2019年度・線形代数学・同演義II 2019年10月10日
§2 線形写像
今回の内容は教科書p. 114およびpp. 117–118に相当します.また最後の問題2.5は,
教科書2.6節,2.7節の内容の復習です.
2.1 [参考:教科書の例題4.2]
V ={ f : R→ R| f は無限回微分可能}とおく.このV は実線形空間である.
(1) Φ:V →V を,f ∈V に対し
Φ(f)(x)= f′(x)+2f(x)
と定めることにより定義する(もっと簡単に,Φ(f)= f′+2f などと書くことも多 い).Φが線形写像であることを示せ.
(2) Φ:V →V を,f ∈V に対し
Φ(f)(x)= f′(x)+x f(x−1)
と定めることにより定義する.Φが線形写像であることを示せ.
(3) Φ:V →V を,f ∈V に対し
Φ(f)(x)= f′(x)+ f(x)2
と定めることにより定義する.Φが線形写像でないことを示せ.
2.2 K = RまたはK = Cとする.任意の線形写像Φ: Kn → Kmは,K の元を成分とす るあるm×n行列Aによって
Φ(x)= Ax (任意のx ∈Kn について)
と表される.そのことを証明せよ.
2.3 [出典:教科書の問4.6]
次の写像Φ: R[x]n+1 → R[x]n が線形写像であることを示せ.ただし,R[x]n は実数 を係数とするn次以下のx の多項式全体のなす実線形空間である.
(1) 多項式 f(x) ∈V に対して
f′′(x)+ f(x) − f(1) x−1 を対応させる写像Φ.
(2) 多項式 f(x) ∈V に対して(x+1)f′′(x) − f′(x)を対応させる写像Φ. (3) 多項式 f(x) ∈V に対して x f′′(x)+x2f(1)を対応させる写像Φ.
2.4 V を実数列{an} の全体からなる実線形空間とする.写像Φ:V →V を,{an} ∈V に対し数列{bn}を
bn = an+1−2an
により定め,Φ({an})= {bn}とおくことによって定義する.
(1) Φが線形写像であることを示せ.
(2) Φの核KerΦとは,具体的にはどのような数列からなる集合か.説明せよ.
(3) Φの像ImageΦがV に一致することを示せ.
2.5 [参考:教科書の例題2.5.係数行列は問2.10からとった]
A= ©
«
1 2 3 1
1 −1 1 −1 3 0 5 −1 ª®
¬ とおき,行列 Aの定める線形写像ΦA: R4 →R3,すなわち
ΦA(x)= Ax を考える.
(1) 行基本変形を用いて,Aを標準形(教科書p. 49の式(2.16)の形)に変形せよ.
また,rankAを求めよ.(以下の問題ではr =rankAとおく.)
(2) ΦAの核 KerΦA = {x ∈R4 | Ax =0} を張るような,線形独立な4−r 個のR4 のベクトルの一例を挙げよ.[注:「ベクトル x1, . . ., xk が{x ∈R4 | Ax= 0} を 張る」というのは,{x ∈R4 | Ax = 0}に属するすべてのベクトルが x1,. . ., xk の 線形結合として表されるということ.]
(3) ΦA の像 ImageΦA = {y ∈R3 | Ax = y をみたす x ∈R4が存在する} を張るよ うな,線形独立なr 個のR3のベクトルの一例を挙げよ.