知覚モデルを利用した個人情報開示を 知覚モデルを利用した個人情報開示を 要するサービスの設計に関する考察
慶應義塾大学
慶應義塾大学
稲葉達也
目次
• ダイナミックサイネージ実証実験
• 背景
• 個人情報の開示が必要となるサービス
• 個人情報の開示が必要となるサ ビス
• 関連研究
概念 ム ク 提案
• 概念フレームワークの提案
• まとめ
• データ分析(検討経過の紹介)
ダイナミックサイネージ実証実験
• 実験概要
–
被験者が登録したプロフィール に応じて動的に表示内容を変 更するデジタルサイネージ 更するデジタルサイネ ジ–
被験者は電子タグを携行• 課題認識
–
行動履歴等の個人情報の開示 を意図して あるいは 意図せ を意図して、あるいは、意図せ ず求めるサービスのサービス 設計とは?–
ユビキタス技術の普及によりサ ービス設計指針の重要性が高 まる背景 ~サービスの普及~
• 個人情報の開示が必要となるサービスの普及
– 実空間での個人の意図した/意図されていない情報の開 示が必要なサービス
– 開示情報 開示情報
• 購買履歴情報
• 移動履歴情報
• 嗜好に関する情報
• 等々
• 普及の背景
– 技術革新 技術革新
•
情報通信技術、無線技術– 利用者の期待の高まり
•
情報空間における利便性を実空間にも期待サービスの実例
ポイントカードの利用 電子乗車券の利用 ポイントカ ドの利用
メンバーカード(ID) 値引
電子乗車券の利用
ICカード(ID) 切符の購入な
しでの乗車
利用者 サービス提供者 利用者
サービス提供者
デジタルサイネージの利用 位置情報による情報受信サービス デジタルサイネ ジの利用
RFID(ID) 情報
位置情報による情報受信サ
携帯電話(ID) 情報
利用者 サービス提供者 利用者 サービス提供者
背景 ~課題・潜在的な課題~
• サービス提供に関する課題
– 利用者に受容されるサービス設計の方法論の不十分な議論
•
どのような形で利用者の求める価値を提供すべきか「リスクが高いサ ビス
*
」という印象を与えないためにどうすべきか•
「リスクが高いサービス*
」という印象を与えないためにどうすべきか– 利用者が認識していない
•
自分が情報を開示していることを認識していない自分が情報を開示していることを認識していない– サービス提供者が認識していない
•
自分が個人情報(広義)を収集していることを認識していない利用者の利益・権利を守りつつ、サービス提供者のサービス提供 を可能にするサービス設計指針の検討の必要性
*具体例:Intel:Pentium III Processor serial number、Benetton: RFID、Gillette: RFID
関連研究
• 消費者心理における知覚モデル
• 技術の受容性における知覚
• 知覚統制感 覚統制
消費者心理における知覚モデル
• サービスを意識して利用している場合に適用
–
消費者がサービスの購買している知覚される価値と知覚されるリスクの比較
(神山1997)• 知覚される価値と知覚されるリスクの比較
(神山1997)–
価値がリスクを上回る場合に購入• 対象となるサービスにおけるリスク
–
プライバシー侵害(心理的リスク)–
価値が期待に見合ったものかどうか(財務的リスク)対象となるサ ビ 価値
• 対象となるサービスの価値
–
利便的,金銭的,情報的などの価値知覚リスクと知覚価値の関係におけるサービス設計の必要性
サービスの実例
ポイントカードの利用 電子乗車券の利用 ポイントカ ドの利用
メンバーカード(ID) 価値(値引)
電子乗車券の利用
ICカード(ID) 価値(利便性)
利用者 サービス提供者 利用者
サービス提供者
デジタルサイネージの利用 位置情報による情報受信サービス デジタルサイネ ジの利用
RFID(ID) 価値(情報)
位置情報による情報受信サ
携帯電話(ID) 価値(情報)
利用者 サービス提供者 利用者 サービス提供者
技術の受容性における知覚
• サービスがユビキタス技術を使用している場合に適用
–
サービスが技術なしでは実現できず、技術にバインドされている技術の社会的受容性
• 技術の社会的受容性
– Technology Acceptance Model
(TAM
)• 情報通信技術がもたらすリスクに関する研究
(Adams1999)–
マルチメディア技術(テレビ会議)–
知覚されたリスクと知覚された価値のバランスによって受容が決定–
リスク(「情報そのもの」「情報の受け手」「情報の用途」の3
要素が影響)知覚リスク(心理的)の対象を想定したサービス設計の必要性
知覚統制感
• サービスがユビキタス技術を使用している場合に適用
–
サービスが技術なしでは実現できず、技術にバインドされているサ ビスが与える知覚統制感の有無による受容
• サービスが与える知覚統制感の有無による受容
(Spiekermann2005)
–
知覚統制感⇔無力感、周囲を変えられない状況–
知覚統制感がないとサービスの利用に際して心理的なリスクを感ずる知覚統制感の提供を意図したサービス設計の必要性
既存研究のまとめ
• 消費者心理における知覚モデル
–
知覚リスクと知覚価値の関係におけるサービス設計の必要性技術の受容性における知覚
• 技術の受容性における知覚
–
知覚リスクの対象を想定したサービス設計の必要性• 知覚統制感
–
知覚統制感の提供を意図したサービス設計の必要性知覚統制感の提供を意図したサ ビス設計の必要性上記を考慮した概念フレームワークの検討
概念フレームワークの提案
• 前提
– サービスの利用価値、リスク、コストは順序性のある定性量
•
「サービスAよりもサービスBの方が知覚される価値が高い」•
「サービスCよりもサービスDの方が知覚されるリスクが大きい」提案 方向性
• 提案の方向性
– サービス利用の知覚価値と知覚リスク・コストのトレードオフ
•
サービスの目的とリスク・コストの程度に関する設計指針– サービス利用での情報開示知覚レベル・統制感の有無
ビ おける利 者 情報開 関する知覚 ベ と統制感
•
サービスにおける利用者の情報開示に関する知覚レベルと統制感 レベルに関する設計指針知覚された価値とリスク
知覚された利用の価値
低 高
ス ク
低 高
領域Ⅱ 領域Ⅰ
高
のリ ス
実用的な領域
リスクが高くて 魅力が無い
高
た 利用 覚 され た
実用的な領域 オーバー スペ ク 知 覚 実用的な領域
領域Ⅲ 領域Ⅳ
低 スペック
領域Ⅲ 領域Ⅳ
知覚された価値とコスト
知覚された利用の価値
低 高
ス ト
低 高
領域Ⅱ 領域Ⅰ
高
のコ ス
実用的な領域
コストが高くて 魅力が無い
高
た 利用 覚 され た
実用的な領域 オーバー スペ ク 知 覚 実用的な領域
領域Ⅲ 領域Ⅳ
低 スペック
領域Ⅲ 領域Ⅳ
開示の知覚と知覚統制感
情報の開示が知覚されている 情報 開 知覚され る
統制なし 開 知覚された開
情報の開 情報の開
統制なしの開示 知覚された開示
領域Ⅰ
情報の開
領域Ⅱ示が統制 できない
情報の開 示が統制
できる
領域Ⅰ 領域Ⅱ
領域Ⅲ 領域Ⅳ
知覚なしの領域(知覚が無い ため統制という概念が無い)
情報の開示が知覚されていない
情報の開示が知覚されていない
まとめと今後の課題
• まとめ
–
知覚価値と知覚リスク・コストに関する概念的フレームワーク• 消費者行動研究・技術の社会的受容研究を前提とした、知覚価値と知覚リ スク・コストのトレードオフがサービス受容に影響を与える
スク コストのトレ ドオフがサ ビス受容に影響を与える
• トレードオフのバランスが取れていない領域になってしまった場合の対処方 法の提案
個人情報の取り扱いに関する概念的なフレ ムワ ク
–
個人情報の取り扱いに関する概念的なフレームワーク• サービス利用者に個人情報の開示についての知覚を促すサービス仕様
• サービス利用において知覚統制感をもってもらうサービス仕様
• 今後の課題
前提条件 検証
–
前提条件の検証• 知覚価値,知覚リスク,知覚コストが順序性のある定性量
–
知覚統制感を確保する方法の提案知覚統制感を確保する方法の提案• 利用者に知覚統制感を与えるサービス仕様
参考文献
[1] 椎橋章夫,"Suicaが世界を変える!-新しい社会インフラの創造-," 2009年春季 全国研究発表大会 特別講演 2009 7 12
全国研究発表大会 特別講演, 2009.7.12
[2] 個人情報の保護に関する法律(最終改正:平成15年7月16日法律第109号) [3] 神山進,消費者の心理と行動, 中央経済社, 1997
[4] Davis, F.D., "Perceived usefulness, perceived ease of use, and user [4] Davis, F.D., Perceived usefulness, perceived ease of use, and user
acceptance of information technology," MIS Quarterly September, 1989 [5] Adams, A., "The Implications of Users' Multimedia Privacy Perceptions on
Communication and Information Privacy Policies," Proceedings of Telecommunications Policy Research Conference 1999
Telecommunications Policy Research Conference, 1999
[6] 折田明子, "ネット上のCGM利用における匿名性の構造と設計可能性," 情報社会 学会誌 Vol. 4 No.1: 5-14, 2009
[7] Spiekermann, S., "Perceived control: Scales for privacy in ubiquitous
[ ] p , , p y q
computing," 10th International conference on user modeling, 2005
[8] O.E.ウィリアムソン著, 井上薫,中田善啓監訳, エコノミック・オーガニゼーション:取引 コストパラダイムの展開, 晃洋書房 1989
[9] B tt C J Th P i Ad t R i ti th S d f S ill
[9] Bennett C.J., The Privacy Advocates: Resisting the Spread of Surveillance, The MIT Press, 2008.
[10] Katherine, A., McIntyre, L., Spychips: How Government And Major Corporations Are Tracking Your Every Move, Thomas Nelson Inc, 2005p g y , ,