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熱の仕事当量
熱とは何か? 物質か,物質ではない何か,か?
仕事をすると熱が発生することがある(摩擦熱,叩く,削るなど)
⇒ 熱はエネルギーの一形態ではないのか?
仕事が熱に変わるときの換算割合は一定か? → ジュールの研究テーマ
:熱1[cal]を発生させるために必要な仕事量は常に同じか?
ジュールの羽根車の実験
ゆっくりと落下した場合(v≒0) おもりの運動エネルギーが増えない 羽根車が水にした仕事 = 重力がおもりにした仕事 W
h m W g
水
M
[kg]が受け取った熱量T M T
C
水1000
Q
熱の仕事当量は
T M
h m J W
1000
g Q
から,実験で求まる。
結論:仕事が熱の変わるときの割合は常に一定である。
熱の仕事当量:
[cal]
[J]
Q
J W 4.1855
[J/cal]・・・熱もエネルギーの一形態である
したがって,熱量
Q
の単位に,エネルギーの国際単位[J](ジュール)を使う。Q 1
[cal]≒4.2
[J]② 羽根車が水を かき混ぜる
③ 水温が 上昇する
① おもりを T 落とす
h
ジュールは,熱の流出を極力減ら すために,温度上昇を
T 0.5F(≒0.3℃)とし,それを0.005F
(≒0.003℃)の精度で測るという,
驚異的な実験をした。
26 比熱(specific heat)
同じ材質でできた物体でも,物体の量が多いほど熱容量Cも大きい。
材質の違いによる,温まりやすい,温まりにくいを比較するには,
同じ量(単位量あたり)で熱容量を比べる
・・・1 kgあたり,1 gあたり,1 molあたり
⇒ 比熱c(小文字) 材質によって決まった値(温度変化はする)
練習1 水のキログラム比熱:
[K]
1 [kg]
10
[J]
.2 4 [K]
1 [g]
1
[cal]
1
3
-
水
c 4.2103[J/kg・K]
水のモル比熱:
[K]
1 [mol]
(1/18) [J]
.2 4 [K]
1 [g]
1
[cal]
1
水c
76[J/mol・K]熱容量Cを比熱cを使って表すと
M
[kg]の物体C c M
(この c[J/kg・K]はキログラム比熱)n[mol]の物体
C c n
(この c[J/mol・K]はモル比熱)練習2①
M 100
[kg]の鉄の柱の温度が 20[℃]から 30[℃]まで上昇した。鉄の比熱をc436[J/kg・K]とする。
a)鉄の柱の熱容量
[J/K]
10 4.36 [kg]
100 K]
[J/kg
436
4
c M C
b)鉄の柱が受けとった熱量
[J]
10 4.36 [K]
) 20 30 ( [J/K]
10
4.36 4 5
C
TQ
②
M 1.0
[kg]の水を90[℃]から10[℃]まで冷やした。a)水から奪った熱量
[J]
10 36 . 3 [K]
) 90 10 ( [kg]
1.0 K]
[J/kg 10
4.2
3
5
C T Q
b)この熱量を仕事に換算すると,10.0[kg]の物体を何[m]持ち上げる仕 事に相当するか。(
W Q
で考える。)[m]
10 4 . 3 ] [m/s 9.8 [kg]
10.0
[J]
10 36 .
3 3
2
5
m
g
mg
h W
Q
([J/(kg・K)])
([J/(mol・K)])
27 物質の三態
物質は温度や圧力によって,
固体,液体,気体のいずれかの状態をとる。
固体に熱を与えていくと,通常は次のように変化する。
状態の変化が起きる温度:
凝固点 T1(固体⇔液体), 沸点 T2(液体⇔気体)
☆ この温度では,固体と液体,液体と気体が共存する(同時に存在する)。 共存しているあいだは,熱を与えても(奪っても)
温度は変化しない。(潜熱)
物質の三態と分子運動
すべての物質は,分子が集まってできている。(現代の視点)
固体‐液体‐気体の違いは,分子の運動状態の違い。(イメージで理解する)
定まった位置を 自由に動けるが 自由に飛んでおり 中心に振動している 分子同士に隙間がない 分子間は隙間だらけ
固体 液体 気体
低温 分子の熱運動が激しくなる 高温 熱量
固体 液体 気体
固体+液体 液体+ 気体
Q
[J][K]
T
T1
T2
沸点
凝固点
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熱力学はすべての状態を扱える分野だが,この授業では最も分かりやすい 気体を中心に考えていく。
(熱力学の基本的な法則は,固体や液体でも成り立つ。誤解しないように。)
練習3 温度や圧力を変えるとき,固体や液体の体積の変化は非常に小さいが,気 体の体積は大きく変化する。この理由を,分子の運動状態の違いから説明せよ。
気体の体積(volume)
体積の国際単位は [m3]
ただし国際単位ではないが,リットル(L)もよく使う
(
1
[m3]が大きすぎて,扱いにくいことが多いため)1
[L]は一辺が10
[cm]の立方体の体積したがって
1
[L]=0.1[m]0.1[m]0.1[m]= 103[m3]1
[cm3]=10
2[m] 10
2[m] 10
2[m]= 106[m3]=103[L]=
1
[mL](=1
[cc])cm3はcm×cm×cmの意味であり,m3の1/100(= c)ではない
(単位の約束)
cc(cubic centimeter 立法センチメートル)はcm3と同じ単位
練習4 350[mL]のアルミ缶に入っているジュースは何[m3]か。
350[mL]=
350 10
3[L]=350 10
3 10
3[m3]=350 10
6[m3]=
3 . 50 10
4[m3]10 cm
10 cm 10 cm