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Fuzzy集合を用いた情報検索モデル

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(1)

(213) −57一

Fuzzy集合を用いた情報検索モデル

橋 本

1.はじめに

 収集した一定の情報を後の検索に便利な形で蓄積しておき,必要に応じ検 索することを通常情報検索と呼んでいる。ここでは,情報として科学技術関 係の文献,または論文のようなものを考える。したがって,ここでの情報検 索とは文献検索の意味である。また検索方式としては,文献の内容を示すキ

ーワードというものを各文献に与えて蓄積しておき,文献をさがす場合は,

そのキーワードを手がかりとして検索する方式を考える。このキーワード方 式の文献検索に関して情報検索の数学的モデルを構成し,その若干の性質を 述べる。モデルの構成にあたってはFuzzy集合の理論を採用する。 Fuzzy集 合はL.A.Zadeh〔1〕によって提出されたものである。この集合は境界の

明確でない集合として考えることができ,その理論はあいまいさのあるもの,

または2恒的に決めがたいものをとりあつかうめに都合がよい。これまで Fuzzy集合の理論を種々の分野へ適用することが試みられている。しかし,

最もよく適用できる分野とおもわれる情報検索に関してはほとんど適用され ておらず,また以下で述べるような形で,その理論を積極的に活用したモデ ルはみられない。

 従来の文献検索では,その文献の内容を表わすキーワード間の関連という ものが十分考慮されていない。そのためあるキーワードを手がかりにして文 献をさがしている場合,それと同義のキーワードまたは関連のあるキーワー

ドがあっても,機械的検索においては無視されてしまい,その関連のあるキ

ーワードの付けられている文献はとり出せないことになる。したがって,そ

(2)

58− (214) 第22・巻 第3・4号

のような文献をもとり出すためにはキーワード間の関連を考慮して検索する ことが必要である。しかしながら,キーワード間の関連をとり入れた検索手 法には従来満足すべきものがなかった。これに対して,ここではFuzzy集合 の理論を採用して,キーワード間の関連を考慮する検索手法を構成したもの

である。

 そのキーワード間の関連を考慮するために,関連度行列なるものを導入し,

これによってキーワード間の関連を表示する。一方,文献の検索要求は論理 関数の形の質問式で表現し検索を実行するが,検索の実行にあたっては Fuzzy集合の演算を採用する。 Fuzzy集合の演算は人間の感覚と大体一一致し ているとおもわれ,またその性質も容易に知ることができるので都合がよい。

 以下で述べるようなモデルは,従来提案されておらず,今後の情報検索の 研究に役立つものと考えられる。しかし,意味の問題のような情報検索の本 質的困難を解決するにはこのモデルだけでは不十分であり,幅広い接近法が

のぞまれる。

2.演算の定義

 x,yを0と1の間の数値をとる変数とするとき, x>y, x〈yおよび Xをつぎのように定義する。     

  xVy≡max{x, y},x〈y≡min(x, y},XE1−x

たとえば

  0.8>0.5=・max{0.8,0.5}=0.8, 0〈1== min{0,1}=0

  0「:7 =1−O.7 == b.3 

また各要素がoと1の間の数値であるベクトルx,yに関しても同様に定義 する。すなわち

  X= 〔x1,x2,…  ,xη〕   , y= 〔y1,y2, …  ,Yn〕「

に対して、

  X Vy= 〔x1>y1,x2Vy2,一 …  , )免>Yn〕

(3)

         Fuzzy集合を用いた情報検索モデル      (215)−59−

  X 〈y= 〔xl〈y1,x2〈y2,… ,xη〈yn〕

  ヌ=〔x・, x2,…,又n〕   、       . ただし,  は転置を示す。

 たとえばx=〔o,o.4,1〕t,y=〔o.2,0.5,0〕 のとき

  x>y=〔0>0.2,0.4>0.5, 1>0〕  =〔0.2,0.5, 1〕「

  x〈y=〔0〈O.2, 0.4〈0.5, 1〈0〕  =〔0, 0.4, 0〕         ・   ft= 〔0ヅ0.4, i〕 == 〔1, 0.6, 0〕

 さらに,行列間の演算に関しても同様に定める。各要素が0と1の間の数 値をとる行列Aニ〔a 」〕,B=〔bij〕,C=〔cのに対して

  A>B==〔aiノ>b呂ノ〕,A〈B・=〔a 」〈b∫」〕,入=〔aゴノ〕

  A・C=:〔(a・・八・ti)〉(・i・〈・オ)〉…v(・im〈・m)〕

 ただし,A, Bは(1,m)次行列, Cは(m, n)次行列とする。この とき,A・Cは(1, n)次行列となる。すなわち通常の行列積の積和をく,

vでおきかえて定義したものである。

たとえば

A− [湖 B−[°♂『

難〔1∵]A〈B−[°淵入一[1∵]

A・B− [湖・[°網一[:IA9:1蹴3:

     1訟::::と(0.8〈1)(0〈1)レ[°鋼

 以下においては,この行列算を用いてモデルを構成する。それによってモ デルがきわめて簡明に表現できる。

3.各種行列と質問式

 蓄…積されている文献の集合を{D、,D2,…, D.}とし,またそれらに付け られているキーワードの集合を{K、,K2,…, K。}とする。以下,モデルの

(4)

60− (216)

第22巻第3。4号

構成において必要ないくつかの定義をおこなう。

 (1)文献キーワード行列

 文献とキーワードの間の関係を示す文献キーワード行列Aの要素aijはつぎ のようにして定義される。

{二1:ll::∴1:::1::∵∵

 たとえば,今5個の文献と4個のキーワードがあり,それらの間の関係が つぎの文献キーワード行列Aで与えられたとする。

    K、K2 K3 K4 このとき,この行列から文献D、には2つのキー   Dl

  D2

A=D3

  D4   D5

1

0

1 1

0

1 1 1

0 0

0

1

0

1

0 0 0

1 1 1

ワードK、とK2が付けられており,またキーワー ドK1は文献D,, D3, D4に付けられていることが わかる。さらに,キーワードK、とK2が同時に付 けられている文献としてはD1とD3があることな どがわかる。       〆

 (2)キーワード関連度行列と文献関連度行列

et一ワードKiとKjとの間の関連の度合,すなわち関連度をr、ijで示す。こ のr ノは0と1の間の数値をとるものどし,関連の大きい場合ほどその値は

1に近くなるものとする。またKjとKiとの間の関連度はK,とKjとの間の関連 度に等しいものと考え,自分自身に対する関連度は1とする。すなわち

  0≦rij≦1, r j=rji, rii=1

この関連度rijを(i,1)要素とする行列をee ・一ワード関連度行列とよび,

以下行列Rで示す。

 同様にして文献問の関連度行列を考え,それを行列Sで示す。

 なお,この行列RおよびSをどのようにして求めるかについては,ここで は議論しない。何か適当な方法で,たとえば統計的な手法ですでに求められ ているものと仮定する。

 (3)質問式

(5)

         Fuzzy集合を用いた情報検索モデル      (217)−61一  文献の要求者から与えられた要求を分析して,それをキーワードに関する 論理式で表現したものを検索の質問式とよぶ。この質問式Qはつぎのように   ノしてつくる。

 あるキーワードKiに関連の大きい文献をさがすどきは

  Q・・Kl

 2つのキーワードKiとK」のすくなくとも一方に関連っ大きい文献をさがす

ときは

  Q=Ki>Kj

 2つのキーワードKiとKjの両方に関連の大きい文献をさがすときは

  Q・=Ki〈Kj

 あるキーワードKiに関連の小さい文献をさがすときは

  Q二瓦

とする。またこれらを組み合わせてざらに複雑な質問式をつくることができ る。たとえば

       1

  Q== K、〉 (K2〈K,)

これはK、に関連の大きいか,またはK2に関連が大きくかつK3に関連の小さい 文献をさがす場合の質問式である。

 一般に,キー」ワードK、,K2,…, Knから構成される質問式Qを   Q=Q(K、,K2,…, Kr)

で表わす。なお,質問式Q(K、,K2,…, Kn)の中には必ずしもすべてのキ

ーワードK、,K勿…, Knが含まれているわけではない。その中のいくつかの キーワードを用いて構成されているものと考える。これは添字を簡略化する

ためである。

4.検索手順とモデル

(1)演算子としての)(  −Lワード

文献キーワード行列AおよびキーワードKiに対して AK,

(6)

62− (218)

第22巻第3・4号

で行列Aのi番目の列ベクトルを示すことにする。またRK,や(A・R)Ki についても同様で,それらはそれぞれ行列RおよびA。Rのi番目の列ベク

トルを示すものとする。

 たとえば  KIK2K3K4     Dl

    D2

  A・=D3

    D4     D5

とするとき

また

AK2二

Dl D2

A。R == D,

D4 D5

1 1 1

0 0

K、K2K31〈.,

1 1 0 0 0 1 1 0

L1 0 1

1 0 1 1 0 0 0 1

(A・R)K、一

1:1」

   KIK2 K3K4

      ノ

RK・一

[g?:1

  K,K2 K3 K。

[慰i/一

K、K2 K3 K41  1 0.1 0.5

0 1 10.8 1 10.8 1 10.4 1 1

0.50.40.8  1

 (2)文献とキーワード間の関連      

 以下において,キーワードKiとKjとの間の関連度r〃をr(Ki, Kノ)で示す。

 文献Diに付けられているキーワードをKi、, Ki2,…, Kin(i)とするとき,

このキーワードの集合{Ki、, Ki2,…, Ki。(o}とキーワードKノとの間の関連 の度合を

  r({ Kil, Ki2,…, Kin(i)}.Kノ)または r(Di, Kj)

で示し,これをつぎのように定義する。

(7)

Fuzzy集合を用いた情報検索モデル (219) −63一

  max{r(Ki1, Kノ),r(Ki,, Kノ),…, r(Ki。(i)ヅKj)}

すなわち,その文献Diに付けられているキーワードの中で, Kノに対し最も 大きな関連度を示すもののその値をもって,文献DiとキーワードKjどの間の

Di

Ki1 Ki2

Kir(

Kj

関連の度合とするものである。

 たとえば,文献とキー7ワードの関係およびキーワード間の関連度がつぎの 行列AおよびRで与えられているとする。

     KI K2 K3 K4       KI K2 K3 K4   Dl

   D2

  A=D3

   D4    D5

このとき

1 1 0 0 0 1 1 0 1 1 0 1 1 0 1 1 0 0 0 1

   r(D1,K1)=・r({K1,K2},K1)=max {r(K1,K1),r(K2,Kユ) 1

       =max{1,0}−1

   r(D3,K3)=r({K1,K,,K4},K3)=max{r(K1,K3),r(K2,K3),

      r(K4,K3)}=・max{0,0.1,0.8}=0.8

 上の例からわかるように,文献D3ば{K、, K、, K、}なるキーワードの集合 で表現されているが,これとキーワードK3との間の関連の度合は,集合{K、

K、,K、}の中にK,と関連の深いキーワード民が含まれているために,その中 にK3という、キーワードは含まれていないにもかかわぢず,0.8という値にな

る。このようなことは検索においてきわめて都合のよいことである。

 ここで,先に定めた文献キーワード行列Aの要素a.ijをa(Di, K」)と書く

(8)

o

64−(220)   .第22巻第3・4号      .

ことにすると,文献Diに付けられているキーワードがKi、, Ki2,…, Ki。(i}であ

るからp=1,2,…,n(i)に対しては       』

    a(Di, Kip)=1 である。

 一方,集合{Ki、, Ki2,…, Ki。a) 1に含まれていないキーワードすなわち

文献Diに付けられていないキーワード玲に対しては

   ail=  a(Di, Kl);0 『 である。

 したがって,・文献DiとキーワードKjとの間の関連の度合r(Di, Kj)はつ ぎのようにも表わされる。

 r(Di ,Kj )==ma x{r(Ki、, Kj), r(Ki2, Kj),…, r(K ,ω,Kj)}

    ニma x{ail〈r(K1, Kj),a i2〈t(K2, Kj),…, ain〈r(Km, Kj)}

     ・==(ai、〈r.ti)〉(ai,〈rオ)〉…〉(ain〈r㎡)     ・      =〔ai、,ai、,…,ai n〕・〔rゴ,rZi,…,rガ〕

ここでベクトル〔ai、;ai 2,…, ai n〕および〔rti,r幻,…, rti〕 につい

て考えると,前者は文献キーワード行列Aの第i,行目のベクトル,また後者.

はキーワニド関連度行列Rの第j列目のベクトルである。したがって,

r(Di, K」)をi番目の要素とする列ベクトルbノを考えれば, bゴは

bノニ

r(D1, Kj)

r(D2, Kノ)

r(D。,K」)

all  a12°° aln a21  a22 a2π

a伽1  am2°° am

(a、、〈r、」)〉(a、2〈r勿)V…V(a、。〈rの

(a,、〈rゴ)〉(a、、〈rオ)〉…V(a、。〈rの

・o・.9・・°.・・●・o●●●o●●・...●●●●●●●●.・●・o●oo」・ ←,,oP●■・●■

(a鋭1〈セゴ)〉(a励,〈r勿)V…〉〈a,nn〈rの

 rゴ

 r拶

 も●●

 「㎡

=A。(RKj)=(A。R)Kj

(9)

Fuzzy集合を用いた情報検索モデル (221) −65一

で表わされる。さらにbjをj番目の列ベクトルとする行列Bを考えれば,行

列Bは

  B=〔bi, b2,…,h〕=〔A。(RK1), A・(RK2),…, A。(RIくr)〕

       =A。〔RLK1, RK2,…, RK 〕

       =A。R

で表わされる。この行列Bはキーワード間の関連を考慮した場合の文献キー ワード行列と考えることができる。

 文献とキーワード間の関連の度合を上のように定義することが実際の場合 に妥当かどうかは検討を要する。この定義を変えればt ここで述べるモデルと は別あモデルが構成され,それに応じた結果が得ちれるであろう6

 (3)文献と質問式との間の関連

      ノ

 これはつぎのように定める。ある文献Diとキー7ワードK、, K2,…, K。から 構成される質問式Q・=Q(K、,K2,…, K。)と、の間の関連の度令r.(D , Q)は

    r(Di, Q)≡r(Di, Q(K、, K2,…,Kln)

        ≡Q(r(Di, K1), r(Di, K2),…, r(Di, Kn)):

で与えられるとする。

 たとえば        1

  r(Di,KIVK2)=r(Di,K1)V r(Di,K2)

  r(Di, K1〈R2)=r(Di, K1)〈r(Di, K2)

具体的に,文献キーワード行列Aおよびキーワード関連度行列Rがつぎのよ うに与えられているものとする。

     KI K2 K3 K4       KI K2 K3 K4

 Dl

  D2

A=D3

  D4   D5

1 1 0 0 0 1 1 0 1 1 0 1 1、0 1 1 0 0 0 1

 このとき,文献と質問式との間の関連の度合の例としてr(D、,K、vK2)と r(D5, K1〈R2)を求めてみる。

(10)

66−(222)   第22巻第3.「4号

  r(D1,KlvK2)=r(D1,K1)v r(D1,K2)      f         ・=r({K1, K2},K1)>r({K1, K2},K2)

        =(・(K・・K・)>r(K・,K・))〉(・(K,,・K、)v・(K。,K,))

        ・=(1>0)V(0>1)・=1>1=1

  r(D5, K1〈R,)=r(Ds K,)〈r(D. K2)

        一・({K,1, K、)〈椰)

        ・=r(K凄,『K,)〈/r(K4, K2)

        ニ0.5/\0.4==0.5〈0.6==0.5

 さらに,質問Q=K、〈K,について,すべての文献との間の関連の度合を計  喝 算してみるとつぎの表のようになる。

D,

D2 D3 D4 D5

r(Dご,K、) r(Dゴ,K,) r(D ,K、〈K、)

1 0.1 0.1

0 1 0

1 0.8 0.8

1 1 1

0.5 0.8 0.5

のとする。一般の質問Qに対しても同様に考える

 また,

r ニ

 このr(D,,K1〈K3)

の大きい文献ほど質問Q

=K1〈K3によく適合した 文献であると考え,文献 をとり出す場合はこの値 の大きいものから順に必 要な個数だけとり出すも

r(Di, Q)をi番目の要素とする列ベクトルrを考えると, rは

r(D、,Q)

r(D. Q)

r(Dm, Q)

r(D、,Q(K、, Ki,…,K ))

r(D2, Q(K、, K2,一…,Kn))

r(Dm, Q(K. K,,旨…,Kn))

Q(r(D、,K、), r(D、, K2),…, r(D、, K,))

Q(r(D2, K、), r(D2, K2),…,r(D2, Kn))

Q(r(Dm, K、), r(Dnt, K2),…, r(Dm, Km))

(11)

Q

Fuzzy集合を用いた情報検索モデル 喪Bl;長1

r(Dm, K1)

r(D1,K2)

r(D2,K2)

r(Dm, K2)

  二Q(b、,b,,…, bn)

  二Q((A・R)K、,(A。R)K2,

で与えられる。

 (例)

        KIK2K3K4

  Dl   D2 A=D,

  D4   D5

1

0

1 1

0

Q 一=K、〈K2

r =

1 1 1

0 0

0

1

0

1

0 0 0

1 1 1

r(D1,K1〈K2)

r(D,,K1〈K2)

r(D3,K1〈K2)

r(D,,K1〈K2)

r(D5,K1〈K2)

r(D1,K1)

・r(D2,K1)

r(D3,K1)

r(D4,K1)

r(D5,K1)

r(D1,K貿)

r(D2,K質)

r(D魏,K。)

… (A。R)Kn)

       K1   Kl   K2

R=K3

1 0 0

K40.50.40.8

(223) −67一

K2 K3 K4 0 0 0.5 1 0.10.4 0.1 1 0.8      1

r(D1,K1)〈r(D,,K2)

r(D2,K1)〈r(D,,K2)

r(D, , K,)〈r(D3,K2)

r(D4,K,)〈r(D4,K2)

r(D5,K,)〈r(D5,K2)

r(D1,K2)

r(D2,K2)

r(D3,K2)

r(D,,K2)

r(D5,K2)

(A。R)K1〈(A・R)K2

ここで

r ・=Q((A。R)K、,(A。R)K2,…,(A。R)Kr)

の右辺を

     (A。R)Q(K、,K2,…,K,)または(A・・R)Q

と書くことにする。   t たとえば

(12)

68−(224)

第22巻第3・4号

    (A。R)Klv(A・R)K2=(A。R)(K1>K2)

    (A。R)Kゴ=(A。R)K,

 さらに,A。Rに相当する部分を行列Wで示すと,結局検索の結果rは

   r=WQ

で与えられる。これがここで目的としたFuzzy集合を用いた情報検索のモデ

ルである。

 また文献間の関連度行列Sを考慮する場合の検索の結果rは    r==(S。A。R)Q

で与えられる。この場合もS・A・Rに相当する部分を行列wで示せば,結

果rは

   r=WQ

となる。文献間の関連を考慮しないとき,すなわち行列Sが単位行列であれば

   W=S。A。R=・A。R

となる。

 次節で,このモデルのいくつかの性質を列挙する。なお,r=(A・R)Q においてRが単位行列であれば,r=AQとなり,これは従来の同義語をみ

と{めない場合の2値的検索モデルに相当し,Rが対称行列であって0,1の 要素をもち対角要素がすべて1であれば,同義語をみとめる場合の2値的検 索モデルに相当する。前者後者ともにこのとき,rは0,1の2値のみから なるベクトルとなる。

 (例)

   KIK2K3K4  D11 1 0 0

  D20 1 1 0

A二D3 1 1 0 1

  D、10 11

  D50 0 0 1

(i) Q = K、〈K2のとき

(13)

Fuzzy集合を用いた情報検索モデル

r==AQ=A(K、〈K2)=AK、〈AK2=

1

0

1 1

0

1 1 1

0 0

Dl D2

=D3 D4 D5

(225) −69一

1

0

1

0 0

 したがって,この場合質問Q=K、〈K2に適合する文献として, D、とD3がと り出される。

   (ii) QニK、vK、のとき

      1  0  D, 1       0   1  D2 1     r==AQ=A(K1>K、)=AK、>AK、= 1 > 0 ・=D3、1       1  0  D4・1       0  1  D5 1

 この質問QニK、>R、に対してはすべての文献が該当することになる。それ は質問の意味を考えても当然である。 このように,2値的な場合では補元律

が成立する。

   ㈹ Q= K、〈k、のとき

       1        0    r=AQ=A(K、〈k、)=AK、〈AK、= 1 〈        1        0 こめ場合にはいかなる文献もこの質問に該当しない。

0

1

0 0

1

 D,

 D2

・=D3

 D,

 D5

0 0 0 0 0

 一方,Fuz2y集合め演算で注意しなければならないことは通常の集合で成 立する補元律が一般には成立しないことである。たとえば質問式をKゴ〈Rjと

.して検索したとき,上の例で示すように従来の検索では何も検索されないが,

Fuzzy集合の演算を採用した場合は必ずしもそうではない。それは玲くR}の 解釈がことなるからでなる。すなわち,2値的な場合であれば質問式Kj〈罵 はキーワードKjに関連が有りかつKjに関連の無い文献, t tいいかえるとキーワ ー ドKjが付けられている文献であってかつKjの付けられズいない文献脅さが せという質問式であって,内容的に矛盾しているものである。これに対し,

(14)

70− (226)

第22巻第3・4号

Fuzzy集合の演算を採用したときは;Kj A KjはKjに関連の大きい文献であっ て,またカヤつKjに関連の小さい文献をさがせということになり,任意の文献

とその質問式との間の関連の度合は一般に次の関係で与えられる。

  0.5≧r(Di, Kj〈kj)≧0

すなわち,必ずしも0にはならないわけである。また質問式がKj>Kjの場合 も同様であって,そのときは

   1≧r(Di, Kj>Rj)≧ 0.5

となる。上の関係は基本的にはつぎの性質によるものである。

   1≧x≧0のとき

    0.5≧x〈k≧0, 1≧x>又≧0.5   たとえば,x=0.6のとき

    x〈又 ==0.6・ぺ0.6==0.6〈0.4=0.4     xv・又=0.6>0.6=0.6>O.4=0.6

各文献に対する上の関係を例で示すとつぎのようになる。

 (例)

       KIK2K3K4

  Dl   D2

A=D3

  D4   D5

1 1 0 0 0 1 1 0 1 1 0 1 1 0 1 1 0 0 0 1

   Dl    D2 A。R=D3    D4    D5

KI K2 K3 KL,

1  1 0.10.5

0 1 1 0.8 1 1 0.8 1 1 0.4 1 1

0.50.40.8  1

    KIK2K3K4

(i) Q=K、>K、のとき

 r=・(A。R)Q=(A。R)(K、>k、)=(A。R)K、〉(A。R)K、

(15)

 1  0  1 1 0.5

Fuzzy集合を用いた情報検索モデル

  0

  1

>  0

  0

 0.5

(ii) Q=K、〈K、のとき

 DI l  D2 1

D3 1

 D, 1  D5 0.5

(227) −71一

「=T−(A°R)Q−(A・R)(K・〈K、)一(A・R)K、〈(A・R)K、

 1 0

1 0.5

 0  1

0 0

0.5

 D, O

 D2 0

D3 0  D4 0

 D5 0.5

 以上のことからわかるように (A・R)(Kノ>Rj)の要素が常に1である とはかぎちないし,また(A・R)(Kj〈R」)が常に零ベクトルであるとはい

えない。

5.主要な性質

以下に列挙する性質はいずれも1まぼ自明であるから,いくつかのものを除 いて,証明は省略する。Aは文献キーワード行列, R, R、, R2はキーワード 関連度行列,Sは文献関連度行列, Ki, Kjはキーワードを示すi,

 (1) (A。R)Ki=A。(RKゴ)

    (A・R(2))K,=A・R・(RK,) (ここにR②はR。Rを示す)

   (S・A・R.)K、−S・A・(RK、)

  (証明)

    (S・A・R)K、一((S・A)・R)Ki       =・(S。A)。(RK∫)

      =S。A。(RK)

(2)(A・R)(Ki>Kノ)==(A・R)(Kj>Ki)

   (A・R)(Ki〈Kノ)一(A・R)(Kj〈Ki)

(16)

72−(228)      第22巻第3・4号

 (3) (A。R)Ki=(A。R)Ki

 (4) (A。(Rly R2))Ki=(A。R1)Ki>(A。R2)Ki    (A。(R1>R2))貢i=(A。R1〈A。R2)Ki   (証明)

   (A・、(R、VR,))R、一(A・ ・Q(R、>R、))Ki

      −(A・R・、v、A ・R・)Ki

      =・A。R1>AaR2Ki       』監(A。R1〈A。R2)Ki

 (5)  (A。R)(k 〈Kj)=(A。R)(Ki〈Kj)=(A。R)(Ki v Kj)

  (証明)

    (A。R)(R 〈Rj)・=(A。R)Ki〈(A。R)K1       .=(A。R)Ki〈(A。R)Kj        ==(A。R)(Ki〈Kj)

    (A・R)Ki〈(A。R)Kj=(A。R)Kノ〉(A。R)Kj        =(A。R)(Ki>Kj)

 (6) (A。(R1>R;))(Ki>Kj)=(A。R1)(Ki>Kj)〉(A。R2)(Ki>Kj)

  (証明)

    (A。(R1>R2))(Ki>Kj)=(A。R1>A。R2)(Ki>Kj)

      =(A。R,>A。R2)Ki

       >(A。R1>A。R2)}(j       =(A。R1)Ki>(A。R2)Ki

       >(A・R1)Kj V(AρR2)Kj       =(A。R1)(Ki>Kj)

       〉(A・R2)(Ki>Kj)

6.ま と め

これまでの議論から明らかなように,Fuzzy集合の理論は,その定義およ

(17)

         Fuzzy集合を用いた情報検索モデル      (229)−73一

び性質が検索モデルと直接対応しており,情報検索においてきわめて有用で ある。また,そのモデルをもどにして,Fuzzy集合の理論で議i論されている 以上の興味深い性質を得ることができる。

 しかしながら,情報検索における主要な問題は文献に対しいかにしてキー ワードを与えるか,またキーワード間の関連度をいかにして測るかというこ

となどである。すなわちここであモデルでいえば,文献キーワード行列のA とか,キーワード関連度行列のRをいかにして求めるかということである。

ここでは,ζれらについては何も述べていない。これらの問題はきわめて困 難な問題であるが,今後さらに議論を展開するためには,これらの問題に対

しても有効であるようなモデルの構成が必要であろう。

 なお本論文は東亜経済学会・山口経済学会合同定例研究会(昭和48年10月)

における資料に加筆修正したものである。熱心にご討論いただいた諸氏に深

謝する。

 文 献

【1】 L.A. Zadeh: Fuzzy Sets , Informationαn(I Control 8,

   338−353 (1965)

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