PhO News Letter
J Japan Physics Olympiad
特定非営利活動法人物理オリンピック日本委員会会報
No. 1 創刊号 2011 年 9 月
CONTENTS
02 NPO 設立にあたって 03 JPhO の組織と活動概要 04 物理チャレンジ 2011 の報告
06 国際物理オリンピック 2011 タイ大会の報告 08 JPhO 入会のお誘い
NPO物理オリンピック日本委員会いよいよ始動 物理チャレンジ 2011 開催
国際物理オリンピック 2011 で健闘
特定非営利活動法人 物理オリンピック日本委員会
〒105-0004 東京都港区新橋 5-34-3 栄進開発ビル5F (社)日本物理学会内
Tel: 03-3434-2674 Fax: 03-3432-0997 E-mail: [email protected] HP: www.phys-challenge.jp/
NPO The Committee of Japan Physics Olympiad (JPhO)
-2- JPhO News Letter No. 1 (September 2011)
特定非営利活動法人 物理オリンピック日本委員会
理事長 有 山 正 孝
特定非営利活動法人 物理オリンピック日本委員会は,大 学などのいわゆる高等教育機関に入学する前の 20 歳未満の 青少年を対象とする全国的な物理のコンテストを実施し,
またその中で頭角を現した者を選び,日本代表として国際 物理オリンピックに派遣する事業を行う法人です。この事 業は, 2005 年の「国際物理年」に際して日本国内での様々 なイベントを企画するために組織された有志の集まり「世 界物理年日本委員会」によってはじめて実施され, 2006 年 からは改めて組織された任意団体「物理チャレンジ・オリ ンピック日本委員会」によって継続的に主催されてきまし た。これまでの実績等については別項をご参照ください。
私どもの事業は国からの補助を受け,公益財団法人 日本 科学技術振興財団に事務局の役割を受け持っていただいて実 施してきたのですが,安定してこの事業を継続するために は主催団体が法人格を取得して主体的に事業を実施すること が望ましいという判断に基づき,数年間の準備期間を経て 昨年 11 月,特定非営利活動法人( NPO )の設立申請を内閣 府に提出し,今年 3 月 11 日付で設立認証を得, 3 月 23 日 付で登記を完了,法人としての一歩を踏み出しました。法 人として独立することにはそれなりの困難も伴いますが,
多くの方々のご支援により,今年の「物理チャレンジ 2011 」開催と「国際物理オリンピック 2011 」への日本代
表派遣の事業も無事に成し遂げることができました。
私どもの主たる事業は先に申しましたように「物理チャ レンジ」の開催と「国際物理オリンピック」への日本代表 派遣ですが,私どもは単にコンテストを開催して参加者を 競わせるだけでなく,この事業を通じて物理に興味を持つ 青少年が全国から集まって互いに切磋琢磨する機会を提供 し,参加者一人一人の物理への興味を深め関心をさらに高め て,物理を学習するモチベーションを強化することも目的 の一つとしています。さらにこの事業が,我が国の初等中 等教育段階の物理教育を活性化し,その水準向上に資するこ とを願っています。
しかし,私どもの活動は財政的には国の支援を得ており ますが,人的資源は逼迫しております。私たちの理念に多 くの方々が賛同し支援してくださることを,そしてできれ
ば問題作成や採点など実質的な活動に参加してくださることを期待します。
NPO設立にあたって
物理チャレンジ2011理論コンテスト
-3- JPhO News Letter No. 1 (September 2011)
6つの事業
物理オリンピック日本委員会(JPhO)は,定款により,
次の6つの事業を行います。
(1) 全国物理コンテスト物理チャレンジを開催する事業 (2) 国際物理オリンピックに派遣する日本代表を選抜し訓
練する事業
(3) 国際物理オリンピックに日本代表を派遣する事業 (4) 本法人の事業に参加した者相互間の連携を継続して維
持する事業
(5) 物理教育を始めとする科学教育の重要性に対する社会 の理解を増進する事業
(6) 科学技術の他の領域において同様の事業を行う団体と 連絡・連携する事業
主要な事業は(1)-(3)ですが,(4)-(6)の事業も今後,日本 の物理教育のさらなる活性化に寄与するために重要である と考えています。物理チャレンジに参加した生徒たちの ネットワークをつくること,学校や社会に向けた広報活動 また他の科学コンテスト事業との連携を図り,日本全体の 運動にしていくことが重要と考えています。
JPhO会員が活動を支える
そのような事業展開の基盤は会員です。会員は,正会員
(JPhOの活動及び事業を推進する個人及び団体),学生会 員(物理チャレンジに参加した経験があり,JPhOの活動を 支援する学生),賛助会員(JPhOの活動を援助する個人及 び団体)からなります。JPhOの活動を推進する主体は正会 員からなる「総会」です。JPhOの業務を執行するのは「理 事会」であり,その構成員である理事と監事は総会によっ て選出されます。右図のように,理事会のもとに,現在は,
総務広報委員会,財務委員会,物理チャレンジ実行委員会 , 国際物理オリンピック派遣委員会という4つの委員会があ ります。
今後の事業展開により,対応する委員会の設置がさらに必 要となります。それぞれの委員会の委員長は理事が兼務し ます。物理チャレンジ実行委員会と国際物理オリンピック 派遣委員会は下図のようにそれぞれ4つの部会からなり,
問題作成や採点,開催地での企画運営,あるいは代表候補 者の研修,IPhOへの代表者派遣・引率などを担当します。
JPhOが発足して半年経ちました。上で述べましたよう に,JPhOの活性化と恒常的運営のためには,会員を増やす ことが急務です。また,会員が増えればそれだけ物理チャ レンジと物理オリンピックの活動が世に知られることにな ります。会員を増やすことと事業展開に応じた運営体制を 整備することが当面の課題です。皆様のご協力を切にお願 いします。
JPhO の組織と活動概要
JPhO 活動スケジュール 毎年9月から翌年の8月までが1 物理オリンピックまで1年以上にわたって合宿・研修などを行う。
物理チャレンジ2011での金賞受賞者たち 国際物理オリンピック2011閉会式での日本選手役員たち
第1
チャレンジ応募者数の推
移-4- JPhO News Letter No. 1 (September 2011)
今年で7回目の開催
中高生を対象とした全国物理コンテスト物理チャレンジは,
2005年の世界物理年を契機に開始され,今年で第7回目を迎 えた。応募者は下図に示すように年々増加し,今年は1,200名 に達した。このコンテストは,翌年の国際物理オリンピック
(IPhO)に出場する日本代表選手の候補者選考も兼ねている が,その資格の無い高校3年生も積極的に参加している。これ は,IPhO出場のチャンスの有無にかかわらず,物理自体を楽 しみ,物理好きの仲間との交流を期待しているためである。実 際,そのような感想が参加者から多く聞かれる。物理チャレン ジがIPhOの国内予選という目的だけのイベントでないことが わかる。また,高校生に混じって中学生も参加しているのは頼 もしい限りである。
都道府県別の参加者数を見ると,物理チャレンジ「発祥の 地」岡山県が総数では群を抜いているが,年を追うごとに全国 各地から参加者が集まっていることがわかる。全国的に知名度 が上がり定着しつつあることがうかがえる。
ホップ・ステップ・ジャンプ, 3段階の物理チャレンジ
物理チャレンジは3段階に分かれている。 第1チャレンジ は,毎年6月半ばに全国各地の約80カ所で一斉に開催される 理論問題コンテスト(90分間のマークシート試験),および 自宅や在学校で実験を行ってレポートを提出する実験課題コン テストから構成されている。実験課題は毎年1月初めまでに ホームページ上で公開され,参加を予定している生徒たちは
「大気圧を測ろう」であった。大気圧に関して,中学校理科で は定性的な実験にとどまっている場合が多く,また高校物理 では「理論」的な考察しか勉強しないのではないだろうか。
今回の課題では,定量的な測定を行って大気圧の値を求めるこ とを課した。水ホースを使ったトリチェリの実験や,吸盤を 引きはがすのに必要な力を測定したり,注射器で空気を圧縮す る力を測ったり,様々な方法で大気圧を測定したレポートが多 数集まり,実験を楽しんでいる様子がうかがえた。精度の高 い測定器を自作し,高いビルに登って測定した結果,高度が 1m上がるごとに気圧がどれだけ下がるか明らかにした極めて 優れたレポートもあった。優れたレポートを提出した次の6 名に実験優秀賞が授与された。
・工藤 耕司 (明法高等学校 3年生)
・伊知地 直樹 (東京都立小石川中等教育学校 4年生)
・森 泉 (東京都立小石川中等教育学校 4年生)
・奥野 将人 (石川県立小松高等学校3年生)
・宮浦 浩美 (石川県立小松高等学校3年生)
・川畑 幸平 (灘高等学校2年生)
第1チャレンジという予選の段階で実験を課していること が物理チャレンジの特長であり,他の科学オリンピック国内
全国物理コンテスト 物理チャレンジ 2011 の報告
JPhO の組織
予選にはない。中高校の物理教育への重要なメッセージでも ある。
第2チャレンジ は,第1チャレンジの理論および実験コン テストの総合成績によって選抜された70名程度が一堂に会し て3泊4日の合宿を行い,IPhOに倣った5時間の理論コンテ ストおよび実験コンテストで実力を競う。今年は,2名の中学 生を含む75名が選抜され,7月31日から8月3日まで,筑 波大学を主会場に開催された。理論コンテストでは,ロケッ トの運動,気体の比熱とエントロピー,光の粒子性,プラズマ などを題材とした問題が出題された。いずれも単純なモデル から現実的なモデルへと進展する問題構成となっていた。必 要最小限の前提知識から出発し,解答に必要な高度な知識は問 題文中に与えられ,論理的に考えていけば答えにたどり着け る問題だった。
-5 - JPhO News Letter No. 1 (September 2011)
16 ペ ージ に及 ぶ 問 題 冊 子と5 時間 か け て 格 闘 す る 理論コ ン テ ス ト は 大 学 入試と 一 味 もふた 味 も違っ た試 験で あ る 。 実験コ ン テ ス ト は ,直 流 お よ び交 流の電気 回路の問 題で ,生 徒一 人ひと り に回路の部品やブレ ッド ボード,デジ タ ルマ ル チメ ータ , オシ ロス コー プが与 えら れ ,5 時 間 の試 験 時間 中 に各 自が回路を 実 際 に 組 み 立 て , 電圧 や 波形を測定 し て回路の仕組 み を考 える と い う試 験で あ っ た 。 こ れ ら 理論お よ び 実験コ ン テ ス ト を総 合し て 成 績優 秀者 に は以 下の賞が授 与さ れ た 。
・茨 城県 知事賞( 理論・ 実験コ ン テ ス ト総 合成 績 で ト ップ)
佐藤 遼 太 郎 秀 光中 等 教 育 学校6 年 (宮城 県)
・ つ くば市長賞( 高校2 年生 以 下で総 合成 績 ト ッ プ)
笠浦 一海 開 成 高 等 学校2 年 ( 東 京 都 )
・筑 波大 学江 崎 玲 於 奈賞( も っ と も 発想豊か な解 答を し た 者 )
呉本 達哉 樹徳高 等 学校3 年 (群馬県)
・ つ くば科 学万 博記念財 団 理 事 長賞( 実験コ ン テ ス ト 成 績 ト ップ)
佐藤 遼 太 郎 秀 光中 等 教 育 学校6 年 (宮城 県)
・金 賞
榎 優一 灘高 等 学校1 年 (兵 庫県) 奥村 瞭平 福 井県立藤島高 等 学校3 年 (福 井県)
笠浦 一海 開 成 高 等 学校2 年 ( 東 京 都 ) 川 畑 幸 平 灘高 等 学校2 年 (兵 庫県) 小 松原 航 筑 波大 学附 属 駒場高 等 学校3 年
( 東 京 都 )
佐藤 遼 太 郎 秀 光中 等 教 育 学校6 年 (宮城 県)
・銀賞
魚 住 翔 筑 波大 学附 属 駒場高 等 学校3 年 ( 東 京 都 )
大森 亮 灘高 等 学校1 年 (兵 庫県)
岡本 泰平 大阪 星光学院高 等 学校2 年 ( 大 阪府 )
越 智 光 樹 愛 媛県立 今治 西高 等 学校3 年
(愛 媛県)
串 崎 康 介 埼 玉県立川越高 等 学校3 年 (埼 玉県)
呉本 達哉 樹徳高 等 学校3 年 (群馬県) 内藤 智 也 東海高 等 学校3 年 (愛知 県) 中塚 洋 佑 滋 賀県立膳所高 等 学校2 年 (滋 賀県)
船 曳 敦 漠 桐 朋高 等 学校2 年 ( 東 京 都 ) 松村 直也 北 嶺高 等 学校3 年 (北 海道) 山村 篤志 灘高 等 学校3 年 (兵 庫県) 劉 霊 輝 筑 波大 学附 属 駒場高 等 学校3 年
( 東 京 都 )
・銅賞
稲山 貴大 海 城高 等 学校3 年 ( 東 京 都 ) 大岡 知 樹 愛知 県立時 習館高 等 学校3 年
(愛知 県)
榊 真 吾 茨 城県立水戸第一 高 等 学校3 年
(茨 城県)
佐々木 毅 攻 玉社 高 等 学校3 年 ( 東 京 都 ) 鈴 木 拓実 福 井県立藤島高 等 学校3 年 (福 井県)
田中 駿 士 岡山県立岡山朝日 高 等 学校2 年
(岡山県)
日 高 拓 也 福岡 県立修猷 館高 等 学校3 年
(福岡 県)
福 永 健悟 東邦大 学 付属東邦高 等 学校3 年
(千 葉県)
山浦 豪将 巣 鴨高 等 学校3 年 ( 東 京 都 ) 山 本 英明 片山 学園高 等 学校3 年 (富山 県)
横 井 康一 北 海道札 幌 南高 等 学校 平成23 年卒(北 海道)
吉川 成輝 開 成 高 等 学校1 年 ( 東 京 都 )
・優良賞
岡本 史 也 神 奈川 県立柏 陽高 等 学校3 年
(神 奈川 県)
落合 宏平 山梨県立甲府南高 等 学校2 年
( 山梨県)
音 田 知希 鳥取県立倉 吉東 高 等 学校3 年
Physics Live
での一コマ デモ実験を見つめる眼差しは真
剣(鳥取県)
中村 駿 甫 千 葉県立千 葉高 等 学校2 年 (千 葉県)
以 上の 成 績優 秀者 の うち高2 生 以 下の生 徒か ら , 来年 のIPhO エス トニ ア大 会 の 日 本 代 表 選手 候補 者 と し て11 名が 選ばれ た 。 こ の候補 者 たちは , 今後 半年 間 の研 修に励む。 理論 研 修は 通信 添 削で , 実験 研
修は 年末の冬合 宿な ど で 集 中 的 に 行 わ れ る 。 物 理 チ ャ レ ン ジ最 後の段 階が チ ャ レ ン ジ ・ フ ァイナル で あ る 。第2 チ ャ レ ン ジ で 選ばれ た 代 表候補 者 ら が3 月末に 行 わ れ る春合 宿に再び 集 ま り , 日 本 代 表 選手5 名を決め る最終選考で あ る 。 ま た もや理論お よ び 実験 試 験が課せ ら れ ,ハイ レ ベ ル の決 勝 戦が繰り広げ ら れ る 。 こ こ で 選抜さ れ た5 名が7 月 の 国 際 物 理 オ リ ン ピ ッ ク に 派 遣 さ れ る の で あ る 。
試験だけでない ―Physics Live や研究所見学など も―
第2 チ ャ レ ン ジ で は , コ ン テ ス ト の試 験だ け で な く , 物 理 学 の最先端の研究を 行 っ て い る研究所 や実験施 設 の見学 , そ こ で の研究者 と の懇 談, さ ら に は 委 員 を 務 め て い る 大 学 ・ 高校の 先生に よ る 多 数 のデ モ実験「Physics Live 」 な ど , 物 理好き に は垂 涎の イ ベ ン ト が盛り だ く さん用意 さ れ て い る 。 開 会式で は 日 本 を 代 表 す る研究者 の講 演な ど も あ る 。 実 際 , 今 年 は2008 年 のノーベ ル 物 理 学 賞受賞者 小林 誠先生か ら講 演を い た だ い た 。自 分が 通 う 学校で は 物 理 の話で盛り上が る友達が い な い が , 物 理 チ ャ レ ン ジ で 多 数 の 物 理好き と知り 合い に な れ て充実 し た4 日 間 だ っ た , と い う感 想 が毎年 多 数寄せ ら れ て い る 。第2 チ ャ レ ン ジ で友 達に な っ た 参 加 者 ど う し は , 大 学 に 進 学 し た後も 親 友と し て 付 き合っ て い る と い う O P も 多 い 。 ま た , 物 理 チ ャ ン レ ン ジ を き っ か け に し て 物 理 に
「 の め り こ み 」 , 物 理 学 科 を は じ め と す る 理工系 学部へ 進 学 す る O P が 多 く , O Pネッ トワ ーク が 広が っ て い る 。
物理チャレンジのOPたちは今 ―参加者の進路調 査 ―
2005 年 の第1 回物 理 チ ャ レ ン ジ が 開 催 さ れ て か ら6 年 が 経過し ,当 時の 高校2 ,3 年生だ っ た 参 加 者 の 中 に は , 現在大 学院生と し て研究者 へ の 道を 歩 み だ し た 者 も 多 い に違い な い 。 そ こ で 今 年 度,第1 回大 会 で あ る 物 理 チ ャ レ ン ジ2005 の 参 加 者 を 対 象 と し て 物 理 チ ャ レ ン ジ で 得 た 体験が そ の後の 学習 や進路に ど の よ う に影 響し た か を調 査 す るべく 準 備 を 進 め て い る 。7 月 に は既に質 問項
目の検 討を目的 と し てグルー プミーティング 形式 の予備調 査を 行 っ た 。 そ こ で は 物 理 チ ャ レ ン ジ 参 加 経験者6 名に 集 ま っ て い た だ き , 参 加 の 動 機や 物 理 チ ャ レ ン ジ で印象 に残っ た こ と に つ い て自由 に述 べて も ら っ た 。明る く うちと け た雰 囲気で 進 行 す る 中 で 「 物 理 チ ャ レ ン ジ に 参 加 し た後で , 学 校の勉 強に縛ら れず 自由に 学んで い っ て い い の だ と い う自信が 持 て た 」 と い う よ う な貴重な 意見も い く つ か聞か れ た 。 こ の予備調 査を も と に 社 会 学 調 査の専 門 家と も相談し な が ら目 下アンケ ート調 査の 準 備 中 で あ る 。 こ れ か ら 年末に か け てアン ケ ート調 査, さ ら に イ ン タ ビュ ーに よ る調 査を 進 め て い く予定 で あ る 。
-6 - JPhO News Letter No. 1 (September 2011)
今年で6 回目 日本代表選手の派遣
7 月10 日 か ら18 日 ま で , タ イ のバン コ ク で , 第42 回国 際 物 理 オ リ ン ピ ッ ク (International Physics Olympiad, IPhO) タ イ 大 会 が 開 催 さ れ , 日 本 か ら下記 の5 名の 代 表 選手と同行 役 員 ( リー ダー・ オブ ザーバー)7 名の計12 名が 参 加 し た 。 日 本 代 表 選手5 名と獲得メダル は ,
・榎 優一 (灘高 等 学校1 年 ,兵 庫県) 金 メダル
・笠浦一海 ( 開 成 高 等 学校2 年 , 東 京 都 ) 銀 メダル
・川 畑 幸 平 (灘高 等 学校2 年 ,兵 庫県) 銀 メダル
・佐藤遼 太 郎(秀 光中 等 学校6 年 ,宮城県) 金 メダル
・ 山村 篤志 (灘高 等 学校3 年 ,兵 庫県) 金 メダル
で あ る 。 日 本 チー ム過 去最高 の 成功を挙げ る こ と が で き た 。同行 役 員 は ,向田 昌志( 九 州大 , リー ダー) , 興治文 子( 新潟大 ,サ ブリーダー) ,真 梶 克 彦( 筑 波大 付属 駒場高) ,杉山忠 男( 河合 塾) ,西 口大貴( 東 京 大) ,光 岡薫( 産総 研) (以 上 翻 訳・採 点 担 当) ,二宮正夫( 岡山光 量 子 研) (国 際 ・IPhO 招 致担 当) で あ っ た 。
IPhO は1967 年 にポ ー ランドで 開 始 さ れ ,以 来,下 図に あ る よ う に 年 々 参 加 国 数 が増 え, 今 年 は85 ヶ国 か ら総計393 名の 代 表 選手が 参 加 し た 。 日 本 は2006 年 のシンガポ ール 大 会 か ら 代 表 選手 団 を 派 遣 し て お り , 今 年 で6 回 目と な る 。右 図の よ う に , 日 本 チー ムは毎 回健 闘 し ,メダル を 多 数 獲得 し て い る 。
国際物理オリンピック 2011 タイ大会の報告
結団式 物理チャレンジOP
の大学生と一緒 に
結団式からバンコクへ
7 月8 日午後と9 日午前 , 東 京 大 学 理 学部で直 前合 宿を 行 い ,9 日午後, 日 本 代 表 選手役 員 団 の 結団式が 行 わ れ た 。文科省や関連学 会 か ら の来 賓 の 方 々 , 物 理 チ ャ レ ン ジ ・IPhO のOP な ど か ら 激 励を 受 け , そ の夜, 選手役 員 団 は羽 田か ら タ イ ・バン コ ク に向け て 出 発 し た 。
IPhO2011 理論・実験コンテスト ― 日本選手の
奮闘 ―
IPhO で は ,2 日目お よ び4 日目に そ れぞれ試 験 時間 が5 時間 に お よぶ理論コ ン テ ス ト お よ び 実
験コ ン テ ス ト が
行 わ れ る 。 開 催 国
の 出題委 員 会 が
準 備 し た 英文の
問 題を , 各国 の
引 率役 員 は 前 日
に徹 夜で 自国語
に翻 訳し , 選手た
ちは母国 語で試
験を 受 け 解 答す
る こ と が で き る 。
例年 , 長 文の問
題が 多 い が , 今
年 は 理論 問 題, 実験 問 題共に ,問 題 文が比較的短 い の が 特徴で あ っ た 。問 題の題 材と な っ た テー マ は , 理論 問 題で は ,3 体問 題と レーザー干 渉 宇 宙 アン テナ,帯 電し たシャボン玉, 中性原子に よ る ラザ フ ォード 散 乱, 実験 問 題で は電気的ブラッ ク ボッ ク ス お よ び力学 的ブラッ クボッ ク で あ っ た 。
- 7 -
JPhO News Letter No. 1 (September 2011)
日 本 代 表 選手たちは5 時間 の 長丁場の コ ン テ ス ト で あ き ら め る こ と な く果敢に 難問に 取 り 組 み , 下記 に示す よ う な好成 績 を挙げ た 。2011 年 は , 理論コ ン テ ス ト の 成 績 の平均点数 が 高 か っ た こ と が わ か る 。例年 に比 べ 問 題が易し か っ た よ う だ 。 ま た , 日 本 選手は , 理論 問 題の み な らず, 実験 問 題で も か な り の 高 得点を残し た の がメダル獲得 の
原 因で あ っ た 。下表 で 日 本 代 表平均点と は 日 本 選 手5 名の平均点数 を ,IPhO 全 体平均点と は 全 世 界 か ら の 参 加 者 の うち入賞 以 上( 全 体 の3 分の2 程 度の 参 加 者 ) の 成 績 を挙げ た 選手の平均点を そ れぞれ 表 し て い る 。
国際物理オリンピックでの日本代表選手団の成績 2011年 タイ大会では過去最高の成績をあげた。
理論 (30 点満 点)
実験 (20 点満 点)
日 本 代表
平 均 点IPhO 全体
平均点日 本 代表
平 均 点IPhO 全体
平均200 8 年
10.0 6
10.04 14.67 13.99
200 9 年
17.8 8
14.30 10.92 10.16
201 0 年
11.7 1
13.86 14.80 14.24
201 1 年
26.2 3
20.00 14.83 11.30
下表 に 成 績上位国 のメダル獲得 数 を示す 。 中 国 , 韓国 ,シンガポ ール , お よ び台 湾の5 名の 選手全 員 が金 メダル を獲得 し て お り , 日 本 は そ れ に次ぐ 成 績 と な っ っ た 。アジア勢が強い こ と が わ か る 。 上位5 か 国 の 国 内予選 で は1 万人以 上( 中 国 で は 10 万人以 上) の 高校 生が 参 加 す る 現状を考 える と ,1000 名 程 度の 中 か ら 選抜さ れ た 日 本 選手は 健 闘 し て い る と いえる 。 全 参 加 者 の な か で の総 合 成 績 ト ップは台 湾の 選手で あ っ た 。
国 金 銀 銅 順 位
中 国 5 1
韓国 5 1
シンガ ポ ール
5 1
台 湾 5 1
日 本 3 2 5
カザ フ ス タ ン
3 1 1 6
スロバ キア
3 1 1 6
タ イ 3 1 1 6
イ ンド 3 1 9
香港 3 10
ルー マ 2 3 11
ニ ア
米国 2 3 11
ト ル コ 1 4 13
ロ シア 1 3 1 14
ベ トナム 1 2 2 15
国際交流
IPhO で は ,試 験だ け で な く ,ほか の 国 と の 選 手 や役 員 ど う し の 国 際交 流が重要 な も うひと つ の 目的 で あ る 。 特 に 選手たちは ,同年 代 の 物 理好き と共通 の 興 味 を 持 っ て い る の で ,交 流の輪が すぐ に広が る 。 日 本 代 表 選手たちも各国 の 選手と積 極 的 に交 流し , 得 る と ころが 大 き か っ た よ う だ 。 特 に ,最 後のFarewell Partyで は ,恒例と な っ たハッ ピ姿でダン ス に 参 加 し ,各国 チー ムと のプレゼン ト交換や写真撮影な ど の交 流が盛んで あ っ た 。 大 学 受験 勉 強と は 一 味 もふた 味 も違うIPhO で の 物 理 の コ ン テ ス ト は , 日 本 の 高校 生に 世 界 の広さ を 体験す る貴重な 機 会 と な っ て い る 。
ま た ,各国 の 役 員 ど う し の交 流も貴重な 機 会 と な っ て い る 。他国 の 役 員 と情報交換す る こ と に よ っ て , 日 本 の 物 理 教 育 がグロ ーバル ス タ ンダー ドか ら ど うずれ て い る の か な ど を考 えさ せ ら れ る 。 特 に 今 年 は , 役 員 会議で ,二宮正夫JPhO 副理 事 長 か ら 東 日 本 大震 災後の 日 本 の状 況とIPhO 日 本 招 致に 関 す る説明が な さ れ た こ と も あ り , 役 員 間 の 国 際交 流が盛んで あ っ た 。 な お , 日 本 は2022 年 のIPhO 開 催 国 と し てIPhO 本部に よ っ て スケ ジュ ール さ れ て い る 。
国際物理オリンピック2011・タイ大会での成績上位国 順位はメダルの種類と数に基づく
Farewell Party 他国の代表選手たちと一緒に 国際物理オリンピックでの理論コンテストおよび実験
コンテストでの平均点数
今後の課題
海外の 多 く の 国 に で は9 月 新 学 期制を と っ て い る の で ,毎年7 月 に 開 催 さ れ るIPhO に は 高校を 卒業 し たばか り の生 徒を送り 出 す こ と が で き る 。 つ ま り , 日 本 の 選手は半年 間 のハンディキャ ップ を負っ て い る こ と に な る 。 ま た ,IPhO のシ ラバ ス に含ま れ る 大 学初年級程 度の 物 理 を ,海外の ト ップ高校で は す で に 学習し て い る と ころが 多 い 。 こ の よ う な 現状の な か で , 日 本 代 表 選手 候補 者 に 選ばれ た2 年生 以 下の 高校 生に 対 し て ,IPhO シ ラバス の 物 理 を ど の よ う に習得 し て も ら う か ,毎
年試行錯 誤で研 修を 行 っ て い る の が 現状で あ る 。 こ れ ら は 今後の 大 き な課 題で あ る 。
-8 - JPhO News Letter No. 1 (September 2011)
個 人 会 員
JPhO の趣 旨に賛 同さ れ 活 動 を 支 援 し た い 方 は ,下記 の 入 会 申込 書( ま た は そ の コ ピー) に必要 事 項 を 記 入 し て い た だ き ,FAX (03-3432-0997 ) ま た は郵 送( 〒105-0004 東 京 都 港 区 新 橋 5-34-3 栄 進 開 発 ビ ル5F ( 社) 日 本 物 理 学 会 内 NPO物 理 オ リ ン ピ ッ ク 日 本 委 員 会 宛) に て お送り く だ さ い 。 年 会費は 正 会 員 3,000 円, 学生会 員 1,000 円,賛助 会 員 一口5,000 円で す ( 入 会金な し ) 。賛助 会 員 は二 口以 上も可 能で す 。 正 会 員 は総会 で の議決権を 持ちま す が , 学 生会 員 お よ び賛助 会 員 は議決権を 持ちま せん。 入 会 申込 書を 受領 後,郵 便振替を お送り し ま す の で , 会費の 振込を お願い し ま す 。 会 員 に はNews Letter や メ ールマガジ ン な ど で情報 が届け ら れ ま す 。特定非営利活動法人 物 理 オ リ ン ピ ッ ク 日 本 委 員 会 入 会 申 込 書 (個人会員用)
申
込年 月 日
(西暦)
20 年 月 日
会 員
種別
□ 正会員 □ 学生会員(大学名
: ) □ 賛助会員(
□学
部年
□大 学
院□ M
年
□ D年
(
口数 )
氏名 フリガ ナ 漢 字
(姓)
(名)
生
年 月 日 (
西 暦)19 年 月 日
性 別□男 □女
最 終
学
歴/
在学校
JPhO 入会のお誘い
帰国後 文科省に報告 鈴木寛文科副大臣から大臣賞が授 与
職
業 /
専 門 分野
自 宅 住 所
〒□□□-□□□□
都道府県 市町村
電話:
FAX:
務 先 /
在学校
希
望
連 絡先
(レ印)
□
自宅□
勤務 先 /
在学校名称・部署:
所在地 〒□□□-□□□□
都道府県
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JPhO 活 動 へ の ご
協 力の
可 能 性(
複数
可)□ 物理チャレンジ[□
作問 □採点 □運営 □その他( )]
□IPhO 派 遣 [□
作 問□
実
験指 導□研 修
□
派 遣
□そ の
他(
)]
□ その他[ ] そ の
他ご
連 絡事項
会費 請
求書は改めてお送り申し
上げます。 ( 注:以下の欄には記入しないでください。 )
申込受理日 会員番号 会費額 会費受理日 備考
団 体 会 員
JPhO の趣 旨に賛 同さ れ 活 動 を 支 援 し た い 企 業や学 会 な ど の 法 人 を 対 象 と し て 団 体 会 員 も募集 し て い ま す 。詳し く は 事 務 局 ま で に お問い合わ せ く だ さ い (Tel 03-3434- 2674 ま た はE-mail [email protected]) 。 団 体 正 会 員 の 年 会費は50,000 円, 団 体賛助 会 員 の 年 会 費は 一口50,000円で二 口以 上も可 能で す 。 いずれ も 入 会金は あ り ま せん。 正 会 員 は総会 で の議決 権を 持ちま す が賛助 会 員 は 持ちま せん。 会 員 の皆様 に は 物 理 オ リ ン ピ ッ ク と 物 理 チ ャ レ ン ジ に 関 す る さ まざま な情報 がNews Letter や メ ールマガジ ン な ど で 提供さ れ ま す 。