令和3年度 研究プロジェクト実施報告書
研究代表者:愛知学泉短期大学 生活デザイン総合学科 木村典子
地域に広めよう「アドバンスド・ケア・プランニング」
人生の物語を大切な人に
1. 研究活動の概要
本研究は健康なときから、生涯教育の一つとして取り組むアドバンド・ケア・プランニング(以下 ACP) の効果的な普及啓発の示唆を得ることを目的とした。研究に取り組んだ理由は 2 点あった。医療事務の 資格の教育内容で、医療倫理について、に求められるようになってきたこと、介護教育においては、さ らに強化する項目となってきたからである。2点目は大学の地域貢献の一環である。厚生労働省は ACP を人生会議と称して、普及を進めているが、なかなか浸透していない現状があったからである。
研究の進め方は第1研究では文献レビューなどをもとにリーフレットの作成、第2研究ではACPにつ いての意識調査、第 3 研究では、リーフレットを使った介入研究をすすめた。研究をすすめていく過程 で、学生が大学で学んだ知識を活用して、地域住民向けのリーフレットを作成、デザインに参加する、
地域の人と関わりを通して、最新の医療倫理を実際に体験できるようにした。実社会と繋がった教育の 機会となり、社会問題についての解決を学ぶことがpisa型学力を高める機会となった。
第 1 研究では研究者を中心に文献などを活用して、パイロット版リーフレットを作成した。作成した パイロット版リーフレット、学生、地域のケアマネジャーらの意見を併せて、完成版リーフリット「人 生会議の普及リーフレット」を作成した。リーフレットでは地域住民の方に興味を持ってもらえるよう にするために、「死」「看取り」といった日本人が忌み嫌う言葉をあまり取り入れないようにし、気分が 落ち着く配色、絵でわかるような工夫をした。学生達の意見を参考に、リーフレットを手にしたした人 が視覚とともに、音声からも、わかるように、音声入りのリーフレットに改善した。
第2研究では、作成したリーフレットを地域の高齢者施設の管理者に100件送付し、アンケート調査 を実施した。調査項目はリーフレットを視聴しての感想、ACPの理解度とした。回収率は30%であった。
リーフレットは音声を入れたことでわかりやすいといった評価であった。
第 3 研究では地域住民の方にリーフレットを視聴する機会を設け、インタビュー調査を行った。研究 に協力して頂いた方は20歳代から80歳代の8名であった。70歳代、80歳代の高齢者は身近なこととし て捉える傾向にあった。
2. 成果
(1) 第1研究 リーフレット作成
福祉・介護について学んでいる学生の 5 名がリーフレット作成に参加した。パイロット版リーフレッ トをもとに改良を加えていった。「テーマが重いのリーフレットなので、心を落ち着かせる青色をとりい れるとよい」「自分たちは終末期ケアについて学んだが、一般の人はわからないと思う」「人生 100 年時 代といった長い人生を表わせるものを取り入れるとよい」「大学の遠隔授業でおこなっているように、リ
ーフレットに音声がはいるとわかりやすくなる」「人生会議という言葉をあまり知らないと思うから、絵 などを多くしていくとよい」などの意見と、地域の意見をもとに、コンパクトサイズであるA5版、縦長 サイズ、12頁で構成したリーフレットを完成した。一部を示す。
(2) 第2研究 高齢者施設で働く職員へのアンケート調査の結果
リーフレットを視聴しての感想では90%がリーフレットはわかりやすい、勉強になった、活用と手行 きたいと高評価であった。リーフレット中の図、頁間の繫がりの工夫があるとようといった意見があっ た。ACPの理解度では20 点満点で Ave(13.5±2.6)であった。書面で残す、繰り返し行うことの理解、
高齢者の胃ろう造設後の寿命に関する問いに関して、理解が低い結果となった。
(3) 第3研究 地域住民へリーフレットの活用 身近なこととして捉える傾向にあった高齢者の声に、「人生会議」について、健康な時から病気になっ
た時のことを考えておくことの大切さ、家族と話し合っておくことの大切さを感じた、言葉は知らなか ったが、新聞等で必要性は知っていた、いくら希望があってもみてくれる人がいないと叶わないと思っ たなどがあった。
3. 考察・今後の課題
健康なときから生涯教育としてACPに取り組む研究を試みた。研究をすすめていく過程で、学生が大 学で学んだ知識を活用して、社会問題についての解決を学ぶことがpisa型学力を高める機会となった啓 発のためのリーフレットの作成を通して、学生達は実社会の問題を具体的に解決する方法を体感するこ とができた。学生達が改善案として、リーフレットを手にしたした人が視覚とともに、音声からも、わ かるように、できたことは活用の幅が広がった。コロナ禍、地域住民が集まっての講習会などの開催が 難しくなっている。と思われる。今後は、地域包括支援センターと連携をして、リーフレットを活用し て、介入研究を増やすことで、効果をさらに、検証していきたいと考えている。