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マレーシア・トレンガヌ州知的障害特殊学級での教育実践 

  海老沢  穣 

(15-1,マレーシア,養護,東京都立小金井養護学校) 

2003年 8 月から 2005年3月にかけて、マレーシア・トレンガヌ州にある小学校および中 等教育学校の特殊学級で活動に携わった。トレンガヌ州はマレー系の割合が90%と高く、イ スラム色が強い地域である。主な産業は農業・漁業で、その他に目立った産業はなく、マレ ーシアの中では比較的貧しい地域にあたる。使用されている言語は主にマレー語である。

1  マレーシアの特殊教育について

⑴特殊教育の対象

「特別なニーズ教育に関する行動のための枠組み(サラマンカ宣言)」(1994 年)等の国際宣 言の採択をうけ、1995年に教育省特殊教育局が創設された。その後1997年に特殊教育に関 する施行規則が制定され、全州で本格的に特殊教育が開始される。ここで、特殊教育の対象 となるのは、①視覚に問題のある児童・生徒、②聴覚に問題のある児童・生徒、③学習に問 題のある(教育可能な)児童・生徒で、いずれの児童・生徒も基本的に日常生活面で自立して いることが入学の条件となる。身体障害児(知的に問題のない児童・生徒は通常学級へ)、重 複障害児、重度身体障害児、重度知的障害児、は学校教育の対象となっていない。

⑵特殊教育の機関

特殊教育の機関としては以下のものがあげられる。

小学校:6歳以上(6年間)

中等教育学校:13歳以上(5年間)

    →どちらも児童・生徒の実態に応じて2年延長して在籍することが可能である。

2003年現在マレーシア全州では、

・盲学校・視覚障害特殊学級  (  7校・24学級)

・聾学校・聴覚障害特殊学級  (25校・73学級)

・知的障害特殊学級      (660学級)

の学校・学級が設置されている。知的障害養護学校は設置されておらず、通常校に併設され た特殊学級で統合教育(食堂・図書館・体育用具等は通常学級と共有するが、特設された特殊 学級にて教育)が行われる。通常学級で健常児と共に学ぶインクルージョンのプログラムも試 行されている。知的障害特殊学級は、1996年に147学級であったのが、2003年には660 学級と大幅に増加している。

(2)

⑶特殊教育の目標

特殊教育の目標としては、以下の事項があげられる(配属されたトレンガヌ州パダン・ヒ リラン小学校特殊学級の例)。

・コミュニケーション能力の促進

・対人関係・社会性の促進

・安定した自己の確立や自立へ向けた自己信頼感の育成

・健康と安全への自己意識の育成

・自己や周囲への知覚、記憶、理解を深める力の促進

・身体機能の向上にむけた運動能力の促進

⑷特殊学級の教育課程

  学習能力別のグループ編成による授業形態 (1グループ5〜8名の児童を1名の教師が担 当)がとられている(写真1)。教科は、国語・

数学・宗教・理科社会・生活・芸術(図工)・音 楽・体育・手指の操作スキルに関する学習(Ke-

mahiran Manipulatif)であり、教科担当制で授

業が組まれている。そのほか年間行事として、

全校運動会、博物館・公園等への遠足、公立プ ールでの水泳、家族デー、バースデイパーティ

などがある。       

2  特殊学級での活動について

  隊員活動を進めるにあたって、以下の事項をねらいとした。すなわち、

・特殊学級教員へのアドバイス、教員の技術レベルの向上

・授業アイデアの提案

・児童生徒の指導や授業のサポート

・日本で行われている授業や活動の紹介

である。基本的には、芸術(図画工作)・音楽・体育の各授業を担当し、必要に応じて他の授 業や児童生徒の指導に関するアドバイスやサポートを行う形式となった。

⑴配属先

配属された学校はすべて州都のクアラトレンガヌ地区にあり、以下の通りであった。

  ・パダン・ヒリラン小学校特殊学級(マレー系)

  ・チュン・ワー・ウェイ・シン(中華維新)小学校特殊学級(中国系)

・プサッ・ブキッ・ブサール小学校特殊学級(マレー系)

・ブキッ・ブサール中等教育学校特殊学級(マレー系)       

写真1  特殊学級の授業風景 (パダン・ヒリラン小学校)

(3)

  赴任当初はパダン・ヒリラン小学校のみでの勤務だったが、州の特殊教育課との協議の上、

最終的には4校を巡回する形式をとった。

⑵活動内容

  各学校での主な活動内容は以下の通りである。担当した教科は、主に芸術(図画工作・美術)、 音楽、体育であった。

  ①パダン・ヒリラン小学校特殊学級

() 芸術(図画工作)

    ・描画:子どもにとってイメージしやすい テーマを題材に(“乗り物”“動物”“家”

など)(写真2)

    ・道具を用いた作品作り(ハサミ、筆など)

(写真3)

    ・ゲームの制作(“すごろく作り”など) 

(写真4)

写真2  描画

写真3  「わたしの家」(ハサミを用いた作品作り)       写真4  すごろく作り

() 音楽            ・歌唱:マレー語と日本語のうた

(“スラマッパギ−(おはよう)”)       マレーの歌

(“バングンパギ(朝起きて)”、

“ブニ・ビナタン(動物の鳴き声)” など)  (写真5)

    ・カセットテープを用いた身体表現活動

      写真5  音楽の授業

(4)

  () 体育

    ・運動スキル向上のための“サーキット・

トレーニング”(写真6)

    ・動作訓練遊技場での活動(写真7)

    ・室内での遊びの指導(椅子取りゲーム・

風船バレーボール)

  ()認知学習のための教材作り

・色や形の弁別分類学習のための教材

(写真8)      写真6  サーキットトレーニング

写真7  動作訓練遊技場      写真8  弁別分類学習の教材

②チュン・ワー・ウェイ・シン(中華維新)小学校   ()芸術(図画工作)

    ・描画       

    ・道具を用いた作品作り(ハサミ、筆など)     ・ゲームの制作(“魚つりゲーム”“ボーリング

のピン作り”など)(写真9,10)

       

写真9  ボーリングのピン作り      写真10  魚つりゲーム

(5)

()自閉症児の指導法についてのアドバイス

  ()通常学級児童対象の折り紙ワークショップ

(写真11)

写真11  折り紙ワークショップ 

③プサッ・ブキッ・ブサール小学校

  この学校では、芸術・音楽の授業を対象に、もう1名の学校隊員との“ティームティーチ ング”を9ヶ月間試行した。授業展開がしやすく、1 人では難しかった活動も取り入れるこ とが可能になり、特殊学級の教員にもアイデアとして提供することができた。

④ブキッ・ブサール中等教育学校 ()芸術(美術)

    描画

    道具を用いた作品作り(ハサミ、筆、“ステン シル”など)(写真12)

() 音楽

    歌唱:アルファベットの歌など

カセットテープを用いた身体表現活動

    楽器演奏(キーボード、ピアニカ、打楽器      写真12  ステンシル など)(写真13)

⑤音楽ワークショップ

トレンガヌ州障害児のためのキャンプにおいて、

音楽ワークショップを試みた。内容は、歌唱、楽 器演奏、音楽にあわせた身体表現、日本の歌の紹 介、椅子取りゲームなどであった(写真14)。

      写真13  ピアニカの譜面作り 

(6)

写真14  音楽ワークショップ

⑷活動を振り返って

  約1年8ヶ月の活動であったが、複数の学校に勤務することで各学校の特色がよく見え、

比較的スムーズに活動を進めることができた。どの学校でも先生方や子どもたちは温かく迎 え入れてくれ、毎日の授業ややりとりの中で悩んだり試行錯誤をしたりしながらも、自分自 身も多くのことを教えられた隊員活動であった。

  マレーシアと日本の教育では様々な点で違いがみられるが、文化的な背景による差も大き い。そのため、日本での経験や知見から一方的にアドバイスをしても、それが根付いていく とは考えにくい。むしろ、一緒に活動を進めていく中で、マレーシアの教員側が何かヒント を得られ、取り入れようと思う部分があればそれをアイデアとして生かしてもらえればと考 え、活動を進めていった。マレーシアの特殊教育は、インテグレーションの理念を基に地域 の小・中等教育学校への特殊学級設置がなされており、今後もその数は増加していくのでは ないかと思われる。最近になって学習障害児学級や就学前学級なども少数ながら設置される など、より多様な子どもたちへの支援を行うために、いろいろな施策が試みられるようにな ってきている。知的障害児教育の歴史はまだ浅いが、様々な子どもたちへの対応が求められ る中で、少しずつ実践の蓄積が進んでいき、授業の内容や質の改善がなされていくであろう と思われる。教員の中には、一定期間休職して大学で特殊教育を専攻したり、学士や修士の 学位を取得しようと夜間の大学に通ったりする例もみられており、今後少しずつ教員の質も 向上していくのではないかと感じている。

赴任したトレンガヌ州では後任の隊員が活動を継続し、また他州での学校隊員の配置も検 討されている。今後もマレーシアと日本両国の障害児教育がさらに発展充実していくことを 心から願っている。

参考文献:

Jabatan Pendidikan Khas, Kementerian Pendidikan Malaysia (2003). 

Maklumat Pendidikan Khas 2003 

 Puan Tan Gweek Eng(2003). Peluang, Syarat Kemasukan dan Halatuju Program Pendidikan  Khas(Kursus Pekerja Pemulihan Dalam Komuniti(PDK)) 

(7)

マレーシア・トレンガヌ州 マレーシア・トレンガヌ州 知的障害特殊学級での 知的障害特殊学級での

教育実践 教育実践

海老沢 海老沢

(東京都立小金井養護学校)

(東京都立小金井養護学校)

(青年海外協力隊平成15年度1次隊・養護)

(青年海外協力隊平成15年度1次隊・養護)

派遣国:マレーシア 派遣国:マレーシア

日本から飛行機で 約7時間

首都:クアラルンプール

人種:マレー系(65.5%) 中国系(25.6%) インド系(7.5%)

言語:マレー語(国語)ほか

宗教:イスラム教ほか

赴任地:トレンガヌ州 赴任地:トレンガヌ州

州都:クアラトレンガヌ (人口:約32万人)

マレー系の割合が90%で、

イスラム色が強い

主な産業: 農業・漁業

マレーシアの特殊教育について マレーシアの特殊教育について

「特別なニーズ教育に関する行動のための枠組み (サラマンカ宣言)(1994)等の国際宣言の採択

1995年 教育省に特殊教育局を創設

1997年 特殊教育に関する施行規則の制定

特殊教育の対象

①視覚に問題のある児童・生徒

②聴覚に問題のある児童・生徒

③学習に問題のある(教育可能な)児童・生徒

→いずれの児童・生徒も基本的に日常生活面で 自立していることが条件

特殊教育機関 特殊教育機関

小学校: 6歳以上(6年間)

中等教育学校: 13歳以上(5年間)

→どちらも2年延長して在籍が可能

マレーシア全州(2003年現在)

①盲学校・視覚障害特殊学級 ( 7校・24学級)

②聾学校・聴覚障害特殊学級 (25校・73学級)

③知的障害特殊学級 (660学級)

*147学級(1996年)→660学級(2003年)

特殊教育の目標 特殊教育の目標

• コミュニケーション能力の促進

• 対人関係・社会性の促進

• 安定した自己の確立や自立へ向けた 自己信頼感の育成

• 健康と安全への自己意識の育成

• 自己や周囲への知覚、記憶、理解を深める 力の促進

• 身体機能の向上にむけた運動能力の促進 (パダンヒリラン小学校特殊学級)

(8)

特殊学級の教育課程 特殊学級の教育課程

• 学習能力別のグループ編成による授業 (1グループ5〜8名の児童を1名の教師が担

当)

(パダンヒリラン小学校特殊学級)

• 教科

国語・数学・宗教・理科社会・生活・

芸術(図工)・音楽・体育・手指の操作学習

(パダンヒリラン小学校特殊学級)

• 年間行事

全校運動会 博物館・公園等への遠足 公立プールでの水泳 家族デー バースデイパーティ など

(パダンヒリラン小学校運動会)

協力隊員要請の背景 協力隊員要請の背景

• 知的障害特殊学級教員へのアドバイス、教 員の技術レベルの向上

• 授業アイデアの提案

• 児童生徒の指導や授業のサポート

• 日本で行われている授業や活動の紹介

トレンガヌ州の特殊教育について トレンガヌ州の特殊教育について

〔トレンガヌ州全体〕

①盲学校・視覚障害特殊学級(1校・1学級)

②聾学校・聴覚障害特殊学級(2校・13学級)

③知的障害特殊学級 (49学級)

〔クアラトレンガヌ地区〕

①盲学校・聾学校(各1校)

②知的障害特殊学級(13学級)

〔協力隊員の配属されている学級〕

・小学校知的障害特殊学級3校

①パダン・ヒリラン小学校(PH)

②チュン・ワー・ウェイ・シン小学校(CHWS)

③プサッ・ブキッ・ブサール小学校(PBB)

・中等教育学校知的障害特殊学級1校

④ブキッ・ブサール中等教育学校(SMKBB)

(9)

配属先の概要 配属先の概要

作業学習・園芸など中高生に合わせたカリキュラム。生 徒が落ち着いているせいか、自習的な授業が多い。

6

26 SMKBB

授業や教材準備に熱心な教員が多く、学級集団として比 較的まとまっている

5 22

③PBB

中国系。自閉症児・脳性まひ児など実態が多様。マレー 語・中国語を並行した指導が行われている 3

8 CHWS

児童数教員数ともに多く、集団としてまとまりにくい。施設 設備が古くなってきている

12 63

①PH

教員数

生徒数 学校名

活動内容 活動内容

①パダン・ヒリラン小学校(PH)

図工・音楽・体育各授業の担当(図工)

(音楽)(音楽)

(10)

(体育)(体育)

• 認知学習用教材の作成

②チュン・ワー・ウェイ・シン小学校(CHWS 各授業のサポート・アイデア提供

自閉症児への対応・アドバイス

ワークショップの開催・キャンプへの参加

③プサッ・ブキッ・ブサール小学校(PBB

(11)

ティームティーチング(TT)の導入 隊員によるTT

④ブキッ・ブサール中等教育学校(SMKBB

美術・音楽・体育各授業の担当

⑤音楽ワークショップの開催ほか

今後の隊員活動の見通し 今後の隊員活動の見通し

州特殊教育課への提

後任隊員への引継ぎ

他州への隊員配置

(12)

SEKIAN TERIMA KASIH

SEKIAN TERIMA KASIH

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