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魚肉の汚染とその低減対策 - J-Stage

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化学と生物 Vol. 50, No. 10, 2012

752

セミナー室

放射性降下物の農畜水産物等への影響-5

魚肉の汚染とその低減対策

渡部終五

北里大学海洋生命科学部,東京大学大学院農学生命科学研究科水圏生物科学専攻

2011年(平成23年)の3月11日に東北太平洋沖に発 生した大地震は大津波をもたらし,多くの方々が被災 し,幾多の人命が奪われた.また,大津波による東京電 力福島第一原子力発電所の電源喪失は放射性物質の大量 放出をもたらし,周辺地域のみならず,東日本の広い範 囲で大きな被害を受けた.この東日本大震災は,沿岸地 域の水産業および関連産業にも壊滅的な損害を与えると ともに,放出された放射性物質は沿岸の魚介類のみなら ず,内水面の水生生物をも汚染し,この面でも水産業に 大きな被害をもたらした.この原子力発電所の事故に よって放出された放射性核種のなかで,放射性ヨウ素の

131Iおよび133Iのように,半減期がそれぞれ8.06日および 20.8時間と短い放射性核種では短期的な影響で済むもの の,放射性セシウムの134Csおよび137Csでは半減期がそ れぞれ2.06年および30.1年と長く,長期的に大きな影響 をもたらすことが危惧されている.

現在,種々の機関で放射性核種のモニタリングが淡水 域や海域で行われているが,水産総合研究センターの報 告によると(1)

,福島第一原子力発電所の放水路近くの海

水中の放射性 Cs (134Cs+137Cs=134+137Cs) 濃度は2011 年3月下旬〜 4月上旬にかけては最大94,000ベクレル

(Bq)/Lに達したが,5月にはその1/1,000に,12月には 1/10,000にまで低下した.福島県を挟んだ茨城県から宮 城 県 海 域 の 海 水 中 の134+137Cs濃 度 は7月 に は 表 層 で 0.5 Bq/L程度で,8月以降は0.1 Bq/Lとなった.一方,

当該海域の海底土の134+137Cs濃度は海水とは異なり,低 下傾向が明確ではなく,散発的に高い値が検出された.

すなわち,福島県沖の大陸棚の海底土の134+137Cs濃度は 27 〜1,527 Bq/kg乾燥重量であった.

さらに,同センターの調べによると,イカナゴ(コウ

ナゴ) やそのほかの表層付近に

分布する稚仔魚(シラス)の134+137Cs濃度は,測定開始 から順次減少(図

1

,マイワシ

などの小型浮魚類も昨年の夏以降,134+137Cs濃度は減少 傾向にある(2)

.一方,底魚類では,マガレイ

のように134+137Cs濃度が経時

図1福島,茨城沿岸のイカナゴおよびシラスの放射性セシウ ム 134137

Cs 濃度の変化

渡邊・藤本(2)を改変

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的に低下する魚種もあるが,ヒラメ

のように散発的にではあるが高い134+137Cs濃度を示 す個体も見られる(3) (図

2

.なお,淡水魚の

134+137Cs濃 度は養殖魚で低い一方,天然魚で高い傾向にあり,食物 連鎖を通じた134+137Csの移行が示唆されている.

さらに,134Csおよび137Csの影響は,前述の沿岸域に 生息する魚類に比べてはるかに少ないものの,マグロ類 など大型回遊魚にも及んでいる.Madiganらの報告(2)

によると,2011年8月にカルフォルニア沖で漁獲された クロマグロ の1.5 〜 2歳魚は,幼魚 期に東北太平洋沖で放射性核種に汚染されたと考えら れ,普通肉(速筋)中の134+137Cs濃度は10.3±2.9 Bq/

kg(平均値±標準偏差) (

15) と測定され,2008年 に漁獲された同じく1.5歳魚の 1.37

±2.9 Bq/kg ( =5) 

と比較して有意に高かった.なお,Madiganらが報告(4)

した数値は本文中のほかの湿重要当たりの数値とは異な り,乾燥重量当たりの濃度である.筋肉は通常,水分を 約80%含むことから,乾燥重量当たりの数値は湿重量 当たりの数値の5倍程度大きくなる.

このような状況のもと,水産業においては安全な水産 物の早急な供給回復が求められている.さらに,長期的 な視野に立つ水産物の安全対策も重要な課題となってい る.

放射性核種の汚染魚についての研究は60年以上も前 にさかのぼる.1946年から始まったビキニ環礁におけ る原爆実験は,その後,1954年の春には水爆実験が行 われ,このとき,日本のマグロ漁船の第五福竜丸をはじ め約1,000隻以上の漁船が死の灰を浴びて被曝した.も ちろん周辺の魚介類も放射能汚染され,わが国で水産業 に及ぼす放射能の影響に関する研究が本格的に開始され たのはこのときである.筆者の東大の研究室でも大先輩 が文部省科学研究費の支援のもと,多くの研究を行いそ

の成果を発表した.そのなかの一つに,佐伯ら(5)はシイ ラの種々の組織の放射能強度を調べ,肝臓,腎臓,脾臓 および幽門垂で強く,鰓や心臓でもやや強く,一部の試 料魚では脊椎骨,卵巣,精巣にも放射活性を認めた.さ らに,筋肉についても,血合筋(遅筋)は若干強いが,

普通肉(速筋)は他の組織に比べて著しく低いことを明 らかにした.さらに,マグロ類のキハダ

の血合肉につき,水洗による放射性物質の除去効 果を調べ,等量の0.5% EDTA処理で放射活性が約1/3 に減少すること,EDTAの低減効果は純水の約2倍であ ることを報告した.

筆者らも,放射能汚染された魚類の筋肉を水さらしし て,放射性核種を除去することを試みた(6)

.魚肉の水晒

しは,蒲鉾の製造過程で行われる工程で(図

3

,魚肉

ゲル形成能を高め,製品の色つや,においの改善などに 効果が認められる.

まず,イメージングプレートを用いて組織別の放射性 核種の取り込みを定性的に調べた.福島県産のニベ 

(体 重 約379 g,筋 肉134+137Cs濃 度441  Bq/kg)を対象として調べた結果,筋肉のほか,各種内 臓器官にも放射活性が認められ,特に腸管の放射活性が 目立つが(図

4

,この腸管には放射性核種を含む餌あ

2

茨城〜福島沖のヒラメの放射性セシウム 134137

Cs 

濃度

の変化

渡邊・藤本(3)を改変

図3水産練り製品の製造工程

図4福島県産ニベ 370 g

 

各種組織のイメージングプレート で調べた放射活性の分布様式

普通筋の134+137Cs量は441 Bq/kg(未発表データ)

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るいは底泥質が取り込まれたものと思われる.なお,骨 および背鰭の基部にも高い放射活性が見られるが,これ は筋肉が付着したためと考えられる.

CsはKを代表とするアルカリ金属に属する元素で,

両者は類似した化学的性質を示す.Kはイオン化した状 態で筋細胞内に多量に存在することが知られていること から,CsもKと似た機構で濃縮したことが示唆される.

実際,ゲルマニウム半導体検出器を用いてマダラ 普通筋中の放射性核種の濃度を調べてみ

ると,134+137Cs濃度が35 Bq/kgであるのに対して,放

射性カリウム (40K) 濃度は121 Bq/kgと,約4倍も高い 値を示した(図

5

.先述のクロマグロを対象としたMa-

diganら の 報 告(3)で も2011年8月 の 漁 獲 魚 は 平 均347  Bq/kgと134+137Cs濃度の30倍以上の値を示しており,

食品学的な見地からは134+137Cs濃度が低い場合はむしろ

40K濃度のほうが問題となることを示唆しているが,今 までの食経験からは40Kが問題視されたことはないよう に思われる.

ところで,先述の先行研究(5)ではシイラを対象に,筋 肉よりもエラや皮膚に多く放射性物質が濃縮されること が示されている.一方,先の水産総合研究センターの報 告によると,内臓に比べて筋肉の134+137Cs濃度が高いこ とが示されている(7)

.水爆実験では 

55Fe, 65Zn, 115Cd な どの重金属系の核種が多量に放出されることが知られて おり(8)

,これらの核種が内蔵に多く蓄積したことが考え

られる.いずれにせよ,部位別の濃縮割合については今 後さらに詳細な検討が必要と思われる.

筆者らが放射性物質の除去に供試した試料はニベで,

いわき市沖の水深約14 mで得られた体重240 〜290 gの 5個体である(6)

.ニベの筋肉は良質な蒲鉾の原料として

知られている.採取した普通肉180 gの水さらし前の

134+137Cs濃度は334 Bq/kgであった.この試料を2試験

区に分け,いずれも3倍量の0.1%食塩水を加えて,一つ の試験区はホモジナイズし(ホモジナイズ区)

,他の試

験区は薬さじで撹拌するのみにとどめた(対照区)

.ホ

モジナイズあるいは撹拌後の遠心分離によって得られた 沈殿分画の水さらし肉の放射活性を測定したところ,ホ モジナイズ区,対照区ともに,134+137Csはいずれも25%

程度の残存率で,水さらしの効果が大きいことが示され た.両区とも撹拌操作でさらに2回水さらしを繰り返し て,遠心分離後の魚肉の放射活性を測定したところ,残 存率はホモジナイズ区で6%,対照区で20%と,ホモジ ナイズ区で除去効果が大きいことが明らかとなった.

同じく,いわき市沖で漁獲した2尾のマダラ

(体重470 〜750 g)についても同様の水 さらし処理を試みた(6)

.この場合はホモジナイズ処理を

行わなかったが,水さらし3回で134+137Csの残存率は約 20%と,ニベと同様な結果が得られた(表

2

先述のようにCsはKと同様にほとんどが筋細胞内に イオン化した状態で存在していることが想定されること から,水さらしでも簡単に除去されたものと思われる.

今後は実際に蒲鉾を製造して最終的にどの程度除去され るのかを確かめる必要がある.

最近,Furukawaら(9)により,Csが魚類のエラから 排出されることが明らかにされた.海産魚では外界の海 水に放射性Csが含まれていないか低濃度の場合は,天 図5福島県産マダラ 685 g

 

筋肉 のゲルマニウム半導体検出器による 放射性核種の測定

渡部ら(6)を改変

(4)

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然海水に含まれている非放射性Csや,大量に含まれて

いるKが腸管を通って細胞内に流入し,この流入した非 放射性CsやKが放射性Csと置換することが予想され る.先述のように137Csの放射活性が半減する物理的半 減期は約30年と長いが,水産総合研究センターによる 貝類などのモニタリング結果から,生物学的半減期は 50 〜140日と見積もられている(1)

.したがって,活魚を

放射性核種の混在しない海水で飼育することにより,

134+137Cs濃度を容易に低減化することが可能と考えられ

るが,コストなど種々の理由から漁獲物の多くは活魚と して取り扱うことができない.その場合にはやはり何ら かの加工手段により放射性核種を取り除かなければなら ない.

水産加工品には,魚肉を主対象とした水産練り製品の ほか,干物や蒸し物(シラスが代表的)など,多岐にわ たる.いずれも水あるいは塩水処理の工程があることか ら,加工品製造工程中で134+137Csはある程度除去される ものと考えられる.本年の4月から,食品として摂取し ても健康への影響はないと一般的に評価される魚介類中 の放射性Csのレベルが,従来の暫定値500 Bq/kgから 100 Bq/kgに引き下げられた.このような状況において も,現在のほとんどの汚染魚では水さらしによって新基 準値以下になると考えられる.しかしながら,科学的に 安全とされるレベルにおいても消費者の安心は確保され ないことが多い.大震災で大きな被害を受けた東日本の

水産業の復興を推し進めるには,長期的な影響が懸念さ れている放射性Csの問題に対して,科学的な知識に基 づいた魚介類の消費方法を伝えていかなければならな い.

謝辞:本稿で引用した筆者らの研究成果(文献4)は東京大学大学院農 学生命科学研究科水産化学研究室にて行われたもので,東京大学大学院 農学生命科学研究科放射性同位元素施設・放射線植物生理学研究室およ び福島県水産試験場との共同研究であることを記して共同研究者に感謝 申し上げる.また,水産庁の森田貴己博士には魚介類の放射能汚染につ いての種々の情報をご提供いただいた.ここに記して感謝申し上げる.

文献

  1)  独立行政法人水産総合研究センター: 水生生物における 放射性物質の挙動について.調査結果概要

,2012.

  2)  渡邊朝生,藤本 賢: 放射性物質影響解明調査事業報告 書

,独立行政法人水産総合研究センター,2012, pp. 13‒

16

  3)  渡邊朝生,藤本 賢: 放射性物質影響解明調査事業報告 書

,独立行政法人水産総合研究センター,2012, pp. 17‒

18.

  4)  D. J. Madigan, Z. Baumannb & N. S. Fisher : , 109, 9483 (2012).

  5)  佐伯誠道,岡野真治,森高次郎:日水誌,20, 902 (1955).

  6)  渡部終五,松岡洋子,中谷操子,潮 秀樹,根本芳春,

佐 藤 美 智 男,田 野 井 慶 太 朗,中 西 友 子:

, in press.

  7)  藤本 賢,重信裕弥,渡邊朝生: 放射性物質影響解明調 査事業報告書

,独立行政法人水産総合研究センター,

2012, pp. 19‒121.

  8)  佐伯誠道:日水誌,23, 729 (1958).

  9)  F.  Furukawa,  S.  Watanabe  &  T.  Kaneko : ,  doi:10.1007/s12562-012-0492-6 (2012).

表1

3

倍量の水さらし水 0.1%NaCl

 で水さらしたときのニベ筋肉の放射性セシウム残存率

試料 134Cs (Bq/kg) 137Cs (Bq/kg) 134+137Cs (Bq/kg) 放射活性残存率 (%)

落し身 151.0 183.0 334.0 100.0

ホモジナイズ1回   38.5   47.3   85.8   27.1

同2回a   16.8

*

  24.8   41.6   14.4

同3回   5.81

*

  12.3   18.1     5.9

ホモジナイズなし1回   32.3   44.3   76.6   23.8

同2回   28.6   40.8   69.4   21.7

同3回   26.1   38.8   64.9   20.3

a試料欄でホモジナイズは画分の意味で,2, 3回目はホモジナイズしていない.

*

測定限界値以下.

渡部ら(6)を改変

2

3

倍量の水さらし水 0.1%NaCl

 で水さらしたときのマダラ筋肉の放射性セシウム残存率

水晒し回数 134Cs (Bq/kg) 137Cs (Bq/kg) 134+137Cs (Bq/kg) 放射活性残存率 (%)

供試筋肉 163 100

1 29.5 35.7 65.2 40.3

2 24.2 24.3 48.5 30.0

3 13.9 23.5 37.4 23.1

渡部ら(6)を改変

Referensi

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