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Kagaku to Seibutsu 55(11) - J-Stage

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化学と生物 Vol. 55, No. 11, 2017

「食」の科学との出会いから今思うこと

松冨直利

山口大学名誉教授

私が「食」の科学と出会うきっかけは,

母と親交の深かった内科医の先生の言葉 だった.「急増している成人病(後の生活 習慣病)は食事のバランスの乱れが要因だ よ.将来,面白い仕事は『食』にかかわる 分野でしょう」

.この言葉が進路を方向づ

け,未来への扉を開くことにもなった.

大学入学当時(1965年)

全国的に農学系 分野が拡充される時機で,大規模大学では 農芸化学科の充実と,「食」に基盤を置く 食糧化学科や食糧化学工学科などが新設さ れていた.母校山口大学でも,農学科の既 存講座と講座増で農芸化学科の新設が予定 されていた.過渡期で農学と農芸化学分野 の講義や実習が設けられ,畜産実習,田植 え・稲刈り

,果樹園での摘果・収穫作業は,

今思えば本当に懐かしい.両分野を同時に 学べたことは,後の教育・研究に役立った と実感している.最近,生化学系の学会で は研究領域の先鋭・細分化を見直し,隔年 で合同学会を開催している.日本農芸化学 会は,生命・食・環境の広範な分野を包含 しているが,さらなる発展ためには医学,生 化学,農学系の各学会との共催が望まれる.

さて,わが国は世界有数の長寿国であり,

平均寿命は男女とも80歳を超え,今後さら に延びると予測される.こうした平均寿命 の延びの要因は,旬の食べ物や多彩な地域 産物を組み合せ,美味しく調理して,バラ ンスのとれた食事をしてきたからだと言わ れている.しかし一方では長寿が生活習慣 病や,寝たきり,認知症を増やす結果とな り,本人はもとより家族や社会の負担も増 している.しかも健康寿命と平均寿命の間 には男性で9年,女性で12年の差があり,

日本人の老後約10年間は介助や介護が必 要となる.これに向けられる費用はすでに 10兆円を超え,長寿と健康をいかに両立 させるかが喫緊の課題である.厚生労働省

はこれからの時代のための健康指針として

「健康日本21(第二次)」を策定し,「栄養・

食生活,身体活動・運動,休養・こころの 健康づくり」にそれぞれ目標値をかかげた.

なかでも一日の野菜摂取量を350グラム以 上,食塩は10グラム未満の食事指導は成 果を上げ,特に野菜摂取で目標値を超えた 長野県は,ここ数年長寿県としてトップを 占めている.また,野菜摂取量と平均寿命 が高く相関する結果は,食と農に関心をも つ自分にとって興味深く,「野菜の秘める チカラ」の究明に期待を寄せたい.

昨今の健康ブームから,健康食品や機能 性食品が話題を集めている.なかにはその 商品をとれば必ず効くかのような表現が見 られるが,あくまでもサプリメントであっ て,栄養や食生活の改善が基本である.食 べ物は美味しくないと摂食行動を促さない.

「おいしさ」は食べ物自体の味と香りの調和 とともに,食べる人の状態(心理的・生理 的要因)にも左右される.それゆえ「おい しさ」の科学には,栄養学のみならず医学,

農学,食品工学の連携が不可欠になる.関 連分野の連携の必要性を感じていた折,日本 分子生物学会(2014年11月横浜)が「『食』

と『カラダ』の相互作用」についてのワー クショップを設けた.多くの参加者が関心 を寄せていて,私自身当会の非会員である が,改めて本会との共催の必要性を感じ た.こんな思いもあって,昨年9月地域連 携事業の支援を得て,「健康を支える医食 農連携プログラム:食と健康から見た野菜 のチカラ再発見」を開催した.地域で健康 に携わる100名近い方々が参加された.今 後,医食農連携のプラットホームになれば と期待している.

Copyright © 2017 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.55.723

日本農芸化学会

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巻頭言 Top Column

Top Column

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プロフィール

松冨 直利(Naotoshi MATSUDOMI)

<略 歴>1969年 山 口 大 学 農 学 部 農 学 科

(食品化学専修)卒業/1971年同大学大学 院農学研究科修士課程修了/同年同大学助 手/1977年博士(農学)九州大学/1988〜

1989年文部科学省在外研究員(米国コー ネル大学食品科学部)/1991年山口大学助 教 授/1996年 同 教 授/2010年 同 名 誉 教 授/同年〜2017年宇部フロンティア大学 短 期 大 学 部 教 授/2014〜2017年 同 副 学 長/2016年日本農芸化学会有功会員<興 味をもっていること>野菜のチカラ<趣 味>家庭菜園で採れた完熟野菜を肴に美酒 を愉しむ

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Moffatt 博士のもとに 何かをつ かむために 1年ずつ留学した.しかし, そこでも自分のアイディアでC-ヌクレオ シド類の合成研究を行うこととなり 留学 は期待に反した と思っていた.だが,20 年後にしてこの留学が非常に役に立った. その間の研究によって 世界初 という言 葉のある論文を書くことができ,達成感は 得られたが,画期的な発見・発明にはつな