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Media furemu to shakai undo ni kansuru ichi kosatsu

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Academic year: 2021

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(1)Title Sub Title Author Publisher Publication year Jtitle Abstract Notes Genre URL. Powered by TCPDF (www.tcpdf.org). メディア・フレームと社会運動に関する一考察 大石, 裕(Oishi, Yutaka) 三田社会学会 2007 三田社会学 (Mita journal of sociology). No.12 (2007. ) ,p.19- 31 特集: メディア研究におけるフレーム分析 Journal Article http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AA1135 8103-20070000-0019.

(2) 特 集:メ. デ ィア研 究 にお け る フ レー ム 分析. メ デ ィ ア ・フ レ ー ム と 社 会 運 動 に 関 す る 一 考 察. 大石 1.は. 裕. じめ に. マ ス ・コ ミュ ニ ケ ー シ ョン研 究 は 、 フ レー ム(フ. レー ミン グ)概 念 を 取 り入 れ 、そ れ を メデ ィ ア ・. フ レー ム と して 鋳 直 す こ と で 、 新 た な 視 座 を獲 得 して き た と評 価 で き る 。 そ れ は 同 時 に 、 マ ス ・メ デ ィ ア効 果 論 に お い て 比 較 的看 過 され て い た伝 達 ・交 換 され る情 報 ・メ ッセ ー ジ の 意 味 と 、 そ こ で 扱 わ れ る 出 来 事 とそ の 関 与 者 が 意 味 づ け され る過 程 に 強 い 関 心 を 寄 せ る こ とで あ り、 ま た(マ. ス ・). コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョン とい う社 会 過 程 を新 た な角 度 か ら権 力 作 用 と して読 み 解 く こ とで も あ っ た。 一方 、 「 社 会 運 動 現 象 は 、そ の構 造 的 側 面 か らの 分 析 とは 別 に 、そ の 意 味 世 界 の 探 求 が 必 要 に な る とい う こ と、 さ らに 社 会 運 動 現 象 は 、 仮 に そ れ が構 造 的 に一 枚 岩 に 見 え る現 象 で あ っ て も 多 様 な意 味 側 面 を 内 包 す る 、 とい う認 識 」(野 宮 、2002:14)が. 、 近 年 社 会 運 動 論 の 中 で も しだ い に 共 有 され. る よ うに な り、 そ れ と と も に フ レー ム分 析 の 有 用 性 が論 じ られ る よ うに な っ て き た 。 本 稿 で は 、 フ レー ム(フ. レー ミ ン グ)概 念 を媒 介 と して 、 交 錯 す る マ ス ・コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョン 論 と社 会 運 動 論 に. つ い て 論 じ る こ とに す る が 、 こ の 問 題 に つ い て の検 討 を 行 う前 に 、 マ ス ・コ ミュ ニ ケ ー シ ョン論 、 政 治 コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン論 、 さ らに は ジ ャ ー ナ リズ ム論 に お け る メデ ィ ア ・フ レー ム論 の 展 開 に つ い て 概 観 す る。. 2.メ (1)メ. デ ィ ァ ・フ レー ム 論 の 諸 相 デ ィア ・フ レー ム(フ. レー ミ ン グ)の 捉 え 方. は じめ に 、 主 に 社 会 学 の既 存 の 理 論 や 視 座 を参 照 しな が ら も 、 マ ス ・コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン とい う 社 会 過 程 の 分 析 に 主 眼 を お く、 フ レー ム(フ. レー ミン グ)に. 関す る有 力 な 定 義 を 掲 げ て お こ う。 そ. れ は 、 「フ レー ミン グ と は 、 そ もそ も選 択 と顕 出性 に か か わ る も の で あ る 。 フ レー ミン グ とは 、認 識 され た 現 実 の い くつ か の 局 面 を選 択 し、 伝 達 され る テ ク ス トの 中 で そ う した 諸 局 面 を 顕 出化 させ る こ と」(Entman,1993:52)と. い う もの で あ る。. こ の 定 義 を参 照 す る と、 人 々 は あ る 事 象 や 出 来 事 を 他 者 に 伝 達 し、 説 明 す る 際 に 、 そ の 出 来 事 に 含 ま れ る構 成 要 素 に 中 か らい くつ か を 選 択 ・抽 出 し、 そ れ を再 構 成 す る こ と に よ っ て 、 出 来 事 を 意 味 づ け る とい うわ け で あ る 。 こ う した 出来 事 の構 成 要 素 の選 択 ・抽 出 、 さ ら に は 出来 事 そ れ 自体 の 意 味 づ け とい う一 連 の 行 為 が フ レー ミ ン グ で あ り、そ れ を 行 う際 の 基 準 とな る の が フ レー ム で あ る。 換 言 す る と、 フ レー ミン グ と い う過 程 を通 して個 人 な い しは 社 会 の レベ ル で 制 度 化 され 、 再 生 産 さ れ る もの 、 そ れ が フ レー ム だ と言 え る。 フ レー ミ ン グ とい う作 業 は 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョン 過 程 に お い て 日常 的 に行 わ れ て い る。 そ して 、 フ レー ム の 機 能 に つ い て は 、 以 下 の よ うに 要 約 され て い る. 19.

(3) 三 田 社 会 学 第12号(2007). (ibid)o ① 問 題 を定 義 し、 明 確 に す る。 す な わ ち 、 問 題 を 生 じ させ た 人 物 ・組 織 が 、 どの 程 度 の 費 用 対 効 果 に よ っ て 、 ど う行 動 した か を 明 確 に す る。 こ の 場 合 の 費 用 対 効 果 は 、 通 常 は社 会 で 共 通 の 文 化 的 価 値 に よ っ て 測 定 され る。 ② 問 題 の原 因 を 突 き止 め る。 す な わ ち 、 問 題 を生 み 出 した 諸 力 を 明 確 に す る。 ③ 道 徳 的 な 判 断 を行 う。 す な わ ち 、 問題 を生 み 出 した 人 物 ・組 織 とそ の 影 響 を評 価 す る。 ④ 問 題 解 決 の 方 策 を 提 示 す る。 す な わ ち 問 題 に 対 処 す る手 法 を提 示 し、 そ れ を正 当 化 し、 ま た そ う した 手 法 が 生 み 出 す 影 響 を予 測 す る 。 マ ス ・コ ミ ュニ ケ ー シ ョン と い う社 会 過 程 に お い て 動 員 され 、活 用 され る メデ ィア ・フ レー ム に っ い て は 、 こ れ ま で 様 々 な 角 度 か ら論 議 が 行 わ れ て き た。 とい うの も 、 マ ス ・コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョン 論 で は 専 門 職 業 化 した ジ ャ0ナ. リス トと メデ ィ ア ・フ レー ム の 関連 が 多 く の 関 心 を 集 め て き た か ら. で あ る。 加 え て 、 ジ ャー ナ リス トは 客 観 報 道 や 事 実 と意 見 の 分 離 とい っ た 志 向 性 を 有 す る こ と を職 業 的 な 規 範 と し、 そ れ に よ っ て ニ ュ ー ス を は じ め提 供す る情 報 に対 す る 信 頼 性 を オ ー デ ィエ ンス か ら得 て き た か らで あ る。 そ れ は 同 時 に 、 マ ス ・メデ ィ アや ジ ャ ー ナ リス ト自身 の信 頼 度 、 さ ら に は 社 会 的 地 位 を 高 め て い っ た 。 ジ ャ ー ナ リス トの 活 動 に 関す る これ らの 特 徴 を踏 ま え た 場 合 、 メ デ ィ ア ・フ レ0ム. とメ デ ィ ア に よ る フ レー ミ ン グ は 以 下 の よ うに 把 握 され る こ とに な る。. 「フ レー ミン グ とは 、 す で に 馴 染 み の あ る文 脈 の 中 で 、 ニ ュ ー ス の 項 目や そ の 内 容 に 関 して 作 動 す る 思 考 の 慣 行 を示 して い る。 メ デ ィ ア は 、 あ らか じめ 定 義 され た 狭 い 文 脈 の 中 で ニ ュ ー ス を伝 え る こ と に よ り、 フ レー ム を 産 出 す る用 具 とな り うる。 フ レー ム は 、 ニ ュー ス を よ り大 き な構 図 に 結 び 付 け る こ と で 、 ニ ュ ー ス に 関 す る 人 々 の 理 解 を 深 め 、 認 識 し や す く さ せ る 。」 (Lilleker,2006:82)o. こ の よ うに して フ レー ム(フ. レー ミ ン グ)と. い う用 語 ・概 念 を 取 り入 れ る こ と は 、 客 観 報 道 や 事. 実 と意 見 の 分 離 とい っ た ジ ャー ナ リズ ム に 対 す る規 範 的 な 要 請 と は異 な る 、 も う一 つ の 視 点 を提 供 す る。 す な わ ち 、 「 メ デ ィア 研 究 の 重 要 な 問 い は 、報 道 を行 うに あ た り偏 向 や 選 択 が 存 在 す るか 否 か とい うこ とで は な い 。 あ る 一 定 の 視 点 に立 っ て 、 メ デ ィ ア が 社 会 を記 述 し、 説 明 す る とい うの は 当 然 の こ とな の で あ る 。 この 点 を よ り深 く理 解 す るの に必 要 と され る の は 、 「フ レー ミン グ」 に 関す る 考 察 で あ る 」(McCullagh,2002;25)と. い うわ け で あ る。 以 上 の 点 か ら、 フ レー ム(フ. レー ミン グ). とい う用 語 ・概 念 を通 して 、 マ ス ・コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン研 究 や ジ ャー ナ リズ ム研 究 は 、 様 々 な 「 思 考 実 験 」 を行 うこ とが 可 能 に な っ た 。 以 下 、 そ の い くつ か の 局 面 に つ い て 論 じて み た い 。. (2)ア. ジ ェ ン ダ(議 題)設. 定 モデル との関連. 最 初 に 指 摘 で き る の は 、 フ レー ム とい う概 念 が 、 マ ス ・コ ミュ ニ ケ ー シ ョン の 効 果 モ デ ル 、 特 に ア ジ ェ ン ダ(議i題)設. 定 モ デ ル の 発 展 を促 した こ と で あ る(大 石,2005:104-110)。. 20. それ は、「 人・ 々.

(4) 特 集:メ デ ィ ア研 究 に お け る フ レー ム分 析. の注 目 性. 注 目 の 対 象 と して の ア ジ ェ ン ダ に 対 す る 効 果 」(McCombs,2004:118)へ. に 対 す る効 果 か ら、 人 々 の 理 解. ア ジェ ンダの属. とア ジ ェ ン ダ設 定 研 究 の 領 域 が 拡 大 して き た こ とに ほ. か な らな い 。 こ こ で 言 う 「ア ジ ェ ン ダ の 属 性 に 関 す る 人 々 の 理 解 」 を 形 作 る の が フ レー ム で あ り、 そ の 過 程 が フ レー ミ ン グ で あ る。そ し て 、そ う した 理 解 の 過 程 に よ っ て フ レー ム は 再 生 産 され る か 、 修 正 され る の で あ る。 そ れ は 、 選 挙 時 の メ デ ィ ア が く と い うこ と とい う こ と. 「 争 点 や 候 補 者 を い か な る フ レー ム を 用 い て 描. どの 考 え を 中 心 に して 、 あ る い は争 点 の ど の 局 面 を 選 択 して 受 け 手 に提 示 す る か は 、 ア ジ ェ ン ダ 設 定 の 強 力 な 役 割 」(McCombs=Reynolds,2002:12)と. い う指 摘 に 典 型. 的 に現 れ て い る。 ア ジ ェ ン ダ 設 定 モ デ ル の 発 展 は 、そ の こ とに と どま らな い 。従 来 、受 け手 の 効 果 研 究 だ け で な く 、 ニ ュ0ス. の 送 り手 研 究 と平 行 して 検 証 す る こ との 必 要 性 を 主 張 して い た ア ジ ェ ン ダ 設 定 モ デ ル の 主. 唱 者 は 、複 数 の 送 り手 が 共 有 す る フ レー ム 、 そ して そ の フ レー ム が 受 け 手 の フ レー ム に 及 ぼ す 影 響 も射 程 に収 め る よ う に な っ た(マ. コー ム ズ,1991=1994)。. た だ し この 段 階 に お い て も 、 ア ジ ェ ン ダ. 設 定 モ デ ル は 、 メデ ィ ア ・フ レー ム の オ ー デ ィエ ン ス ・フ レー ム に 対 す る効 果 や 影 響 の 問 題 を 中 心 にす え て い た。 従 っ て 、 変 化 を とげ た ア ジ ェ ン ダ設 定 モ デ ル に して も 、 そ の 名 の 通 り 「 強 力(あ い は 中程 度)効. る. 果 モ デ ル 」 に 属 し、 マ ス ・コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン研 究 の 効 果 モ デ ル の 一 翼 を担 っ て い. る と位 置 づ け られ る 点 は留 意 され るべ き で あ ろ う。. (3)ゲ. ー トキ ー ピ ン グ研 究 との 関 連. そ う した ニ ュー ス の 送 り手 研 究 、 す な わ ち ニ ュ ー ス の 生 産 過 程 に 関 す る 問 題 意 識 と関 連 して 、 フ レー ム概 念 は 新 た な 視 点 を提 供す る こ と に な っ た 。 送 り手 研 究 の 中 で ニ ュ ー ス の 生 産 過 程 の 問題 を い ち早 く直 接 に扱 い 、 検 証 を 試 み た の が ゲ ー トキ ー ピ ン グ研 究 で あ る。 知 られ る よ うに 、 ゲ ー トキ ー ピ ン グ とは 、 ニ ュ ー ス ・メ デ ィア 内 部 で行 わ れ る作 業 、 す な わ ち 「あ る 特 定 の 記 事 が 、 複 数 存 在 す る 「ゲ ー ト」 を 通 過 して 、 ニ ュ ー ス と して 報 じ られ る か 否 か を 決 定 す る 」(McQuail,2005:308)一 連 の 工 程 を 指 す 。 初 期 の ゲ ー トキ ー ピ ン グ研 究 は 、 ニ ュ ー ス の 取 捨 選 択 を 行 う 「 編 集 者 た ち=複 数 の ゲ ー ト」 に焦 点 を あ わ せ て い た 。 そ の 後 こ の研 究 は 、 フ レー ム概 念 な ど の影 響 を 受 け 、 以 下 に示 す よ うに さ ら な る発 展 を と げ て き た。 第 一 は 、 ニ ュ ー ス ・バ リュー 論 との 関連 で あ る。 ゲ ー トキ ー ピ ン グ は 、 出 来 事 の ニ ュ ー ス へ の変 換 過 程 を 指 し示 す もの で あ る。 出 来 事 や ニ ュ ー ス の 取 捨 選 択 、 そ して 報 道 され る ニ ュ ー ス の 優 先 順 位 の 基 準 と な るの が ニ ュ ー ス ・バ リュー で あ る。 ニ ュー ス の製 作 現 場 に い る ジ ャ ー ナ リス トは 、彼 らの 受 け 手 が 、 ① 特 定 の 場 所 で 起 き る 出 来 事 、 ② 特 定 の 組織 の 活 動 、 ③ 特 定 の 話 題 、 に 関 心 を持 っ て い る こ と を知 っ て い る(タ. ッ クマ ン,1978=1991:36-37)。. そ れ ゆ え に 、 こ う した 出来 事 ・活 動 ・話. 題 の 「現 場 」に ジ ャ ー ナ リス トは 配 置 され る。 言 うな れ ば 、 メ デ ィ ア ・フ レー ム は 取 材 体 制 そ の もの を形 作 るの で あ る。 そ して 、 ジ ャ ー ナ リス トの 実 際 の活 動 を 見 る な らば 、 無 数 に 生 じ る 日々 の 出 来 事 の 中 か らニ ュー ス と して 報 じる に 価 す る もの を 選 択 す る 際 、 そ の 出 来 事 の 構 成 要 素 の 中 に 既 存 の フ レー ム に適 合 す る もの が あ る か 否 か が 、 ゲ ー トを通 過 す る か ど うか の 重 要 な 基 準 と な る 。 前 述 し. 21.

(5) 三 田 社 会 学 第12号(2007). た フ レー ミ ン グ の 説 明 の 中 の 「思 考 の 慣 行 」 は 、 フ レー ム と い う形 を とっ て 各 々 の ジ ャ ー ナ リス ト の 中 に 存 在 す る の で あ る。 そ れ に 関連 して 第 二 に 、先 に 引 用 した よ うに 、 フ レー ム は 出 来 事 や ニ ュ ー ス を社 会 の. 「よ り大 き. な 構 図 」 と結 び つ け る役 割 も担 う。 こ こで 言 う 「よ り大 き な 構 図 」 に つ い て は 、 次 の よ うに と ら え る こ とが で き る。 す な わ ち 、あ る 出 来 事 が 、過 去 に 生 じた 、 あ る い は 同 時 期 に 生 じた 、そ して マ ス ・ メ デ ィ ア に よ っ て 報 道 され た 重 大 な 出 来 事 と関 連 して い る か 否 か とい うこ とで あ る。 こ う した 問題 の 関 連 性 は 、個 々 の 出 来 事 の フ レー ム とい うよ り も 、複 数 の 出来 事 に 関 す る フ レー ム を 総 合 す る 上 位 の フ レー ム が 存 在 す る こ と と、 そ う した 上 位 の フ レー ム が ニ ュ ー ス ・バ リュー に 影 響 を及 ぼ す 可 能 性 を示 して い る。 さ らに 、 上 位 の フ レー ム が 、社 会 に お け る支 配 的 な 価 値 観 、 あ る い は 社 会 の 多 数 派 に 共 有 され 、 彼 ら の 思 考 様 式 や 生 活 様 式 を 規 定 す る 常 識 と連 動 して い る 可 能 性 が 高 い こ と も重 要 で あ る。 こ う して 見 る と 、 メ デ ィア ・フ レ0ム は 、 出 来 事 の 選 択 、 そ れ と並 行 して 生 じる 出 来 事 の構 成 要 素 の選 択 と抽 出 を 行 う際 の 基 準 を 提 供 す る と同 時 に 、 他 の 出来 事 と関 連 づ け 、 複 数 の 出 来 事 を 総 合 す る 上位 の フ レー ム と して 機 能 す る と も言 え る。. (4)批. 判 的 コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン研 究 と の 関 連. 支 配 的 価 値 観 や 常 識 と連 動 す る フ レー ム の 権 力 的 側 面 に 注 目す る な らば 、 次 に 批 判 的 コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン研 究 との 関 連 が き わ め て 重 要 に な る 。 批 判 的 コ ミュ ニ ケ ー シ ョン研 究 の 重 要 な キ0ワ ー ド の 一 つ が 、 以 下 に 示 す よ うな マ ス ・メ デ ィ ア に よ っ て 社 会 的 に 構 築 され る 「 虚 偽 意 識 」 で あ る。. 「 マ ス ・メ デ ィ ア は 、 無 分 別 に 、 しか し絶 え る こ とな く、 ナ シ ョナ リズ ム 、 愛 国 心 、 社 会 的 同 調 性 、 宗 教 心 を 煽 る が 、 そ れ ら はす べ て 社 会 的 に構 築 され た も の の 例 と考 え られ る。 最 近 の 批 判 理 論 は 、 こ う した イ デ オ ロ ギ ー 的 な 強 要 が 論 点 とな り、 ま た そ れ に 対 す る抵 抗 の 可 能 性 に っ い て論 じて き た 。 そ の 際 、 ヘ ゲ モ ニ ッ ク な メ ッセ ー ジ を 解 釈 す る 可 能 性 が 強 調 され た。 とは い え 、 批 判 理 論 が 強 調 す る の は 、 現 実 に 関 して 選 択 的 で 偏 見 の あ る見 解 を再 生 産 す る機 関 と して の マ ス ・メ デ ィア で あ る。」(McQuail,2005:101). こ の よ うに 、批 判 的 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン研 究 で は 、 マ ス ・メ デ ィ ア は選 択 的 で 偏 見 の あ る 見 解 、 す な わ ち虚 偽 意 識 を再 生 産 す る機 関 と位 置 づ け られ る の で あ り、 フ レ0ム は そ の 過 程 で 重 要 な 役 割 を 担 うこ とに な る。 そ の 際 主 要 な 論 点 とな る の が 、 営 利 主 義 を 前 面 に 押 し出 す 、 資 本 主 義 社 会 に お け る マ ス ・メデ ィア 企 業 の 志 向性 とそ の 機 能 で あ る。 も ち ろ ん フ レ0ム は 、 前 述 した 上 位 の フ レー ム と して 、 ニ ュ0ス 主 義 社 会(さ. の 生 産 過 程 の み な らず 、 受 容 過 程 にお い て も作 動 し、虚 偽 意 識 と連 動 す る 資 本. らに は 「民 主 主 義 」 社 会)に. お け る 支 配 的 な価 値 観 の 再 生 産 に 寄 与 す る と捉 え られ る. こ と に な る。 こ う した 問 題 は 、 当然 の こ と な が ら出 来 事 を 「 名 づ け 」、 「 定義 す る」言葉 の有 す る、そ の権力 的. 22.

(6) 特集:メ. デ ィ ア研 究 にお け る フ レー ム 分 析. 側 面 に対 す る 関 心 へ と展 開 され る。 す な わ ち 、 ① 言 葉 に よ る 出 来 事 の 名 づ け → ② 出 来 事 の 意 味 づ け と定 義 づ け → ③ こ う した 作 業 の 背 後 に存 在 す る支 配 的 な 価 値 観 の 再 生 産 、 とい う図 式 が 想 定 され る の で あ る。 加 え て 、 批 判 的 コ ミュ ニ ケ ー シ ョン研 究 は 、 こ う した 虚 偽 意 識 の 形 成 や 再 生 産 が ニ ュー ス 情 報 の 生 産 過 程 と受 容 過 程 に 限 定 して 生 じる と は考 え な い 。 知 られ る よ うに 、 大 衆 文 化 とい う用 語 や概 念 を駆 使 しな が ら、 人 々 の 日常 生 活 に お け る虚 偽 意 識 の 問 題 に も 強 い 関 心 を 寄 せ るの で あ る 。 この 視 点 に 立 っ と、 大 衆 文 化 を積 極 的 に 受 容 す る 大 衆 は 、 政 治 エ リー トや 文 化 エ リ0ト に よ っ て 一 方 的 に 支 配 され る 存 在 で は な く 、 日常 的 な. 「 文 化 的 」 行 動 を 通 じて 支 配 的 な 社 会 的 価 値 観 の 再 生 産 に加 担. す る存 在 と して認 識 され る こ とに な る 。 そ の 場 合 、 そ う した 大 衆 の存 在 と志 向 性 は 、 様 々 な局 面 で メ デ ィ ア ・フ レー ム と連 携 しつ つ 、 出 来 事 や ニ ュー ス に対 す る フ レー ミ ン グ に 影 響 を及 ぼ す こ と に な る。 以 上 見 て き た よ うに 、批 判 的 コ ミ ュニ ケ ー シ ョン研 究 に お い て メ デ ィ ア ・フ レー ム は 、 フ レー ミ ン グ の 過 程 を経 て 支 配 的 な 価 値 観 を 再 生 産 す る こ とで 社 会 の 現 状 維 持 に 寄 与 す る と把 握 され 、 そ れ ゆ え に 概 して 批 判 の 対 象 と な っ て き た 。 た だ し、 メ デ ィ ア ・フ レー ム が 一 方 向 的 に オ ー デ ィ エ ン ス に影 響 を及 ぼす の で は な く、 そ れ は社 会 の オ ー デ ィ エ ン ス ・フ レー ム と共 鳴 、 な い しは 共 振 しな が ら作 用 す るの で あ る。. (5)言. 説 分 析 との 関 連. メ デ ィア ・フ レー ム とオ0デ. ィ エ ン ス ・フ レー ム との こ う した 共 振 性 に 注 目 し、 メ デ ィ ア ・テ ク. ス トの 生 産 過 程 と受 容 過 程 に お け る意 味 づ け の 動 態 に焦 点 を あ わ せ た研 究 、 す な わ ち メ デ ィ ア言 説 の 分 析 を行 う研 究 が しだ い に 関 心 を集 め る よ うに な っ た。 言 説 分 析 は 次 の よ うに 説 明 され て い る。. 「出 て く る単 語 の 意 味 を確 定 的 に あ つ か え ば 、 言 説 分 析 か ら遠 ざ か る。 そ れ に 対 して 、 そ れ ぞ れ の 意 味 を い っ た ん 宙 吊 りに して 、 た と え ば どの 単 語 と どの 単 語 に よ く組 み 合 わ され る か か ら、 そ の 意 味 を と らえ 直 して み れ ば 、 言 説 分 析 に 近 づ く。…. AはBと. 同 一 と され る/同 一 と され な い. とい う関係 に よ っ て 、 意 味 を確 定 され て い る。 そ れ を宙 吊 りに して 確 定 単 位 を解 除 す る こ とで 、 そ の 関 係 づ け が 何 に 関 係 して い る の か を さ ぐ る。 そ こ に 見 出 され る も の は しば しば カ(権. 力)と. 呼 ば れ る。」(佐 藤i、2006:18-19)。. こ こで 言 う権 力 に着 目す る な らば 、 「 言 説 分 析 は 、言 説 の 分 布 の 偏 りや 特 有 の 配 列 の な か に 、言 語 で は な い 作 用 を認 め る。 …. 言 説 分 析 は 、 言 説 だ け を扱 い な が ら、 そ の 背 後 に さま ざ ま な 権 力 の 効. 果 を 見 出 す 。 そ して 、 あ る時 代 ・あ る社 会 に 特 有 な 、 さま ざま な権 力 の 作 用 を具 体 的 に 実 証 して い く」(橋 爪 、2006:193)研. 究 手 法 とい うこ と に な る。 「 言 説 分 析 も一 つ の 言 説 」 とい う批 判 を い っ た. ん 「宙 吊 り」に して お く と、 メ デ ィ ア ・テ ク ス トの み な らず 、社 会 で 歴 史 的 に 構 築 され た メ デ ィア ・ テ ク ス トの 集 積 体 と して の メ デ ィ ア 言 説 に焦 点 を あ わせ 、 メ デ ィア 言 説 の意 味 が 意 図 的 な い しは 非. 23.

(7) 三 田 社 会 学 第12号(2007). 意 図的 に構築 ・構成 され る過 程 を分析 対象 と し、そ の過 程 で作用 す る諸力 を明 らか にす る こ と、そ れ が メデ ィアの言説 分析 とい うこ とにな る。 これ ま での メデ ィアの言説 分析 の基 本的 な視座 は次 の よ うに整理 され てい る。 「 言 語 は 、 社 会 と と も に あ る 対 話 の 中 に 存 在 す る。 言 語 は 現 実 を 反 映 す る と 同 時 に 、 あ る 一 定 の 方 向 に 向 け て 現 実 を 構 築 す る 。 従 っ て 、 言 語 は社 会 的 現 実 の 生 産 や 再 生 産 を 表 象 し、 そ の 作 用 に 貢 献 す る 。 言 語 と社 会 との 間 の そ う した 弁 証 法 的 な 関係 は 、 多 種 多 様 な 分 析 レベ ル で観 察 され う る。 そ れ は例 え ば 、言 語 的 に は記 号 の(再)生. 産 で あ り、 制 度 的 に は メデ ィア 企 業 の活 動 の(再). 生 産 で あ る。 ま た 、 政 治 的 に は 権 力 や 地 位 、 そ して 権 力 者 が 支 持 す る イ デ オ ロ ギ ー の(再)生 で あ り、社 会 文 化 的 に は 知 識 、 価 値 観 れ てい る 「 言 語 」 は(メ. ア イ デ ン テ ィ テ ィ の(再)生. 産. 産 で あ る。」(こ こで 用 い ら. デ ィ ア ・)テ ク ス トと置 き換 え る こ とが で き る(引 用 者);Franklin. et.. al, 2005:64)o. 以 上 の 点 か ら、 メ デ ィア 言 説 分 析 とは 、 メ デ ィア ・テ ク ス トの 意 味 を い っ た ん 動 態 化 ・流 動 化 さ せ 、 そ れ を社 会 的 ・歴 史 的 な 文 脈 に 置 きつ つ 、 そ う した 文 脈 との 関 連 か ら、 生 産 過 程 と受 容 過 程 に お け る意 味 づ け の 過 程 に 関 して 様 々 な レベ ル で 働 く権 力 作 用 の 分 析 を行 う こ とだ と言 え よ う。 この 場 合、 メ デ ィ ア ・フ レー ム は 、 出 来 事 が メデ ィ ア ・テ ク ス トに 転 換 され る 際 に 、 メ デ ィ ア ・テ ク ス トを解 読 す る 際 に働 く諸 力 を 具 体 化 し、 可 視 化 す る装 置 と して 捉 え られ て い る。 ま た 、 観 察 者 ・分 析 者 に とっ て は 、 そ う した メデ ィ ア ・フ レー ム や そ の 産 物 と して の メデ ィ ア ・テ クス ト、 そ して オ ー デ ィエ ンス ・フ レー ム を 通 して 、 出 来 事 の意 味 づ け と意 味 の 解 読 の 過 程 を 探 究 す る こ と に よ り、 こ こで もや は り上 位 の フ レー ム と結 び つ け る こ とが 可 能 に な る 。 こ う した 上 位 の フ レー ム が 、 社 会 で 歴 史 的 に構 築 され た もの で あ る こ と は論 を待 た な い。 た だ し、 こ こ で 留 意 す べ き は 、 言 説 分 析 が 、 そ う した 生 産 過 程 と受 容 過 程 に お け る多 様 な フ レー ム に依 拠 した 、 多 様 な 意 味 の 産 出 の 可 能 性 を積 極 的 に 認 め つ つ も、 同 時 に 、 先 の 引 用 に も あ る よ う に、 「 言 語(テ. ク ス ト)・制 度 ・政 治 ・社 会 文 化 」 とい っ た 各 レベ ル で働 く権 力 作 用 の 動 態 を強 く意. 識 す る こ とで あ る 。 そ れ は 、 産 出 され る意 味 の 多 様 性 の 中 に 階 層 性や 支 配 性 を 見 出す こ とで あ り、 ま た 合 意 と い う形 態 を と りつ つ 作 用 す る権 力 を 問題 にす る こ とで あ る。こ う した 問 題 関 心 は 同 時 に 、 メ デ ィ ア 言 説 とそ の 意 味 が 「 非 意 図 的 」 に構 築 され る過 程 へ と拡 大 す る。 そ の 際 に 依 拠 され 、活 用 され る の が 「 物 語 」で あ る。 出 来 事 の 構 成 要 素 が フ レー ム に よ っ て 選 択 ・ 抽 出 され る と、そ れ は 順 序 づ け 、あ るい は 秩 序 化 され て 提 示 され る こ と に な る。 こ う した 順 序 づ け ・ 秩 序 化 を 行 う際 に参 照 され る の が 、 既 存 の 支 配 的 な 物 語 で あ る。 逆 か ら見 れ ば 、既 存 の 支 配 的 な物 語 は 、 出 来 事 が 順 序 づ け 、秩 序 化 され る過 程 の 中 で 再 生 産 され る とい うわ け で あ る(た だ し、 「 大き な物 語 」(リ オ タ ー ル)と. い う言 葉 に 象 徴 され る よ うに 、 この 言 葉 ・概 念 は 、 これ ま で用 い て き た 上. 位 の フ レー ム 、 あ る い は 支 配 的 な 価 値 観 、 常 識 、 さ らに は イ デ オ ロ ギー と互 換 的 に 用 い られ る こ と も あ る)。 そ して 、物 語 は オ ー デ ィエ ン ス ・フ レー ム の 中 で解 読 され 、社 会 の 多 数 派 が 共 有 され る フ. 24.

(8) 特 集:メ デ ィ ア研 究 にお け る フ レー ム分 析. レー ム は 維 持 ・強 化 され る こ と に な る。 換 言 す る と、 メ デ ィ ア ・フ レー ム は オ ー デ ィ エ ン ス ・フ レ ー ム と物 語 を 通 じて 連 動 す る こ とに よ り、 社 会 の 支 配 的 な価 値 観 や 文 化 、 す な わ ち上 位 の フ レー ム の 再 生 産 に 寄 与 す る と見 な し う るの で あ る。. 3.社. 会 運 動(論)と. メ デ ィ ア ・フ レー ム(論)の. 交錯. 民 主 主 義 社 会 に お い て 、社 会 の 成 員 が 自 らの 意 見 や 利 害 を 主 張 し、 政 策 過 程 に 関 与 す る とい う意 味 で の 政 治 参 加 は必 要 不 可 決 で あ る。 す な わ ち 、 「 市 民 は 政 治 参 加 を 通 して 、公 共 財 や 価 値 の 配 分 に 関 す る 自 己 の 選 好 を伝 達 し、 政 府 の 行 動 と市 民 の 選 好 が 矛 盾 を きた さな い よ うに 圧 力 を か け 、政 府 の 決 定 を コ ン トロー ル す る」(蒲 島 、1988:4-5)可. 能 性 を もつ こ とが 民 主 政 治 の 前 提 条 件 な の で あ. る。 そ して 、 社 会 運 動 とい うの は 、 こ こ で 言 う政 治 エ リー トに 対 して 「 圧 力 」 をか け る た め の ル ー トの 一 つ で あ り、 政 治 参 加 の 一 つ の形 態 で あ る。 社 会 運 動 が 提 示 した 問 題 や 争 点 、 そ して社 会 運 動 そ れ 自体 の 展 開 に と っ て 、 メデ ィ ア ・フ レー ム が 重 要 な 要 因 と な る 事 例 も数 多 く見 られ る。 以 下 で は 、 メ デ ィ ア ・フ レー ム に 関 す る これ ま で の 検 討 を踏 ま え 、 社 会 運 動 と メ デ ィ ア ・フ レー ム が 交 錯 す る過 程 に 関 して 、 い くつ か の 角 度 か ら考 察 を行 う こ と に す る。 そ の 作 業 に 入 る前 に 、 ま ず 政 治 参 加 と して の 社 会 運 動 の 位 置 づ け を 簡 単 に 行 う。 そ れ に よ り、 民 主 主 義 社 会 に お け る社 会 運 動 の 重 要 性 とそ の機 能 に つ い て 再 確 認 して お き た い 。. (1)政 治参加 と しての社会 運動 前述 した よ うに、社会 運動 は政治 参加 の一形 態 で あるが、 それ も含む 民主 主義社 会 にお ける政治 参加 は以下 の形態 に大別 され る。第 一 は、法律 に よって制度化 され た選 挙時 の投票 行動 とい う政治 参加 であ り、 これ は代議制 民主政治 の根本 に位 置す る。 た だ し、投票行 動 とい う政 治参加 は、非 日 常的 な政治参加 の形態 で ある。 また、有 権者 に とって は 自 らが投 じる一 票 の重み が実感 で きない こ とも多々 あ り、政 治的 な有効 性感 覚 はそれ ほ ど高 くない とい う傾 向が 見 られ る。 さ らに、近 年の メ デ ィア政治 の進展 は 、特 に国政 レベル での選 挙 をイベ ン ト化 させ 、有権 者 は 「 観 客」 のま ま政治 に 「 参加 」す る とい う逆説 的な状況 が一般 化 してい る点 は押 さえてお く必要 があ る。 政治 参加 の第二 の形態 は、組織 化 され 、社 会 レベル で認 知 され てい る集 団や 団体(そ れ は一 般 に、 圧 力 団体や利 益集 団 と呼 ばれ て い る)に 加 入 し、それ らを通 じて 自 らの意 見や利 害 を表 明す る とい う手 法で あ る。 これ らの組織 は、政治 家や官 僚 とい った政治 エ リー トとの交流 を通 して、 日常的 に 政策過 程 に影 響 力 を行使 す る諸 資源 を有 してい る。 ただ し、そ の形態 は多様 で あ り、政 策過 程 に対 す る影 響力 の程度 も様 々 であ る。 ま た、そ うした影 響 力が 強 く、規模 の大 きい組 織 は、一般 に多 く の既 得権益 を有 して い る ことか ら、組織 の利 害 を優 先 す る傾 向が高 くな る。 加 えて 、政治 エ リー ト の一 部 に組 み込 まれ、批判勢 力 として の存在意 義 を減 退 させ るケー ス も数多 く見 られ る。さらには、 この種の組織 では成員 の意 見や利 害 が組 織 の方針 や決 定 に十分 に反映 され ない とい う問題 もか か え て いる。 そ こで 登場す るのが、政 治参加 の第 三 の形態 と しての社 会運 動で あ る。既 存 の政治 ・経 済 ・社 会. 25.

(9) 三 田 社 会 学 第12号(2007). 体 制 に対 して根 本 的 な異 議 を唱 え、そ の変革 や転換 をめ ざす 社会運 動 を除 くと、民主 主義社 会 にお ける社会 運動 は、 いわ ゆ る住 民運動 や 市民運 動 とい う形 態 を と り、単 一な い しは比較 的少数 の問題 や 争点 を め ぐって運 動 を展 開 し、組 織化 を行 い、政 策過 程 に影 響 を及 ぼす こ とを 目標 とす るのが一 般 的で あ る。 近年 では社 会運動 は、運動組 織 間で の(時 に は グローバル な レベ ル での)ネ ッ トワー ク化 が進 む な ど、新 た な展開 を見せ るよ うにな って きた。 ただ し社 会運 動 に して も、政 策過程 に影 響 を及 ぼす には、一 定 の運動 資源 を常備す る必 要 があ り、それ ゆえに組織 化 が進 み、圧 力団 体層1」 益集 団 とほ ぼ同様 の形 態 を とる こ とに な り、 それ らの団 体や集 団 と同種 の組織 的 な問題 に直 面す る こ とにな る。. (2)フ. レー ミングの権 力性一. ①社 会運 動の 資源 として のメデ ィア ・フ レー ム. それ で は、社会 運動 の発 生や展 開 に とって 、メデ ィア ・フ レー ムは どの よ うな影響 を及 ぼす ので あ ろ うか。換 言す る と、社 会運動(論)は. メデ ィア ・フ レー ム(論)と. どの よ うに交錯す るので あ. ろ うか。 社会 運動 は様 々 な要因 に よって生 じるが、 その前提 には既存 の政 治参加 のル ー トで は政 策 過 程 に 自 らの主 張 を反 映 させ る機 会 が乏 しい とい うこ とが あ る。 社会 運動組 織 は、 とくにそ の発 足 時にお いて は、概 して動 員 可能 な資源 が乏 しく、政策過 程 への参 入 が困難 で ある。 社 会運動 組 織が 社 会問題 をめ ぐって政治 エ リー トな どと対峙 し、それ が社会 紛争 へ と展 開 した場 合、一般 に動員 可 能 な資源 の多 寡 が紛 争 の推移 に影響 を及 ぼす こ とに なる。 この よ うに、専 門化 ・組 織化 の程度 が十 分 で ない社会 運動組 織 とそ の構 成員 は、運動 資源 の乏 しさゆ えに、社会 紛争 の展 開過程 で は不利 な 立 場 に置 かれ るこ とが 多い。 そ の際 に、運動 資源 の不足 を補 う役割 を担 うのがマ ス ・メデ ィア であ る。 とい うの も、 マス ・メデ ィア報 道 に よ り、紛争 の 当事者 で はない一般 の人 々の意 見の集合 体 と しての世論 が 問題 や争 点 をめ ぐって生 じ、それ が紛争 規模 を拡大 させ うるか らで あ る。 もち ろん、社会運 動 が必ず しもこ うした 「 マ ス ・メデ ィア依存型 運動 」(大石 、1998)の 範疇 に組 み込 まれ る とは限 らず、 また マス ・メデ ィア報 道 がつね に 同 じ論調 を とるわけで もな い。 例 えば、 新潟 県巻 町で生 じた原 子力 発電建 設 計画 を め ぐる住 民投 票 を求 めて展 開 され た住 民運動 の場合 、 そ れ に関す るマス ・メデ ィアの論調 は一様 で はなか った こ とが報 告 され てい る(伊 藤 、2005)。 この種 の地域 紛争 に 関す る報 道 は、一 般的 に 開発 賛成 派 と反対 派の 主張 を取 り上 げ、そ の背景 を解説 し、 結 果 的 にいずれ か の主張 に くみ す る こ とにな る場 合が多 い。要 す るに、 賛成 ・反対 のいず れ かの フ レー ム によって 地域紛 争 や住 民運動 とい う出来 事 の要素 が選択 ・抽 出 され 、物 語化 され 、報道 され るの であ る。 ところが巻町 の紛争 にお い ては、住 民投 票 とい うも う一 つ の争 点 が提示 され 、異 な るフ レー ムが 作用 した こ とに特 徴 があ る。 住 民投票 に関す る評 価 と しては、① 住 民投票 な どの直接 民主 制の手 法 を本 来の民 主制 の姿 と とらえ、代 表機 関 に よる政 策決 定 は可能 な限 り住民 投票 で代替 すべ きだ と見 る 「 積極 説」、② あ くまで間接 民主制 を基本 と し住 民投 票 には一定 の条件 下で 間接民 主制 を補 完す る 役 割 が認 め られて い るにす ぎない と考 える 「 消極 説」、③ 間接 民主制 を基本 に据 えな が らも、議会政 治の機 能が低 下 してい る現状 におい ては積極 的 に住 民投 票 を活 用す べ き と主張す る 「 中間説」、に分. 26.

(10) 特 集:メ デ ィ ア研 究 にお け る フ レー ム 分 析. 類 され る(大. 山 、1999:103)。. ち な み に 、 巻 町 の住 民 投 票 に 関 す るマ ス ・メ デ ィ ア 報 道 も含 む 諸 見. 解 は 、 以 下 の よ うに 要 約 され て い る。 「「 住 民 投 票 は 間 接 民 主 制 を な い が しろ に す る も の 」 「 国 政 の 問題 に 関 す る 判 断 と して 住 民 投 票 は な じま な い 」 とい う言 説 が構 築 され 、 行 政 当局 、 政 府 当局 、 電 力 会 社 が こぞ っ て こ う した 言 説 を 通 じて 「 原 発 建 設 」 へ の 合 意 を確 保 し よ う と した の で あ る。 こ う した な か で 新 潟 日報 とテ レ ビ局 各 社 が こ の 圧 力 に 抗 して 、 ジ ャ ー ナ リズ ム機 関 と して の 役 割 を果 た した こ と は 特 別 の 意 味 を も っ て い る。 そ れ は 、 け っ して 一 方 の 運 動 体 に 肩 入 れ す る、 とい う形 で行 わ れ た わ け で は な い。 推 進 派 、反 対 派 、 双 方 の反 論 や 反 対 の 主 張 、 住 民 投 票 の 正 当性 に 関す る相 反 す る意 見 も詳 細 に 報 道 さ れ た。 そ れ は. 「 住 民 投 票 は 民 主 主 義 を よ り一 歩 前 に進 め る も の だ 」 とい う一 貫 した 報 道 姿 勢 の も. とで 、 な され た の で あ る 。」(伊 藤 、2005:256)。. こ の よ うに 、 新 潟 の ロー カ ル ・メデ ィア は 、 原 子 力 発 電 所 建 設 の 必 要 性 に 関 す る賛 否 とい うフ レ ー ム よ りも 、 住 民 投 票 を め ぐ る賛 否 とい うフ レー ム を用 い る傾 向 が 強 く、 そ の 観 点 か ら こ の 問 題 を 報 じて い た。 た だ し、 住 民 投 票 を 推 進 す る勢 力 が 当初 は 建 設 に 関 して 中 立 的 な 立 場 を と っ て い た も の の 、 そ の 後 建 設 反 対 派 が住 民 投 票 推 進 派 と歩 調 を 合 わ せ る よ う に な っ た 点 は留 意 され るべ き で あ ろ う(渡 辺 、2005:26)。. 建 設 の 賛 否 とい うフ レー ム は 、 住 民 投 票 の 賛 否 とい う フ レー ム と次 第 に連. 関 す る よ うに な っ た の で あ る。 この 点 は 、 当 事 例 に お け る ロー カ ル ・メ デ ィア の機 能 と影 響 を考 え る際 に 留 意 され るべ き で あ ろ う。 そ れ に 加 え 、 全 国 紙 の 記 事 や 解 説 は 読 売 新 聞 が 先 に 掲 げ た 「 消極 説 」、 そ して 朝 日新 聞 が 「中 間説 」 に ほ ぼ 対 応 し、そ れ らの 説 が フ レー ム と して機 能 して い た こ と も 指 摘 され て い る(伊 藤 、2005:226-231、. 参 照)。. 建 設 反 対 の 社 会 運 動 組 織 に とっ て 、 ロー カ ル ・メデ ィ ア の 報 道 、 そ して 朝 日新 聞 の 論 調 は 住 民 投 票 の推 進 とい う主 張 を 媒 介 して 有 力 な 資 源 と な っ た と捉 え られ る。 ま た 、 そ れ とは 異 な る住 民 投 票 に 消 極 的 で あ っ た 読 売 新 聞 の 論 調 に して も 、 巻 町 の 住 民 投 票 とい う地 域 問題 を全 国 的 な 問 題 へ と押 し上 げ る の に一 役 買 い 、 ま た 紛 争 規 模 の 拡 大 に 寄 与 し、 原 発 立 地 の 問題 の 重 要 性 を全 国 レベ ル で 再 認 識 させ た とい う機 能 を 担 っ た と評 価 で き る 。 以 上 見 て き た よ うに 、 社 会 運 動 の 資 源 と して メ デ ィ ア ・フ レー ム は機 能 す る が 、 そ の 過 程 は か な り複 雑 で あ る。す な わ ち 、フ レー ム 間 の連 関や 対 立 とい う要 因 を 抱 え込 み な が ら、オ ー デ ィエ ン ス ・ フ レー ム と連 動 しつ つ 、 メ デ ィ ア ・フ レー ム は社 会 運 動 や 社 会 紛 争 、 さ らに は政 策 過 程 に影 響 を 及 ぼ す の で あ る。. (3)フ. レー ミン グ の権 力 性7②. 社 会 運 動 を抑 圧 す る メ デ ィア ・フ レー ム. マ ス ・メ デ ィ ア の報 道 に よ っ て 確 か に 地 域 紛 争 は 可 視 的 に な り、 そ の 規 模 も 拡 大 す る。 し か し同 時 に 、 メデ ィ ア ・フ レー ム は 、 そ の 運 動 手 段 も含 め社 会 運 動 の 正 当性 に 疑 問 を 投 げ か け る根 拠 を 与 え る場 合 が あ る。 例 え ば 、 戦 後 最 大 の 大 衆 運 動 と言 わ れ る 「60年安 保 闘 争 」 に 関 して 、 新 聞 は こ の. 27.

(11) 三 田 社 会 学 第12号(2007). 問 題 に 多 くの 紙 面 を さ き な が ら も 、 「 七 大 社 宣 言 」 に 象 徴 され る よ うに 、 「「 改 定 支 持 な い し賛 成 」「条 件 づ き 改 定 」で あ っ て 、反 対 の 立 場 を と る新 聞 は一 紙 も な か っ た 」(新 井 、1979:149)こ. とが 指 摘 さ. れ て い る。 ま た 、 「各 紙 と も岸 首 相 の 強 権 的 手 法 を 批 判 す る一 方 で 、デ モ の 行 き 過 ぎ に は た び た び 警 告 して い た 」(朝 日新 聞 取 材 班 、1996:93-94)。60年. 安 保 を め ぐ る社 会 運 動 に 関 して は 、 「安 保 改 定. の 是 非 」、 「 過 激 な デ モ とい う運 動 手 段 の 是 非 」、 「 岸 内 閣 の 強 権 的 手 法 の 是 非 」 とい うフ レー ム が 用 い られ た 。 そ の 結 果 、 「 安 保 改 定 の 是 非 」 と い うフ レ0ム が 、 「 過 激 な デ モ とい う運 動 手 段 の 是 非 」 な い しは 「 議 会 制 民 主 主 義 の 擁 護 」 とい うフ レー ム と対 峙 させ られ 、 後 者 二 っ の フ レー ム が 優 位 に 立 っ こ とで 、 こ の メデ ィア ・フ レー ム は 結 果 的 に こ の社 会 運 動 の 抑 止 に 寄 与 した と捉 え られ る。 そ の 一 方 で 、 強 権 的 手 法 に よ っ て 安 保 改 定 を行 っ た岸 内 閣 は 、 や は り議 会 制 民 主 主 義 のi擁護 とい うフ レー ム に よ っ て 批 判 され 、 退 陣 して い く こ とに な っ た 。 この よ うに 、 メ デ ィ ア ・フ レー ム は 、 社 会 運 動 や 社 会 紛 争 の 展 開 を抑 止 す る力 を も つ 。 た だ し、 こ こで よ り考 慮 され る べ き は 、 フ レー ム(フ. レー ミン グ)の 概 念 を導 入 す る こ とが 研 究 の 上 で は 以. 下 の 観 点 を導 き 出 す こ とで あ る。 そ れ は 、 フ レー ム が 歴 史 的 に 培 わ れ た こ とか ら派 生 す る 、 そ の権 力 性 を重 視 す る とい う こ とで あ る。 そ う した 権 力 性 は 、 前 述 した よ うに 、 メ デ ィ ア ・フ レー ム とオ ー デ ィ エ ン ス ・フ レー ム の 相 互 作 用 に よ っ て 蓄 積 され 、 社 会 で 共 有 され て き た も の で あ る。 こ の 面 で の メデ ィア ・フ レー ム の権 力 性 は 、 以 下 に示 す 循 環 過 程 と して 把 握 され うる。 ① 歴 史 的 に 培 わ れ た 社 会 の 価 値 観 の 分 布 → ② そ れ を 参 照 して メ デ ィ ア ・フ レー ム が 作 動(出 構 成 要 素 の 取 捨 選 択 → 物 語 化)→. 来事 の. ③ 社 会 の 多 数 派 が 共 有 す る オ ー デ ィ エ ン ス ・フ レー ム の 活 性 化 →. ④ 歴 史 的 に 培 わ れ た 社 会 の価 値 観 の 分 布 の 再 生 産 。 メ デ ィ ア ・フ レー ム の機 能 を こ の よ うに捉 え る と、 先 の 批 判 的 コ ミュ ニ ケ ー シ ョン研 究 との 関連 で 見 た よ うに 、 マ ス ・メ デ ィ ア は社 会 紛 争や 社 会 運 動 の発 生 や 展 開 を抑 止 す る機 能 を担 うこ と に な る。 他 方 、 と く に一 定 の 経 済 水 準 を 保 ち 、 民 主 主 義 制 度 が 作 動 して い る 社 会 で は 、 マ ス ・メ デ ィ ア の この 種 の機 能 が 社 会 の 安 定 や 維 持 に貢 献 して い る とい う肯 定 的 な 見 方 も で き る。 この 場 合、政 治 ・ 経 済 ・社 会 問題 に 関 す る マ ス ・メ デ ィ ア の 日々 の報 道 に して も、 社 会 の 支 配 的 な価 値 観 を具 体 化 す る フ レー ム の 枠 内 に と ど ま り、 ヘ ゲ モ ニ ッ ク な 諸 力 の 一 翼 を 担 う こ とに な る。. (4)変. 化 す る フ レー ム. メ デ ィ ア ・フ レー ム は 、 価 値 観 の 分 布 を再 生 産 させ る こ とで 社 会 問 題 を 潜 在 化 させ る機 能 を 確 か に有 して い る。 先 進 産 業 社 会 で は 、 先 に 示 した 循 環 図 式 が. 「 順 調 に 」 作 動 し、 社 会 運 動 の 中 に は そ. の 図 式 に組 み 込 ま れ 、社 会 的 影 響 力 を減 退 させ て き た も の も あ る 。 と こ ろ が そ の 一 方 で 、 「ポ ス トモ ダ ン の 政 治 的 局 面 」(大 嶽 、2007)に. お い て 、 そ れ ま で マ イ ノ リテ ィ集 団 と して 社 会 の 周 辺 に位 置 し. て い た 勢 力 が 、人 権 とい う争 点 を 提 起 しな が ら、 「 新 しい社 会 運 動 」 と して 立 ち 現 れ 、既 存 の 体 制 に 異 議 申 し立 て を行 う よ うに な っ て きた 。この 種 の 運 動 につ い て は 、「 先 進 諸 国 の 先 端 的左 翼 運 動 が(マ イ ノ リテ ィ とい う)現 代 社 会 の 周 辺 的 な 問題 しか 争 点 に しえ な くな っ た こ と を意 味 して い る 」(同: 26)と. い う評 価 を 与 え つ つ も、 次 の よ うな 説 明 が 行 わ れ て い る。. 28.

(12) 特 集:メ デ ィ ア研 究 に お け る フ レー ム分 析. 「この ポ ス トモ ダ ン の 政 治 的 局 面 で は 、・ ・プ ロ レタ リア の ア イ デ ン テ ィテ ィ を基 礎 と した 社 会 主 義 運 動 に代 わ る 、 マ イ ノ リテ ィ (少数 民 族 、 同性 愛 者 、 障 害 者 、 女 性)な. い しは植 民 地 化 され た. 住 民 に よ るア イ デ ン テ ィ テ ィ ・ポ リテ ィ ク ス 」 が そ の 中核 を な す 。 一 言 で 言 え ば 、 ポ ス トモ ダ ン 思 想 は 、 新 左 翼 に 触 発 され る と と もに 、 そ れ に 影 響 を与 え 、 各 国 の 少 数 民 族 の 運 動 、 フ ェ ミニ ズ ム 、ゲイ の解放 運動 、障 害者 の運動 、環境 運動 な ど 「 新 しい 社 会 運 動 」 と総 称 され る諸 運 動 の 登 場 と発 展 に 貢 献 した の で あ る 。」(同:27). こ の よ うに 「 新 しい 社 会 運 動 」 とそ れ を扱 う研 究 は 、 「 所 得 格 差 、職 業 分 布 の 偏 りな ど に よ っ て 測 定 され る」 構 造 的 統 合 に 関 す る 問題 か ら、 「 言 語 の 習 得 の 程 度 、習 慣 や 行 動 様 式 の 学 習 に 度 合 い と そ れ へ の 同調 の 程 度 、好 み や 価 値 観. 宗 教 意識 や 道 徳 観 の 受 容 の 程 度 な ど に よ っ て測 られ る」 文 化 的. 同 化 を め ぐっ て 生 じる紛 争 や運 動 へ と重 心 を移 行 させ て き た(石 川 、1992:53-54)。. 言 うな れ ば 、. 「 搾 取 か ら疎 外 へ 」、 「 階 級 か ら シ ス テ ム へ 」 そ して 「 経 済 か ら文 化 へ 」 と い う流 れ 、 す な わ ち 「文 化 の 政 治 化 」 とい う流 れ の 中 で 「新 しい社 会 運 動 」 は 生 じ、そ の 流 れ を推 し進 め て き た の で あ る(大 石 、2002)。 「 新 しい 社 会 運 動(論)」. で は 、 文 化 的 な 問題 を 主 た る争 点 とす る。 従 っ て 、運 動 の 目標 達 成 とい. う場 合 、 個 別 具 体 的 な 問題 の解 決 と 同 時 に 、 あ る い は そ れ 以 上 に 文 化 の 変 容 が 問題 とな る。 こ う し た 観 点 に 立 っ な らば 、 ま ず は 運 動 過 程 に お い て 、 運 動 構 成 員 の 間 で フ レー ム が 共 有 され る必 要 性 が 認 識 され 、 そ の 点 が 重 視 され る。 そ して 、 そ の 過 程 で 形 成 され る集 合 的 ア イ デ ンテ ィ テ ィ の 問 題 が ク ロー ズ ア ップ され る こ と に な る。 す な わ ち 、 運 動 過 程 で 、 ま た 政 治 エ リー トや 世 論 と交 渉 す る 過 程 で 、 運 動 組織 の構 戒 員 の 間 で 問 題 や 争 点 の 意 味 が 生 産 ・構 築 ・共 有 され る過 程 、 さ ら に は そ の 過 程 で 形 成 され 、 共 有 され る フ レー ム と集 合 的 ア イ デ ン テ ィ テ ィ に 対 す る注 目度 が 高 ま る の で あ る 。 こ う した 問 題 関 心 の 定 め方 は 以 下 の よ うに要 約 され 、説 明 され て い る(タ ロー 、1994=2006:206-208) ① 「自然 な 」も し くは 継 承 され た ア イ デ ンテ ィテ ィ は 、社 会 運 動 を 結 集 させ る基 礎 とな る。 しか し、 運 動 は こ れ らの ア イ デ ンテ ィテ ィ の 意 味 を変 革 させ るた め に も闘 争 す る。 ② 社 会 運 動 は 集 合 的 に 、 そ して 一 貫 した 行 動 をす る た め に 、 連 帯 を必 要 とす る。 自分 た ち の 主 張 を め ぐ っ て ア イ デ ンテ ィテ ィ を 創 造 し、 そ れ に 関 与 す る の は そ の た め の 一 方 法 で あ る。 ③. 「カ テ ゴ リー 上 の 」 ア イ デ ン テ ィ テ ィ の 主 張 は(社 者)し. 会 運 動 の 参 加 者 に よ る運 動 の 自 己 定 義:引. 用. ば しば 外 側 に 向 け て の ア ピー ル とな る 。 そ れ に よ っ て 運 動 は メ ンバ ー と他 者 を 区 別 す る。. 運 動 の 闘 士 の連 帯 は 、 しば しば よ り親 密 で 特 別 な 共 同体 を基 礎 に して い る。 ④ ア イ デ ン テ ィ テ ィ の 政 治 は 、許 容 範 囲 が 狭 く、 党 派 主 義 的 で 、 運 動 の 細 分 化 す る 運 動 を生 み 出 し や す い 。 そ う した 運 動 は メ ンバ ー を増 や せ な い し、 ア ピー ル を よ り広 い もの とす る こ と も 、 将 来 的 な 同 盟 者 と交 渉 す る こ と も で き な い 。 ⑤ 社 会 運 動 の 集 合 的 ア イ デ ンテ ィテ ィ を 、 永 久 的 な も の 、 も し くは 外 部 か らの 影 響 を何 も通 さ な い も の と見 な す こ と は で き な い 。 … ア イ デ ン テ ィ テ ィ も単 純 に 一 枚 岩 的 に 構 成 され る の で は な く、. 29.

(13) 三 田 社 会 学 第12号(2007). 政 治 的 機 会 や 制 約 、 戦 略 上 の ニ ー ズ 、 そ して 利 用 可 能 な 文 化 的 材 料 の 変 化 に 応 じ る もの な の で あ る。 「 新 しい 社 会 運 動 」 に象 徴 され る 、 「 文 化 の 政 治 化 」 とい う傾 向 の 中 で 、社 会 運 動 は 自 らの フ レー ム を構 築 しな が ら、 社 会 の 支 配 的 な価 値 観 を反 映 す る メデ ィ ア ・フ レー ム と対 立 し、 そ の 変 革 と再 構 築 を め ざす よ うに な っ て き た。 実 際 マス ・ メデ ィア は 、例 え ば 、人 権 や 環 境 とい っ た 問 題 を 積 極 的 に 取 り上 げ る こ とで 、メ デ ィ ア ・フ レー ム は社 会 の 支 配 的 な 価 値 観 と連 動 しな が ら変 容 を とげ て き た 。 そ の 一 方 で 、 マ ス ・メ デ ィ ア は. 「 人 間解 放 へ と向 か う外 向 き のベ ク トル 」 を もつ と同 時 に 「 ナルシ. ズ ム へ と 向 か う内 向 き の ベ ク トル 」(石 川 、1992:231)を. もつ 社 会 運 動 とは 一 定 の距 離 を と りた が. る とい う傾 向 を 有 して い る の も事 実 で あ る。. 4.結. び. 「 新 しい 社 会 運 動. に 象 徴 され る、 「 文 化 の 政 治 化 」、 そ して. 「 ア イ デ ン テ ィ テ ィ の 政 治 」 に対 す. る認 識 の 高 ま りは 、 一 方 に お い て は 民 主 主 義 社 会 の 民 主 化 とい う、 一 見 す る と トー トロ ン ジ カ ル な 問 題 提 起 を 行 い 、 そ れ は 「ラデ ィ カ ル ・デ モ ク ラ シ ー(論)」. へ 展 開 され て き た 。 確 か に 、 無 意 識 ・. 不 可 視 の ま ま 潜 在 化 され て き た 問 題 に対 す る 注 目は 、 さ らな る民 主 化 の 方 向 へ と社 会 を 突 き 動 か し て き た と も言 え る。 しか し同 時 に 、 自 由 主 義 な い しは 多 元 主 義 とい っ た 既 存 の 理 念 、 そ して そ れ に 基 づ い て構 築 され 、 再 生 産 され て き た 制 度 ・政 策 、 さ らに 体 制 は 大 き な難 題 を 突 き っ け られ る こ と に な っ た(ケ. ニ ー 、2004=2005、. 参 照)。. ア イ デ ン テ ィ テ ィ の 問 題 に こ と さ ら 関 心 を 寄 せ て き た メ デ ィア や コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョン の 理 論 、 例 え ば言 説 分 析(あ. る い は 物 語 分 析)は. 、(新 しい)社 会 運 動 が 民 主 主 義 理 論 、 そ して 民 主 主 義 社 会 に. と っ て 両 義 的 で あ る こ とを ま ず は 認 識 し、 そ の うえ で メ デ ィ ア ・フ レー ム に っ い て 論 じ る必 要 が あ る と思 わ れ る。 社 会 運 動 を 政 治 参 加 の 一 形 態 と して 評 価 す る以 上 、 こ う した研 究 の構 え を と る こ と が 、結 果 的 に は メ デ ィ ア ・フ レー ム の 権 力 性 に 関 して適 切 な診 断 を 下 す こ とに つ な が る は ず で あ る。. 【文 献 】 朝 日新 聞 取 材 班,1996,『 新 井 直 之,1979,『. 戦 後50年. メデ ィアの検証 』三 一書房 。. 新 聞戦 後史』 双柿舎 。. 石 川 准,1992,『. ア イ デ ン テ ィテ ィ ・ゲ ー ム 』 新 評 論 。. 伊 藤 守,2005,「. 住 民 投 票 を め ぐ る メデ ィ ア の 言 説 」 伊 藤 守 ほ か 『デ モ ク ラ シ ー ・リ フ レ ク シ ョ ン』 リベ ル タ 出. 版 、211-259。 大 石 裕,1998,『. 政 治 コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン』 勤 草 書 房 。. 大 石 裕,2002,「. 拡大す る 「 政 治 」 と社 会 運 動 論 」 野 宮 大 志 郎 編 著 『 社 会 運 動 と文 化 』 ミネ ル ヴ ァ 書 房 、85-102。. 大 石 裕,2005,『. ジ ャ ー ナ リズ ム と メデ ィア 言 説 』 勤 草 書 房 。. 大 嶽 秀 夫,2007,『. 新 左 翼 の 遺 産 』 東 京 大 学 出版 会 。. 30.

(14) 特 集:メ デ ィ ア研 究 に お け る フ レー ム分 析. 大 山 礼 子,1999,「. 住 民 投 票 と 間 接 民 主 制 」 新 藤i宗 幸 編 著. 蒲 島 郁 夫,1988,『. 政 治参加 』東京 大学 出版 会。. ケ ニ ー,M.,2004=2005,藤i原 佐 藤 俊 樹,2006,「. 孝 ほか訳. 閾 の あ りか 一. 『住 民 投 票 』 ぎ ょ うせ い 、97-126。. 『ア イ デ ン テ ィ テ ィ の 政 治 学 』 日 本 経 済 評 論 社 。. 言説 分析 と. 「実 証 性 」」 佐 藤 俊 樹=友. 枝敏 雄編著. 『分 析 言 説 の 可 能1生 』 東 信 頼. 堂 、3-26. タ ッ ク マ ン,G.,1978=1991,鶴. 木 眞=櫻. タ ロ ー,S.,1994=2006,大. 内篤 子 訳. 畑 裕 嗣 監訳. 野 宮 大 志 郎,2002,「. 『ニ ュ ー ス の 社 会 学 』 三 嶺 書 房 。. 『社 会 運 動 の カ 』 彩 流 社 。. 社 会 運 動 と文 化. なぜ運 動 の. 「文 化 的 」 研 究 な の か 」 同 編 著. 『社 会 運 動 と 文 化 』 ミネ ル. ヴ ァ 書 房 、1-26。 橋 爪 大 三 郎,2006,「. 知 識 社 会 学 と 言 説 分 析 」佐 藤 俊 樹=友. マ コ ー ム ズ,M.,1991=1994,大 渡 辺 登,2005,「. 石裕 訳. 枝 敏 雄 編 著 『分 析 言 説 の 可 能 性 』東 信 頼 堂 、183-204。. 『ニ ュ ー ス ・メ デ ィ ア と 世 論 』 関 西 大 学 出 版 部 。. 住 民投 票が 問い かか けた もの」伊藤 守 ほか. 『デ モ ク ラ シ ー ・ リ フ レ ク シ ョ ン 』 リ ベ ル タ 出 版 、. 21-330 Entman,R.M,1993, vo1.43 Franklin, Lilleker,. gaming. towards. D.G.,2006,. Key Key. Concepts. Concepts. McCombs,M.,2004,. Setting. McCombs,M=Reynolds. A.,2002,`News. McCullagh,C.,2002,. of fractured. paradigm'Journal. of Communication. No.451-58.. et. al,,2005,. Media. clarification. Effects(2nd. in Political. the Agenda,. ed.)Lawrence Media. in Journalism. Power,. Sage. Influence Erlbaum Palgrave. Studies,. Sage. Communication,. Pub.. Sage. Pub.. Pub.. on. Our. Pictures. of the World'Bryant,J.=Zillann,D.. ed.. Associated,1-18. Pub.. McQuail,D. 2005, McQuail'sMass Communication Theory(5th ed.)SagePub. (おおい し. 31. ゆたか. 慶磨義 塾大 学法学 部).

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