2023年度 日本史探究に向けての授業実践
2022年度から実施される学習指導要領において、社会科の新設科目として「日本史探究」
(2023年度より実施)が設定されます。本校の社会科として取り組んでいる「問い」を提 示して、その「問い」について生徒が自ら考え表現する授業の取り組みの一環として、今年 度の日本史Bの授業内において、「本質的な問い」から授業を設計する、以下のよう授業実 践を実施しましたのでご紹介いたします。
問い
右の写真は、1945年9月2日、東京湾上に浮 かぶアメリカ戦艦ミズーリ号において行われた 日本の降伏文書調印の様子である。日本側の代 表は、重光葵外相(写真中央前列左)と梅津美 治郎参謀総長(同右)である。なぜこの2名が 降伏文書に調印することになったのか。当時の 日本の政治体制と、GHQのこの後の日本の占領 政策の方針を考慮した上で説明しなさい。
(150字程度)
※授業プリントより抜粋。上記写真については、著作権の関係により削除
この問いに対して、2名の生徒がこの問いを考えるためのプリントを作成し、授業内におい て発表しました。
(生徒Aの発表の様子)
写真
戦艦ミズーリ号上の日本代表団
生徒A作成の問いを考えるためのプリント
◎天皇大権とは
・概念・・・国の統治者である天皇が持つ権利
・条件・・・1,( 議会の承認 )なしに執行できる
2,( )が単独で補弼する( を除く)
※補弼・・・天皇に代わって天皇大権をこうしし、天皇に対して責任をとる Why→天皇は憲法に( )な存在だと規定されているから
神聖不可侵・・・天皇は神であり、間違いを犯せない(間違えちゃダメ)
=責任をとらない(とらせちゃダメ)
→重要事項の決定、執行は内閣(政府)が行うことになる
・種類・・・陸海軍の編成(軍相)、宣戦・講和・条約の締結(外相)、戒厳令の発令、
緊急勅令、文武官の任免、など ・( )・・・軍隊の最高指揮権
※各国務大臣が補弼できない( の独立)
事実上、( )と( )が補弼 (陸軍) (海軍)
生徒B作成の問いを考えるためのプリント
◎まとめるとキーワードは天皇大権とGHQの天皇制維持だ フローチャート① 天皇大権
明治憲法→天皇は「神聖不可侵」と規定→天皇大権を持っているけど、それを利用したこ とで生じたミスへの責任がとれない。だって人の形をした神がミスをするは ずがないんだから。
↓
だから、天皇大権は国務大臣や参謀総長に補弼される ↓
降伏文書は外交と軍事の2面がある 外交権・・・外相が輔弼
統帥権・・・参謀総長が補弼 ↓
降伏文書の重光外相と梅津参謀総長がサイン
フローチャート② 天皇制の維持
GHQ・・・占領政策で天皇制を利用したい ↓
天皇を利用するなら、天皇はえらいままでなければならない ↓
降伏文書=自ら負けを認める行為
これを天皇がすると、神様である天皇が負けを認めたと国民にうつり、
天皇の権威が落ちる
↓
天皇は国民統合としての立場を失う恐れあり ↓
だからGHQも降伏文書に天皇ではなく、外相と参謀総長にサインをしてほしかった (実際そうなった)
歴史の構造の説明と、それを論証するための歴史的事実を組み合わせた説明に、授業を受け ている他の生徒も集中して発表を聞いていました。
今後も、生徒がより良く学べるための取り組みを継続していきたいと考えております。
令和2年度 一般財団法人 日本私学教育研究所 委託研究委員 啓明学園 社会科主任
佐藤 竜之