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Kankoku no genrongaku kyoiku no genkyo to kadai

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(1)Title Sub Title Author Publisher Publication year Jtitle Abstract Notes Genre URL. Powered by TCPDF (www.tcpdf.org). 韓国の言論学教育の現況と課題 李, 相吉(Kim, Cheol Yong) 金, 鐵鎔 慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所 2010 メディア・コミュニケーション : 慶応義塾大学メディア・コミュニケーション研究所紀要 (Keio media communications research). No.60 (2010. 3) ,p.183- 198. Journal Article http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AA1121824X-201003000183.

(2) 慶應義塾大学 メディア・コミュニケーション研究所紀要. 韓国の言論学教育の 現況と課題. 李. 1. 相吉. はじめに. 韓国における言論学教育は 60 余年の歴史の間,持続的に成長してきており,言論界と メディア産業の発展に大きく貢献してきた。しかし,教育の量的な膨張にもかかわらず質 的な成果が十分ではないという内外からの批判も少なくない。学生たちや業界の期待に十 分に応えたのかも疑問である。学生たちは言論学教育に深さがなく,関連分野への就職に もあまり役に立たないと不満をもらしており,業界は言論学科卒業生たちが専門知識や実 務において他の専攻の学生たちに比べ特別な長所がないと冷ややかな目で見ている。これ らに対する学界の論議と対応もまとまっていない状態である。最近急変するメディア環境 もまた言論学教育に対する省察の必要性を迫っている。このような文脈で,この論文は韓 国の言論学教育の現況と課題を点検し,望ましくて新しい志向点はどのようなものかを模 索することをその目的とする。この論文は次のように構成されている。2 章ではマクロ的 で歴史的な次元で言論学教育の 60 余年の変化を検討する。教育機関,教育名称,教育モ デルの変化に論議の焦点がおかれる。3 章では言論学教育の現況をソウルの 10 個の大学 の教科目編成資料を中心に分析する。学科と教授陣の特徴,教科目の編成,実務教育の方 式などが分析の中心となる。4 章では学界内部でこれまで言論学教育と関連して提出され てきた反省と批判を整理する。5 章では急速に変化している韓国のメディア産業の状況を 簡略に眺望し, そのような文脈の中で言論人選抜方式と望ましい人材像の変化を検討する。 そして,最終章では以上のような論議を踏まえたうえで,未来の韓国の言論学教育がいか なる原則の上で再構成されるべきかを提言する。. 2. 言論学教育の歴史的発展. この章ではまず韓国の言論学教育の発展過程を歴史的な観点から概観する。歴史的に見 ると韓国の言論学教育の発展過程は三つの変化によって特徴づけられる。第一は,教育機 関の面において学院(私設教育施設)から大学(公的教育機関)への変化である。第二は, 教育名称の面において新聞学(ジャーナリズム)から言論学への変化である。第三は,教 育モデルの面において日本式モデルから米国式モデルへの変化である。 1)教育機関の変化:学院から大学へ ほんいく 韓国の言論学教育は,一般的に,1954 年弘益大学新聞放送学科の設立とともに始まっ. 183.

(3) メディア・コミュニケーション No.60 2010. たというのが通説である。言論学教育が大学の学科として制度化されることによって,体 系的な教育が可能になり,以後米国と類似した変化を経てきたということである(チャ・ ベグン,1997,45 頁) 。しかし,このような観点は解放後から 1950 年代中盤まで韓国の 言論学教育に強力な影響を及ぼした日本式言論学教育の存在を結果的に排除してしまうと いう問題を持つ。したがって,本稿では 1947 年朝鮮新聞学院の創立を起点に韓国の言論 学教育の変貌を検討することにする。 イ・サンチョル(2009a)によると,初期言論学が大学の正規課程になるまでには 3 段 階の過程があった。第一段階は,正規学校ではない私設学院で記者の養成と訓練を目的に 言論学を教えた学院時代,第二段階は,一部の大学で言論学講座を開設した大学の新聞学 開設時代,第三段階は,大学で言論学関連学科を正式に開設した大学の言論関連学科開設 時代である。その流れを整理すると次のとおりである(〈表1〉参照)。 留意すべきことは初期の言論学教育をリードした教育者の多くが日本留学派出身である 事実である。つまり,イ・サンチョル(2009b)によると,初期,大学で新聞学科を設立し, 新聞学研究において主導的な役割を果たした人物たちには日本の上智大学や東京大学で新 聞学や社会学を専攻したという共通点がある。日本の上智大学の新聞放送学科を 1 期生で ほんいく 卒業した(1935)クァク・ボクサンは韓国で最初に弘益大学に新聞学科を設立し(1954), ちゅんあん い 二番目に中央大学に新聞学科を設立し(1957),同じ大学の後輩であるイ・ヘチャンは梨 ふぁ 花大学に三番目に新聞学科を設立し(1960),また,同じ上智大学の後輩であるバク・ユ はんやん ボン(後にドイツで博士学位取得)は漢 陽大学に四番目に新聞学科を設立した(1963)。. ●表1. 初期韓国の言論学教育機関の変遷過程. 時期. 1950 年代初盤. 1950 年代初盤 ∼. 第 2 期: 大学の 新聞学 講座時代. 1940 年代中盤 ∼. 第 1 期: 学院時代. 年度. 1950 年代中盤. 主な出来事 ●1945-47年,日本の敗戦,米軍政が新聞発行を許可制から登録 制に転換。新聞洪水期。 ●1947年,朝鮮新聞学院設立。大学卒業生が入学対象者であり, 実質的に大学院の役割。 ●1950年,朝鮮戦争勃発。 ぷ さん ●1952年4月,釜山市朝鮮新聞学院が名称をソウル新聞学院に変 え,避難地で教育進行。 ●1949年,ソウル大学が最初に新聞学講座開設(講師:クァク・ ボクサン)。朝鮮戦争で授業を中止したが,ソウル修復後再び 進行。 よん ひ ●1953年,延禧大学が新聞学講座開設(講師:クァク・ボクサ ン) こりょ いふぁ ●ソウル修復後,高麗大学政経学部(オ・ジュファン) ,梨花女 ちゅんあん 子大学文理学部(チェ・ワンボク),中央大学法政学部(クァ ク・ボクサン)など,ソウルにある大学を中心に新聞学講座開 設増加。 ほんいく. ∼. 1950 年代中盤 第 3 期: 大学の 1970 年代 新聞学科時代. FT iigguurree. & &. 184. aabbllee. ●1954年,弘益大学が韓国で最初に新聞学科を設立(クァク・ボ クサン) ちゅんあん ●1957年,韓国で二番目に中央大学が新聞学科を設立 ほんいく ●1958年,弘益大学の第8回卒業式で新聞学科1期卒業生20名輩 出 いふぁ ●1960年,梨花大学で三番目に新聞学科(イ・ヘチャン)設立 はんやん ●1963年,漢陽大学で四番目に新聞学科(バク・ユボン)設立 ちゅんあん いふぁ ●1964年,中央大学と梨花大学が修士課程開設 よん せ ●1972年,延世大学で9番目に新聞放送学科設立. * キム・ボクス(2009),ヤン・スンモク(2009),イ・サンチョル(2009a),イ・ジェジン(2009) などを参考に作成。.

(4) 韓国の言論学教育の 現況と課題 そして,日本の東京大学で社会学博士学位を取得したキム・キュファンはソウル大学に韓 国最初の新聞研究所を設立し(1963),これを土台に新聞大学院を設立し(1968),後に新 聞学科を設立した(1975)。彼らは理論を重視するヨーロッパ(ドイツ)のジャーナリズ ムから影響を受けた日本の初期言論学教育を韓国の教育に紹介したと評価できる。具体的 に,彼らがとった教育モデルは,ドイツ式理論中心の新聞学と米国式実践新聞学を半分ず つ折衷したスウィスのチューリヒ大学体制に従ったものであった。これは,結果的に,実 技と理論の中,どちらに重点をおくべきかがわからない,つまり,職業教育か否かを決め ないまま,全てを網羅して教える現在の教育体制を作った歴史的根源になったと見なされ る(イ・カンス,1973;イ・ジェキョン,2005 から再引用)。 2)教育名称の変化 : 新聞学から言論学へ 解放後, 「新聞の洪水期」に脚光を浴びた新聞学研究は 1960 年代中盤に変化を迎えた。 1960 年代,ラジオ,テレビ,映画などが脚光を浴びはじめるようになり,新聞だけでは なく多様なメディアを包括的に研究するマス・コミュニケーション研究が米国を中心に世 界的に流行しはじめた。これに影響を受けた韓国の新聞学研究は後発メディアを研究範囲 に含む,現在の「言論学研究」への方向転換を試みた。当時,学界の主要な学者たちはこ のような変化を積極的に主導した。初期の代表的な言論学者として挙げられるクァク・ボ ちゅんあん クサンがその中の一人である。彼は 1970 年中央大学政経論集に掲載した「言論学の構想」 という論文の中で,学問研究の対象領域を新聞紙からさらに放送,映像,雑誌などにまで いるじょがく 拡大すべきであると提案した。また,1971 年『言論学概論』(一潮閣,1971)という著書 を発表し,韓国で最初に「言論学」という名称を用いた(イ・サンチョル,2009b,10 頁)。 「社会科学としてのコミュニケーション学」を主張した言論学者第一世代のキム・キュファ ンもこのような変化に参加した。1950 年代に日本の東京大学で新聞学を勉強したキム・ キュファンは日本留学生出身であるにも関わらす,米国コミュニケーション学問の先駆者 と呼ばれるウィルバー・シューラム(Wilber Schramm)の影響を受け,米国式の社会科 学としてのマス・コミュニケーション研究を韓国に導入し,積極的に伝播した。また,彼 は 1968 年新聞大学院を創立する際,既存の新聞記事作成実習中心の「新聞学」中心であっ た大学教育と差別化されたコミュニケーション理論中心の大学院教育を実施した(ヤン・ スンモク,2009)。 このように各種メディアが発達するにつれ,研究と教育対象の幅を拡大しようとする言 論学者たちの試みが増加した。また,米国で留学をして帰ってくる言論学者が多くなるに つれ, 1970 年代になって韓国の言論学のアイデンティティは大きな変動を迎えた。つまり, 初期の伝統的な新聞学から経験主義的・行動科学的社会科学の性格を帯びるコミュニケー ション学へ移行したのである。それによって,名称もまた,新聞学,新聞放送学から言論 学またはコミュニケーション学へと変化した。このような名前の変化は学問性格上の変化 と密接に関連しているという点に注目する必要がある。新聞(放送)を研究し言論人を育 成する学問のように見なされた新聞(放送)学は,今は人間社会のコミュニケーション現 象全般を扱う学問として位置づけられた。それによって言論学という名称もジャーナリズ ムのみを扱う学問として誤解される余地が多いので適切ではないという指摘が出るくらい になった。しかし,「コミュニケーション学」という名前がよりいいという一部学界の意 見にも関わらず, 「コミュニケーション」という外来語がもたらす異質感のせいで「言論学」 という用語が広く使われている。 1990 年代以後,韓国の言論学教育は関連学科が増加し,学部制などで教科課程が増え た学校が出現するようになって,また転換期を迎えている。言論学の教育の範囲は人間コ ミュニケーションの本質に関する最も基本的な論議から,新聞,放送,映画,雑誌などの. 185.

(5) メディア・コミュニケーション No.60 2010. マス・メディアと,また,これらを媒介とする広告,広報,そして,最近重要性が増して いる先端ニュー・メディア情報通信に至るまで,あらゆる形のコミュニケーションに拡大 された状況である。その結果,学科名称においても次第に多様化,分化の傾向が目立って いる。学科の場合,新聞放送学科,広告広報学科,言論媒体学科,言論情報学科,言論広 報学科,情報社会学科,放送情報学科などの名称が,学部の場合,言論学部,言論映像学 部,政治言論学部,コミュニケーション学部,メディア学部,言論情報学部,映像情報学 部,言論広報映像学部などの名称が同時に使われている状況である。実質的には教科目と 内容に大きな差がないのに専攻名称だけがこのように混乱している状況は学科のアイデン ティティと学位名称に混沌を招くという批判も存在する(ソ・ジョンウ,1999)。 3)教育モデルの変化:日本式から米国式へ 1970 年代から米国のマス・コミュニケーション理論研究が韓国に本格的に導入され, 初期は日本式教育の影響を受けた言論学教育のモデルも大きな転換を迎えた。ところで, このような転換は急激に行われたというより漸進的に行われたと思われる。解放後,米軍 政(1945 ~ 48)と米軍の朝鮮戦争参戦(1950 ~ 53)を経ながら韓国と米国の交流が活発 になった。そのような過程で他の学問と同様,言論学研究もフルブライト・プログラム (Fullbright program)のような奨学金制度の後援で米国留学事例が増え,結果的に米国 式教育が全般的な趨勢になったのである。当時,フルブライト・プログラムは有能な記者 や教授,そして,留学生たちに全額奨学金を与え,米国留学の道を開いてくれた。例えば, 1950 年代にフルブライト・プログラムでノースウェストン(Northwestern)大学で新聞 くぁんふん どんあ 学を勉強して帰ってきたバク・クォンサンは寛勲クラブを設立し,〈東亜日報〉の記者と して活躍した。同じ時期に同じプログラムで留学したイム・グンスも韓国に帰ってきてソ ほんいく ちゅんあん ウル新聞研究所と,弘益大学,中央大学,ソウル大学で言論学講義をしながら米国式言論 学教育を韓国に紹介した(イ・サンチョル,2009a)。 1960 年代後半から急増したジャーナリズムとマス・コミュニケーション関連米国学位 所持者たちは 1970 年代以後から言論学科の発展に決定的な役割を果たしながら,言論学 教育の質的向上に寄与した。彼らは,特に,既存の「新聞学(新聞記事実習)」中心のカ リキュラムにマス・コミュニケーション理論と研究方法論,多様なメディア各論を加えな がら,教育範囲を拡大し,内容を「科学化」,体系化した。しかし,このような変化にお いて注意すべきことは,日本式から米国式へと教育モデルが移行したことは確かであるが, だからと言って,完全に米国式のカリキュラムと教育が移植されたことではないというこ とである。端的な例として,韓国では,米国とは違って,言論学科(あるいは学部)でジャー ナリズム教育とコミュニケーション教育を並行しているという点が挙げられる。ある意味 では,教育者たちの留学背景が日本から米国に変化する過程で言論学教育モデルは日本式 と米国式の「混成型」になったと言っても過言ではないであろう。韓国では実技教育を強 (1) 調する別途の米国式ジャーナリズム・スクールが長い間存在しておらず ,言論学科で実 技と理論を網羅して教える伝統が残っている。一方では米国式実技教育を標榜しながらも, 実際の大学学部教育では教科科目の 3 分の 2 以上を理論科目で編成する場合がほとんどで ある。こういうふうに見ると,教科内容や外見上での「米国化」とは違って,教育モデル 自体は初期日本式モデルとの連続性があるのである。既に 1970 年代初盤から韓国言論学 教育は「百貨店式」であるという批判が行なわれてきた。これは,言論学が明確な強調点 脚. 注 ちゅんちょんど. せみょん. 1.2008 年に忠 清道にある世 明大学にジャーナリズ・スクールが 設立されたが,これは現在,大学のジャーナリズム専門教育課. 186. 程としては韓国内で唯一である。.

(6) 韓国の言論学教育の 現況と課題 やアイデンティティを持っておらず,新聞,放送,広告,広報などの多様な職業領域のみ ならず,インターパーソナル・コミュニケーション,政治コミュニケーションなどの理論 教育までも包括しており,どの分野にも焦点がおかれていない現状を指すものである。こ のような批判は現在もある程度有効であると思われる。むしろ,ニュー・メディアの発達 とともに「言論学」あるいは「コミュニケーション学」という名の下に入る教育分課が, 既存の新聞,放送,広告などから広報,映像,IT,モバイル,ゲーム,カルチャル・スター ディーズなどに至るまで,より多元化した。多くの研究者たちはこれらのさまざまな分課 が一つの学科の中で「有機的な結合」の様子を見せるよりはむしろ,「並列的な細分化」 の様子を見せているところに問題があると指摘している。. 3. 言論学教育の現況. 解放後,新聞産業の発展とともに独自的な学問として成長する機会を得た言論学は 1960 年代の経済成長が成し遂げた,放送,雑誌などの新しいメディア産業の発展によっ て教育範囲を急速に拡張した。以後,1970 年代維新政権によって統制されていた言論産 業が 1980 年代後半民主化とともに,質的にも,量的にも,大きく成長し,言論学教育も 著しい発展を成し遂げるようになった(ヤン・スンモク,1996)。1980 年,合わせて 11 個に過ぎなかった 4 年制大学の言論関連学科の数は以後飛躍的な発展を見せた。その結果, 1995 年度には 75 個の 4 年制大学に 86 個の関連学科が,20 個の 2 年制大学に 26 個の関連 学科が開設されるに至った(ソン・ウチョン,2001)。2000 年代に入って韓国の言論学教 育は転換期を迎えている。言論学は,新たに発展した各種ニュー・メディア,インターネッ トとモバイル・メディアなどを研究と教育の対象に包摂すると同時に,学問的な内実を強 化しなければならない段階に至ったのである。このような状況で 2009 年現在言論関連学 科は 92 個の 4 年制大学に 106 個が設置されていると推算される(イ・アラム,2009)。こ の章では韓国の言論学学部教育の現況を,具体的に,学科と教授陣,科目編成,実務教育 という三つの観点から検討することにする。 1)学科と教授陣の特徴 まず,学科の制度的分類と教授陣の特性を検討してみる。韓国の言論学科は伝統的に社 会科学学部や政経学部に所属してきた。ところが,新しいメディア環境が刺激する「専門 化教育」の必要性によって,最近の大学は言論学科を独立した学部,あるいは芸術関連学 部に分類する趨勢にある。韓国の 53 個の言論学部の所属学部を調査したキム・ソンヘ (2009)の研究によると,現在社会科学学部に属している言論学部は 25 個である。反面, 社会科学学部に属していない言論学部は 28 個に達し,過去に比べ言論学部が独自的に運 営されていることをあらわしている(〈表2〉参照)。 一方,デジタル・マルチ・メディア教育への変化は学部専攻の分化をもたらしている。 新聞放送学科という専攻名称を使う学部の数が急速に減っている反面,映像,メディア, コンテンツ関連専攻が新設される事例が急速に増えている(〈表3〉参照)。現在韓国の言 論学の専攻は,学問対象を基準に分類すると,大きく,言論学,広告・広報学,放送・映 像,メディア・コンテンツ,映画・芸術に分けることができる。ここで言論学関連専攻の 場合,過去の伝統的な新聞放送学科と同様,広告,映像などの他の専攻を含んでいる場合 が多い。反面,広告・広報学と関連した専攻の場合,多様な専攻に細分化される趨勢が見 られる。注目すべき点は,メディア・コンテンツ関連専攻の躍進である。過去,言論学科 や学部では見られなかったコンテンツ関連専攻が最近 10 余年間少なくなく新設され,今 は一つの潮流を形成しているのである。同じ文脈の中でニュー・メディア関連専攻も持続. 187.

(7) メディア・コミュニケーション No.60 2010. ●表2. 全国大学言論学部プログラム所属別分類 学科所属. 該当学校. 社会科学学部. 江原大学,建國大学,慶北大学, 園大学,啓明大学,光云大学, 國民大学,檀國大学,大眞大学,東國大学,明知大学,放通大学, 培材大学,釜山大学,ソウル大学,ソウル女子大学,聖公会大学, 成均館大学,世宗大学,崇実大学,全南大学,全北大学,忠南大学, 韓國外國語大学,漢陽大学,. 芸術関連学部. 中央大学(メディア公演映像学部),東國大学(映像メディア学部), 祥明大学(芸術学部),韓國芸術総合大学(映像院),漢城大学(芸 術学部). その他学部. 慶星大学(マルチ・メディア学部),慶熙大学(政経学部),大田 大学(法政学部),水原大学(法政学部),嶺南大学(文科学部), 濟州大学(法政学部),中央大学(政経学部). 独立学部. 高麗大学(言論学部),光云大学(メディア映像学部),東亜放送 芸術大学(メディア技術学部,放送コンテンツ学部,メディア経 営学部),西江大学(コミュニケーション学部),世明大学(メデ ィア文学部),淑明女子大学(言論情報学部),延世大学(言論広 報映像学部),梨花女子大学(言論広報映像学部). 独立学科. 牧園大学(広告広報言論学科),又松大学(テクノ・メディア学科), 中部大学(言論広報系列). * キム・ソンヘ(2009)を基に再構成. ●表3. FT iigguurree. & &. 全国大学言論学部細部専攻別分類 代表専攻. 細部専攻名称. 言論学. ジャーナリズム,言論情報学,言論ジャーナリズム,新聞放送, 言論学,言論広報学,政治言論広報学,放送映像言論,メディア 理論およびジャーナリズム. 広告・広報学. 広告広報学,メディア広報,広告学,広告 PR,広告クリエーティブ, 広報イベント・マーケッティング,広告. 放送・映像. 放送映像学,映像デザイン,放送テレコミュニケーション,映像 情報,放送通信システム,映像理論,デジタル映像,視覚映像デ ザイン,放送,映像コミュニケーション,放送制作技術,放送シ ステム,インターネット放送システム. メディア・コンテンツ. メディア・アート,写真映像メディア,デジタル・メディア,マルチ・ メディア,メディア・コンテンツ,デジタル・コンテンツ,ウェブ・ コンテンツ,マルチ・メディア映像. 映画・芸術. 映画,映像,写真映像メディア,エンターテインメント学科,ア ニメーション科,デジタル・アニメーション,演出,撮影,編集. その他. 共通専攻,専攻区分無し. * キム・ソンヘ(2009)を基に再構成. aabbllee. 的に増加している。 教授陣においては博士学位所持者が絶対多数を占めている。キム・ソンヘ(2009)の研 究によると,一部の特別プログラムを除くほとんどの学科や学部において,過去とは違っ て修士学位の教授は非常に少なくなっている。また,教授陣の「米国化」が深刻な水準で ある結果も出た。つまり,韓国の言論学科に在職している 337 名の教授の中,米国で留学 そがん をした人はおよそ 57.9%に達していることが調査の結果から明らかになった。西江大学や いふぁ 梨花女子大学などの一部の大学の場合は,米国留学者が 100%に達していた。反面,韓国 国内で学位を取得した教授の割合は 10%に過ぎなかった。彼らは主に地方の大学で教鞭 を執る場合が多く,実質的に「非主流」になっている。このように米国出身に偏った教授 陣の構成は韓国の言論学教育の独自的なアイデンティティの構築や多様な文化的文脈を考. 188.

(8) 韓国の言論学教育の 現況と課題 慮した教科内容の構成を阻害する要素になる可能性が少なくないという点から学界に課題 を与えている。 2)教科科目編成 次は,具体的な教科科目の編成を検討する。言論学教育の現況を完璧に把握するために は各細部専攻別の開設科目を比較したり,講義計画書を分析したりしなければならない。 (2) しかし,そのような膨大な作業は後の課題として残し,本稿では,ソウルの主要大学 10 個 に限定し, 言論学関連学部(あるいは学科)の教科科目編成を概観する作業のみを行った。 そのために 2009 年 9 月現在これらの大学のホーム・ページに掲載された教科科目編成表 を資料として用いた。大学によっては開設教科科目数において多少差があったが,調査の 目的が細部専攻による教科科目編成の傾向を検討することであるため,比較するに当たっ ては支障がないと判断した。前述したように,韓国の言論学教育はジャーナリズム,コミュ ニケーション,メディア,映像,広告,広報などの多様な分野を対象に行われている。こ のような混合の程度と各分野別の比重を検討するために,大きく「ジャーナリズム」,「コ ミュニケーション(理論・方法論)」,「広告・広報」,「放送・映像」,「映画・芸術」,「メディ ア・コンテンツ」の 6 つのカテゴリーに科目を分類した。その結果は以下のとおりである ( 〈表4〉参照) 。 調査の結果,まず,伝統的な新聞放送学の中心分野と言えるジャーナリズムとコミュニ ケーション関連教科科目の編成比率が 10 個の大学平均で各々 27.5%,19.8%であり,最も 高かった。この二つを合わせると 47.3%であり,ほぼ半分に近い。特に,ソウル大学と韓 國外國語大学の場合,およそ 60%以上の教科科目をジャーナリズムとコミュニケーショ そがん よんせ ン分野に充てている。映画・芸術関連科目の比重は非常に低かった。西江大学と延世大学 を除いたほとんどの大学では映画・芸術関連科目数が 10 個未満であり,全く提供してい ない大学もあった。これは演劇映画科との差別性の問題や教養科目での映画関連教科の人 気などによるものと思われる。他の細部専攻別教科科目編成比率は類似しており,広告・ 広報 16%,放送・映像 16%,メディア・コンテンツ 15%程度の結果であった。 次は,これを 2001 年韓国言論学会が実施した「言論学教科科目現況」調査結果と比較 してみた。ただし,当時の韓国言論学会の調査は全国の 72 個の 4 年制大学の言論関連学 科を対象に行われ,科目別分類基準も「言論学」,「広告・広報」,「放送映像・ニュー・メ ディア」であり,本稿で用いた基準とは異なる。しかし,概略的な比較は可能であろう(〈表 5〉参照) 。 2001 年の調査結果と 2009 年の調査結果とを比較すると,まず,言論学関連教科科目の 編成比率にはほとんど差がないことがわかる。反面,広告・広報関連教科科目の編成比率 は 2009 年の調査結果において 2001 年の調査結果に比べ半分くらいになっている。また, 放送映像,ニュー・メディアなどの関連科目は 2009 年の調査結果において 2001 年の調査 結果に比べ 2 倍近く増えた。このような差を単純化して論じることはできない。調査の範 囲と時点が異なるからである。ただ,2009 年現在ソウル地域の 10 個の大学の教科科目編 成が伝統的なジャーナリズムとコミュニケーション関連科目に依然として高い比重を置い ており,一方,映像・コンテンツ関連科目に多くの投資をしていることは言える。特に, 映像・コンテンツ関連科目は,大学側が最近増加しているニュー・メディア部門の需要を 狙い,積極的に開設しているように思われる。 脚. 2.対象となった大学は次のとおりである:ソウル大学言論情報学 よんせ こりょ そがん 科,延世大学言論広報映像学部,高 麗大学言論学部,西江大学 いふぁ はん コミュニケーション学部,梨花女子大学言論広報映像学部,漢. やん. きょんひ. 注. ちゅんあん. 陽大学新聞放送学科,慶 熙大学言論情報学部,中央大学新聞放 そんぎゅんぐぁん 送学部,成均館大学新聞放送学科,韓國外國語大学言論情報学 部。. 189.

(9) メディア・コミュニケーション No.60 2010. ●表4. FT & &. (単位:%). 大学/学科. ジャーナ リズム. ソウル大学 言論情報学科. 17.2. 44.8. 10.3. 17.2. 0.0. 10.3. 延世大学 言論広報映像学部. 23.4. 17.2. 20.3. 17.2. 9.4. 12.5. 高麗大学 言論学部. 27.5. 11.8. 27.5. 17.6. 3.9. 11.8. 西江大学 コミュニケーション学部. 20.7. 3.4. 17.2. 27.6. 20.7. 10.3. 梨花女子大学 言論広報映像学部. 21.8. 9.9. 29.7. 20.8. 6.9. 10.9. 漢陽大学 新聞放送学科. 36.1. 19.4. 13.9. 16.7. 0.0. 13.9. 韓國外國語大学 言論情報学部. 54.1. 24.3. 5.4. 0.0. 0.0. 16.2. 成均館大学 新聞放送学科. 23.8. 26.2. 14.3. 11.9. 4.8. 19.0. 慶熙大学 言論情報学部. 16.1. 25.0. 26.8. 17.9. 0.0. 14.3. 中央大学 新聞放送学部. 34.5. 15.5. 0.0. 12.1. 5.2. 32.8. 平均. 27.5. 19.8. 16.5. 15.9. 5.1. 15.2. ●表5. iigguurree. ソウルの10個の大学言論学科細分専攻別教科科目編成現況. コミュニ 広告・広報 放送・映像 映画・芸術 メディア・ ケーション コンテンツ. 2001年と2009年の教科科目編成比較. (単位:%). 2001 年の調査 (全国の 72 個の 大学対象). 言論学. 広告・広報. 放送映像・ニュー・メディア. 平均. 45.8. 31.7. 22.5. 2009 年の調査 (ソウルの 10 個の 大学対象). 言論学 (ジャーナ リズム / コミュニ ケーション). 広告・広報. 放送・映像. 映画・芸術. メディア・ コンテンツ. 平均. 47.3. 16.5. 15.9. 5.1. 15.2. aabbllee. 次は,教科科目編成において理論科目と実習科目の編成比率を検討してみた(〈表6〉 参照) 。調査結果,理論科目と実習科目の比率は各々 71%と 29%であり,後者の比重が相 対的に低かった。これは,2001 年の韓国言論学会の全国調査とほぼ同じである。当時, 理論科目と実習科目の比率は各々 72.2%と 27.8%であった 総合的に見ると,現在ソウルの 10 個の主要大学の言論学科教科目編成は「ジャーナリ ズム・コミュニケーション」関連科目中心であり,理論科目中心であると評価できる。実 際,この二つのことは深く関連している現象でもある。ジャーナリズムやコミュニケーショ ン関連科目は記事作成実習科目などを除けばほとんど理論中心に構成される傾向があるか らである。このような教科科目構成は将来メディア業界に就職するために言論学科に進学 した大部分の学生たちにとっては不満のもとである。これは,また,メディア業界に現在 従事している人たちにとっては言論学科出身学生を特別に選好する必要がないという立場. 190.

(10) 韓国の言論学教育の 現況と課題 ●表6. ソウルの10個の大学言論学科の理論科目と実習科目編成現況. (単位:%). 大学/学科. 理論科目. 実習科目. ソウル大学 言論情報学科. 86. 14. 延世大学 言論広報映像学部. 78. 22. 高麗大学 言論学部. 68. 32. 西江大学 コミュニケーション学部. 75. 25. 梨花女子大学 言論広報映像学部. 57. 43. 漢陽大学 新聞放送学科. 72. 28. 韓國外國語大学 言論情報学部. 75. 25. 成均館大学 新聞放送学科. 78. 22. 慶熙大学 言論情報学部. 58. 42. 中央大学 新聞放送学部. 66. 34. 平均. 71. 29. FT ig iguure re. & &. aabblle e. を合理化させる根拠にもなっている。 3)実務教育 最後に実務教育の現況をより具体的に検討することにする。各言論学科の実務教育は大 きく分けて三つの方式で行われている。第一に,正規実習教科目を通じての実務教育であ る。大部分の言論学科では教科科目の一定部分を実務教育に充てている。しかし,前述し たように,そのような教科科目の数は相対的に非常に少ないのが現状である。その上,教 育における実質的な問題がしばしば提起される。つまり,正規教授陣の場合,ほとんどが 理論専攻者であるため,実習科目のためには言論人の経歴を持つ専任教授を別途に任用し たり,外来講師を使ったりする場合が多い。ところで,このような現職の専門家出身の教 授や講師の場合,「教育における専門性」を備えておらず,洞察力と創意力に欠ける,技 能中心の教育に偏っているという批判も存在する。第二は,別途の産学協同課程を通じて の実務教育がある。産学協同課程はこれまでも持続的に学界で言論学科卒業生の就職率を 高める方案としてその必要性が提起されてきた。この課程が最近いくつかの大学を中心に 試みられているのである。これは一般的に「インターンシップ(internship)」制度と呼 ばれているが,大学が言論社と協力して学生たちを一定期間インターン記者やインターン 社員として活動させるものである。例えば,韓國外國語大学は韓国経済新聞,大韓貿易投 きょんひ 資振興公社,韓国放送広告公社などと,また,慶熙大学は韓国放送広告公社とインターン シップ制度を運営していることが知られている。このようなインターンシップ制度は学生 たちに現場で実質的な業務を経験させ,当該職種での適性を試せる機会を与えるなど,い ろいろな面で役に立つと思われる。第三は,放送クラブ,写真クラブ,映画クラブ,広告 クラブなど,学生たちが自ら運営するクラブを通じての非正規的実務教育である。ほとん. 191.

(11) メディア・コミュニケーション No.60 2010. どの言論学科には関連クラブが活性化されている。場合によっては言論学科の教授がこの ようなクラブの指導を担当する。このようなクラブを通じて学生たちは自律的に記事作成, アナウンシング,放送企画案作成,制作などを実習する。映像や広告・広報専攻の場合, 休み期間中,就職に実質的に役立つ公募選に入賞するための「短期クラブ」を結成するこ ともある。このようなクラブでは提案書企画,作品製作などを実際に練習するので,学科 勉強とも直接的な関連性を持つ。 大学の中での実務教育が学生たちに十分な満足を与え,実際に就職機会の拡大に大きく 役立つとは評価しがたい。これは,言論関連各種アカデミーを通じての実務教育が蔓延し ている事情からも推察できる。一種の私設教育機関と言えるアカデミーでは,放送,新聞, 映像,広告広報など,メディア産業全般の実務教育を実施する。ここではメディア産業に 従事したがる学生たちが専攻にかかわらず,志願し,教育を受ける。その中で言論学科学 生たちや卒業生たちの比重は高い。現職のメディア産業従事者やメディア産業に携わった 経歴をもつ専門家たちが教育を担当し,言論社と似たような施設を活用して教育が行われ るので学生たちの間で人気が高く,就職率も高いのである。アナウンサーや映像編集の場 合,卒業生の 99%以上が就職に成功すると知られている(韓国言論学会未来準備委員会, 2009,36 - 38 頁) 。教育を受ける過程の中で親しくなったアカデミーの講師たちとの人 的ネットワークを通じて言論社に就職する学生たちもしばしばいる。 結局,大学の実習教育の教科目不足と実質的な教育量の不足が,学生たちが「第 2 の教 育」を受けなければならない状況を作っているのである。学生たちが個人的な時間を活用 してクラブ活動をしたり,私設教育機関に別途の費用を払い受講しなければならなかった りするのである。そして,このような私設教育機関は全部ソウルに位置しているので,地 方の大学の学生たちはこのような「私教育施設の利用」からも排除されてしまう。大学の 実務教育の限界を補完するために言論学科がアカデミーと協同課程を作る方案 ─アカデ ミー受講生の場合,単位の一部を認める「単位承認制」の必要性などが提起されることも ある(韓国言論学会未来準備委員会,2009,36 - 38 頁)。しかし,これも長期的な観点 からすると大学の言論学実務教育の根本的な改善案にはなれない。専攻教育のためにすで に多額の学費を投資している学生たちに私教育費の支出までをさせることになるからであ る。. 4. 言論学教育の反省と評価. この章ではこれまで行われてきた韓国の言論学教育に対する学界内部の反省と評価を検 討する。これは,具体的に,専門言論人やメディア産業従事者の養成という目標を達成す るために,言論学教育がどの程度適切な教育を提供してきたかという質問と関連している。 韓国の言論学科を卒業した学生たちは一般的に三通りの道を歩む。第一は,専攻の勉強を 続けて学者の道を歩む場合,第二は,メディア産業に就職する場合,第三は,専攻と関連 のない産業に就職する場合である。言論学科卒業生の就職先に関する調査が包括的に行わ れたことはないが,第二のケースに該当する言論学科卒業生の比率は高くないと推定され る。言論学科は特に記者など専門言論人の輩出に役立っていないように思われる。2001 年, 韓国の新聞・放送記者の中で言論学科出身は 18%台であるという調査結果があった。同 じ時期,米国の新聞記者の 53%,テレビ記者の 78%がジャーナリズム・スクール出身であっ たことを考慮すると,これはかなり低い比率であると言える(イ・ジェキョン,2005)。 2006 年の場合,新聞放送関連記者たちの学部専攻は社会系列が 24.8%で最も高く,人文 系列 22.1%,言論学 19.1%,語文系列 17%,経商系列 7.8%,理工系列 6.3%の順であった (ナム・ジェイル 2006)。. 192.

(12) 韓国の言論学教育の 現況と課題 このような状況で,言論学教育が自らの役割を果たしておらず,したがって言論人の育 成に焦点をあわせて実技教育をより充実させなければならないという主張が持続的に提起 されてきた。ジャーナリズムとコミュニケーションを区分し,言論人の養成を目標に実務 教育に重点を置く方向に行くべきであるという主張である。これは,研究対象と範囲が拡 大し続けてきて,むしろ,あいまいになっている言論学のアイデンティティ確立にも寄与 するとも言われる。例えば,チャ・ベグン(1998)は韓国の言論学教育が学術研究者およ び教授陣の養成のための理論教育と専門的な職業言論人の輩出のための実務教育という二 元的な教育目標を実現できずに中途半端な知識人だけを量産していると批判する。同じ文 脈でイ・カンス(2001)は,基本的に専門言論人を育成することにその目的を置いている 米国の大学のジャーナリズム教育を倣って,韓国の言論学科も,純粋な人文・社会科学学 科とは違って,学部課程から徹底的な実技教育ないし技術教育を提供すべきであると主張 する。このような要求は学部・大学院教育の二元化方案にもつながる。ソ・ジョンウ(1997) は,学部は徹底的に学生たちが望んでいる職業教育を担当し,大学院は学問的な教育を担 当するという二元的な教育方式を提案した。 言論学教育の成果に対する批判的な評価は,実は,その歴史が長い。イ・ジェキョン(2005) によると,これは 1960 年代中盤から出はじめ,1970 ~ 80 年代にも持続的に提起されて いたが,そこで共通的に指摘されたことは,第一に,卒業者たちの社会進出問題,第二に, 実習科目の強化問題,第三に,教育のアイデンティティ問題であった。言論学教育の目標 と方法をめぐる論議が量的に増えはじめたのは全国的に言論学科と学生数が急増した 1990 年代からである。最も大きな争点として台頭した問題は「理論か実務か」で要約さ れる,教育目標に関するものであった。カン・ミョングとユン・サンギル(2006)は既存 の論議を「実務教育強化論」,「二元的教育論」,「理論と実習調和論」,「理論教育強化論」 などの四つの類型に整理した。「実務教育強化論」は言論学教育の「理論中心性」を批判し, これからの教育が現場,実技,現実中心の実用性を備えなければならないという立場であ る。 「二元的教育論」は言論学教育の混乱を避けるために学部教科課程は実習中心に,大 学院課程は理論中心に編成すべきであるという立場である。「理論と実習調和論」は実習 教育が単純な職業教育の水準を越えるためには,言論現象に対する洞察力と理解分析力, 創意力を涵養する理論と調和した上で発展すべきであるという立場である。「理論教育強 化論」は実務中心教育の限界と弊害を批判し,学生たちが言論人としての基本素養を育む ことができるように理論中心教育をより深化させるべきであるという立場である。カン・ ミョングとユン・サンギルは理論と実務の二分法的な論争を超えるためには新しい代案が 必要であると主張し,理論と実務教育を統合的に思考する形成的な学習と現場知識中心の 教育を提案した。 一方,韓国言論学会は創立 50 周年を記念して学界の中堅研究者たちが大挙参加した未 来委員会を構成し,言論学教育と関連した改善案を提示しようとした。この委員会は多様 な資料調査,関連人物とのインタビュー,外国の教育事例研究などを基に次のような 10 個の提案を報告書の結論として提示した。「1. 言論学教育の基本哲学を再確認する:「言論 学教育は産業が要求する人材の養成だけではなく,市民の知る権利,話す権利,聞く権利 など,公共の利害に奉仕する人材を養成することにその目的がある」。2. 韓国言論学会が 「言論学教育委員会」を常設することを提案する。3. 自由教育(liberal education)に基づ いた言論学教育課程の構築を提案する。4. 言論学教授の採用と評価において教育に対する 献身と成果が含まれる評価尺度と評価制度を開発することを提案する。5.「省察的実践教 育(education of reflective practices)」のパラダイムに基づいた言論学教育を提案する。 6. 専門実務能力訓練の質的水準を確実に高める運営と評価システムを導入することを提案 す る。7. 言 論 学 教 育 は 個 別 メ デ ィ ア(media specific) を 超 え, 統 合 メ デ ィ ア(cross. 193.

(13) メディア・コミュニケーション No.60 2010. media)教育を指向することを提案する。8. 専門性の強化された学際的な融合プラグラム の開発を提案する。9. 特性化された産学連携プログラムの開設を提案する。10. 我々言論 学教育者たちは言論分野の人材を養成する責務を負っており,韓国言論学会は人材養成の 責務が言論学という学問を守る責務より重いという責任感を共有する共同体であることを 確認する」(未来委員会,2009,284 - 290 頁)。. 5. デジタル時代における言論学教育の展望. 韓国の言論学教育の歴史はすでに 60 年を超えており,大学に制度化されてからも 55 年 になる。言論学科がこれまで職業言論人と専門研究者の養成を通じて韓国言論界とメディ ア産業の発展に大きく寄与してきたのは事実である。しかし,言論学教育が学生たちの要 求と社会的需要により応えるためにどのように変化しなければならないのかに関する省察 もまた持続的に行われてきた。その主な焦点は言論学教育の目標が「理論か実務か」とい う問題におかれてきたと言っても過言ではない。このような状況で理論と実務の二分法を 越えようとする努力も少しではあるが見られている。そのような試みに原則的に共感でき るが,それが単純なレトリック的な克服にとどまらないようにするためには現在変化し続 けているメディア環境を考慮に入れた現実的な方策を模索すべきであると思われる。 1)言論学教育と言論人選抜制度の変化 そのためにはまず既存の言論学教育の理論中心性に対する批判が現実的にどのくらい適 切であるかという問題から検討する必要がある。もちろん,そのような批判が一理もない とは思われない。しかし,例えば,言論学教育が実務と実技に重点を置く方向に変わると, 果たして言論学科卒業生たちの言論社就職率が高くなり,現場の人たちの満足度も高くな るであろうか?必ずしもそうではないであろう。なぜなら,伝統的に韓国の公共圏での核 心的な行為主体となってきた主要新聞社と地上波放送局の言論人たちは「公開採用制度」 を通じて選抜されており,公開採用の中心基準は実務能力ではないからである。公開採用 は誰にも自分の専攻と関係なく言論社に志願する機会を提供するという点においてある種 の「平等性」を具現している制度である。このような公開採用は志願資格を制限しないの で就職競争率をはるかに高めており,その中で志願者たちを「公正に」評価するために可 能な限り客観的な指標化が可能な方式の試験または選抜基準を掲げるのである。その結果, 主要言論社に入社するためには平均「数百対一」から「数千対一」の競争率を通過しなけ (3) ればならず,一次的には学歴(どの大学を出たのか) と語学点数,学科成績,形式的な 自己紹介で構成される「書類審査」に合格しなければならない。 このような現実で言論学科卒業生に与えられるアドバンテージはあまりない。他の学科 出身学生たちと比べより優秀な実務能力を備えていても,学歴や語学および教科成績など がよくないと「書類審査」さえ通過できないからである。もちろん,書類審査の後は筆記 試験,実務評価,面接が待っている。しかし,筆記試験でも重要な評価領域は時事教養常 識,作文,論述などであり,言論学専攻とはあまり関係がない。したがって,言論社入社 を志望する学生たちにとって現実的に必要な勉強は専攻実技よりは教科目と直接的に大き な関連性のない語学能力,政治経済常識,作文能力などである。実務能力に対する評価も 脚. 注. 3.端的な例として,言論社入社志望者たちのインターネット・カ フェである < アランのカフェ言論考試 > で提供する情報によ ると,代表的な新聞社である朝鮮日報の 1999 年から 2005 年ま での公開採用合格者の 85%が韓国で「SKY」と呼ばれる名門. 194. 大学(つまり,ソウル大学,延世大学,高麗大学)出身であっ た。地方大学出身の合格者は 2005 年のただ一人に過ぎなかっ た。http://cafe.daum.net/forjournalists/DY4T/16330.

(14) 韓国の言論学教育の 現況と課題 次第に重要になる傾向ではあるが,これは比較的最近の現象に過ぎない。結局,専門言論 人になろうとする言論学科学生たちは学科勉強よりは別途の公開採用試験の準備に没頭し なければならない状況なのである。このような状況は,長い間,大学も言論社も実務教育 の問題に真摯に取り組まなくてもいいような状況を作った。つまり,大学の立場からする と,実務教育が言論社入試にあまり役立たないので実習科目はカリキュラム用にのみ運営 してきた。また,言論社の立場からすると,実務能力のない言論学科学生たちに選抜過程 でアドバンテージを与える必要がないという認識が強化され,これはさらに公開採用制度 を合理化する一つの名分として作用した。 いわゆる基本的な資格要件(学歴で代表される社会関係資本(social capital),語学点 数と学位で象徴される文化資本(cultural capital))を中心に選抜されて入社した未来の 言論人たちのために言論社では「マン・ツ・マン教育」が慣例になっている。これは新入 社員が当該業務に関する知識と実務能力を学習するように別途に実施する社内教育プログ ラムである。つまり,先輩記者が後輩記者の記事作成を添削指導し,情報源の人脈管理な どの「要領」を伝授し,記者職にふさわしい「人性」を訓練させる程度の教育が行われる。 問題は,この「マン・ツ・マン教育」が果たして良い言論人の養成と高い水準のジャーナ リズムの具現のための十分条件になっているのかという点である。また,メディア産業の 変化と入社競争の激化によって実務能力の測定が次第に重要になっているが,大学の教授 陣や教科目はその速度に合わせて変化していないので言論学科卒業生たちは各種私設学院 とアカデミーに教育費を払っている。これは諸外国の事例とは対照的である。米国やヨー ロッパの言論学関連学校はほとんど専門人材育成のためのカリキュラムによって運営され ている。言論社も大学との産学協同課程や言論社独自のインターン・プログラムを通じて 学生たちの適性と職務遂行能力を検証し採用する方式が定着している。これは言論学科卒 (4) 業生の高い言論社就職率につながっている(未来委員会,2009) 。 こういうふうに見ると,現在の言論人選抜制度をそのままにして単純に実習教育を強化 するという方式だけでは大学と言論界間の円滑な人材需給体系を確立することができない と言える。 「理論か実務か」という論争が実質的な変化をもたらさず空虚な議論だけを繰 り返してきた原因がここにあると思われる。ただ,言論社入社制度の問題点に対する学界 (5) 内部の批判や業界の自意識が全くなかったわけではない 。しかし,この制度は単にそれ 自体の客観性,効率性といった長所を越えて,社会学者ソン・ホグン(2006)が韓国人の 「心の習慣」とまで特徴付けた平等主義,そして,韓国社会に蔓延している学歴至上主義 と複雑に絡んでいるのでその改善が難しい。幸いに,このような状況が次第に変わってい る。そのような変化は何よりも 1990 年後半以後急激に変化したメディア環境からもたら されたと思われる。 2)変化するメディア産業と言論学教育の再構造化 1990 年代以後,放送の多チャンネル化が加速し,デジタル技術の拡散によってインター 脚. 4.一つの例として,フランスのジャーナリズム学校は修了者に最 初の就職を保障する方式をとっている。ESJ(Ecole supérieure de journalisme à Lille)は現場実務教育と特殊分野に当たる専 門言論人追加教育を実施し,一部の技術教育と専門教育の場合, 現場配置を通じて 9 ヶ月間実務修習を受けるようにプログラム を特化している。つまり,教育と就職を連結させた統合的カリ キュラムを運営しているのである(未来委員会,2009,192 頁)。 5.1996 年に韓国言論研究院の主催で開かれた「大討論会 - 韓国 の言論人専門教育」フォーラムで,学界は 「記者採用システム,. 注. このままでいいのか?」 というテーマで業界と論争を行ったこ とがある。当時討論会に参加した言論学科教授たちは言論社に 入社制度の改善を要求した反面,言論社の関係者たちは『言論 学の役割は「採用後」になって必要である』と言いながら,言 論学科出身の志願者を優待できないと述べ,両側は攻防戦を繰 り広げた。討論会は結局『言論学科出身の学生たちは中央言論 社にのみ目を向けるのではなく,出版や雑誌,ニュー・メディ アなど他の分野にも挑戦すべきである』というあいまいな結論 で終わってしまった(ジョン・ミン,1999)。. 195.

(15) メディア・コミュニケーション No.60 2010. ネットと携帯電話などの新しいメディアが発展し,既存の言論学教育は大きな挑戦に直面 するようになった。メディア産業と環境が全般的な再編過程に入ったからである。これは, 具体的には,既存の主要メディア(総合日刊紙,地上波放送)の漸進的な衰退と新しいデ ジタル・メディアを中心とした産業部門の成長をもたらした。それにより,新しい人材に 対する需要が相対的に増加し,採用制度にもある程度の変化が現れた。 言論学教育と関連して最も大きなメディア産業の変化は総合日刊紙と地上波放送の影響 力の衰退である。総合日刊紙の購読率と信頼度は最近 10 余年間劇的な下落を見せた。全 世帯当り新聞購読世帯の比率は 1990 年代後半 70%に近かったのに,今は 30%台に墜落し た。新聞産業の衰退はインターネットなどの新しい情報技術の躍進,広告メディアの多様 化,若い読者層の減少などと関連していると思われる。また,韓国言論財団が実施した 2008 年度「言論受容者意識調査」の結果によると,受容者たちが最も信頼しているメディ アとして KBS(31.1%),MBC(21.6%)などの放送局に次いでポータル・サイトである「ネ イバー(naver) 」が挙げられ,その次に「朝鮮日報」(4.5%)が選ばれた。1996 年から 2005 年の間,新聞社従事者数は 22,453 人から 13,313 人に,半分近く減って多次元的な「新 聞の危機」を実感させた。通信社従事者数は 764 人から 720 人に若干減った(ナム・ジェ イル,2006,17 - 19 頁)。地上波放送局の影響力もケーブル放送の持続的な成長と共に 少しずつ減っていると評価される。地上波チャンネルの視聴占有率は 2000 年 75.7%を記 録した以来,2006 年 60.3%に持続的に下落している。また,放送通信委員会が公表した「2008 年度放送事業者財産状況」を見ると,放送事業総売上額 8 兆 6,213 億ウォンの中で地上波 は 3 兆 3,971 億ウォンであり,全体の 39%に過ぎない。反面,ケーブル放送(SO)と放 送チャンネル事業者(PP)は各々 1 兆 6,795 億ウォン,3 兆 537 億ウォンを記録し地上波 をはるかに上回った。総合日刊紙と地上波放送の衰退傾向とともに新聞記者や放送記者あ るいは放送局プロデューサーという職種の人気も下落している趨勢である。比較的に高い 給料と社会的地位にもかかわらず,高い労働強度と長時間の不規則な労働時間のために 3D(Difficult, Dangerous and Dirty)職種とまで呼ばれる場合もある。一方,このような 状況の中,インターネットを基盤とする文化産業部門の再編が活発に行われている。イン ターネットが主要コンテンツの流通チャンネルとして浮上し,伝統的な文化産業は過去 10 年間萎縮あるいは停滞した。2006 年韓国の音盤およびビデオ・DVD 市場規模はインター ネットの影響で,1998 年に比べ各々 4 分の 1 と 2 分の 1 水準に縮小した。反面,2006 年 デジタル音楽市場は 3,562 億ウォン規模(音盤市場の 3 倍)であり,10 年前の音盤産業と 同じ位の市場規模に成長した。映画産業の売上額もまた,映画館を中心に,1996 年から 2004 年の間平均 19.6%の高い成長率を見せた(三星経済研究所,2008)。政府の政策的支 援の下,DMB,IPTV などの新しいメディアが市場に進入した。このような状況で 2009 年にはメディア兼営を許容する法案までが違憲論議はあったものの可決され,デジタル時 (6) 代の言論界と文化産業の地殻変動を予告している 。これはオンラインとオフラインを統 合するニュース,放送と印刷メディアを統合するコンテンツなどの新しくて多様なメディ ア商品とサービス生産を促進すると予想される。 産業のこのような変化は人材選抜においても変化をもたらしている。第一に,新しいメ ディア環境に適応できる実務経験と専門知識を備えた人材に対する需要が増加した。これ 脚. 注. 6.2009 年 7 月,国会で代理投票などの疑惑の中で形式上可決され たメディア関連法の主な改正内容は次のとおりである。①大企 業および日刊新聞の放送局持ち分所有許容:地上波放送 10%, 総合編成チャンネル 30%,報道チャンネル 30%まで新聞・放 送兼営許容,②外国資本の放送局持ち分所有許容:総合編成チャ. 196. ンネル 20%,報道チャンネル 10%まで許容,③地上波,総合 編成および報道チャンネルの個人最大株主の持ち分制限緩和: 30%から 40%に上限を調整,④大企業の衛星放送持ち分制限 廃止。.

(16) 韓国の言論学教育の 現況と課題 は経歴職採用の急増現象につながっている。特に,ニュー・メディアやコンテンツ産業に 新しく登場した中小規模の企業たちは経営上の変数が多く,教育費用などを節減しなけれ ばならない特性上,すでに技能的な資格要件を備えている人材を好む傾向がある。したがっ て,これからは経歴者を含む,専門能力を持っている人材を特定の選抜期間なしに募集す る「随時採用」構造がより拡散すると予想される。例えば,MBC は 2008 年,新入社員 の数を減らし,経歴職採用比率を 40%に増やしたのである(韓国言論学会未来委員会, 2009,31 頁) 。第二に,新しいメディア環境の中,「言論人」は従来のような「良い記事 を書く記者」の水準を越え,さまざまな資質を同時に要求されるようになった。これから は取材と写真,企画と制作,演出と編集を縦横無尽しながら必要に応じて自分の能力を発 揮する言論人が理想になっているのである。このように見ると未来委員会が現職の専門家 たちと行ったワークショップで整理した「未来の言論人像」は示唆に富んでいる。それは, つまり,一人でさまざまな役割を果たせるマルチ・プレーヤーで,インターネットの発展 速度に適応し,メディア産業の変化推移を理解し,ストリー構成能力,円満な人性,創意 性と人文学的想像力,語学能力などを備えた人物である。つまり,業界ではメディア産業 の変化を正確に把握し,それに能動的に対応できる人材を必要とするのである。このよう な要求に応えるためには言論学教育の具体的なカリキュラムの変化も切実な課題であると いうのが現職専門家たちの主張である。彼らによると,現在の言論学教育は三つの大きな 問題点を持っている。第一に,メディア環境は融合している反面,言論学教育は異なる細 部専攻とメディア別に個別化されており,各科目が有機的に連結されていないという点で ある。第二に,学際的な性格を帯びる言論学が実際には曖昧で制限的な専攻にのみ没頭す ることによって,多様で専門性のある見識を学生たちに提供できないという点である。第 三に,言論学が未だに「オールド・メディア」中心であり,記者やプロデューサーのよう な典型的な職業を理想化する教育カリキュラムを持っているという点である(イ・スヨン とファン・ヨンソク,2009)。. 6. おわりに. 以上のように韓国の言論学教育の歴史的発展過程,ソウルの主要大学の言論関連学科の カリキュラムにおける特徴,そして,最近のメディア環境変化とともに提起される言論学 教育の課題を検討してみた。上記の議論をふまえると,デジタル時代の言論学教育は次の ようないくつかの原則の上で再構造化されうると思われる。まず,大学別の特性化に基づ いた,ある種の役割分担が自然に行われることが望ましい。「理論中心」あるいは「実務 中心」があらゆる大学の言論学科に画一的に適用できる原則であるように思う思考方式自 体が最も大きな問題である。「理論か実務か」は特定の大学の言論学科が自律的に設定す る人材像の指向点によって異ならざるを得ない。ところが,そのような指向点を設定する 際,大学は現在よりはより具体的な専門領域を定める必要がある。現在のようにあらゆる 言論学科の卒業生たちが主要言論社の公開採用のみを狙って,そのための準備に集中させ る教育方式は確かに問題があり,変化し続けるメディア環境にも適合していない。各大学 の言論学科は地域要件,特定の産業との連携性,大学自体の性格,他の学科との協力可能 性,教授陣の特性などを考慮し,より分化し,専門化したほうがいいと思われる。実は, 今多元化している言論学関連学科名称はある程度このような趨勢を反映していると思われ る。次に,人文学的理論教育と多様な基本素養教育は,たとえ実務教育中心の大学におい ても看過されてはならない。これは大学が,単純に技能を伝授する学院と明確な差別性を 確保する地点であり,デジタル時代の本当の専門家の養成のためにも必需的な部分である。 このようなカリキュラムは,ある程度,言論学科間共通性を持ちうるので,そのために学. 197.

(17) メディア・コミュニケーション No.60 2010. 会がカリキュラムの研究と開発,勧奨の役割を果たすこともできると思われる。最後に, 言論学教育がメディア分野の専門家だけではなくデジタル時代の徳性のある市民を育てる ことにもその使命があることを忘れてはならない。言論学科卒業生たちが全員メディア産 業の従事者になることはなく,また,それが必ずしも理想的であるとも言い難い。しかし, デジタル環境がメディアを社会生活の中心に位置付けた状況の中で,彼らがどのような職 業に従事するかにかかわらず,積極的なメディア受容者,消費者,さらには,生産者(た とえば,ブログやユーチューブ)になることが予想される。このような観点から言論学教 育は市民たちの「デジタル・メディア・リテラシー(digital media literacy)」を向上さ せることにも力を注ぐべきであろう。 ●参 考 文 献 ナム・ジェイル(2006)『言論人人力需給と教育需要』,ソウル:韓国言論財団 韓国言論学会未来委員会(2009)『言論学教育の道を問う』,コミュニケーション・ブックス 三星経済研究所(2008)『インターネットとメディア産業の再編』,三星経済研究所 ソン・ウチョン(2001)『言論学教科目現況資料集』,韓国言論学会 ソン・ホグン(2006)『韓国の平等主義,その心の習慣』,三星経済研究所 韓国言論財団(2008)『2008 言論受容者意識調査』,韓国言論財団 カン・ミョング(2009)「序章:人性と知識との統合を指向する言論学教育のために」,『言論学教育の道を問う』, コミュニケーション・ブックス,1-8 頁 カン・ミョングとユン・サンギル(2006)「言論学教育における実務と理論の二分法を越えて:ソウル大学言論学 教育 30 年を中心に」,『言論情報研究』,42 巻 1 号,55-91 頁 キム・ドクマン(2005)「言論界採用動向と望ましい教育方案」,ソウル:言論学会学術大会,529-541 頁 キム・ボクス(2009) 「イム・グンスとチェ・ジュンの言論史研究」 ,ソウル:韓国言論学会 2009 春季定期学術大会 キム・ソンへ(2009)「韓国の教育の変化模索」,『言論学教育の道を問う』,コミュニケーション・ブックス,259283 頁 ソ・ジョンウ(1999)「韓国の言論学の過去と現在」,韓国言論学会 24-1 次争点と討論,1-6 頁 ヤン・スンモク(1996)「韓国の言論学の未来と言論学教育の方向」,『言論情報研究』,33 巻,11-17 頁 ヤン・スンモク(2009)「キム・ギュファン「社会科学としてのコミュニケーション研究」」,ソウル:韓国言論学 会 2009 春季定期学術大会 イ・カンス(1999)「韓国の言論学教育の現況と問題点」,2001 韓国言論学大会共同シンポジウム,5-25 頁 イ・サンチョル(2009a)「言論学 50 年の省察」,『東西言論』 第 12 集,1-35 頁 イ・サンチョル(2009b)「クァク・ボクサンの新聞学理論」,ソウル:韓国言論学会 2009 春季定期学術大会 イ・スヨンとファン・ヨンソク(2009)「メディア業界が望む人材像」,『言論学教育の道を問う』,コミュニケー ション・ブックス,10-39 頁 イ・アラム(2009)「最近 1 年間の言論関連学科教授新規任用現況」,『月間 新聞と放送』,4 月号,116-119 頁 イ・ジェギョン(2005)「韓国のジャーナリズム教育:どう変えるべきか」,『韓国言論学報』,第 49 巻 3 号,5-29 頁 イ・ジェジン(2009)「ジャン・ヨン教授の言論法制研究成果に対する再評価」,ソウル:韓国言論学会 2009 春季 定期学術大会 ジョン・ミン(1999)大討論会「韓国の言論人専門教育」,『新聞と放送』,338 号,68-71 頁 チャ・ベグン(1997)「情報化時代における言論学教育の方向と課題」,『ジャーナリズム批評』,22 号,44-46 頁. (李 相吉 延世大学コミュニケーション大学院) (訳:金鐵鎔 慶應義塾大学大学院社会学研究科研究生). 198.

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