YBCO 線材の電流分布測定
川畑 秋馬,下玉利 篤,川越 明史,住吉 文夫
(鹿児島大学)
塩原 融 (超電導工学研究所)
2006年度低温工学協会九州・西日本支部研究会
鹿児島大学ベンチャービジネスラボラトリー2006年7月22日(土)
YBCO線材
・高Jc-B特性
・低コスト化が可能
YBCO線材を巻線に用いた
超電導変圧器や超伝導モーターなどが開発中
Y系超電導機器の高効率化のために、
YBCO線材および導体の低損失化が必要
研究背景
その通電特性(特に、一様な電流分布になっているか)を 検証する必要がある。
低損失化のために
→
YBCO
線材のスリット加工(マルチフィラメント化)
研究目的
本研究の目的は、低損失化された
YBCO
線材の電流分布を 非接触で広い周波数領域にわたって測定し、通電特性と損失 特性との関連を把握することによって、高性能な超電導機器 実現のためのYBCO
線材の設計指針を得ることである。スリット加工
YBCO線材
研究内容
スリット加工により低交流損失化された
YBCO
線材の 電流分布測定・低損失化のための加工法と通電特性との関連を明らかにする。
・測定は数
Hz
~数100Hz
まで広範囲に行い、機器の様々な運転モードに対する線材の性能を明らかにする。
測定試料形状
・短尺直線形状
・長尺直線形状
・単層ソレノイドコイル形状
1.測定装置の概要
・ 電流分布(磁場分布)の測定方法
・ 測定磁場分布からの電流分布算出方法
2.ピックアップコイルの製作精度の向上による測定精度の向上 3.マルチフィラメント化された
Y
系線材の電流分布測定のための銅テープ線材を用いた予備実験
4.マルチフィラメント化されたY系線材の電流分布測定のための
Bi-2223テープ線材を用いた予備実験
5.
まとめ発表内容
電流分布は極小サイズのピックアップコイルを用いるため、
高分解能で、かつ精度が良く、非接触で測定可能
(磁場分布測定 → 電流分布算出)
測定装置の概要
短尺直線形状での電流分布測定
・ピックアップコイル
→0.14mm厚の紙製のボビンに 20μmの極細銅線を巻線 コイル幅は3~6mm
ターン数5~20ターン
・ピックアップコイル校正用導体
→絶縁銅線
6
本から成る導体・試料線材
・ピックアップコイルの移動
・Zステージ(線材幅方向移動
)
→移動分解能:
0.1mm
・X-Yステージ
→移動分解能:
0.1mm
単層ソレノイド形状での電流分布測定
測定装置の概要
電流分布の算出方法
Bi系線材でのモデル作成例
電流パターンを構成
構成された電流パターンで 磁場計算を行う
磁場パターンを 電流パターンに変換 測定磁場と計算磁場との 差を最小二乗法で求める
変換した電流パターンを
∑
=−
=
ni
i
i
B
B E
1
)
2(
測定値 計算値⊿
磁場分布測定結果からの電流分布の算出方法
0.0E+00 2.0E-06 4.0E-06 6.0E-06 8.0E-06 1.0E-05 1.2E-05 1.4E-05 1.6E-05
0 0.5 1 1.5
Pickup-Coil位置[mm]
Pickup-Coil電圧[V]
測定値 計算値
0.0E+00 1.0E-06 2.0E-06 3.0E-06 4.0E-06 5.0E-06 6.0E-06
0 0.5 1 1.5
Pickup-Coil位置[mm]
Pickup-Coil電圧[V]
測定値 計算値
0.0E+00 2.0E-06 4.0E-06 6.0E-06 8.0E-06 1.0E-05 1.2E-05
0 0.5 1 1.5
Pickup-Coil位置[mm]
Pickup-Coil電圧[V]
測定値[V]
計算値[V]
いずれの電流パターンでも
3%以内で測定値と計算値が一致
0.0E+00 1.0E-06 2.0E-06 3.0E-06 4.0E-06 5.0E-06 6.0E-06 7.0E-06 8.0E-06 9.0E-06 1.0E-05
0 0.5 1 1.5
Pickup-Coil位置[mm]
Pickup-Coil電圧[V]
測定値[V]
計算値[V]
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6
素線1 素線2 素線3 素線4 素線5 素線6
電流値[A]
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7
素線1 素線2 素線3 素線4 素線5 素線6
電流値[A]
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6
素線1 素線2 素線3 素線4 素線5 素線6
電流値[A]
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7
素線1 素線2 素線3 素線4 素線5 素線6
電流値[A]
縁銅線を6本並べた試験導体での測定精度の検証
15ター
ン密15
ターン 疎3.0
mm 15ター
ン疎
15
ターン3.3
密mm
10mm
30mm
0.0E+00 2.0E-05 4.0E-05 6.0E-05 8.0E-05 1.0E-04
0.0E+00 2.0E-05 4.0E-05 6.0E-05 8.0E-05 1.0E-04
ピックアップコイルの 電圧
[V]
ピックアップコイルの製作精度の向上
巻線の偏りによる測定電圧への影響
改善前のピックアップコイル 改善後のピックアップコイル
ピックアップコイルの製作精度の向上
ピックアップコイルの製作精度の向上による測定精度の向上
14
0.E+00 5.E-07 1.E-06 2.E-06 2.E-06 3.E-06 3.E-06 4.E-06 4.E-06 5.E-06
0 5 10
x, mm
測定電圧, V
3枚の銅テープ線材を使用
通電電流値の組合せを変えて磁場分布測定
電流値はシャントでモニタ
→ 磁場分布から電流分布を算出
マ ル チ フ ィ ラ メ ン ト 化 さ れ た Y 系 線 材 を 模 擬 し た 銅テープ線材の電流分布測定(予備実験)
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5
1 2 3
電流, A
計算値 シャント電流
0 1 2 3 4 5 6 7
1 2 3
電流, A
計算値 シャント電流
磁場分布の 測定例
電流分布の 計算結果
0.E+00 1.E-06 2.E-06 3.E-06 4.E-06 5.E-06 6.E-06 7.E-06
測定電圧, V
実際の通電電流との比較
3枚の
Bi-2223
テープ線材を使用通電電流値の組合せを変えて磁場分布測定
電流値はシャントでモニタ
→ 磁場分布から電流分布を算出
マ ル チ フ ィ ラ メ ン ト 化 さ れ た Y 系 線 材 を 模 擬 し た
Bi-2223
テープ線材の電流分布測定(300K
)0.0E+00 5.0E-07 1.0E-06 1.5E-06 2.0E-06
0 5 10 15
測定電圧
測定値[V]
磁場分布の 測定例
0 0.5 1 1.5 2 2.5
1 2 3
電流[A
計算値 シャント電流
電流分布の 計算結果
・ピックアップコイルの製作精度を上げることにより、測定精度の 向上が図れた。
・マルチフィラメント化された
Y
系線材を模擬した銅テープ線材の 電流分布を測定し、数パーセント程度の誤差内で実際の通電 電流値を得ることができた。・マルチフィラメント化された
Y
系線材を模擬したBi-2223
テープ 線材の300K
での電流分布を測定し、銀に一様に流れていると 仮定した計算とよい一致を示した。上記、
Bi-2223
テープ線材の77K
での測定後、YBCO
線材の電流分布の測定を実施予定である。