。
③ 第2項の規定にかかわらず、第1項第1号または第6号と関連した機能は優先 的に備えて遂行することができる。
第6条(施設及びプログラム)
① 仁川広域市延壽区長(以下「区長」という)は、自治センターが第5条で規定 する機能を効果的に遂行することができるように、洞に必要な施設とプログラム
(以下、施設等という)を備えなければならない。
② 施設等の種類と内容、その変更等は、委員会の審議を経て洞長が決めるが、洞 別特性、財政都合等を考慮して必要な場合には区長が調整することができる。
③ 自治センターの施設等を決める際に、事前に洞の管轄区域または近隣地域の類 似施設等の運営実態を充分に把握し、重複しないように努力しなければならない。
④ 区長は、同事務所が狭小であったり、賃借した建物、その他財政都合上、施設 等の設置が困難な場合には、財政計画が含まれた年次別施設等の設置計画を樹立 しなければならない。
第7条(運営)
① 自治センターの施設管理及びプログラム運営(以下「自治センターの運営」と いう)は、委員会の審議を経て洞長が行なう。
② 洞長は、委員会の意見を聞いて、所属公務員、委員会の委員または自願奉仕者に、
自治センター運営に関する事務を専担または分担して遂行するようにさせること ができる。
③ 委員会は、第2項により指定された者のうち、所属公務員を除いた委員会の委 員または自願奉仕者には、業務量と勤務時間等を勘案して、第10条第6項の規定 により徴収した受講料のうち一定金額を奉仕活動費として支給することができる。
④ 区長は、必要と認める場合には、当該洞長、委員会の意見を聞いて、自治センター の運営を公務員ではない者または団体に委託することができ、この場合区長は自 治センター運営を受託した者や団体に対して事業費等を支援することができる。
⑤ 区長は、自治センターの健全な運営と発展のために、運営費等の必要な予算を 積極的に支援するが、第10条により徴収可能な受講料の収入総額を勘案して適正 水準の予算を支援することを原則とする。
⑥ 区長は、自治センター運営に対する効率的な政策樹立、研究・開発、協助・支 援等のために必要な場合には専門家、関連分野従事者、市民・社会団体関係者な ど10人以内で諮問団を構成・運営することができる。
⑦ 洞長は、管轄区域内の自治センターと類似の機能を遂行する機関・団体等との 連携方案を積極的に講じなければならない。
⑧ 区長は、洞住民自治委員会委員長等を構成員とする住民自治協議会を構成・運 営することができ、協議会運営に関する詳細事項は別に定め、運営費用は自主負 担する。
第8条(自願奉仕者)
① 洞長は、自治センターの運営に必要な自願奉仕者を積極的に募集しなければな らない。
② 自願奉仕者は、自治センターの運営を直接担当したり、補助または講師等の役 割を遂行することができる。
第9条(講師)
① 自治センターの機能を遂行するために、必要な場合には講師を活用することが できる。
② 講師は自願奉仕者とすることが原則だが、自治センターの運営内容により自願 奉仕者ではない講師を活用することができる。
第10条(使用料等)
① 自治センターの施設等は無償利用を原則とするが、利用者から使用料、受講料 等(以下、使用料等という)を徴収することができる。
② 第1項のうち使用料は自治センターの施設・設備等を利用する場合に洞長が徴 収し、受講料はプログラムを利用する場合に委員会で徴収する。
③ 使用料等の徴収範囲と料金等の決定は区長が「別表1」で定める基準と範囲内で、
使用料の場合には委員会の意見を聞いて洞長が決め、受講料の場合は洞長と協議 して委員会が決める。
④ 使用料等の徴収範囲と料金等は受益者負担原則と公共性を考慮して合理的に決 めなければならない。
⑤ 区長は第11条第3項による利用者が低所得等特別な事由があると認められる場 合には第3項による使用料等を減免することができ、その基準と減免割合等は「別 表2」で定める。
⑥ 第2項により洞長が徴収した使用料は、仁川広域市延壽区の歳入として処理し、
委員会が徴収した受講料については、委員会が洞長と協議して自治センターの運 営に必要な経費として使用しなければならず、その収入・支出内訳を半期別に半 期経過後20日以内に公告・掲示等の方法に基づいて住民に公開しなければならない。
⑦ 洞長は、使用料の徴収・管理等のために所属公務員の中から会計責任者を指定 しなければならず、委員会は受講料の徴収・管理・支出等のために委員の中から 会計責任者を指定するが、受講料の徴収・管理・支出等は委員会の名義とする。
第11条(利用等)
① 住民は自治センターの施設等を利用することができる。
② 自治センターの施設等の利用において、住民は善良な利用者としての義務を果 たさなければならない。
③ 住民は、第10条の規定による使用料等の徴収対象施設等の利用に対しては、使 用料等を納める義務を負う。
④ 洞長は、住民が善良な利用者としての義務を果たさない場合には、その回復の ために委員会の審議を経て、弁償または利用制限など必要な措置をすることがで きる。
⑤ 洞長は、自治センターの施設・設備の老朽及び瑕疵等で利用者または自願奉仕 者が身体上の被害を被る場合に備えて施設保険等に加入しなければならない。
第12条(住民参加)
① 洞長は、自治センターの運営に対する住民参加方案を積極的に講じなければな らない。
② 管轄区域内の住民や団体は、洞長に自治センターの運営に対する参加を要求し たり、意見を提出することができる。
③ 参加の要求や意見提出がある場合、洞長はその内容を誠実に検討して妥当と判 断される場合には、自治センターの運営に反映しなければならない。
第13条(手当て)
① 自願奉仕者には予算の範囲内で必要な実費を支給することができる。
② 自願奉仕者ではない講師には予算の範囲内で講師手当てを支給することができる。
第14条(報告)
① 洞長は、毎年会計年度開始3か月前までに自治センターの年間運営計画を委員 会の審議を経て区長に報告しなければならない。
② 洞長は、第10条による使用料等の収入と支出内訳を含んだ運営結果報告書を半 期別に委員会の審議を経て、当該半期経過後20日以内に区長に報告しなければな らない。
第3章 住民自治委員会
第15条(設置)洞の自治センターの運営に関する事項を審議したり決定するために、
洞事務所に住民自治委員会を置く。
第16条(機能)
① 委員会は、次の各号の事項について審議する。
1.自治センターの施設等の設置及び運営に関する事項 2.住民の文化・福祉・便益増進に関する事項
3.住民の自治活動強化に関する事項 4.地域共同体の形成に関する事項
5.その他自治センターの運営に関して必要な事項
② 第1項の規定にかかわらず、この条例で委員会が決めるように規定した事項は 委員会の議決として決定する。
③ 委員会は、第21条による定期会の開催時、第5条第1項第1号または第6号の 機能遂行と関連した案件を審議して討論することができるように努力しなければ ならない。
第17条(構成等)
① 委員会は委員長、副委員長2人、監査を含み25人以内で構成し、顧問と諮問委 員を別に置くことができる。
② 洞長は、当該洞の管轄区域内に居住するか事業場に従事する者または団体の代 表者で、次の各号の方法により推薦または選定された者の中から、奉仕精神が透 徹したり自治センターの運営に必要な専門知識を備えた者を委員に委嘱する。
1.当該洞に所在する社会団体等で推薦する者 2.公開募集の方法により選定された者
③ 洞長は、第2項による委員の委嘱において、教育界、言論界、文化・芸術界、官界、
経済界、一般住民など各界各層が均衡が取れて参加することができるように委嘱 するが、ある一階層に属した委員が全体委員の3分の1を超過してはならず、特に、
女性委員の参加を積極的に奨励して全体委員の3分の1以上になるように努力し なければならない。
④ 委員長と副委員長、監査は委員の中で互選するが、委員長は公務員ではない者 の中から選出しなければならない。
⑤ 顧問は3人以内で洞長が委嘱するが、当該洞の管轄区域内に居住するか事業場 に従事する者で、専門的識見を備えていたり、徳望が高い者を委嘱し、諮問委員 は当該選挙区で選出されたか、当該洞に居住する区議会議員で運営する。
⑥ 洞長は、顧問を含む委員全員に対する主要人的事項を毎年度開始1ヵ月以内に 公告・掲示等の方法により一般住民に公開しなければならず、顧問を含む委員を 新たに委嘱した場合にも主要人的事項を同じ方法により直ちに一般住民に公開し なければならない。
⑦ 委員長、副委員長、監査、委員及び顧問の任期は2年とするが、再任すること ができる。ただし、委員長は1回に限り再任することができる。
第18条(委員長等の職務)
① 委員長は委員会を代表して委員会の職務を統轄する。
② 副委員長は委員長を補佐して委員長の事故ある時にその職務を代行する。
③ 監査は自治センターの財政及び事業に対する監査を実施する。
④ 顧問は自治センターの円滑な運営に寄与するように諮問・助言等の役割を遂行 する。
⑤ 委員は、毎月所定の時間を自治センター運営のための自願奉仕活動をすること ができるように努力しなければならず、月別の各委員の勤務日付、勤務時間、自 願奉仕内容等は委員会で定める。
⑥ 委員は、自治センター運営に対する住民の意見を集約するために努力しなけれ ばならず、自治センター運営等と関連した各種の教育・研修等に積極的に参加し なければならない。
第19条(幹事)
① 委員長は、委員会の委員のうち幹事1人を指名して委員会の事務を処理するよ うにさせることができる。
② 洞長は必要な場合、所属公務員に委員会の事務処理等を支援するようにさせる ことができる。