第10回東北地区国立高等専門学校技術職員研修
『技術課題発表』の概要
学 校 名 鶴岡工業高等専門学校 1枚目
氏 名 佐藤 大輔 職 名 技術職員 題 目 圧電素子の出力評価の試みと応用
1、研究内容 1、研究内容 1、研究内容 1、研究内容
圧電素子に機械的なエネルギーを与えた時の電気エネルギーへの変換効率 についての評価が明瞭でない。
↓
位置エネルギーから電気エネルギーへの変換についての評価を試みた。
↓
圧電素子の利用方法の一案
2、圧電素子とは 2、圧電素子とは 2、圧電素子とは 2、圧電素子とは
圧電素子とは、圧電体に加えられた力を電圧に変換する、あるいは電圧を 力に変換する、圧電効果を利用した受動素子でピエゾ素子ともいわれる。水 晶振動子も圧電素子の一種であるが、別扱いにされることが多く、水晶より 安価な材質を使ったものを指して圧電素子と呼ぶことが多い。アクチュエー タ、センサとしての利用の他、アナログ電子回路における発振回路やフィル タ回路にも用いられている。
3、位置エネルギーと圧電素子の出力 3、位置エネルギーと圧電素子の出力 3、位置エネルギーと圧電素子の出力 3、位置エネルギーと圧電素子の出力
図のように、質量m(㎏)の錘を高さH(m)落下させると、位置エネルギー がmg
H(J)を失う。この錘で圧電素子に振動を与え発電電力を求める。こ のときのエネルギー変換量を圧電素子の「エネルギー変換効率」とする。
圧電素子には抵抗R(Ω)を接続し、
) 、
圧電素子の出力電圧E(V を測定し この値から圧電素子の積算出力(J)
。 を求める
f=mg H(m)
位置エネルギー
=mgH (J)
錘 質量m(kg)
圧電素子
f=mg H(m)
位置エネルギー
=mgH (J)
錘 質量m(kg)
圧電素子
E
R=200kΩ 圧電素子
E
R=200kΩ 圧電素子
学 校 名 鶴岡工業高等専門学校 氏名 佐藤 大輔 2枚目 4、実験装置
4、実験装置 4、実験装置 4、実験装置
5、圧電素子の電力変換量と変換効率 5、圧電素子の電力変換量と変換効率 5、圧電素子の電力変換量と変換効率 5、圧電素子の電力変換量と変換効率
錘の落下距離
Hが大きいほ 抵抗負荷Rが一定であれば、
圧電素子の歪が大きく、 位置エネルギーの電力交換効率 負荷抵抗が一定であれば 下高さHが小さい程高い。
発電電力量( )は大きい。
J電 素子 は大 きな 歪を与 えるより も、微振動を生じさせて発電し た方が交換効率が高い
6、圧電素子に微振動を与えるための一方法 6、圧電素子に微振動を与えるための一方法 6、圧電素子に微振動を与えるための一方法 6、圧電素子に微振動を与えるための一方法
・ カルマン渦」を利用する
・ カルマン渦」を利用する
・ カルマン渦」を利用する
・ カルマン渦」を利用する 「 「 「 「
「カルマン渦」は、流れの中に物体を置くと、図のように交互の渦が発生 して、流れ方向に直角方向の力を物体に与える現象。
0 00 0 0 .0 2 0 .0 2 0 .0 2 0 .0 2 0 .0 4 0 .0 4 0 .0 4 0 .0 4 0 .0 6 0 .0 6 0 .0 6 0 .0 6 0 .0 8 0 .0 8 0 .0 8 0 .0 8
000
0 1 0 01 0 01 0 01 0 0 2 0 02 0 02 0 02 0 0 3 0 03 0 03 0 03 0 0 4 0 04 0 04 0 04 0 0 5 0 05 0 05 0 05 0 0 高さh
効率
50kΩ 75kΩ
200kΩ 300kΩ 100kΩ
錘の落下高さ 錘の落下高さ錘の落下高さ 錘の落下高さH(mmH(mmH(mmH(mm))))
変換効率変換効率変換効率変換効率
0.0000 0.0000 0.0000 0.0000 0.0005 0.0005 0.0005 0.0005 0.0010 0.0010 0.0010 0.0010 0.0015 0.0015 0.0015 0.0015 0.0020 0.0020 0.0020 0.0020 0.0025 0.0025 0.0025 0.0025
0 00
0 100100100100 200200200200 300300300300 400400400400 500500500500
パワーP (W・s)
50k 75kΩ 100kΩ 200kΩ 300kΩ
電力変換量電力変換量電力変換量電力変換量P(W・・・・s)
錘の落下高さ 錘の落下高さ 錘の落下高さ 錘の落下高さH(mmH(mmH(mm))))H(mm
50kΩ 75kΩ 100kΩ
200kΩ 300kΩ
0 00 0 0 .0 2 0 .0 2 0 .0 2 0 .0 2 0 .0 4 0 .0 4 0 .0 4 0 .0 4 0 .0 6 0 .0 6 0 .0 6 0 .0 6 0 .0 8 0 .0 8 0 .0 8 0 .0 8
000
0 1 0 01 0 01 0 01 0 0 2 0 02 0 02 0 02 0 0 3 0 03 0 03 0 03 0 0 4 0 04 0 04 0 04 0 0 5 0 05 0 05 0 05 0 0 高さh
効率
50kΩ 75kΩ
200kΩ 300kΩ 100kΩ
錘の落下高さ 錘の落下高さ錘の落下高さ 錘の落下高さH(mmH(mmH(mmH(mm))))
変換効率変換効率変換効率変換効率
0.0000 0.0000 0.0000 0.0000 0.0005 0.0005 0.0005 0.0005 0.0010 0.0010 0.0010 0.0010 0.0015 0.0015 0.0015 0.0015 0.0020 0.0020 0.0020 0.0020 0.0025 0.0025 0.0025 0.0025
0 00
0 100100100100 200200200200 300300300300 400400400400 500500500500
パワーP (W・s)
50k 75kΩ 100kΩ 200kΩ 300kΩ
電力変換量電力変換量電力変換量電力変換量P(W・・・・s)
錘の落下高さ 錘の落下高さ 錘の落下高さ 錘の落下高さH(mmH(mmH(mm))))H(mm
50kΩ 75kΩ 100kΩ
200kΩ 300kΩ
学 校 名 鶴岡工業高等専門学校 氏名 佐藤 大輔 3枚目 6.1 実験装置
6.1 6.1 実験装置 実験装置 6.1 実験装置
6.2 円筒の揺れパターンと圧電素子の歪 6.2 6.2 円筒の揺れパターンと圧電素子の歪 円筒の揺れパターンと圧電素子の歪 6.2 円筒の揺れパターンと圧電素子の歪
6.3 カルマン渦を利用した発電電圧 6.3 6.3 カルマン渦を利用した発電電圧 カルマン渦を利用した発電電圧 6.3 カルマン渦を利用した発電電圧
A AA A
a a a a B
B B B
bbb b LL LL
DDD A D
AA A
a a a a B
B B B
bbb b A
AA A
a a a a B
B B B
bbb b LL LL
DDD D
カルマン渦
円柱周りに 非対称の流れ
揚カが交互に 生じる(L)
抗力も変動(D)
圧電素子に歪 発電 カルマン渦
円柱周りに 非対称の流れ
揚カが交互に 生じる(L)
抗力も変動(D)
圧電素子に歪 発電
b A a B
圧縮 引張り
b A a B
圧縮 引張り
A a b
B 圧縮
自身のバネ作用 で歪む
A a b
B 圧縮
自身のバネ作用 で歪む
発電電圧E(V)
時間t (msec)
風速
V=12.26(m/s)
-0.3 -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 0.3
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000
A
-0.3 -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 0.3
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000
a
-0.4 -0.3 -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 0.3
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000
B
-0.3 -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 0.3
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000
b
-0.3 -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 0.3
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000
A
-0.3 -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 0.3
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000
A
-0.3 -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 0.3
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000
a
-0.3 -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 0.3
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000
a
-0.4 -0.3 -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 0.3
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000
B
-0.4 -0.3 -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 0.3
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000
B
-0.3 -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 0.3
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000
b
-0.3 -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 0.3
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000
b
学 校 名 鶴岡工業高等専門学校 氏名 佐藤 大輔 4枚目
7、カルマン渦を利用した実験の狙い 7、カルマン渦を利用した実験の狙い 7、カルマン渦を利用した実験の狙い 7、カルマン渦を利用した実験の狙い
・ 図のように圧電素子を設置することで、風の強さを段階的(風階)に 評価できると考えられる。併せて風向も捉えられることも考えられる。
・最終目標は「センサー」+「電源」を兼ね備えることである。
- 0 .3 - 0 .2 - 0 .1 0 0 .1 0 .2 0 .3
0 5 0 0 1 0 0 0 1 5 0 0 2 0 0 0 2 5 0 0 3 0 0 0
A
- 0 .3 - 0 .2 - 0 .1 0 0 .1 0 .2 0 .3
0 5 0 0 1 0 0 0 1 5 0 0 2 0 0 0 2 5 0 0 3 0 0 0
b bb b
-0.3 -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 0.3
a
- 0 .3 - 0 .2 - 0 .1 0 0 .1 0 .2 0 .3
0 5 0 0 1 0 0 0 1 5 0 0 2 0 0 0 2 5 0 0 3 0 0 0
B
- 0 .3 - 0 .2 - 0 .1 0 0 .1 0 .2 0 .3
0 5 0 0 1 0 0 0 1 5 0 0 2 0 0 0 2 5 0 0 3 0 0 0
A
- 0 .3 - 0 .2 - 0 .1 0 0 .1 0 .2 0 .3
0 5 0 0 1 0 0 0 1 5 0 0 2 0 0 0 2 5 0 0 3 0 0 0
b bb b
-0.3 -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 0.3
a
- 0 .3 - 0 .2 - 0 .1 0 0 .1 0 .2 0 .3
0 5 0 0 1 0 0 0 1 5 0 0 2 0 0 0 2 5 0 0 3 0 0 0
風速
BV=12.26(m/s)
発電電圧E(V)
時間t (msec)
B1
B2
b1
b2 B1
B2
b1
b2
平成19年度 鶴岡工業高等専門学校主催 第4回 技術発表会 概要
職 名
技 術 職 員
氏 名
横 田 礼
No.1 題 名炭素鋼の顕微鏡試験と炭素含有量推定プログラム 1.
1.
1.
1. 緒言 緒言 緒言 緒言
機械工学科4年の実験テーマの一つに「炭素鋼の顕微鏡試験」がある.炭素鋼の金属顕微鏡の 観察像から,炭素鋼に含まれる炭素量を推定するのが目的である.今年,実験装置の一部を更新 した.その更新に際し,金属顕微鏡の像から炭素量を自動的に計測するプログラムを試作した.こ こでは,装置およびプログラムの概要と画像解析の結果を紹介する.
2. 2.
2. 2. 「炭素鋼の顕微鏡試験」について(機器の更新の必要性) 「炭素鋼の顕微鏡試験」について(機器の更新の必要性) 「炭素鋼の顕微鏡試験」について(機器の更新の必要性) 「炭素鋼の顕微鏡試験」について(機器の更新の必要性)
従来の実験装置を図1に示す。金属顕微鏡とCCDカメラおよびCRTより構成されている.この実 験の第一の目的は金属組織用の資料づくりと金属顕微鏡を用いての金属組織の観察である.第 二の目的は観察像から炭素鋼に含まれる炭素量を推定することである.
実験では,初めに炭素鋼の表面を「鏡面」になるまで磨き、次に腐食液(5%硝酸-アルコール 溶液)に浸して鏡面を僅かに腐食させる.この資料を金属顕微鏡に載せCCDカメラを通してCRT 上に組織を写し出す.炭素の違いによる組織の変化を理解する.次に,CRTに透明なトレーシン グペーパーを貼り付けて,油性ペンを用いて金属組織を書き写す.最後に書き写した組織図より 炭素鋼に含まれる炭素量を点算法で計算する(およそ光学500倍の環境).しかし,CCDカメラと CRTは20年以上も前の物であり,CCDカメラの解像度が悪いうえに,CRTの各つまみが接触不 良の状態にあった.そのため,測定の結果は個人の技量や環境によるところが大きく、また,不鮮 明な画像を写し取ることは学生の負担でもあった。
そこで,画像をパソコンに取り込み,パソコン上でデータ処理を行う方法を提案した.新しい環境 では、金属の表面組織を顕微鏡に取り付けたカメラ(
PC Direct USB Camera SystemPC Direct USB Camera SystemPC Direct USB Camera SystemPC Direct USB Camera System「「
「「NYCNYCNYC----CA200MNYCCA200MCA200M」CA200M」」」
)で撮影し,PCで鮮明に見ることができる(図3)。さらにその情報を印刷すること で、金属組織を紙媒体に残すことができるようになった(図4)。
図1 従来の測定環境 図2 現在の測定環境
氏 名 横 田 礼 No.2
図3 (左)PC上の金属組織 (右)印刷画像と印刷手順
現在,学生は図3の画像を印刷し,それに升目を引いた透明な用紙をのせ,組織の明るいところ の炭素含有量をC<0.02%,暗いところをC=0.77%として,点算法にて金属に含まれる炭素 量を計算している(最大で光学2000倍の環境).
来年度は,この課程をも画像処理する予定である.それに向かいプログラムの作成を行ってい く.
3.
3.
3.
3. 炭素量の自動計測プログラムの作成 炭素量の自動計測プログラムの作成 炭素量の自動計測プログラムの作成 炭素量の自動計測プログラムの作成
プログラム自体はVisual C++ 2005 Express Edition
©Microsoft社 によって作成した。
主な動きを以下に示す.
(1) 画像を取り込み、上下25%カット、左右25%カット、更を縦1/2 横1/2に圧縮する
(2)
輝度を上げるようにRGBをそれぞれsin関数によって変換する
(3)
2値画像にするために「しきい値」を決める
。白黒画像にして表示をして終了する図4 (左)S25C金属表面 (右)動作させたスクリーンショット 図5 輝度を上げるsin関数
図6 (左)S15C (中)S35C (右)S45C 4.4.
4.4. 課題課題課題課題
・ノイズが酷い画像では黒い部分が増えてしまい、予想された値とは明らかに違うものが出てくる
・磨き傷が見える状態でも予想された値とは違うものが出てくる
→(解決策)ノイズ除去のルーチンを組み込む
・
平成19年度 鶴岡工業高等専門学校主催 第4回 技術発表会 概要
職 名 技術職員
氏 名 一条 洋和 No.1
題 名 供給信頼度と送電線故障率を考慮した 電力ネットワークの増強計画法に関する研究
1. はじめに
一般的なシステムにおける信頼度とは、そのシステムが正常に動作している度合いを示す指標のことであ る。電力システムにおいて「システムが正常に動作している」とは、停電を起こさずに良質の電気エネルギ ーを供給している状態である、と言うことができる。このため、電力システムの信頼度は、停電がどの程度 起こりにくいか、という観点から評価されることが多い[1]。停電に着目した電力システムの信頼度を、特に 供給信頼度と呼んでいる。
現在のような電力ネットワークが確立してから長い時間が経過しており、ネットワークの構成要素の老朽 化による故障の発生が懸念される。このことは供給信頼度の低下につながると考えられる。そのため、設備 の増強および更新による、故障の予防が必要であると考える。
さて、送電線の容量を超えて電力が送られている状態のことを過負荷というが、送電線を過負荷運用する と、熱によって劣化が早まる[2]。このことから、各送電線の運用状態にかかわらず一定の条件で更新をしよ うとすれば、ある送電線は更新前に寿命が尽きて供給信頼度の低下を引き起こし、別の送電線は十分利用可 能な状態で更新されてコストの無駄を招く、と考えられる。そこで本研究では、電力ネットワークの運用状 態を考慮した増強計画法を提案するとともに、
電力系統モデルのコンピュータシミュレーシ ョンによって提案手法の検討を行った。
2. 増強計画法の提案とモデル系 統への適用
2.1. 提案手法の流れ
本研究で提案する増強計画法では、電力ネッ トワークの中の各々の送電線を、どれほどの間 隔で更新していけばよいかを推定することを、
目的として定めた。そのためシミュレーション では、ある更新条件で電力ネットワークを運用 した時に、送電線の劣化状態もしくは故障率が どのように変化するか、それに伴って供給信頼 度はどう変わっていくか、といったことを数値 的に検討していく。図 1 に提案手法のフロー チャートを示す。以下に各部分の詳細を述べ る。
図 1 提案する送電線更新計画法
送電線容量設定
各時刻・各事故状態における 電源負荷制限量Wkjの算出
送電容量超過エネルギー Eoijの算出
送電線更新シミュレーション 各事故状態における 潮流持続曲線Fij(t)の算出
送電線更新条件の設定
全ての更新条件終了?
潮流持続曲線利用
経過年数上限 TR
故障率上限 λ m ax
開始
終了 Y es N o
総コストの算出
年間の負荷パターン利用 潮流計算
氏 名 一条 洋和 No.2
2.2. 潮流持続曲線の算出
負荷電力の確率分布を表した曲線を負荷持続曲線という。これは、負荷 がある値xより大きくなる確率をL(x)とした時に、L(x)を横軸、xを縦軸 にとって描いた曲線である[1]。この曲線を用いることで、電源にどれほど 余裕があるか、また停電の確率がどれ程かを知ることができる。
これと同様に、各送電線の潮流状態(電力の流れの分布)を表現する方 法として、潮流持続曲線なる曲線を描くことができると考えられる。本研 究では、送電線の劣化速度を推定する手段として、この潮流持続曲線を提 案する。潮流がある値Fiより大きくなる時間をT(Fi)として、T(Fi)を横軸、
Fiを縦軸にとって曲線を描く。図 2に例を示す。
図 2 のように、全ルートが健全に運用している場合、ルート#iの年間
最大潮流値Fmi0は、送電容量Fciより小さく、過負荷にはならない。しかし、ルート#jで1回線脱落した場合、
その影響で#iの潮流状態に変化が生じ、Fciを超えることもある。このとき、#jが1回線脱落する確率をP(#jfault) とすると、送電線容量を超えて流れるエネルギー量の期待値Eoijは次のように算出できる。
∫
= mij
ci
F
F j i i
fault
oij P j T F dF
E (# ) ( ) (Fmij >Fci)
提案手法では、ここで求めた容量超過エネルギー量から、送電線の劣化状態を推定し、更新シミュレーショ ンを行う。
2.3. 電源・負荷制限量の算出
送電線の過負荷が生じても電力の供給は続けられるため、過負荷が直接供給信頼度に影響を及ぼすことはな い。そこで、過負荷を解消する手段として電源および負荷の制限を行うことで、過負荷と供給信頼度を結びつ けることを考えた。
過負荷が生じたときには、全ての母線の負荷を同じ割合で制限する、と仮定する。ここで、ある時刻k にお いて送電線#jの1回線が何らかの原因で脱落したとする。このとき生じた過負荷がmfuka%の負荷制限によって 解消される場合、電源・負荷制限量Wkjは以下の式で示される。
0 fuka 100
bk
kj L m
W = (Lbk0:時刻kでの全負荷量)
2.4. 送電線更新シミュレーション
この部分では、ある更新条件に基づいて送電線を更新していった場合にかかるコストを算出する。ここでコ ストとしては、送電線更新のために消費される供給コストと、電源制限によって損失する停電コストを考える。
シミュレーションの際には、送電線の故障率変動を考慮に入れる。故障率は、送電線の劣化状態によって変 化すると考えられるため、設置からの経過年数Tiと容量超過エネルギーの蓄積量ETiを含む関数であると推定 できる。今回は次のような関数形とした。
0 2
1( ) ( )
) ,
( i Ti i Ti i
i f T E k T k E λ
λ = =
この故障率変動を考慮することで、更新条件の評価がより正確にできると考えられる。
時間 T(Fi) [h]
0 8760
Fmi0
潮流値 Fi [p.u.]
送電線#i容量 Fci
送電容量超過 エネルギー量
Eoij
全ルート健全時
送電線#j 1回線停止想定時 Fmij
Fci
図 2 年間潮流持続曲線
氏 名 一条 洋和 No.3
2.5. モデル系統
シミュレーションの対象となる電力系 統モデルとして、IEEE14 母線系統モデ ル[4]に独自のパラメータを加えたものを 用いた(図 3)。加えたパラメータは、各 母線の負荷曲線[5]と、各送電線の容量と故 障率である。
図 3において、Gは発電機、Cは同期 調相機を表している。また、各母線に示 されている数値を、ピーク期(7/27-31)の 平日15 時の負荷電力[p.u.]と想定してい る。なお、全ての送電ルートで2 回線送 電されているとする。
3. 提案手法の検討
各送電線の更新条件を、表 1のように
2種類用意して、それぞれのパターンについて提案手法を適用した。パターン1は全送電線で同じ条件とした 場合であり、パターン2はネットワークの運用状態を考慮して送電線別に条件を定めた場合である。
表 1 各送電線の更新間隔(単位:年)
送電線 1
↓ 12
1
↓ 5
12
↓ 13
12
↓ 4
12
↓ 5
4
↓ 13
5
↓ 4
11
↓ 6
11
↓ 2
11
↓ 3
9
↓ 10
9
↓ 8
6
↓ 10
2
↓ 3
3
↓ 8
4
↓ 7
4
↓ 9
5
↓ 11
14
↓ 7
7
↓ 9 パターン1 36 36 36 36 36 36 36 36 36 36 36 36 36 36 36 36 36 36 36 36 パターン2 44 44 35 40 47 22 13 37 54 36 36 34 70 70 67 33 69 27 70 10
3.1. 更新間隔を一律とした場合
図 4は、パターン1の更新条件を適用し た時の、送電ルート別コストを算出した結果 である。ここで、供給コストは送電線の更新 費用、停電コストは送電線の 1 回線脱落が もたらす電源制限の費用としている。この図 から、5→4や7→9のルートなどは、脱落の 際に停電コストに与える影響が大きく、逆に 1→12や12→5 といったルートはその影響 が小さいことがわかる。そこで、前者の更新 間隔を長く、後者の更新間隔を短く設定する ことで、コストのバランスがとれると考えら れる。このことについてはパターン 2 につ いてのシミュレーション結果から考える。
図 3 対象とするモデル系統
G
C
G
C
C 1
12 13
4 5
6
7 8
9 10
11
14
2 3
住宅 商業
工業
住宅
住宅 住宅
商業
商業 商業
工業 工業
0.135+j0.058
0.061+j0.016 0.149+j0.050
0.035+j0.018 0.090+j0.058
0.295+j0.166
0.478-j0.039
0.217+j0.127
0.112+j0.075
0.942+j0.190 0.076+j0.016
0.00001 0.0001 0.001 0.01 0.1 1 10
1→12 1→ 5 12→13 12→ 4 12→ 5 4→13 5→ 4 11→ 6 11→ 2 11→ 3 9→10 9→ 8 6→10 2→ 3 3→ 8 4→ 7 4→ 9 5→11 14→ 7 7→ 9
ルート
コスト
停電コスト 供給コスト
図 4 送電ルート別コスト(パターン1)
氏 名 一条 洋和 No.4
3.2. ルートごとに異なる更新間隔とした場合
図 5は、パターン2の更新条件を適 用した時の、送電ルート別コストを算 出した結果である。図 4 と見比べる と、ほとんどのルートで供給コストと 停電コストとの差が小さくなり、より バランスがとれた状態になっている ことがわかる。停電コストに着目する と、図 4では12→5と7→9との間で 最大105程の差があるのに対し、図 5 では103程になっている。更新条件の 変更による差が明らかに表れている といえる。
4. 結論
電力ネットワークの増強計画法について提案し、具体的な電力系統モデルを用いて検討することができ た。また、送電線更新条件の違いによってシミュレーション結果が異なることから、更新条件の良し悪し を判断できることも実証できたと考えられる。今後は、より詳細な電力系統モデルを考えるとともに、良 い更新条件をどのように絞り込んでいくかについても検討していく必要がある。
参考資料
[1] 長谷川淳、大山力、三谷康範、斎藤浩海、北裕幸、『電力系統工学』、電気学会 [2] 過負荷保護技術調査専門委員会、『電気学会技術報告 第1069号』、電気学会 [3] 関根泰次、『電力系統工学』、電気書院
[4] http://www.ee.washington.edu/、University of Washington College of Engineering [5] 電力系統モデル標準化調査専門委員会、『電気学会技術報告 第754号』、電気学会
図 5 送電ルート別コスト(パターン2)
0.00001 0.0001 0.001 0.01 0.1 1 10
1→12 1→ 5 12→13 12→ 4 12→ 5 4→13 5→ 4 11→ 6 11→ 2 11→ 3 9→10 9→ 8 6→10 2→ 3 3→ 8 4→ 7 4→ 9 5→11 14→ 7 7→ 9
ルート
コスト
停電コスト 供給コスト
平成19年度 鶴岡工業高等専門学校主催 第4回 技術発表会 概要
職 名
技術専門職員
氏 名
八幡 喜代志
No.1題 名
飲料水の秘密を探る
1.はじめに
「日本の水は世界でも稀にみる優れた水」であることを再認識したのは、初めて海外に出 た時であり、パリやドイツで水がビールやワインやコーラ等と同じ値段で売られていること に驚いた。それは、カナダでもタイでも中国でも同じであった。
そこで、学生にも「日本の水資源は質的に優れているからこそ貴重である」ことを認識さ せようと水をテーマにした実験を取り入れてきているが、今年は専攻科の特別実験に取り上 げ、実際に水道水や湧き水をサンプリングし、且つ市販水をスーパーで買い求め、それらの 成分分析を行った。
今回は、これらのデータと共に、手持ちの資料を加えながら、改めて日本の飲料水につい て考えてみたい。
2.実験方法
1) 使用した飲料水
◎ 水道水 ・・・ 鶴岡市の水道水、青龍寺簡易水道水
◎ 湧き水 ・・・ 金峰山(2ケ所)、朝日地区の湧き水、八幡家井戸水
◎ 市販水 ・・・ 南アルプスの天然水、六甲のおいしい水、volvic, evian, Contrex
2) 測定機器原子吸光分析装置、 ICP発光分光分析装置、 イオンクロマトグラフィー
3) 測定成分K, Ca, Si, Mg, SO
42-, Cl
-, NO
3-3.結果と考察 1) 各成分量の分布
当然ながら各成分の含有量 は異なっている。ミネラル分の Ca, Si, Mgは含有量の差が大き く、中でもフランスの「evian」
や 「Contrex」 の Ca, Mg, SO
42-は異常と言えるほど多量であ り
(右図には示していない)、日本 の飲料水とは大きく異なって 高い硬度を示す。Kは水道水・
湧き水・市販水のいずれにも大 きな差はなく、特徴的な成分と
言える。
水道水と市販水の成分分析 10 5 10 15 20 25 30
K Ca Si Mg 硫酸 塩化物 硝酸
成分 濃度
① 鶴岡市水道水 ② 青龍寺水道水 ⑦ 南アルプス天然水 ⑧ 六甲のおいしい水 ⑨ volvic (仏)
八幡 喜代志
No.2金峰山を貯水源とする湧き水
と青龍寺簡易水道水および周辺 の井戸水を比較すると、これに朝 日地区の湧き水を含めて比較して も各成分量に大きな差はない。し かもその硬度は、約15~50ppmの 範囲にあり、日本の飲料水の典型 的な値を示している。
金峰山の2ケ所の湧き水と水道 水に着目すると、わずかではある がCa, Mg, SO
42-は標高が下がる につれて値が上昇している。確認 することは難しく推測ではある
が、地下水が浸透しながら少しずつ鉱化している例として着目できる。
2) 「おいしさの指標」と「硬度」の算出
K, Ca, Si, Mg, SO
42-の5成分の中で、K, Ca, Siが「おいしさ」成分、 Mg, SO
42-が「まずさ」成分とし て「おいしさの指標」なるものを求めるという方法があるので参考までに算出してみた(このとき Si はSiO
2に換算する)。 硬度は JIS法によって算出し、結果を下表に示した。
各試料の成分量と「おいしさの指標」と「硬度」の算出結果
K Ca SiO2 Mg SO42- 指標指標指標 指標 硬度硬度硬度硬度
①鶴岡市水道水 0.6 3.5 5.7 0.9 3.8 2.1 2.1 2.1 2.1 12 12 12 12
②青龍寺水道水 1.5 12.0 16.9 1.7 3.6 5.75.75.75.7 3 3 3 37777
③八幡家井戸水 1.2 12.8 18.4 4.7 6.4 2.92.92.92.9 51515151
④金峰山中の宮 0.9 3.9 17.8 1.5 2.8 5.35.35.35.3 11116666
⑤金峰山中腹の湧水 1.3 9.0 16.9 1.9 3.0 5.65.65.65.6 30303030
⑥朝日の湧水(加持水) 0.6 8.9 17.8 2.6 6.4 3.03.03.03.0 33333333
⑦南アルプス天然水 1.7 10.6 26.0 1.9 4.9 5.75.75.75.7 34343434
⑧六甲のおいしい水 0.2 27.7 32.3 5.9 15.9 2.82.82.82.8 93939393
⑨volvic (仏) 4.1 13.1 33.3 8.9 8.5 2.92.92.92.9 69696969
⑩evian (仏) 0.5 84.8 15.4 29.0 13.3 2.42.42.42.4 331331331331
⑪Contrex (仏) 1.8 519 9.0 92.0 1142 0.40.40.40.4 1674 1674 1674 1674
3) その他、飲料水に関するミニ知識
その他、驚くべき世界各都市の水道水の成分、水の値段、水質基準等について紹介しながら、
日本の水資源は質的に優れているからこそ貴重であることを再認識する機会にしたい。
金峰山周辺の地下水の成分
0 2 4 6 8 10 12 14 16
K Ca Si Mg 硫酸 塩化物 硝酸
成分
① 金峰山 中の宮 ② 金峰山腹-湧水 ③ 青龍寺水道水 ④ 八幡家井戸水 ⑤ 朝日村の湧水