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(1)

マクロ経済学

I

神谷傳造 平成

12

6

1

1

非自発失業の意味

ケインズは『雇用,利子および貨幣の一般理論』で非自発失業の概念を提示し,経済学が問題と すべき失業はどのような失業であるかについて,一つの明確な見解を示した.少なくとも

1960

年 代までは,この見解は経済学者の大多数の支持を得ていた.その見方は,現在もなお有力である.

ワルラス均衡 現代経済学の立場から見れば,これはワルラス均衡を否定するということである.

1企業,1家計の簡単なモデルによって,はじめにワルラス均衡とは何かを考えよう.まず企業 の行動を制約する生産関数については,Y を生産量,N を雇用量として

Y = F (N ) (1)

の関係があるものとしよう.この生産関数については,通常のとおり,労働の正の生産性と収獲 の逓減を前提とする.雇用量を増やすと生産量は増えるが,雇用量1単位当りの増分は,雇用量 が大きいほど小さくなる.一方,家計の行動を定める効用関数については,B を余暇の消費,C を生産物の消費,L を労働の供給として

U = û (B; C ); B = A Ä L (2)

の関係があるものとする.ここで

A

は,家計が余暇と労働に使う時間の総数であり,その大きさ は一定である.B

= A Ä L

は,労働の供給が大きいほど余暇の消費は小さいことを示している.

この効用関数についても,通常のとおり,余暇と消費財の正の効用と,余暇と消費財のあいだの 限界代替率の逓減を前提とする.余暇も消費財も,消費量が大きいほど家計の得る効用は大きい.

一方,効用を一定に保つようにたとえば余暇を消費財に置き換えて行くと,余暇の消費が大きく なるほど,余暇1単位で置き換えられる消費財の量は次第に小さくなって行く.

ワルラスの市場経済では,価格が自由に伸縮して市場の需要供給を調整する.そこで,生産物 単位の実質賃金率を

w

とする.企業は,市場で決まる実質賃金率を与件として,生産関数の制約 の下に利潤

ô = Y Ä wN (3)

を最大とするように雇用量と生産量を決める.そのとき,よく知られているように,労働の限界 生産力と実質賃金率の均等条件

F 0 (N ) = w (4)

が成り立つように雇用量を決めれば利潤が最大になる.このようにして最適な雇用量が決まれば,

生産関数の関係によって最適な生産量も決まる.このことから,企業の生産物の供給量と労働の 需要量は,いずれも実質賃金率

w

の関数として定まることが分かる.その関係を

Y = S Y (w); N = D L (w) (5)

と書くことにしよう.生産関数に関する収穫逓減の前提から,S

Y 0 (w) < 0,D 0 L (w) < 0 となるこ とは明らかであろう.

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マクロ経済学

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一方家計は,やはり市場で決る実質賃金率を与件として,所得制約条件

wL + ô = C (6)

の下で最大にするように消費量と労働供給量を決める.よく知られているように,余暇と消費の 限界代替率と実質賃金率の均等条件

û B

û C = w (7)

が成り立つように労働供給と消費財需要量を決めれば効用が最大になる.所得制約の一要因であ る利潤は,企業行動を通じて実質賃金率の関数として定まるから,家計の労働供給量と消費財需 要量は,いずれも実質賃金率

w

の関数として定まることが分かる.その関係を

C = D Y (w); L = S L (w) (8)

と書くことにしよう.企業の場合とは異なり,実質賃金率の変化に対する消費財需要量,労働供 給量の変化の向きは一般には確定できない.実質賃金率の変化が家計の実質所得を変化させるた め,家計が決める需要供給に所得効果が生じるからである.

市場経済のワルラス均衡とは,このようにして決まる需要供給が,市場で均衡するように実質 賃金率がきまっている状態である.すなわち

S Y (w) = D Y (w); S L (w) = D L (w) (9)

ただし,これら2つの条件は独立ではない.つまり,2つの等式のうち一方が成り立てば必ず他 方も成り立つ.それは,S

Y

,D

Y

,S

L

,D

L

(3)

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から導かれるつぎの等式に束縛されて いるからである.

w(D L Ä S L ) + (D Y Ä S Y ) = 0 (10)

これをワルラス法則という.ワルラスの市場経済では,価格

w

が自由に動いて,必ず

(9)

が成り 立つように需要と供給を調整する.需要と供給を一致させる価格を均衡価格という.

ワルラス均衡の概念は(a)家計の行動制約が,交換される財サービスの初期保有量と市場価格 のみで定まること(b)価格が十分な伸縮性をもつことを基本前提としている.(a)の前提から,

すべての需要量,供給量が,財サービスの初期配分を所与として,価格のみの関数となる.そし て(b)の前提から,均衡が成り立つかどうかが,もっぱら価格に依存することになる.このよう な均衡概念は,経済の実態を分析するために極めて有力な手段である.

ケインズ均衡 『一般理論』に示される経済では,価格調整が十分に働かない.そのため,雇用 と生産物需要がたがいに制約しあい,経済は必ずしもワルラス均衡に達することができない.ケ インズの市場均衡決定の原理をクラウワーにしたがって示せばつぎのようになるであろう.まず,

雇用と生産のあいだに生産関数の関係があることから,雇用は生産の関数として定まることが分 かる.それを

N = H(Y ) (11)

として,雇用関数と呼ぶ.この雇用関数を用いると,企業の意思決定はつぎのように書かれる.

N = H(Y ); Y = C (12)

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つまり企業は,生産物需要

C

の制約を受けて生産

Y

を決め,その生産を実現するように雇用

N

を決める.一方家計の意思決定はつぎのようである.

C = wL + ô; L = N (13)

つまり家計は,雇用

N

の制約を受けて労働供給

L

を決め,その結果得られる所得

wL + ô

の制 約に服して生産物需要

C

を決める.企業と家計の意思決定がこのようであると,実質賃金率

w

の水準がどのようであっても,また生産

Y

の水準がどのようであっても市場の需要供給が均衡す ることは明らかであろう.生産物,労働力のどちらについても,供給が需要に制約されて決まる からである.

ケインズはとくに,市場で決まる実質賃金率の下で,家計が労働供給を増やすことによって所 得と消費を増やし,なお効用を高める余地を残しながら,雇用制約のために労働供給を増やせな い場合を問題とする.そのとき家計は,労働供給を増やしたいという意図を持ちながらそれを実 現できないのであるから,失業が発生していることになる.これをケインズは「非自発失業」と いう.下の図は,ワルラス均衡とケインズ均衡を対比して示したものである.ケインズ均衡につ いては『一般理論』にしたがって,F

0 (N ) = w,すなわち「古典派経済学の第1公準」が成り立 つものとしている.

ワルラス均衡

...

...

...

...

...

...

...

...

...

W

O L A

C

P

...

...

.... ...

....

...

...

.... ...

....

...

...

.... ...

....

...

...

.... ...

....

...

...

.... ...

....

...

...

.... ...

....

...

...

.... ...

....

...

...

.... ...

....

...

...

.... ...

....

. . . .

.. . .. .. .. .. ..

ケインズ均衡

...

...

...

...

...

...

...

...

...

...

...

...

...

...

...

...

...

...

...

...

...

...

...

...

...

...

...

K E

O L A

C

P

. . . .

.. . .. .

図の横軸は余暇と労働時間,縦軸は消費量を示す.左図の

W

がワルラス均衡,右図の

K

がケイ ンズ均衡である.破線の直線は所得制約線であり,その傾きの大きさが実質賃金率,AP は利潤 所得の大きさを示す.OL,LA,OCがそれぞれ均衡の余暇消費量,労働供給量,消費量である.

ケインズ均衡は,所得制約線上に,さらに効用の高い

E

点を残している.

ここで,ケインズ均衡にとって大切な点は,家計が所与の市場条件の下で,労働供給と消費を 増やして効用をさらに増やす余地を残しながら,雇用制約のためにそれが妨げられていることで ある.このことは,市場で定まる実質賃金率がワルラス均衡水準より高いときに起こる.いわゆ る「第1公準」つまり労働限界生産力と実質賃金率の均等条件は,成り立っていても成り立って いなくてもよいことに注意しておこう.

非自発性の意味 ところで,非自発失業の「非自発」は,どのような意味であろうか.失業とは,

労働の意思と能力を持ちながら就業できないことであるから,もともと非自発のものではないか.

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ケインズのこの用語の意味を理解する鍵は,ケインズの「自発失業」の定義にある.『一般理論』

第2章につぎのように書かれている.

In addition to `frictional' unemployment, the postulate is also compatible with `vol- untary' unemployment due to the refusal or inability of a unit of labour, as a result of legislation or social practices or of combination for collective bargaining or of slow response to change or mere human obstinacy, to accept a reward corresponding to the value of the product attributable to its marginal productivity. p. 6.

ここで

\the postulate"

とは「古典派経済学の第2公準」のことであり,労働市場と失業について

のピグー等の見方を指す.要するに失業が自発的か非自発的かの違いは,実質賃金率が高水準に 留まる原因による.たとえば最低賃金法などの立法,賃金交渉のための団結など,人間が意図し てつくり出す要因や,社会慣行など,社会の慣性による変化の阻害要因が原因となって実質賃金 率が高水準の留まる場合がある.その結果として発生する失業をケインズは「自発失業

voluntary unemployment」という.これに対して,たとえば情報伝播の不完全性など,市場機構の不完全性

から生じる価格調整の障害がある.その結果として発生する失業が「非自発失業」である.この ようにケインズは「非自発失業」ということばを用いて,『一般理論』が問題とする失業を人間の 意図,社会の慣性など,人間に発する原因から生じる失業と区別している.

ケインズは,失業について,のちの経済学者よりも問題を一層明確に示している.

参考文献

John M. Keynes (1973) The General Theory of Employment, Interest and Money. The Collected

Writings of John Maynard Keynes. Volume VII. London: Macmillan. (First Edition, 1936.)

Robert W. Clower (1965) \The Keynesian Counter-revolution: A Theoretical Appraisal." In

The Theory of Interest Rates, Conference on the Theory of Interest and Money, Royaumont,

France, 1962, edited by Frank H. Hahn and F. P. R. Brechling. London: Macmillan.

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