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Kankokujin ga Nihon o fīrudowāku shi minzokushi o kaku toiukoto : Kankokujin ni yoru Nihon shakai no jinruigakuteki kenkyū to sono ninshikironteki kōsatu

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Academic year: 2021

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韓国人が日本をフィールドワークし、 民族誌を書

くということ −韓国人による日本社会の人類学的

研究とその認識論的考察−

著者

金 良柱

雑誌名

JAPANESE STUDIES AROUND THE WORLD 2001 −コリ

アにおける日本研究の現在−

8

ページ

81-108

発行年

2002-07-31

その他のタイトル

Kankokujin ga Nihon o firudowaku shi

minzokushi o kaku toiukoto: Kankokujin ni yoru

Nihon shakai no jinruigakuteki kenkyu to sono

ninshikironteki kosatu

(2)

韓 国 人 が 日本 を フ ィー ル ドワ ー ク し、

民 族 誌 を書 く と い う こ と

一韓国人による日本社会の人類学的研究とその認識論的考察一

金 良 柱 培材大学校 ロ 日中国学 部 日本学科教授 1.序 民 族 誌 的 あ る い は民 族 誌 学 的(ethnographic)研 究 とい うの は 、 広 い 意 味 で い う 人類 学 的研 究 の 方 法 論 的 な側 面 か らみ る と、 次 の よ う に定 義 で き よ う。 自分 が属 す る 自文 化 と は異 な る異 文 化 あ る い は 他 文 化 を理 解 す る た め に 、 そ こへ 足 を 入 れ 長 期 滞 在 しな が ら現 地 調 査=フ ィー ル ドワ ー ク を行 う。 そ の 後 自文 化 に 回帰 し、 そ の構 成 員 を対 象 に 文 化 の 解 析 誌 と して の民 族 誌 を記 述 す る研 究 領 域 で あ る と。 本 論 文 は こ の よ うな 日本 社 会 の 民 族 誌 的研 究 過 程 即 ち 日本 社 会 を フ ィー ル ドワ ー ク し、 民 族 誌 を記 述 す る過 程 の 中 で遭 遇 し考 え た こ と を 自己 回 帰 的 に 考 察 して い る。1983年 日本 社 会 ・文 化 の 人 類 学 的 理 解 の た め の 渡 日以 降1992年 帰 国 す る ま で の 筆 者 が 日本 の 中 で行 っ た 一 連 の 民 族 誌 学 的 過 程 、 つ ま り コー ス ワ ー ク に継 ぐ フ ィー ル ドワー ク そ し て民 族 誌 記 述 作 業 それ 自体 に照 ら して み る作 業 で あ る1)。 し た が っ て`日 本社 会 の フ ィー ル ドワー ク認 識 論 とい うふ う に 命 名 して もい い と思 わ れ る 。 本 研 究 作 業 が持 つ 意 味 は概 略 的 に次 の よ うに整 理 で き よ う。 まず 、 日本 社 会 ・文 化 を対 象 に した 民 族 誌 的 研 究 に 対 す る 自己 反 省 的 な省 察 作 業 の 必 要 性 とい う意 味 付 け で あ る 。1980年 代 か ら始 ま っ た韓:国' 人 に よる 日本 社 会 の フ ィー ル ドワー ク作 業 以 来現 在 まで 約20年 に近 い 研 究 蓄 積 が で き、 こ れ に対 す る省 察 的 作 業 の 必 要 な 時 点 で あ る と

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の 認 識 で あ る。 一 方 、 日本社 会 の研 究 に携 わ って きた研 究 者 は そ れ ぞ れ 異 な る コ ー ス ワー ク過 程 と 関心 領 域 そ して 研 究 対 象 地=フ ィー ル ドを選 択 して い る。 これ は フ ィー ル ドワー ク と民 族 誌 作 成 に も相 違 す る特 徴 的性 格 を露 呈 す る こ とに な る 。 この よ うに 、 日本 を`人 類 学 す る'人 々 と そ の作 業 に対 す る認 識 論 的 検 討 が 必 要 な時 期 で あ る との認 識 か ら、 そ して まず 個 人 的 な 次 元 か ら 自己 省 察 的 作 業 が 必 要 で あ る との 認 識 か ら この 論 文 は 出発 して い る 。 これ が 現 在 フ ィー ル ドあ る い は留 学 地 か ら人類 学 者 と して の 通 過 儀 礼 を終 え 、 自国 に 回帰 して 活 躍 して い るい わ ゆ る1世 代 日本 研 究 者 だ け で は な く、 フ ィー ル ドワー ク過 程 中 の研 究 者 そ して 日本 現 地 で 活 躍 中 で あ る研 究 者 に もそ の領 域 的 拡 大 が 可 能 な 作 業 と して提 案 的 性 格 と意 味 付 与 が で き る と思 う。 また 、 日本 社 会 の 中 で どの よ う な経 験 を して い るか に つ い て 関心 を も って い る 日本 人研 究 者 に も勿 論 興 味 を引 くテー マ に な るで あ ろ う。 この 一 連 の 作 業 は今 後 日本 社 会 ・文 化研 究 の た め の 発 展 的模 索 で あ り、 同 時 に韓 国人 類 学 の 量 的 ・質 的 蓄 積 に も繋 が る基礎 作 業 と して位 置 づ け る こ とがで きよ う。 以 下 本 論 に お い て は 若 干 の 研 究 史 的検 討 と と も に、 こ れ に 関連 す る問 題 群 を扱 う こ とに す る2)。`日 本 を人 類 学 す る'つ ま りフ ィー ル ドワ ー ク し民 族 誌 を 書 く とい う過程 の 中 で 生 じる 問 題 に は どの よ う な もの が あ る だ ろ うか 。 特 に韓 国 人 が そ れ を行 う場 合 に は どの よ う な 問 題 に ぶ つ か る こ と に な る の か 。 こ の よ うな 質 問 に対 す る 答 え を 引 き出 す た め に まず 韓 国 人 に よ って 行 わ れ て きた 日本 社 会 に 対 す る 民 族 誌 学 的研 究 の 現 況 か ら検 討 す る こ と にす る。

2.日

本社 会の民族誌学 的研究

まず 、 日本 社 会 を対 象 に した民 族 誌 的研 究3)を 韓 国 人 に よ っ て 行 わ れ た作 業 に 限 定 す る とす れ ば 、前 提 条 件 と して 研 究 者 の世 代 と関 連 し簡 略 な が ら点 検 が 必 要 で あ ろ う。 こ れ は研 究 の 流 れ を把 握 す る た め の 基礎 的 点 検 につ なが る か らで あ る。 も し 日本 社 会 に対 す る研

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究 を 民 族 誌 的研 究 方 法 論 とい う狭 い 領 域 か ら離 れ 全 方位 的 に範 囲 を 拡 張 し、 時 間 的 に は20世 紀 初 め まで 拡 大 す れ ば 、 この 作 業 に 従 事 し て きた 韓 国 人 は 大 体3世 代 に 区 分 けす る こ とが で きる 。 こ れ は 日本 と関 連 した韓 国 社 会 の 国 籍 変 化 に 従 っ た 分 類 で あ る とい う点 を先 に 指 摘 して お く。 こ れ は 日本 社 会 を 対 象 に す る場 合 、 相 違 す る 経 験 に よ る異 な る視 覚 の存 在 可 能性 を提 示 す る こ と にそ の 目的 が あ る。 こ の よ う な基 準 に よ る第1世 代 は朝 鮮 人 と して生 まれ 、 途 中 日本 人 そ して 韓 国 人 に な っ た 人 で あ る 。 これ らは 日本 に併 合 され た1910 年8月22日 以 前 に 出 生 した 人 で2001年 現 在90歳 以 上 に な っ て い る。 第2世 代 は最 初 は 日本 人 と して 生 まれ た が 後 韓 国 人 に な っ た 人 々 で あ る 。 これ らは 日本 国 民 に な っ た1910年8月22日 か ら日本 国 民 とい う国 籍 か ら抜 け 出 た1945年8月14日 の 間 に生 ま れ た 人 々で90歳 以 下 55歳 以 上 が これ に あ た る。 第3世 代 は大 韓 民 国 の 成 立 と と もに 韓 国 人 の 国 籍 で 生 まれ た 人 で 、 解 放 され た45年8月15日 か ら現 在 まで の 出生 者 で あ る55歳 以 下 の 人 々 が これ にあ た る% この よ うな 世 代 分 類 か らみ る と、 韓 国 人 に よ る 日本 の 民 族 誌 学 的 研 究 は何 とい っ て も第3世 代 に よ っ て本 格 的 に始 ま って い る と い っ て も無 理 で は な い だ ろ うJ)。事 実 上 、 韓 国 人 を 含 め た ア ジ ア 人 に よ る 長 期 フ ィー ル ドワー ク に基 づ い た 日本 社 会 ・文化 の 民 族 誌 的 研 究 は 、80年 代 に 入 っ て か ら始 ま った とい え よ う6)。80年 代 末 ま で 韓 国 人 が 行 っ た 人 類 学 的 日本 研 究 の 現 況 を韓 国 文 化 人 類 学 誌 に掲 載 さ れ た論 文 を中 心 に 検 討 した崔 吉 城 は次 の よ う に指 摘 してい る。 韓 国 の 人 類 学 に お い て 、外 国 を調 査 して研 究 す る とい う伝 統 は ほ ぼ皆 無 に 等 しい 。 異 国民 族 学 と して 、 人類 学 を受 け 入 れ た 韓 国 の 人類 学 は 、 創 立30周 年 を過 ぎた現 在 に お い て も異 国社 会 で の フ ィ ー ル ド調 査 資 料 を基 礎 に して 、 理 論 化 す る と こ ろ まで はい っ て い な い 。 … …(中 略)… … 最 近 に な っ て 少 ない なが ら、 台 湾 、 日 本 な どで 人 類 学 的 調 査 が 行 われ て い る こ と を耳 に して い るが 、 そ の 結 果 が 韓 国 内 で 出 版 発 表 され て い な い の で 、 そ の事 情 は把 握 し

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に く い 。 民 俗 学 で は 韓 国 民 俗 の 日本 へ の 伝 播 を 探 る た め に 日本 民 俗 に 関 心 を も ち 、 短 期 間 で あ る が 、 現 地 調 査 が 行 わ れ て い る 。 (中 略)… そ れ に 比 べ 人 類 学 の 調 査 研 究 は 非 常 に 少 な い 。 「韓 国 文 化 人 類 学 」 既 刊20巻 で 海 外 を対 象 と し た 論 文 は 、 …(中 略)大 部 分 は 本 格 的 な 実 地 調 査 に 基 づ い て は い な い 。 以 上 の う ち 日 本 に 関 す る 研 究 は 李 光 圭 、 文 玉 杓 、 崔 吉 城 の 論 文 だ け で あ る 。(崔 1989:382-383) こ の よ う な 指 摘 に つ づ き、 李 光 圭(1981,1983)が 行 っ た 作 業 は 在 日 韓 国 人 に 関 す る 研 究 で あ り、 日 本 ・日本 人 に 関 す る 直 接 的 な 研 究 で は な い こ と を 指 摘 して い る 。 一 方 、 崔 吉 城(1986)に つ い て は 、 日 本 の 祖 霊 観 と韓 国 の 祖 先 観 の 比 較 と い う面 に お い て 、 ま た 金 宅 圭 (1982)に つ い て は 、 日 本 の 東 北 地 方 の 同 族 部 落 と韓 国 の 安 東 地 方 の 河 回 同 姓 部 落 の 比 較 な ど 、 韓 日 両 国 の 比 較 研 究 と い う面 に お い て 成 果 を あ げ て い る こ と を 述 べ て い る 。 一 方 、 こ の よ う な 一 連 の 研 究 と は 差 別 性 を も っ て い る 作 業 と し て 文 玉 杓(文1983)だ け が 、`長 期 間 に わ た る 本 格 的 な 現 地 調 査 を 通 し て 行 っ た 社 会 人 類 学 的 研 究 と し て 貴 重 な も の で あ る(崔1989:382)'こ と を 認 め て い る 。 こ れ に 付 け 加 え 、 最 近 活 発 に な っ た 若 い 世 代 に よ る 今 後 の 日 本 研 究 に 大 き な 貢 献 を 期 待 し て い る と 結 ん で い る 。 以 上 言 及 し た 以 外 に も広 い 意 味 に お け る 日 本 学 の カ テ ゴ リ ー に 入 る 日 本 研 究 者 は 、 様 々 な 分 野 に お い て 研 究 を 行 っ て お り、 そ の 蓄 積 も少 な く な い(司 翌 層1980)。 ま た 、 指 摘 の と お り 、 民 俗 学 側 か ら の 比 較 民 俗 の 観 点 で 日本 を取 りあ つ か っ て い る 研 究 も 多 少 あ る 。 し か し、 長 期 フ ィ ー ル ド ワ ー ク に 基 づ い た 本 格 的 な 日 本 社 会 の 人 類 学 的 研 究 は 、1980年 代 に 入 っ て か ら よ う や く 始 ま っ た と い っ て も 過 言 で は な い 。 そ の 嚆 矢 は 、 文 玉 杓 と い え る だ ろ う 。 文 玉 杓 は 、 留 学 先 の 英 国 か ら1981年 渡 日 し、 群 馬 県 片 品 村 花 咲 で 約1年 半 の フ ィ ー ル ドワ ー ク を 行 っ た。 彼 女 は こ の 地 域 の 観 光 産 業 発 達 を 中 心 に し て 、 日本 の 農 村 経 済 発 展 に 伴 う 文 化 変 動 の 過 程 に 焦 点 を あ て て 考 察

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し 、 そ の 結 果 は 博:士論 文 と し て ま と め ら れ(Moonl984)、 後 に 単 行 本 と し て 国 外(Moonl989)と 国 内({}薯 丑1994)で 出 版 さ れ て い る 。 留 学 先 か ら帰 国 し た 後 も 、 日 本 と 韓 国 に お け る 女 性 の 社 会 参 与 類 型 の 比 較 研 究 及 び 現 代 日 本 社 会 に お け る 文 化 変 動 と 伝 統 の 再 認 識 の 問 題 な ど に 関 心 を も っ て 活 発 な 日 本 研 究 を 行 っ て い る 。 彼 女 以 降 一 群 の 研 究 者 が 後 を 継 い で お り、 彼 ら を 長 期 フ ィ ー ル ド ワ ー ク に 基 づ く民 族 誌 的 日 本 研 究 の 第1グ ル ー プ と い え よ う 。 そ れ に は い く つ か の 下 部 類 型 が あ り 、 そ の 一 つ は80年 代 を 通 し て 日 本 で コ ー ス ワ ー ク と フ ィ ー ル ドワ ー ク を 行 っ た サ ブ グ ル ー プ 、 次 は ア メ リ カ で コ ー ス ワ ー ク を し な が ら 日 本 を フ ィ ー ル ド に し た グ ル ー プ 、 あ と は 韓 国 国 内 で コ ー ス ワ ー ク を し た 後 日本 で フ ィ ー ル ド ワ ー ク を 行 っ た ケ ー ス で あ る 。 ま ず 日 本 留 学 派 と し て の 黄 達 起 は 、 福 島 県 田 村 郡 瀧 根 町 で85年 と 87年 に 約1年 間 フ ィ ー ル ドワ ー ク を 行 っ た 。 贈 与 交 換 を 中 心 に 整 理 さ れ た 民 族 誌 は 一 橋 大 学 に 学 位 論 文 と し て 提 出 さ れ(黄 達 起1990)国 内 で は 「望 薯 潮 杆 司 斗 旦 暑(日 本 の 社 会 と 交 換)」(1992)と い う タ イ トル で 翻 訳 紹 介 さ れ た 。 金 良 柱 は1987年 か ら88年 ま で の 約2年 間 高 知 県 の 四 万 十 川 下 流 に あ る 中 村 市 を 中 心 に フ ィ ー ル ド ワ ー ク を 行 っ た 。 地 域 社 会 の 祭 り を 通 じて 現 代 の 地 域 社 会 の 動 態 を 捉 え よ う と 試 み た 民 族 誌 は 東 京 大 学 の 学 位 論 文 と し て 提 出 さ れ た(金 良 柱 1994)。 崔 仁 宅 は 、 三 重 県 鳥 羽 市 菅 原 で1987年4月 か ら1988年9月 ま で 親 族 と社 会 組 織 を 中 心 に フ ィ ー ル ド ワ ー ク を 行 っ た 。 村 落 共 同 体 の 社 会 組 織 及 び 象 徴 論 的 空 間 、 死 者 祭 司(崔 仁 宅1989)な ど に 関 心 を も っ て 研 究 を続 け て い る 。 ア メ リ カ 留 学 組 の 鄭 炳 浩 は1987年 か ら1989年 ま で の 数 年 間 、 日 本 の 初 期 教 育 過 程 を み る た め 関 西 地 方 を 中 心 に 各 種 の 保 育 園 を フ ィ ー ル ド ワ ー ク し た 。 後 に 比 較 研 究 の た め そ の 対 象 地 域 を 北 海 道 と 沖 縄 ま で 広 げ 、 そ の 民 族 誌 は イ リ ノ イ 大 学 に 学 位 論 文 と し て 提 出 さ れ た (Chungl992)。 韓 敬 九 は1988年 か ら1989年 ま で 、 東 京 板 橋 区 成 増 の 印 刷 工 場 で フ ィ ー ル ドワ ー ク し た 成 果 を ハ ー バ ー ド大 学 に 学 位 論 文

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と し て 提 出 し(Hanl991)、 後 に 「司 杆 弖 刈q71唱(会 社 と し て の 企 業)」(1994)と い う 単 行 本 を 国 内 で 出 し て い る 。 権 粛 仁 は90年 か ら91年 の 間 に 会 津 若 松 で フ ィ ー ル ドワ ー ク し た の を 地 方 の ア イ デ ン テ ィ テ ィ 問 題 を 地 域 に お い て の 言 説 と そ の 実 践 と い う テ ー マ で 民 族 誌 を ま と め て い る 。 そ の 結 果 は ス タ ン フ ォ ー ド大 学 に 学 位 論 文 と し て 提 出 し(Kweonl994)、 の ち に 「現 代 日 本 社 会 と 地 方 の ア イ デ ン テ ィ テ ィ 」(1996)と い う タ イ トル で 日 本 国 内 で 翻 訳 出 版 し て い る 。 洪 ソ ン フ ッ プ は 韓 国 国 内 派 で あ る と い え よ う 。91年 か ら92年 の 間 栃 木 県 を フ ィ ー ル ドに し 農 業 形 態 を 中 心 と し て ま と め ら れ た 民 族 誌 は ソ ウ ル 大 学 に 学 位 論 文 と し て 提 出 さ れ た(菩 想 吾1995)。 こ れ ら 以 外 に も 日 本 で フ ィ ー ル ドワ ー ク を 行 っ た が ま だ そ の 結 果 が 出 て い な い 第1世 代 群 に は 李 チ ン ヨ ン が い る 。 彼 は89年 か ら 沖 縄 研 究 を 中 心 に 日本 国 内 で 活 躍 し て い る 。 こ れ ら 第1グ ル ー プ に つ ぐ第2グ ル ー プ に も 一 連 の 研 究 者 が 日 本 の 中 で コ ー ス ワ ー ク あ る い は フ ィ ー ル ドワ ー ク を 行 っ て い る 最 中 で あ る 。 そ の 作 業 が 終 わ っ て 帰 国 し て い る 林 慶 澤 は 千 葉 県 佐 原 市 で の 都 市 化 過 程 を 民 族 誌 に ま と め て い る (林 慶 澤1999)。 ま た 、 日 本 留 学 派 の 中 に は 日 本 民 俗 学 を 専 攻 し 、 韓 日 比 較 民 俗 分 野 で 研 究 領 域 を も つ 研 究 者 グ ル ー プ も い る7)。 そ の 他 に も 、 国 内 か ら直 接 渡 日 す る ケ ー ス は 勿 論 の こ と、 ア メ リ カ に 留 学 し て い る 人 の 中 に も 日 本 を フ ィ ー ル ド と し て 選 ぶ 傾 向 は 最 近 強 くな っ て お り 、 当 分 続 く と 思 わ れ る 。 そ の 理 由 と し て は 、 地 理 的 ・歴 史 的 関 係 は 深 い が 現 在 に お い て 学 問 的 蓄 積 が な い こ と に 対 す る 反 省 と と も に 、 日 本 が 異 文 化 理 解 の 先 決 の 対 象 で あ り最 良 の 対 象 で あ る と い う こ と を あ げ る こ と が で き よ う 。 ま た 、 言 語 と生 活 の 面 に お い て 比 較 的 に 負 担 の 少 な い 現 実 的 な 点 も 作 用 し て い る よ う に 見 え る 。 以 上 と の 関 連 で 日本 研 究 者 が ど の よ う な コ ー ス ワ ー ク と フ ィ ー ル ド ワ ー ク 過 程 を 経 路 し て い る か に つ い て は 別 稿 を 設 け て 考 察 す る 必 要 が あ る こ と だ け を 記 して お く。

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3.民

族誌学 的作 業 にお ける問題群

こ の`日 本 フ ィ ー ル ド ワ ー ク 認 識 論'は 事 実 上 大 き く三 つ の 時 間 的 領 域 か ら構 成 さ れ る 。 そ の 第 一 は83年4月 か ら87年5月 ま で の 約 4年 間 で あ る 。 こ の 期 間 は 東 京 の 留 学 先 大 学 と 市 内 の い くつ か の 居 住 地 が 中 心 の 生 活 領 域 に な っ て い た 。 こ の 時 期 は コ ー ス ワ ー ク 期 間 で あ る と 名 づ け よ う。 二 番 目 は87年5月 か ら89年3月 ま で の 約2年 間 で 、 こ の 期 間 中 に 高 知 県 の 四 万 十 川 流 域 を 主 な 生 活 領 域 に し な が ら本 格 的 な フ ィ ー ル ド ワ ー ク が 行 わ れ た 。 三 番 目 は89年4月 か ら91 年6月 ま で の 約2年 あ ま り の 期 問 が こ れ に あ た り、 デ ス ク ワ ー ク 即 ち 民 族 誌 の 作 成 に 使 わ れ た 時 期 で あ る 。 フ ィ ー ル ドか ら 東 京 に 戻 っ た の で 生 活 の 中 心 領 域 は 一 番 目 の 時 期 と 同 じ に な る8)。 こ の よ う な 各 過 程 別 に 生 じ る 問 題 点 は 多 様 で あ り各 々 が 重 要 な テ ー マ に な る 。 し か し 、 何 よ り も 重 要 で あ り認 識 論 の 対 象 と し て 検 討 す べ き 必 要 性 と 可 能 性 の あ る 問 題 群 は 次 の よ う な も の で あ る9)。 (1)`後 進'と`先 進'あ る い は`未 開'と`文 明'の 問 題 近 代 人 類 学 の 伝 統 は 、 西 欧 の 文 明 社 会 が 世 界 各 地 の 未 開 社 会 を 研 究 す る こ と で あ っ た 。 と こ ろ が 、 そ の 逆 の ケ ー ス が 増 え て い る 。 誤 解 を 避 け る た め こ こ で は`未 開'の 代 わ り に`後 進 国'あ る い は `開 発 途 上 国'に 、 ま た`文 明'の 代 わ りに`先 進 国'に 用 語 を 変 え た 方 が い い か も知 れ な い10)。つ ま り 開 発 途 上 国 の 人 類 学 者 が 先 進 国 を 研 究 対 象 に し 始 め て い る の で あ る 。 韓 国 人 に よ る 日本 社 会 の 研 究 が ま さ に そ れ に 該 当 す る 。 こ の 場 合 、 即 ち 後 進 国 か ら先 進 国 を フ ィ ー ル ドワ ー ク す る 場 合 如 何 な る 問 題 点 が 生 じ る の か 。 ま ず 一 つ は 欧 米 人(い わ ゆ る`外 人')が 日 本 社 会 を フ ィ ー ル ドワ ー ク す る こ と は、 韓 国 人 を 含 め た 非 西 欧 人(`外 国 人')が 行 う そ れ と は い ろ ん な 面 に お い て 違 う と い う点 は 十 分 予 見 で き る こ とで あ る 。 調 査 者 が フ ィ ー ル ドに 足 を 入 れ る と き か ら そ の 過 程 す べ て に お い て

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フ ィ ー ル ドワ ー カ ー 自 身 の 心 構 え は 勿 論 、 住 民 の 反 応 ・態 度 ・待 遇 な ど 様 々 な 面 で 微 妙 に 違 っ て く る の で は な い か 。 こ れ と は 若 干 異 な る が 韓 国 と 日 本 の 植 民 一 非 植 民 的 歴 史 の 過 程 か ら 生 じ る 問 題 も あ る 。 例 え ば 韓 国 人 に 対 す る 態 度 は 世 代 別 に 違 っ て く る が 、 韓 国 あ る い は 韓 国 人 に 対 す る 認 識 が 既 に あ る 程 度 出 来 上 が っ て い る 場 合 も あ る1"。 従 っ て 、 何 も 先 入 観 を 持 っ て い な い 対 象 と の 接 触 で は な く 、 そ れ な りの 各 自 の 観 を 持 っ て い る 限 り、 お 互 い に 価 値 中 立 的 な 立 場 を と る と い う こ と は 幻 想 で あ り虚 構 で あ る 。 む し ろ そ の 側 面 を 西 欧 人 に よ る フ ィ ー ル ドワ ー ク と は 違 っ て 相 対 化 さ せ 、 積 極 的 に 捉 え て い く必 要 が あ る 。 し た が っ て フ ィ ー ル ドワ ー ク の 段 階 で は 勿 論 民 族 誌 を 書 く段 階 に お い て も 、 自 分 に 内 在 す る 韓 国 人 性 を 丸 出 し に す る こ と を 躊 躇 す る こ と に な る 。 コ ー ス ワ ー ク 地 は 西 欧 で 日 本 を フ ィ ー ル ドに 選 ん だ 韓 国 人 人 類 学 者 か ら よ く 聞 け る"調 査 の 時 に は 日 本 語 よ り 英 語 を 使 っ た ほ う が 有 利 で 効 果 が あ る"と い う 発 言 は ま さ に こ れ を 反 映 す る い い 例 で あ ろ う 。 ま た エ ス ノ グ ラ フ ィ ー を 書 く段 階 で も 、 自 分 の 理 論 的 背 景 と 枠 組 み と し て 西 欧 的 パ ラ ダ イ ム に 意 識 ・無 意 識 的 に 影 響 を 受 け る こ と に な る だ ろ う。 だ か ら 後 で エ ス ノ グ ラ フ ィ ー の 中 で 筆 者 自 身 が 見 え な く な っ て し ま う と い う 指 摘 を 受 け る こ と に な る 。 他 の 理 由 も あ ろ う が 、 自 分 を 出 す と い う こ と は そ れ ほ ど簡 単 な こ と で は な い の で 、 結 局 コ ー ス ワ ー ク 中 に 慣 れ た 枠 組 み に 自 分 を 容 易 く入 れ た 結 果 で あ る こ と を 意 味 す る 。 こ れ は コ ー ス ワ ー ク の 問 題 と と も に 、 `後 進'が`先 進'を フ ィ ー ル ドワ ー ク す る と こ ろ か ら くる 無 視 で き な い 問 題 で あ り、 こ れ か ら も 同 じ状 況 に 直 面 す る ケ ー ス が 増 え る に つ れ 深 刻 に 検 討 す る 必 要 が あ る 問 題 で あ ろ う 。 (2)`日 本 民 俗 学'と 現 在 ・変 化 の 問 題 日 本 社 会 ・文 化 を 民 族 誌 学 的 に 研 究 し よ う と す る 韓 国 人 が 一 度 は 対 面 す る も の の 一 つ に`日 本 民 俗 学'と い う領 域 が あ る 。 日 本 に と っ て の ア ウ トサ イ ダ ー の す べ て に 通 用 す る 話 で あ る か も 知 れ な い

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が 、 こ こ で は 一 応 韓 国 人 に 限 定 す る こ と に し よ う 。 同 時 に い ず れ 一 度 は 出 会 う と の 表 現 を し た が 、 日本 と 遭 遇 す る そ の 時 か ら避 け る こ と の で き な い と表 現 し た ほ う が 正 し い か も知 れ な い 。 日 本 民 俗 学 と い う 存 在 は 、 日 本 と い う 現 場 で 作 業 を 行 う と き に よ り 明 確 に 目 の 前 に 現 れ る 。 日 本 と い う 現 場 で 出 会 う 日 本 民 俗 学 は 、 一 種 の 洪 水 あ る い は 泥 沼 か も 知 れ な い 。 量 的側 面 に お い て は 洪 水 で あ る と い え 、 質 的 側 面 に お い て は 泥 沼 で あ る と い え よ う 。 い っ た い 韓 国 人 フ ィ ー ル ドワ ー カ ー に 日 本 民 俗 学 は ど ん な 影 響 を 及 ぼ し て い る の か 。 フ ィ ー ル ドに 入 る 前 に 私 が 用 意 し た 準 備 物 の 中 に は 、 「日 本 民 俗 学 調 査 ガ イ ドブ ッ ク 」 と い う も の が あ っ た 。 こ の 本 は 日 本 で 地 域 調 査 を し よ う と す る 場 合 、 何 を ど う い う ふ う に す れ ば よ い の か と い う 説 明 か ら 具 体 的 な 質 問 項 目 に 至 る ま で 細 か くか つ 親 切 に ガ イ ド し て く れ て い る 。 私 も こ の 本 に 書 か れ て い る 調 査 項 目 や 質 問 項 目 に そ っ て 調 査 を す す め て い く こ と に し て い た 。 と こ ろ が 、 フ ィ ー ル ド に 入 っ て か ら間 も な くそ れ が そ れ ほ ど役 に 立 た な い も の で あ る こ と に 気 付 き は じめ た 。 そ の ガ イ ドブ ッ ク に 載 っ て い る 調 査 ・質 問 項 目 は 、 昔 の も の の 中 で 今 も残 っ て い る も の が 何 か を 調 べ る に は 有 効 で あ っ た か も しれ な い 。 ま た 、 そ こ に 書 い て あ る 質 問 を 地 元 の 物 知 り や 年 寄 り に ぶ つ け た ら 答 え て く れ る こ と が で き る か も 知 れ な い 。 し か し 、 目 の 前 に 広 が っ て い る フ ィ ー ル ドの 現 実 を 捉 え て い く の に 、 こ れ ら の 質 問 項 目 は 時 代 後 れ の もの の よ う に 思 わ れ て 仕 方 が な か っ た 。 私 が フ ィ ー ル ドで 目 の 当 た り に し た 現 実 は 、 民 俗 学 者 の 報 告 書 に 記 述 さ れ て い る よ う な 情 景 、 ま た そ れ に よ っ て 形 成 さ れ た 私 の イ メ ー ジ を く つ が え す の に 充 分 で あ っ た。 礼 服 に 身 を 包 ん で 厳 粛 な 身 ご な し で 儀 礼 を 行 う 神 官 は 、 同 時 に ジ ー ン ズ を は い て ス ナ ッ ク で カ ラ オ ケ を 歌 っ て い た 。 普 段 着 姿 の 神 輿 担 ぎ な ど は 、 映 像 で み て 抱 い て い た イ メ ー ジ 即 ち 伝 統 的 な 衣 装 と 装 飾 で 飾 っ て い る そ れ を 徹 底 的 に 裏 ぎ る も の で あ っ た 。 つ ま り 日 本 民 俗 学 で 描 い て い る 世 界 、 そ れ を 読 む こ と に よ っ て 意 識 ・無 意 識 的 に 形 成 さ れ た 絵 の よ う な イ メ ー ジ

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に 対 す る 徹 底 的 な 裏 ぎ り で あ っ た 。 無 論 最 初 か ら そ れ を 信 じ 込 ん で い た わ け で は な い しそ う で も な い だ ろ う と は 思 っ て い た が 、 直 接 フ ィ ー ル ドで そ の よ う な 場 面 と 対 面 し た 時 の 戸 惑 い は 大 き か っ た 。 フ ィ ー ル ドワ ー ク を 進 め て い く に つ れ 、 日 本 民 俗 学 が 描 い て い る 世 界 つ ま り秩 序 整 然 で 、 童 話 的 で 、 ノ ス タ ル ジ ッ ク で 、 靜 態 的 な 、 郷 愁 を 呼 び 起 こ す も の は す で に な く、 文 献 の 中 に だ け 存 在 し て い る こ と が 段 々 確 実 に な っ て き た の で あ る 。 そ こ で み つ け た 出 口 は 、 未 練 な く こ の ガ イ ドブ ッ ク を 捨 て る こ と で あ る 。 そ れ に よ っ て 作 ら れ て い た 幻 想 を 求 め さ ま よ う こ と を や め る こ と に し た わ け で 、 目 に 見 え る も の を そ の ま ま 受 け 入 れ る こ と に 努 め た の で あ る 。 そ し て 面 白 く 見 え る も の が あ れ ば 、 何 で も そ れ に 取 り組 む と い う 姿 勢 を 取 る こ と に し た 。 依 然 ガ イ ド ラ イ ンが な く な っ た こ とへ の 不 安 は 残 っ て い た が 、 目 の 前 の 現 実 に 充 実 す る こ と こ そ が 現 地 の 状 況 を 早 く把 握 す る 道 に つ な が る と確 信 す る よ う に な っ た の で あ る 。 日 本 民 俗 学 の 場 合 、 デ ー タ の 収 集 に お け る 古 老 は 不 可 欠 の 存 在 で あ る 。 民 俗 学 調 査 に お い て 何 よ り も 重 要 な イ ン フ ォ ー マ ン トは 古 老 で あ り、 そ の 人 か ら話 を 聞 く こ とが 作 業 の 大 部 分 を 占 め る と い っ て も 過 言 で は な い だ ろ う 。 つ ま り、 イ ン フ ォ ー マ ン ト=古 老 で あ る と い う 等 式 が 成 り立 つ 。 そ れ が 意 味 す る の は 、 現 実 生 活 の 中 に 沈 殿 物 の よ う に 沈 ん で 残 っ て い る`古 い も の'に 興 味 を も ち そ れ を 拾 う と い う こ と で あ る 。 日本 民 俗 学 の ガ イ ドブ ッ ク が 提 示 す る 調 査 指 針 の 冒 頭 に も そ の よ う に 記 述 し て い る 。 よ っ て そ の 影 響 か ら 自 由 で な か っ た 私 の 場 合 も 、 フ ィ ー ル ドワ ー ク の 初 期 は 年 寄 り に こ だ わ っ て い た の は 事 実 で あ る 。 し か し 現 在 の こ と に 関 心 を も ち 関 係 資 料 の 収 集 や 状 況 把 握 の た め に は 、 一 日 中 の ん び り と座 り込 ん で よ き昔 の 思 い 出 に 浸 っ て い る 年 寄 り よ り は む し ろ 、 今 現 在 動 い て 活 動 し て い る 人 々 と の 接 触 が 大 事 で あ っ た 。 自然 に イ ン フ ォ ー マ ン トは 年 寄 り よ り若 い 人 に し て い く こ と が 多 く な っ て い た 。 無 論 現 在 を 把 握 す る た め に は 過 去 の こ と も重 要 で あ り 、 聞 く価 値 も 充 分 に あ る 。 ま た 私 自

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身 もそ れ を ま っ た く無 視 した わ け で も ない 。 しか し私 に と っ て は 今 現 在 を生 きて い る 、 そ して現 在 を作 り出 して い る 人 々 の 行 為 と思 考 を知 る こ とが よ り重 要 で あ る よ う に思 わ れ た の で あ る。 古 老 の話 は そ れ 自体 が 目的 で は な く、解 釈 の 対 象 に な っ てい たの で あ る。 日本 各 地 に は 、 各 々 の 自治 体 が 主 管 し刊 行 し て い る 「市 町 村 誌 」 が あ る。 流 域 社 会 に も例 外 で は な く 「中村 市 史 」(中 村 市 史編 纂 委 員 会1969)の よ うな 地 域特 有 の 地 誌 類 が あ る。 そ れ の 執 筆 に は地 元 の 郷 土 史 家 や 民 俗 学 者 が携 わ っ て い る。 これ を め くっ て み る と、 特 に 民 俗 編 とい う項 目 を 設 け て 地 元 の 伝 統 行 事 や 芸 能 を紹 介 して い る 。 また 、 そ れ以 外 に も報 告 書 、 地 元 の新 聞 ・雑 誌 、 自費 出 版 、 単 行 本 、 未 刊 行 記 録 、 研 究 会 の発 表 な どの よ う に多 様 な形 で彼 らの 研 究 結 果 をみ る こ とが で きる。 と こ ろ が 、 そ こ に は現 在 伝 わ る伝 統 行 事 や 儀 礼 が 古 くか ら連 綿 と 伝 承 され て きた か の よ うに 記 述 され て い る 。 例 え ば あ る 伝 統 的 祭 り に 関 す る 記 録 の場 合 もそ うで あ る が 、 地 元 の 資 料 の記 述 を見 る か ぎ りい つ の 時 期 を想 定 して書 い て い る の か 明 確 で は な い 。 長 い歴 史 過 程 の 中 で起 きた可 変 の可 能 性 一添 加 、 削 除 、 変 形 一に対 す る前 提 や 理 解 の 不 足 が 感 じ られ る とい う こ とで あ る 。 つ ま りこ れ らの 記 述 は 伝 統 行 事 や 儀 礼 が不 変 的 ・安 定 的 ・孤 立 的 で あ る とい う枠 か ら一 歩 も抜 け 出 て い な いの で あ る。 中 に は伝 統 行 事 や 儀 礼 の 由 来 とそ の 内容 に つ い て は あ る 程 度 詳 し い場 合 もあ る。 しか し内容 に お い て も どの よ う な組 織 で 、 ど の よ う な経 費 の捻 出 を も っ て維 持 され て きた か とい う こ とに至 る と ほ とん ど乏 し くな る。 また 、 組 織 が 崩 壊 した り維 持 費 が 確 保 で き な くな っ た 原 因 を探 っ て行 事 や 芸 能 の廃 絶 や 変 革 を説 い た 例 もほ とん ど見 当 た ら な い 。 伝 統 賛 美 に 陥 っ て 具 体 的 な 対 策 もな い ま ま に 、 す で に形 骸 化 して久 しい行 事 や 芸 能 の復 活 や 伝 承 を た だ 精 神 論 と して 力 説 す る(神 崎1988:22-25)場 合 もあ る。 これ は民 俗 学 者 が 自分 も知 ら な い う ち に 、 伝 統 の 商 品化 お よ び大 量 生 産 に協 力 す る可 能性 もあ る こ と を意 味 す る 。 こ こ か らは 、 人 間 関 係(ネ ッ トワ ー ク)や 社 会 関

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係 な ど は 見 え て こ な い 。 ま た 、 政 治 ・経 済 的 な 側 面 も あ ま り取 り扱 っ て い な い 。 つ ま り 、 変 化 と動 態 の 姿 は ほ と ん ど み え て こ な い と い う こ と に な る 。 現 在 と 変 化 を 捉 え る の に 失 敗 し、 そ の 脱 出 口 を み つ け る の に そ れ ほ ど成 功 し て い な い よ う に み え る 日本 民 俗 学 は 、フ ィー ル ドワー ク の全 過 程 に お い て 重 要 な 反 面 教 師 で あ っ た と い え よ うm。 (3)`書 く文 化'に お け る`書 か れ た も の'の 問 題 フ ィ ー ル ド ワ ー ク が 進 む に つ れ 、 訪 ね て 話 を 聞 か な け れ ば な ら な い 人 が 段 々 増 え て い く 。 あ る 日、 下 田 地 区 で 毎 年 行 わ れ て い る 「ス ミ ヨ シ サ ン 」(住 吉 神 社 祭 り)に 出 さ れ る 「タ イ コ ダ イ 」(太 鼓 台) に つ い て 詳 し く知 っ て い る 年 寄 り が い る と の 話 を 聞 き 、 そ の 人 を 訪 ね て い っ た 。 彼 は 私 の 訪 問 目 的 を 聞 い て は"ど う の こ う の く だ ら な い 説 明 を す る よ り は こ れ を 読 ん だ ほ う が 早 い"と い っ て 一 冊 の ノ ー トを 私 の 前 に 出 し た 。 そ れ は 彼 自 身 の 筆 で 整 理 し 、 保 管 し て い た 「太 鼓 台 」 に 関 す る 記 録 で あ っ た 。 「ハ チ マ ン サ ン」 の 予 備 調 査 の と き も 同 じ こ と に 出 合 っ た 。 不 破 八 幡 宮 の 宮 司 さ ん は 、 地 元 民 俗 学 者 が 「ハ チ マ ン サ ン 」 の 儀 礼 に つ い て 整 理 し た プ リ ン ト物 を 出 し て"説 明 だ け で は 理 解 し に くい か ら 、 こ れ を 読 ん で み る と よ くわ か る"と 言 っ て い た 。 彼 の 自 宅 の 本 棚 に は 「定 本 柳 田 国 男 集 」 と 「旅 と伝 承 」 が び っ し り と 差 し込 ま れ て い た 。 こ れ 以 外 に も調 査 の た め 訪 ね て い く と、 個 人 に し ろ 、 家 に し ろ 、 団 体 に し ろ 、 行 政 官 庁 に し ろ 、 口 に よ る 説 明 よ り 紙 束 が 多 く 出 さ れ る 。 何 か に つ い て 質 問 し た ら、 話 の 末 に 私 の 前 に は 二 三 の 文 献 が 必 ず と い っ て も い い く ら い 置 か れ て い た 。 書 く文 化 を も っ て い る 日 本 は 、 至 る と こ ろ に 文 献 が あ ふ れ て い る 。 ま ず 、 柳 田 国 男 か ら 始 ま る そ う そ う た る 学 者 の 文 献 が あ る 。 ア ウ ト サ イ ダ ー の フ ィ ー ル ド ワ ー カ ー に と っ て は そ れ だ け を 渉 猟 す る の に も数 年 は か か る か も 知 れ な い 量 で あ る 。 さ ら に 、 地 方 に 行 け ば 、 そ の 地 域 の 数 多 い 史 料 と と も に 、 必 ず と 言 っ て も い い ほ ど 、 そ の 地 域 の 郷 土 史 家 あ る い は 地 元 の 民 俗 学 者 に よ る 文 献 が あ る 。 市 町 村 史 、

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報 告 書 、 地 元 新 聞 ・雑 誌 の 寄 稿 文 、 専 門 学 術 誌 の掲 載 論 文 、刊 行 回 顧 録 、 筆 写 本 、 行 政 機 関 の刊 行物 な ど様 々 な形 で 残 され て い る。 そ うな る と、 現 地 調 査 者 は 一彼 が 日本 語 に 熟 達 した もの で あ れ そ うで は ない もの で あ れ 一文 献 に対 す る プ レ ッ シ ャー を感 じざ る を え ない 。 そ れ を初 め か ら無 視 す るか 相 対 化 す る戦 略 を取 ら ない か ぎ り、 そ れ の 溺 れ 死 に に な っ て し ま う恐 れ さ え あ る 。 こ の 文 献 の圧 力 か ら 自 由 に な る こ とは 、 日本 を研 究 す る 際 、 最 初 か ら最 後 ま で抱 え る 問 題 で あ り、 解 決 策 を 自分 な りに模 索 し な け れ ば な らな い 問題 で もあ る。 一 方 、 語る文化 で はな く書 く文化 で は、書 かれ た もの は語 られた もの よ り権 威 を持 つ よ うに な る傾 向 が あ る 。 例 え ば 、 文 書 や 記 録 を 見 なが ら儀 礼 を進 行 して い くの を 良 く見 か け た 。 儀 礼 の 執 行 者 は そ の 儀 礼 に 関 し て残 さ れ た記 録 に つ い て 全 面 的 な 信 頼 を持 っ て お り、 儀 礼 の執 行 に お い て は そ れ に 頼 っ て い る よ う に見 え た 。 儀 礼 だ け で は な く、 あ ら ゆ る行 事 の 進 行 にお い て こ の よ う な傾 向 を 見 か け る こ と は そ れ ほ ど難 し くな い 。 日本 の場 合 、 あ る こ とを始 め る前 に そ れ に 対 して緻 密 な計 画 を立 て る 。 そ の 計 画 過 程 は全 て誰 か に よ っ て 記 録 さ れ る 。 そ の 後 そ の記 録通 りに物 事 を運 ん で い くの で あ る。 他 の 地 域 一東 京 一 よ りか な りい い 加 減 な と こ ろ が あ る(と い う初 印 象 を お ぼ え た)フ ィー ル ドの住 民 も、 こ の 面 に お い て は例 外 で は な か っ た 。 この よ う に記 録 を しそ の 記 録 を実践 し て い る 、`書 く文 化'と して の 日本 社 会 を民 族 誌 学 的 な 方 法 で 研 究 す る 人類 学 者 は 、 ど ん な戦 略 を選 択 す べ きか 。 こ の記 録 自体 が 持 つ 参 考 文 献 的 性 格 は 尊 重 す る必 要 が あ る 。 しか し こ の よ うな 記 録 に依 存 した い と い う傾 向 は、 そ の 欲 望 が 強 い だ け警 戒 す る 必 要 性 も大 き くな る 。 現 地 で は 集 め る だ け で も安 心 感 を与 え て くれ て い た 現 地 記 録 の複 写 本 の多 くは 現 地 を離 れ て か ら後 の 民 族 誌 作 成 の段 階 で そ れ ほ ど役 に立 た な か った 経 験 が これ を裏 付 け る。 結 局 そ の 記 録 物 が持 つ 補 助 的 な 性 格 で と どめ そ れ 以 上 の依 存 は避 け るべ きで あ り、 よ り積 極 的 な 方 法 は 記 録 物 そ して

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記 録 す る文 化 それ 自体 を相 対 化 し、 分 析 対 象 に す る こ とで あ ろ う。 (4)親 和 化 と`似 以 非'の 問 題 約9年 間 と い う 決 し て 短 く な い 期 間 を 日 本 に 滞 在 し な が ら、 日本 の 社 会 ・文 化 の 人 類 学 的 研 究 を 続 け て き た 。 し か し、 そ の 大 部 分 の 時 間 は 大 学 の 研 究 室 の 中 で 、 人 類 学 の 訓 練 を う け る こ と や 、 日本 に 関 す る 文 献 を あ さ る こ と に 費 や さ れ た 。 こ れ は 後 に 日本 社 会 を フ ィ ー ル ド ワ ー ク を す る こ と 、 ま た エ ス ノ グ ラフ ィー を書 く こ と に ど う い う影 響 を 及 ぼ す の だ ろ う か 。 こ れ と 関 連 し た 問 題 と し て 指 摘 で き る 問 題 の 二 つ の 中 で そ の 一 つ は 、 長 期 滞 在 か ら く る 日 本 社 会 へ の 慣 れ あ る い は 問 題 意 識 の 薄 れ で あ り 、 も う 一 つ は 、 コ ー ス ワ ー ク と い う過 程 か ら く る 日 本 的 学 風 あ る い は パ ラ ダ イ ム の 影 響 で あ る 。 人 類 学 者 が 自 分 と違 う 社 会 に 入 っ た 場 合 全 て の 疑 問 は 最 初 の 半 年 の 間 に 生 じ 、 そ の 疑 問 が 当 該 の 文 化 を 理 解 す る 重 要 な キ ー ワ ー ドに な る と い う こ と は 多 く の 人 類 学 者 が 指 摘 し て い る と こ ろ で あ る 。 以 後 行 わ れ る 現 地 研 究 は そ の 疑 問 に 答 え を み つ け て い く作 業 で あ り、 そ れ を 解 い て い く作 業 に 他 な ら な い で あ ろ う 。 従 っ て 調 査 と い う 目 的 だ け を も っ て 日 本 社 会 に 入 り1年 な い し2年 間 の イ ン テ ン シ ブ な フ ィ ー ル ド ワ ー ク を 行 う 場 合 と は 、 当 然 そ の 立 場 が 違 っ て く る'3)。 日本 社 会 に 足 を 入 れ て か ら も そ の 文 化 の 差 異 を 見 る 目 は 研 究 者 の 持 つ 背 景 に よ っ て 様 々 に 違 っ て く る こ と に な る 。 例 え ば 日 本 人 が 日 本 文 化 を み る 目 は 外 国 人 が そ れ を み る 目 と 違 う の は 当 た り前 の こ と で あ る 。 外 国 人 と い っ て も 欧 米 人 と韓 国 人 は ま た 違 っ て く る だ ろ う。 ま た 留 学 の よ う に 日本 社 会 の 中 で 長 期 滞 在 を し た 韓 国 人 の 視 覚 と調 査 だ け が 目 的 で 短 期 滞 在 を し た そ れ と は 違 っ て く る 。 ひ い て は 韓 国 国 内 で 訓 練 と教 育 を 受 け た 後 に 日本 を み る 目 と 欧 米 で そ れ を 受 け た 後 の 視 覚 が 異 な っ て く る の で あ る 。 し た が っ て 後 者 即 ち`日 本 的 学 風'の 影 響 と 内 在 化 と い う 点 も無 視 で き な い 問 題 と し て 登 場 す る こ と に な る 。 特 に 調 査 者 と い う よ り

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学 生 と い う 立 場 は 、 自 分 自 身 を 能 動 的 と い う よ り、 受 動 的 に し が ち で あ る 。 こ れ は 後 で も う 少 し 詳 し く検 討 す る こ と に す る 。 以 上 の こ と は 、 エ ス ノ グ ラ フ ィ ー を 書 く と い う 作 業 に 、 微 妙 に 影 響 を 及 ぼ す こ と は 十 分 予 想 さ れ る 。 一 つ は 、 エ ス ノ グ ラ フ ィ ー の 対 象 に な る 時 期 が 、 集 約 的 フ ィ ー ル ドワ ー ク 中 の 期 間 だ け で は な く 、 滞 在 期 間 全 体 に 拡 張 し て い く必 要 が あ る こ と を 示 唆 す る 。 フ ィ ー ル ドに 入 っ て か ら 初 期 は 勿 論 の こ と 、 か な りの 期 間 が 経 つ ま で 村 の 人 々 か ら私 は 中 国 人 と 誤 解 さ れ て い た 。 特 に 、 道 端 で 会 う 子 供 た ち か ら は`ニ ハ オ'と 挨 拶 さ れ る こ と が 多 か っ た 。 大 人 の 中 に も 私 が 韓 国 か ら 来 た と い う こ と は わ か っ て い る が 、 そ れ は 中 国 の 一 部 で あ る と 思 い 込 ん で い る に 違 い な い と 思 わ れ る 質 問 を す る お ば さ ん も い た 。 私 の 忍 耐 つ よ い 説 明 と 数 回 の 講 演 に よ っ て 、 し ば ら く 経 っ て か ら は 小 学 校 に 通 う 子 供 た ち か ら`ア ン ニ ョ ン ハ セ ヨ'と い う韓 国 語 の 挨 拶 を 交 わ す よ う に は な っ た が 。 一 方、 こ れ と は 違 う 反 応 も あ っ た 。 私 が フ ィ ー ル ドで 出 合 っ た 年 寄 り は 日 本 の 帝 国 主 義 時 代 の 経 験 者 で あ り 、 そ の 中 に は い わ ゆ る 「半 島 経 営 」 の 直 接 経 験 者 も あ っ た 。 彼 等 の 場 合 は 、 私 自 ら 明 か さ な く て も最 初 に 交 わ さ れ る 対 話 か ら 私 が 韓 国 人 で あ る こ と を す ぐ分 か る 人 も い た 。 彼 等 は 、 韓 国 一 正 確 に は 植 民 地 時 代 の 朝 鮮 一 に つ い て の 知 識 も か な り の 水 準 ま で も っ て い る 。 韓 国 に つ い て ほ と ん ど 認 識 と 知 識 を 持 っ て い な い 若 者 よ り は 、 話 を 進 め る 上 で は 便 利 な 側 面 が 確 か に あ る 。 し か し 、 時 間 が 経 つ に つ れ て だ ん だ ん 難 し さ を 感 じ る こ と が 多 く な っ た 。 そ れ は 彼 の 中 に す で に 自 分 の 経 験 に よ る 韓 国 人 観 、 韓 国 観 が 確 立 さ れ て い る か ら で あ る 。 若 者 一 と い っ て も30代 以 上 に な る が 一 の 中 に も旅 行 経 験 者 は 例 外 で は な い 。 しか し、 そ れ が 好 意 的 な も の で あ れ 、 そ の 逆 で あ れ 、 両 者 の 間 に 違 い は 存 在 し て い る 。 前 者 の そ れ は 強 固 で 修 正 不 可 能 に 近 い もの で あ る に 対 し て 、 後 者 は 度 重 な る 対 話 を 通 じ て 早 い ス ピ ー ドで 変 わ っ て い く もの で あ っ た14)。 ま ず 、 フ ィ ー ル ドの 住 民 が よ ほ ど の 深 い 観 察 を 行 わ な い 限 り、 区

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別 が つ か な い 私 の 顔 付 き に 問 題 の 多 く は 潜 ん で い る よ う で あ る 。 そ れ は 最 初 か ら見 た 目 で は っ き り違 う 顔 付 き を し て い る 西 欧 人 の フ ィ ー ル ド ワ ー カ ー が 告 白 す る 調 査 中 の エ ピ ソ ー ド を 引 く ま で も な い ほ ど 、 自 明 の こ と で あ る 。 住 民 に と っ て 部 外 者 が 一 人 入 っ て き た と い う こ と は 知 覚 し て い る が 、 自分 と は 違 う 文 化 の 人 が 一 人 入 っ て き た と い う こ と に は そ れ ほ ど 自覚 が な い の に 問 題 の 出 発 点 が あ る の だ 。 要 す る に 、 深 く 考 え る こ と な く、 似 て い る と い う こ と を 同 じ で あ る とす り 替 え て し ま う の で あ る 。 こ れ は 彼 等 の 問 題 だ け で は な く、 私 の 問 題 で も あ る の に 問 題 の 深 刻 性 は 増 す 。 つ ま り、 調 査 者 も 現 地 人 も お 互 い に 違 う と い う前 提 に た っ て い れ ば 、 問 題 は 比 較 的 簡 単 に 済 む 。 お 互 い の 違 い を 最 初 か ら 認 め 合 う と、 そ の あ と は お 互 い の 理 解 を 深 め て い く道 だ け が 残 っ て い る か ら で あ る 。 しか し 、 似 て い る と い う こ と か ら 、 理 解 す る と い う作 業 が 最 初 か ら そ れ ほ ど 重 要 で 、 か つ 必 要 な 点 で あ る こ と に 両 者 の ど ち ら か が 合 意 し て い な い 場 合 、 問 題 は 複 雑 に な っ て し ま う の で あ る 。 こ う な る と 相 手 が 自 分 と は 似 て は い る が 、 非 な る も の だ と い う 認 識 に 至 る ま で に は 、 か な り の 試 行 錯 誤 と 時 間 が 必 要 に な る の で あ る15)。 こ の こ と は 日 本 を 民 族 誌 学 的 方 法 で 研 究 し よ う と す る 韓 国 人 一 広 く は 東 ア ジ ア ー 研 究 者 が 、 最 初 に 肝 に 命 じ て お か な け れ ば な ら な い 注 意 項 目 の 一 つ の よ う に 思 わ れ る 。 韓 国 人 の フ ィ ー ル ドワ ー カ ー は 、 後 で み る い くつ か の 理 由 で 、 最 初 か ら 日 本 文 化 を 自 文 化 と そ れ ほ ど 変 わ ら な い と 一 同 じ で あ る と 一 思 い 込 ん で し ま う よ う な 落 と し穴 に 陥 る 可 能 性 が 高 い 。 も し、 そ の よ う な 視 覚 修 正 が な く て も 、 フ ィ ー ル ドに 入 っ て 自分 が 直 接 に 経 験 し て み れ ば 、 思 っ て い た こ と よ り ギ ャ ッ プ が 大 き い こ と を 自覚 で き る だ ろ う が 、 そ の 時 に 遭 遇 す る 混 乱 は 相 当 大 きい も の に な る だ ろ う 。 ま た 、 い ま ま で の 試 行 錯 誤 を お お ま か に で も修 正 す る 作 業 を 行 わ な け れ ば な ら な い は め に な る 。 い か に も 簡 単 に 処 理 で き る と思 っ て い た カ ル チ ャ ー シ ョ ッ ク は 後 に な っ て 重 荷 と し て の し か か っ て く る の で あ る 。 そ の 面 、 相 手 の 違 い を お

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互 い に 認 め て か ら 出 発 し て い る 欧 米 人 の フ ィ ー ル ド ワ ー ク と は 、 フ ィ ー ル ドに お け る 状 況 が ま っ た く違 っ て く る の で あ る 。 こ の 自 文 化 と 類 似 す る 文 化 を 研 究 対 象 に す る 際 、 調 査 者 が 得 る 利 益 は 異 文 化 に 適 応 し や す い と い う こ と で あ ろ う 。 し か し、 こ れ も錯 覚 に す ぎ な い し、 そ の 裏 腹 に 被 る 損 害 は 思 っ た よ り大 き い 。 い う ま で も な く 、 似 て い る か ら気 付 か な い も の が 出 て く る し 、 見 逃 し て し ま う 物 事 が 多 く な る と い う こ と で あ る 。 ま た 、 類 似 す る 文 化 の 単 純 比 較 の 危 険 性 の 問 題 も あ る だ ろ う 。 も し、 こ の 似 て い る が 、 微 妙 に 違 う と い う こ と を 浮 き 彫 り に す る こ と が で き る な ら ば 、 つ ま り類 似 文 化 に 対 し て 注 意 深 い 観 察 と対 話 が 可 能 に な れ ば 、 西 欧 人 に よ る 民 族 誌 学 的 研 究 と は ひ と 味 ち が う 研 究 の 成 果 を 上 げ る こ と も で き る の で は な い か と思 わ れ る 。 (5)共 有 の 文 字 一漢 字 一か ら くる問 題 韓 国 人 は漢 字 文 化 圏 の構 成 員 の一 人 で あ る の で 漢 字 に は慣 れ て お りそ の 解 読 も比 較 的 早 くで きる 。 そ れ に対 し西 欧 人 研 究 者 の場 合 は 漢 字 に慣 れ て い な い の で そ の 解 読 は 遅 く、 よ っ て 日本 語 で 書 か れ た 文 献 に接 す る 頻 度 も低 くな る。 つ ま りこ の 事 実 は韓 国 人 研 究 者 は 日 本 語 の 記 録 や 文 書 ・文 献 に た よ る頻 度 が 高 くな り、 日本 的 パ ラ ダ イ ム に 少 な くな く影響 され る蓋 然 性 を 持 つ こ と を意 味 す る。 こ れ は 前 述 した 長 期 滞 在 の 問 題 と も絡 ん で漢 字 文 化 圏 に属 して い る こ とか ら 由来 す る問 題 群 につ い て緻 密 に考 え る必 要 性 の 問 題 を提 起 して い る 。 こ の 漢 字 関連 の 問 題 群 に孕 ま れ て い る 落 し穴 につ い て 認 識 す る こ と は い くら強 調 して も足 りない と ころ が あ る。 そ れ は 民 俗 用 語 と し て も フ ォー ク ター ム や ネ イテ ィ ブ ター ム に 対 す る無 意 識 に 行 う我 田 引 水 的 な 解 釈 の 落 し穴 で あ る。 例 え ば 日本 社 会 ・文 化 にお い て基 本 的 か つ 重 要 な概 念 の 一 つ で あ る`イ エ'を サ ン プ ル に あ げ る こ とが で き よ う。 筆 者 が これ を特 別 な記 号 即 ち カ タ カ ナ とか ロー マ 字 で表 記 す る こ とで 自 分 の 意 思 や 意 図 を伝 え よ う とす る場 合 が ない 限 り、 普 通 は`家 とい う漢 字 で そ れ を記 す こ とに な る 。 これ をみ る韓 国

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人 研 究 者 は 当 た り前 に フr(ka)'と 音 読 し 、`召(chip>'と 訓 読 す る こ と に な る 。 と こ ろ が 問 題 は`家 と 同 じ く表 現 さ れ る 日 本 社 会 に お け る`イ エ'と 韓 国 社 会 に お け る`chip'の 間 に は 含 み が ま っ た く 異 な る 概 念 的 差 異 が 存 在 し て い る 。 同 じ漢 字 で あ る と い っ て 混 同 す る こ と に な る と 、 ま さ に 誤 解 さ れ た 異 文 化 理 解 の 一 歩 を 踏 み 出 す こ と に な る わ け で あ る 。 こ の よ う に 同 じ漢 字 で 注 意 し な け れ ば な ら な い もの に は`家 以 外 に も`同 族'の よ う な 単 語 も あ る 。 例 え ば 日 本 民 俗 学 や 社 会 学 の 専 門 用 語 と し て 頻 繁 に 登 場 す る`同 族 団'や`同 族 神'も し く は `同 族 部 落'の よ う な 用 語 は 、 韓 国 式 の 血 縁 的 概 念 で 容 易 く受 容 し て し ま う場 合 、 深 刻 な 認 識 上 の 誤 謬 を 招 く可 能 性 が 高 い の で あ る 。 `風 流'や`祭 り'`祭 礼'の よ う な 場 合 も 同 じ で あ る 。 こ の よ う に 共 有 す る 漢 字 そ し て 日 本 式 造 語 を そ の ま ま 自文 化 的 認 識 体 系 の 概 念 と範 疇 の 中 で 使 う 時 に 生 じ る 問 題 群 は 日 本 社 会 を 異 な る 文 化 、 つ ま り異 文 化 あ る い は 他 文 化 の 社 会 と し て み る こ と を 妨 げ る と 同 時 に 誤 解 と誤 謬 の 余 地 を 残 す こ と に 通 じ る 。 こ の よ う な 点 は 日本 社 会 ・文 化 を 解 釈 す る 専 門 家 と し て の 韓 国 人 人 類 学 者 が 早 急 に 検 討 す べ き こ と で あ り、 自 文 化 の 中 で の 無 節 制 な 使 用 に 対 す る 自 省 を 求 め る 項 目 の 中 の 一 つ で あ る と い え よ う。 (6)固 有 名 詞 と 抽 象 名 詞 の 問 題 私 が イ ン テ ン シ ブ フ ィー ル ドワ ー ク 中 で あ っ た1988年10月 、 韓 国 で は ソ ウ ル ・オ リ ン ピ ッ ク が 盛 大 に 開 か れ て い た 。 道 端 で 会 う 知 り 合 い か ら の あ い さ つ は 、 開 会 式 の 成 功 、 オ リ ン ピ ッ ク の 無 事 成 功 を 一祝 っ て くれ る 言 葉 ば か り で あ っ た 。 私 個 人 と し て は オ リ ン ピ ッ ク に つ い て 最 初 か ら冷 や や か な 目 で 見 て き た し 、 そ れ ほ ど興 味 も わ か な か っ た わ け で あ る 。 しか し 、 開 催 間 近 に な っ た 時 期 か ら 言 わ れ 始 め た 挨 拶 代 わ り の 言 葉 一 オ リ ン ピ ッ ク の 時 韓 国 に 帰 ら な い の か と い う 質 問 と 、 テ レ ビ に よ っ て 得 ら れ た 韓 国 に 関 す る 話 題 と 関 心 事 一 は そ れ が 終 わ っ て か ら も し ば ら く続 い た 。

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こ うな る と、 自分 は韓 国 の 代 表 選 手 で は な い とい う平 素 の 信 念 を い つ ま で も持 つ に は い か な くな る 。韓 国 は既 に私 に とっ て も彼 等 に と っ て も関 係 な い遠 い とこ ろ に あ る もの で は な く、 自分 と完 全 に一 体 化 さ れ て い る もの で あ る こ と を 改 め て 自覚 す る よ うに な っ た の で あ る。 自分 は い く ら韓 国 で 行 わ れ て い る こ と と関 係 な い と言 い張 っ て も相 手 はそ うは 思 っ て くれ な か っ た の で あ る 。 結 局 、 私 も韓 国 人 の代 表 の よ う に言 わ ざ る を え な くな っ て し まっ た 。"おか げ さ まで す 。 ご声 援 あ りが と う ご ざ い ます"と 。 こ の こ とが 意 味 す る の は 何 だ ろ うか 。 そ れ は まず 私 を私 個 人 と し て み て い な い とい う こ とに 帰 着 す る。 つ ま り、 私 が どん な に個 人 で あ る こ と を主 張 して も、 私 は韓 国 人 とい う抽 象 名 詞 に埋 没 さ れ て い る の で あ る。 この 経 験 を 通 じて 私 は相 手 一 フ ィー ル ドの 人 々 一 を個 人 と して 考 え て きた とい う こ とを改 め て 自覚 と反省 す る 機 会 を得 た。 い ま まで 日本 あ るい は 日本 人 とい う抽 象 名 詞 的 な レベ ル か ら語 っ て き た が 、 こ れ か ら必 要 な の は 直接 経 験 した個 人 とそ の 接 触 経 験 か ら 出 発 し た 固 有 名 詞 的 表 現 と記 述 が と もな うべ きで あ る。 こ ち らが 固 有 名 詞 的 レベ ル か らの接 触 を求 め る な らば 相 手 に対 して も同 じ くこ の 点 を重 視 すべ きで あ る こ と はい う まで も ない こ とで あ ろ う16)。 そ の 他 、 従 来 の 日本 文 化 に対 す る ス テ レ オ タ イ プ 的 な認 識 、 地 理 的条 件 か ら くる長 い 歴 史 的 接 触 、 植 民 一 非 植 民 の 歴 史経 験 か ら くる 強 力 な先 入 観 と偏 見 、 こ れ と同 時 に現 在 日本 が もつ 国 際 的 な 位 相 か ら く る複 合 的 な態 度 、 そ こ か ら由 来 し ま た影 響 され て い る研 究 者 の 日本 観 と発 言 様 式 な どの 問 題 も指 摘 す る こ とが で き よ う。 これ らは 各 々 が 新 しい 項 目 と して追 加 さ れ議 論 す べ き認 識 論 的 テ ー マ 群 で あ ろ う。

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4.課 題 と展 望 以 上 韓 国 人 に よ る 日本 社 会 の 民 族 誌 学 的研 究 を検 討 しな が らフ ィ ー ル ドワ ー ク認 識 論 とい う枠 組 み で い くつ か の 問 題 群 を考 察 して み た。 まだ 足 りな い 点 も多 くこの よう な フ ィー ル ドワ ー ク認 識 論 を 発 展 させ る ため に は具 体 的 に補 充 しな け れ ば な らな い 部 分 も少 な くな い 。 第 一 現 在 まで 進 め られ て きた韓 国 人 人 類 学 者 に よ る蓄 積 に対 す る緻 密 な 分 析 を通 して 認 識 論 の テ ー マ を 見 つ け だ しそ の 議 論 を深 め て い く作 業 が 必 要 で あ ろ う。 第 二 は 日本研 究 者 の 間 で 多 くて厚 い 認 識 論 的 議論 が 必 要 で あ り、 また これ を よ り向 上 で き る レベ ル 高 い 認 識 論 的作 業 の結 果 が 生 産 され る必 要 が あ る だ ろ う。 この よ うな フ ィー ル ドワ ー ク認 識 論 の 作 業 を通 じて 目指 すべ き と こ ろの 一 つ に は`我 々 の 人 類 学'あ るい は`第 三 世 界 の 人類 学'へ の 道 の 模 索 と発 見 が あ る だ ろ う。 周 知 の よ うに 人 類 学 は文 明社 会 が 未 開 社 会 を対 象 に 始 め られ て お りそ の 長 い蓄 積 の 学 史 を持 つ 。 つ ま り高 い と ころ か ら低 い と こ ろへ 向 か っ て い っ た 歴 史 を持 っ て い る の で あ る。 しか し現 在 人類 学 は多 くは な いが 低 い と こ ろ か ら高 い とこ ろへ の 移 動 が お きて い る の が 現 実 で あ る 。 い わ ゆ る`先 進 国'を `非先 進 国'の 人類 学 者 が 研 究 の 対 象 に す る ケ ー ス が 急 速 に 増 え て い るの で あ る。 も しか した ら 自分 よ り経 済 的 に`後 進'で あ る と思 わ れ た 地域 や 社 会 に つ い て の民 族誌 学 的研 究 を遂 行 す る時 に も、 以 前 の植 民 地 膨 張 の 帝 国 主 義 時 代 に 西 欧 が 行 っ た の と は違 う フ ィー ル ドワ ー ク 認 識 論 が 必 要 な時 期 に きて い る とい え よ う。 こ の論 文 は そ の よ うな フ ィ ー ル ドワ ー ク認 識 論 につ い て の 自分 の 経 験 に基 づ い た 一 つ の 試 み に 過 ぎ ない 。 人類 学 の 教 科 書 に 見 え るい ろ ん な基 本 的 か つ 重 要 な概 念 は、 実 は西 欧 の 人 類 学 教 科 書 か らも っ て きた もの で あ る 。 文 化 相 対 主 義 とい う概 念 は ま さ に 西 欧 が 未 開 社 会 を 眺 め る 際 の新 しい 概 念 と して登 場 した もの で あ る 。 も ち ろ ん こ の用 語 が 普 遍 的 な概 念 と して

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確 立 され あ らゆ る局 面 にお い て適 用 さ れ て い る こ と を否 定 す る気 は な い 。 こ こ で 指摘 し よ う とす る こ と は この よ うな概 念 が 自分 の 立 っ て い る場 か ら再 検 討 され 再 整 理 され るべ き時 点 に きて い る の で は な い か とい う点 で あ る 。 一 方 第3世 代 に よ っ て 本 格 的 に始 ま っ た 日本 社 会 に対 す る 民 族 誌 学 的研 究 は、 日本 の 経 済 的成 長 と対 外 的膨 張 そ して 韓 国 内 部 にお け る状 況 変 化 か ら く る新 しい 関心 の増 大 か ら始 ま って い る とい え よ う。 同 時 に第2世 代 の 視 覚 に対 す る懐 疑 と そ れ か らの 脱 皮 を計 ら う作 業 か ら始 ま っ て い るの で あ る。 つ ま り新 しい 理 解 と方 向 の模 索 を試 み て い るの で あ る 。 しか しこ の 第3世 代 は 生 ま れ つ きの 問題 点 も多 数 内包 して い る 。 こ の 世 代 は上 の世 代 か らの 遺 産 と教 育 即 ち 二 重 的 感 情 の増 幅 を持 っ て い るわ け で あ る 。 こ の 点 が 前 で検 討 した テ ー マ に 内在 す る基 本 的 な 原 因 で あ るか も知 れ な い 。 い ま韓 国社 会 は い わ ゆ る 第4世 代 が 社 会 の 中心 的 な構 成 員 と して 埋 め られ て い る真 っ 最 中 で あ る。 この 第4世 代 は 第3世 代 を親 と し て持 つ 世 代 で30代 へ の 突 入 を 始 め て い る の で あ る 。 彼 らは 日本 に対 して 比 較 的 に 相 対 化 され た視 覚 を もつ 条 件 を備 え て い る。 した が っ て不 透 明 で は あ るが 本 格 的 な 日本 研 究 の 可 能 性 を孕 ん で お り、 他 文 化 の 民 族 誌 学 的 ・人 類 学 的研 究 の多 様 化 と地 域 の 拡 大 を期 待 で きる 世 代 で もあ る 。 実 は彼 らに この フ ィー ル ドワ ー ク認 識 論 が役 に立 つ こ とを密 か に 願 う。 異 な る文 化 に対 す る理 解 と研 究 と して の 人類 学 はい ま そ の 知 的 資 産 と蓄 積 を も って 自文 化 へ の 回 帰 を始 め て い る 。 そ の課 題 は 時 間 の 増 加 につ れ減 少 しな い テ ー マ と して 我 々 の 目の 前 に迫 っ て くる だ ろ う。 この 論 文 は こ の よ うな状 況 的 認 識 と と もに 考 え て い く問 題 と解 い て い く課 題 につ い て の 問題 提 起 の 性 格 を もっ て い る点 に 意 味 付 与 を し なが ら、 最 近 の 成 果 を対 象 に した 検 討 と整 理 、 そ して 理 論 的論 議 に対 す る細 か い 分 析 は後 続 の作 業 と して委 ね る こ とに した い。

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注 1)こ こで い う コ ー ス ワ ー ク とは 修 士 や 博 士 課 程 な ど の よ う に 必 須 の 教 育 課 程 を 意 味 す る 。 フ ィ ー ル ドワ ー ク は こ の よ う な コー ス ワー ク課 程 の 中 で 必 要 で あ っ た 人 類 学 的 現 地 調 査 課 程 を 意 味 す る 。 しか し、 本 文 全 体 に お い て は この よ うな 狭 い概 念 と して の フ ィー ル ドワ ー ク と広 い概 念 と して の そ れ を 併 用 す る こ と にす る 。 前 者 は`現 地 で 行 っ た実 際 の 現 地 調 査'を 意 味 し、 後 者 は そ れ と と もに 教 育 課 程 と し て の コ ー ス ワ ー ク を 一 緒 に した 全 体 を フ ィ ー ル ド ワー ク と して 見 な す 概 念 で あ る。 こ れ につ い て は 本 文 中 で具 体 的 に 説 明 され る。 2)こ こ で論 じる の と は 異 な る 形 態 へ の接 近 を構 想 中 で あ る。 そ れ は い わ ゆ る 人 類 学 に お け る 伝 統 的 な 形 式 で あ る エ ス ノ グ ラ フ ィ ー (ethnography)と い う形 か ら離 れ た エ ス ノ ノベ ル(ethnonovel)あ る い は エ ス ノ エ ッセ イ(ethnoessay)の よ う な形 式 を通 じて そ の 認 識 論 的 テ ー マ を捉 えて み る作 業 に な る と思 わ れ る。 3)日 本 の社 会 ・文 化 の イ ン サ イ ダー(日 本 人)と ア ウ トサ イ ダー(外 国 人)に よ る 人 類 学 的 ・民 族 誌 的研 究 と そ の 蓄 積 は 多 い(日 本 民 族 学 会 編1966、1986;ヨ ー ゼ フ ・ク ラ イ ナ ー編1996)。 まず 、 イ ンサ イ ダ ー(日 本 人)に よ る研 究 は そ の 量 の 面 に お い て 膨 大 で あ り、 特 に 日本 民 俗 学 者 の そ れ ま で を も含 め る と膨 大 な 量 に な る 。 そ の 質 の 面 に お い て も注 目 され る もの が 多 く、 そ の業 績 は イ ンサ イ ダー 自 身 に よ っ て 度 々 検 討 され て きた 。 一 方 、 ア ウ トサ イ ダ ー に よ る蓄 積 も 想 像 以 上 に 多 く、 そ の 多 くは西 欧 人 に よ る もの で あ る。 そ れ につ い て の検 討 も度 々行 わ れ て きて い る 。 ま た相 対 的 に 希 で は あ るが 、 非 西 欧 人 に よ る 作 業 の 検 討 も 日本 内 部 で 行 っ て い る 。 ア ウ トサ イ ダ ー に よ る蓄 積 の 全 体 につ い て 、 私 の 視 角 か らの 検 討 を行 う こ と もそ れ な りに意 味 が あ る だ ろ う。 しか し、 ア ウ トサ イ ダ ー の大 部 分 は 西 欧 人 が 占 め て お り、 全 体 の 検 討 は そ れ だ け で も大 規 模 の 作 業 で あ る。 また 、 そ れ が こ こで の 目標 で もな い。 4)こ れ らは 誤 差 を考 慮 し、 前 後 に約5歳 か ら10歳 ほ どの 幅 を与 え る 必 要 が あ る。

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5)も ち ろ ん 第1世 代 と第2世 代 に も可 能性 は残 して お く こ と にす る。 例 え ば 、 民 俗 学 の 領 域 を含 め た各 関連 分 野 あ る い は比 較 文 化 的 観 点 か ら 接 近 して い る場 合 に検 討 可 能 で あ ろ う。 これ につ い て は 他 の研 究 者 の 作 業(遭 ぞ 牛1999)が 参 考 に な る 。 6)そ の 成 果 の 一 部 や 各 国 の 研 究 現 況 お よび 問題 点 が ロ本 民 族学 会 に よ り 取 り扱 わ れ て い る 点 が これ を裏 付 け る 。例 え ば 、 日本 民 族 学 会 の 機 関 誌 で あ る 「民 族 学 研 究 」 が1989年 に特 集号 と して 出 した`外 国 人 に よ る 日本研 究'な どが そ れ で あ る。 7)彼 らは 民俗 学 会 を 活 動 領 域 に して い る の で 、 こ こ で は特 に 言 及 しな い こ とに す る 。 また90年 代 に入 っ てか らの共 同研 究 プ ロ ジェ ク トの場 合 も扱 わ な い こ とに す る。 例 え ば93年 高知 県 梼 原 で行 わ れ た研 究 な どが そ れ で あ る(週 碧`午 斜1997)。 8)こ の 三 つ の 時期 は そ れ ぞ れ 違 うが 広 い意 味 にお いて は`広 意 の フ ィー ル ドワー ク'の 期 間 で あ る とい え る。 したが っ て こ れ を また 三 つ の名 称 で細 分 して み る こ とが で きよ う。 第一 は本 格 的 な フ ィー ル ドワー ク の前 段 階 との 意 味 で フ リー ・フ ィー ル ドワ ー ク、 二 番 目は 本格 的 で 集 中 的 な そ れ で あ る との 意 味 で イ ンテ ンシ ブ ・フ ィー ル ドワー ク 、 三番 目は 本格 的 な そ れ をつ ぐ整 理 作 業 の 過 程 で あ る との 意 味 で ポ ス ト ・フ ィー ル ドワ ー ク と名 付 け る こ とが で き る 。 こ れ に つ い て は 金 良 柱 (1998)で 詳 し く触 れ て い る。 9)第 一 と第 三 の 部 分 に対 す る考 察 は ま だ本 格 的 に な さ れ て い な い が 、 第 二 の テ ー マ に た い して はい くつ か の先 行 研 究 で一 部 触 れ た こ とが あ る (召 磐手1997,199&2000;金 良 柱1994)。 10)例 え ば、"未 開社 会 が 文 明社 会 を研 究 す る"と い う発 言 は 誤 解 を招 き や す い 。 した が っ て こ こ で は文 化 的 な側 面 で は な く、 経 済 的 条 件 を も っ て 話 を 進 め た ほ うが 誤 解 の余 地 を 少 な くす るか も しれ な い。例 え ば、 韓 国 人 あ る い は 中 国 人 は 日本 よ り 自分 の文 化 が 劣 る とは思 わ な い だ ろ う。 つ ま り、 自 ら を`未 開'で あ る とは思 っ て い な い の だ 。 しか し現 在状 況 か ら見 れ ば 、 経 済 的 に は確 か に 日本 が優 位 で あ る こ とは 認 め ざ る を得 な い 。 一 方`先 進'と い う言 葉 も誤 解 を招 く余 地 の 多 い 用 語 の

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よ う に 思 われ る 。 よ っ て こ こ で は ご く単 純 で 簡 単 な定 義 に 従 う こ と にす る 。 国 民 総 生 産 即 ちGNPの よ うな 経 済 指 標 に よ っ て い わ ゆ る こ の`先 進 国'の グ ル ー プ に該 当 す る 国 を 指 す こ と に した い 。 例 え ば G7二 先 進7力 国 の よ うな の が そ の概 念 に 当 て は まる 。 11)例 え ば 、 フ ィー ル ド ・ワー カ ー の 価 値 中 立 的 な態 度 の 問 題 と も関 わ っ て くる が 、 調 査 中"韓 国 人 に これ ほ ど細 か く知 られ た ら、 あ る い は こ れ ほ どよ く調 べ られ た ら困 る"と 言 わ れ た こ とが あ る 。 こ れ は 植 民 統 治 時 代 に 朝 鮮 との 関 係 を持 つ 人 の 発 言 で あ る。 彼 は 笑 い な が ら冗 談 の よ うに 言 っ て い たが 、 私 は そ の 冗 談 の 中 に骨 が あ る と思 わ ざ る を得 なか っ た。 12)フ ィ ー ル ド ・ワー ク よ り戻 っ て か らそ れ ほ ど時 間が 立 た な い あ る 日、 日本 のあ る 日刊 紙 に次 の よ う な コ ラ ムが 載 って い た。 柳 田 国男 が 苦 心 して 作 り上 げ た 日本 民 俗 学 は 今 や ほ ぼ 脳 死 状 態 に あ る 。 最 近 の い くつ か の 著 作 一 「これ は 民 俗 学 で は な い 」 や 「宗 教 民 俗 学 」、 そ の 他 「都 市 民 俗 学 へ の い ざ な い 」 とい う勇 ま し い もの か ら、 民 俗 学 とい う看 板 だ け横 か らか っ ぱ らっ て 商 売 す る 「少 女 民 俗 学 」 に至 る まで乱 は、 い ず れ も 「現 在 」 をい か に と ら え る か 、 とい う こ と に腐 心 しつ つ 、 結 局肝 心 の 足 元 が み えて い な い 点 で共 通 して い る。 「経 世 濟 民 」 を うた い 、 足 元 か ら問 題 を発 見 す る とい うか け 声 は 昔 か ら変 わ ら な くて も、 実 際 説 か れ て い る こ と は 、 も は や 日 々 の生 活 の 実 感 か ら遠 く離 れ た 「民俗 」 を並 べ 、 「伝 統 」 を叫 ぶ だ け で あ る。 そ の 「民 俗 」 や 「伝 統 」 は今 や この情 報 資 本 主義 の現 実 で は売 れ 筋 の商 品 と して 大 量 生 産で きるこ とす ら筆 者 た ち は気 づ か な い。 で 、 こ の無 邪 気 さが 実 践 へ 向 か う と村 お こ しの片 棒 かつ ぎに直 結 す る無 残 は何 だ ろ う。 列 島 ま る ご と、 い や ア ジ ア ま る ご と東京 に化 して ゆ く今 、 求 め られ て い るの は 身 の 大 き さの現 実 を 見つ め る冷 静 な 目な の に、 さあ民 俗 学 、 も う安 らか に 眠れ 。(朝 日新 聞1989.12.1(Y付)

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