Soki gaikokugo kyoiku : Nihon ni okeru saishin doko o saguru
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(2) SFC−SWP. l■l I. 期外国語教育 ∼日本における最新動向を探る∼ 1999年 春学期 SPR州G. 長倉加恵. 総合政策学部4年. 古石篤子研究会 慶應義塾大学湘南藤沢学会 1Lll⊥」」. 1J⊥=. L_ J_.
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(4) 古石研究会. 早期外国語教育 ∼β本における最新劇向を探る∼. 総合政策学部4年 79606654. 長倉. 加恵.
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(6) はじめに. 2002年から、現行の学習指導要敏の改訂が全面実施されることになり、その中で小 学校3年生から「総合的な学習の時間」が新たに創設されることになった。各学校の裁量 と創意工夫に任されているこの授業の一選択肢として「国際理解」があげられており、そ の中で国際理解に関する学習の一環として小学校から外国語を教えることが可能にな る注 ̄1。早期外国語教育、小学校への外国語教育の導入は90年代に入ってから注目を浴び るようになり、様々なメディアを通じて賛否両論または慎重論など多様な論議が繰り広げ られている。「英語を話せる日本人を育てるには、小学校段階から英語教育をスタートさ せることが効果的だ」という声をよく耳にするが、その中には「小学校から始めれば不自 由なく英語が使いこなせるようになるだろう」「英語を話せるようになればコミュニケー ション能力が向上するだろう」という理想論が大いに反映されており、実際の方向性はま だ確立されていないのが現状である。 第二言語習得や言語能力に関しては様々な要因が絡んでくるので、早期外国語教育が果 たしてその年齢の子どもたちにとって有効であるのか否かは一概には論じることはできな いだろう。まして、結果がすぐに出るものではないので、この問題に関しては慎重に議論 をしていかねばならない。 ここでは、第1章で我が国においての「外国語教育」の変遷を辿りながら最近の「英語 教育」に対する気運の高まりを述べ、2章で「早期外国語教育」に関しての言説の様々な 論点を推進論・反対論・慎重論の3つに大別して整理したいと思う。3章ではさらにこの 問題に対するメディアの動向を探り、4章で他国の外国語教育とも簡単に比較した上で、 最後に日本の早期外国語教育の今後を考えていくことにする。. 第1章. 日本における外国語教育の変遷. j.公教育の場において庄2 1876年(明治8)に「学制」が公布され、その中で外国語は小学校では必要に応じ て教えられる科目の一つとして、中学校では「外囲語学」として正式な必須教科として登 場する。「外国語」という言い方が法令上用いられたのはこの時が初めてである。明治初 期から中期にかけては学問をするには西洋の言葉で書かれた書物を読まなくてはならな かったことから、語学は学問をするための手段であり実用のための語学であった。 1882年(明治14)に出された「中学校教則大綱」では法令上初めて「英語」という 言い方が登場し、「英語」が科目として導入された。その後1887年(明治19)の尋 常中学校では「第一外国語」に続き、「第二外国語若しくは農業」として第二外国語が加 わるが、「通常濁語若しくは俄語」としている。現行の中学学習指導要顔の選択教科の 「外国語」のところに、英語、ドイツ語、フランス語、その他の外国語、として英語の他 に特にこの2言語が明記されているのはここに端を発する注3。1931年(昭和6)には 注1<資料①>参照,下線は筆者による。 注2飯野(1985)pp.2∼12,安藤(1993),森住(1996)を参照。72年∼96年の公立小学 校での外国語教育の変遷については、<資料②>の簡易年表を参照。 注3http://www.moITbtl.gO.jp/printing/sidou/00000002/#029. ー1叫. 第2章第9節第2参照。.
(7) 中国語(当時は「支那語」)、1943年(昭和18)には「中学校教科教授及修練指導 要目」においてマレー語や他の言語も加わったりはしたが、依然として「外国語=英語」 という考え方が主流であった。1947年(昭和22)に初めて出された学習指導要嶺で は「われわれの心を、英語を話す人々と同じように働かせること」とし、英語で考える習 慣を作ることが第1の目標にあげられている。学習指導要嶺の中でも英語に重点が置かれ ていることが見てとれる。その後の中学校の学習指導要領ではこの種の英語・英語文化一 辺倒は是正されてはいるものの、依然として英語を中心に据えてきたことに変わりは ない。小学校における外国語においては、この間特に大きな動きは見られない。 そして91年12月、臨時行政改革推進審議会が「特別活動で英会話など外国語会話の 推進を」と提言した答申を受けて、92年に文部省が公立小学校に外国語教育の実験校を 2校創設した。その後もその数は徐々に増え、96年からは全国47都道府県に各1校ず つ設置し、大規模な早期外国語教育の研究を開始した。だが現在、指定校のうちほぼ全校 が外国語として英語を取り扱っているという現状は注目に値するだろう。その後、92年 の1月には、日教組も全国教研集会で「小学校で生活英語を」と提唱している。93年に 文部省の「外国語教育の改善に関する調査研究協力者会議注4」が同省に出した答申注5の中 では、早期外国語教育に対し「児童は外国語に対する新鮮な興味と積極的な表現力を有 し、音声面における柔軟な吸収力を持っており、外国語の習得に適している」という賛成 古I和ヽ 「小学校段階では日本語を基礎としたコミュニケーション能力をまず重視すべきであ 三△.. り、児童の学習負担という見地からも慎重な検討が必要である」という慎重論を盛り込 み、当面は「実践的な研究を一層積み上げることが肝要」としている。しかし、以後3年 を経た96年の第15期中央教育審議会第一次答申「21世紀を展望した我が国の教育の 在り方について注6」では、「国際化に対処するために、(略)小学校での国際理解教育の 一環として、(略)外国語に触れ、外国の生活や文化などに慣れ親しむ機会を設定するこ とが適切である」と述べている。このことからも、’’小学校に外国語教育を導入する’’と いうことを推進する気運が高まってきたことがわかる。 そして今回の改訂では、各学校ごとの創意工夫に任せる、としながらも「国際理解に関 する学習の一環としての外国語会話等を行うときは(略)注7」というように、「外国語」 /し/\/レ′㌧/㌧ヽへノ′㌧′’\/ヽへ/ヽ/\′′レヽへヽ/ヽヽ′VヽW. ということが明記された。1947年に最初の学習指導要領が出されてからおよそ10年 ごとに改訂され、昨年(98年)12月に出された改訂は戦後6回目になるのだが、この 学習要嶺改訂で公立小学校に「外国語」という言葉が登場するのは前述した明治8年の 「学制」以来ということになる。関係者の中からは、指導要嶺の中において「外国語会話 等」と具体的学習活動を例示することによって、実質的に小学校での「英会話」を学習す る機会を設けるように促すことを示唆しているのではないか、などの反対意見も出ている が注8、この新学習指導要領は2000年から2年間の移行措置を経て、2002年から完 全学校週5日制と同時に全面実施へという流れになっている。. 注4座長=小池正夫・慶應義塾大学教授. 国際化時代に対応する外国語教育の在り方を探るため、91年4月. に発足。外国語教育の専門家や中学・高校教師の代表らが検討を重ねてきた。 注5全文は、http:〃www2.ascii.coJp/kenkyusha/mag/gendai/databank/koikeO.html参照。 注6全文は、http://www.monbu.goJp/news/00000184/参照。. 注7<資料(彰>参照,下線は筆者による。 注8<資料③>参照。. −2−.
(8) 2.「発着Jに対する意歳の高まり 日本では明治より公教育の場において「外国語教育」が行われてきたわけだが、その中 身といえば、「英語」が「外国語」としての看板を背負ってきたという実情は昔も今も大 して変わっていないことは前にも述べた。明治の最初から英語が重視された理由はその時 代の情勢を大いに映し出していて、開国後は当時の世界の主要国であった米国や英国の言 葉を学ぶ必要性から出発しているといえる。概して、政治的・経済的・文化的・軍事的側 面から外部との接触が生じた時に、自国の言語以外の外国語を学ぶ必要性が生じてくると いえるだろう。だが、それ以降の日本の「英語一極集中」や「英語一辺倒」傾向は、マス コミやメディアを通じた過度の英米崇拝が大いに影響しているといえる。近年、英語資格 試験が学校英語教育の中に取り込まれつつあることや放送英語番組、英語学校の人気の高 さは「英語ができる=かっこいい・すごい」という方程式を無視しては語れないだろう。 現行の学習指導要観で「外国語」は「選択科目」として中学1年生から導入されること になっているが、新学習指導要敏の中では、中学での「外国語」は「必修教科」にな る。現在でも、事実上は大半で英語が教えられているが、新学習要領の中では「必修教 科としての『外国語』においては、英語を履修させることを原則とする注9」ということが 明記された。中学入学以前の実に3人に1人、約200万人の小学生が英語を塾や英語教 室などで学んでいるとされている注10。また、財団法人図書教材研究センター注11が全国の 公立小学校及び私立小学校を対象に、平成8年に実施した「/ト学校における英語学習の実 態及び英語学習に対する意識に関する調査注12」によると、教育活動に英語を取り入れて いる学校は公立22.1%、私立87.7%注13、という小学校における英語教育の実態が浮 かびあがった。これを見ると、私立小学校における英語教育はほぼ’’当然’’のことになっ てきている実情がわかるだろう。その取り入れ方としては、授業の中やクラブ活動などが あげられた。次に、小学校での英語教育の導入について「必要である」と答えたのは、公 立7. 7. 1 %、. 私立91.5%と、まだ実践されていない学校でさえその大半が英語教育の. 必要性を認知していることがわかる。横浜市では英語導入の流れより一足早く、12年前 から独自に「国際理解教室」を開設し小学校の英語教育に取り組んでいるが、昨年まで任 意であった教室の開設は、今年度から市内全348校で実施されることになった注14。市 が各小学校に外国人講師の派遣等を行っている。他にも石川県金沢市では1996年秋か ら予算化に踏み切り、市内の全60小学校で特別活動の時間などを利用して「英語活動」 を. 取. り入れる注15など、自治体が独自に動き出しているところもある。 注9. 指導要領第2章第9節第3より,http://www.monbu.gojp/printing/sldou/00000002/#029参照。. 注10日本英語検定協会や大手学習塾の推定による,11ttP://www.bunri.co.jp/jukuパoumal/vo12.htm参照。 注11文部省所管の研究法人で、. 小・ 中学校の児童. 生徒の使用する学習教材・教具・教育機器などを研究し. ている機関。 小学校英語教育導入の気運の高まりから平成6年に「/ト学校における英語学習のための 注12同センタ}が 教材開発に関する基礎研究プロジェクト」を組織し(座長・伊藤嘉一) その基礎資料を得るために実施 した調査。(斎藤pp.22∼28) 注13調査対象は全国47都道府県の公立・私立小学校から公立は各県より. l. 0校づつ無作為抽出したものに 政令指定都市から無作為抽出した200校を加えた670校、私立は全163校。回答校数は公立394 校、私立106校。回答率各58.8%、65.0%という高い数値からも関係者の関心の高さがわかる。. 注14平成11年1 注15毎日新聞1. 99. 0月現在。横浜市教育委員会国際理解教育担当に確認。 6年5月25日付朝刊より。. −3−.
(9) 第2章. 早期外国語教育の論点. 早期外国語教育を議論してその是非を決めることは、ほぼ不可能であると言えるだろ う。というのは、早くから外国語教育を導入することに対する研究は多くなされている し、数々の研究結果が報告されているが、その結果を一般化しようとするには無理がある のが大半である。また、推進論も反対論も慎重論もそれぞれに主張するところがあり、そ のいずれかをとって是か非かを決定することは大変危険である。ここではその是非を議論 するのではなく、様々なメディアや文献、雑誌等で議論されている意見を早期外国語教育 に関する’’推進論・反対論・慎重論”の3つに分類し、それぞれの論点を見ていこ うと思う。ただ、反対論と慎重論は見方によってどちらに分類するかは非常に微妙な点も 多く、ここでの分類は筆者の主観によるものである。 j.据進論. ①頭脳の柔軟性・言語習得の「臨界期」説注16・「9歳の壁」説注17 一般に幼い子どもの方が吸収力が早く固定観念もできておらず、音に対しても敏感であ るので、早いうちから耳を外国語に慣らせておけば後の覚えも早く発音も向上する、と 考えられてる。また、言語習得の「臨界期」や「9歳の壁」といわれる説(教育心理学 的な立場からいうと「適期教育」)からも、新しい言語に触れるのはなるべく早い時期 が適している。. ②地球規模で激動する国際社会に生きる人材の育成 母語以外の言語を早いうちから学ぶことや異文化体験学習を通じて、子どもが複眼的思 考をもつきっかけとなり、新しい広い視野、’’新しい芽生え’’を獲得することを目的と する。また、子どもが誰とでも積極的にコミュニケーションをはかろうとする態度を養 成し、それが子どもの表現力の育成につながり、ひいては自国文化の客観視をも可能と する注18。. ③分析的(メタ言語)能力の育成 外国語と早いうちから格闘することは、子どもの知性の錬磨に役立つ。. ④「英語=国際語・世界共通語」、英語の必要性 世界で英語を常用している人は4億人以上に達し、第2外国語として使用している団を 含めれば英語が国際語としての地位を占めていることは明白で、いまや世界のラジオ ニュースの5分の3、印刷される新聞の2分の1、国際郵便の4分の3に英語が使用さ れているといわれている注19。また、インターネットや衛生放送の急速な普及による英 語のさらなる必要性と、世界共通語・国際語としての「英語」の重要性から、早期に取 り込んでその運用能力を向上させて行くべきだ。 注16. ここでいう「臨界期」とは、簡単にいえば「ある行動・行為を学習するのに最も適した期間で、その期 間を過ぎると、学習が非常に困難になるか、ほとんど不可能になってしまう時期」という意味において使 (自畑p.8) われている。一般に臨界期は2歳頃から思春期の頃までといわれている。. 注17発達心理学の説で、8歳と9歳の間に心理的な変換期があり、9歳以下の子どもは右脳で物事を直感的 に捉えることができるが、9歳を境に異言語・異文化に対する柔軟性が失われるとされる。 注18一谷(1996)によれば、小学校で英語を学んだ生徒とそうでない生徒の間には、英語に対する意欲 や関心、国際理解の意識やコミュニケーションに対する積極性に違いが見られる、という研究結果が報告 されている。. 注19飯野pp.11∼12.. −4−.
(10) ⑤「英語嫌い」をなくす 早いうちから英語の音に触れたり、文法抜きの英語に触れて英語を学ぶ楽しさを知るこ とによって、中学での「英語嫌い」と言われる子どもたちが減る。 2.反対j論. ①日本語学習の必要性・母語への影響 外国語より何よりも、まず小学校では母語である日本語を基本とする学習プログラムの 方が必要である。外国語学習も、基本は全て母語であるので母語の育成が先決である。 また、早期からの外国語導入によって子どもの母語への影響が懸念される。. ②過密なカリキュラムによる子ども・教師への負担 同時に実施される週休5日制に伴う授業時間数の削減の中で、新たに外国語教育を取り 込んでいくことは、時間の余裕的に見ても、カリキュラムが過密になり、ストレスの多 い現代の子どもへの負担と同時に教師への負担も増長する結果となる。. ③教え手・教材・メソッド・施設・設備等の不足 「だれがどのようにどうやってどこまで?」. まだ日本では確立されていない分野なので、教え手の養成と教材が不十分であり、教え ていく上で求められる教え手の資質、メソッドやカリキュラム、評価方法などが確立し ていない。また、新たな設備や施設の拡充に膨大な資金がかかる。. ④外国語学習=「発言する国際人」? 積極的に発言する子どもを育てる必要性が叫ばれているが、コミュニケーションヘの積 極性が言葉自体に内在するわけではない。外国語を導入すれば即、「発言する国際人」 の養成につながるという発想は安易である。. ⑤「非効率な」現行中学英語教育の前倒し的導入、学習意欲の低下・喪失 中学1年から何年間も学び続けているのに、日本人の英語力が世界的にもアジアの中で も底辺の方にいるのは注20、現行の英語教育が時間を費やすわりに結果を伴っていない 「非効率」なものだからだといえる。そのような現行の中学の英語教育の早期化にすぎ ないのならば、逆に長期間にわたる学習による子どもの学習意欲の低下・喪失も十分考 えられる。. ⑥受験戦争の激化 英語は受験の主要科目であるため、小学校への英語導入は、少子化で「サバイバル競争 の時代」といわれる塾産業の格好の的となること、中等学校の入試科目に組み入れられ 小学校での英語が「教科」化してしまうことへの懸念。それによるさらなる受験戦争の 助長と早期化への懸念。. ⑦「国際理解教育=英語圏理解教育」、「外国語教育=英語教育=英会話」 在日外国人の小・中学生の子どもで母語を英語とするものはわずか391人で、これは このような子どもたち全体の3.4%でしかなく(ポルトガル語36.8%、中国語 32.3%、スペイン語12.3%、これら3言語で全体の8割以上を占める注21。)、海 外在住の義務教育年相当者5万人超のうち半数以上が非英語圏での在住である注22、な 注20大谷(1997)pp.47∼49. 注21文部省による公立小・中・高等学校に就学する「平成7年度日本語教育が必要な外国人児童・生徒の受 入れ状況調査」〈平成7年9月1臼現在)の結果による(全国約11800人),<資料④>参照。 注2高橋p.12.. 一〇. −.
(11) どの日本社会・学校現場での国際化の現状への認識は浅く、このままの流れでば’国際 理解教育’’という名のもとの’’英語圏理解教育’’、’’外国語教育”という名において の”英会話の授業”になってしまうのではないかという懸念。. ⑧「英語嫌い」を増やす 対象が低年齢化するはど高いレベルの指導技術が要求される。そのようなスキルを持つ 教員不足のまま導入に踏み切れば、かえって英語嫌いを生む結果になる注23。 3.磨卓論. ①他教科との横断的・総合的カリキュラムの必要性、中学・高校へのつながり 「外国語」としてだけではなく学校のカリキュラムの中で、他教科とのつながり・一貫 性を持たせるような総合的な、子どもの成長段階に即した外国語学習の工夫・動機付 け・カリキュラム、応用範囲の広い言語材料が必要。それと同時に小学校における外国 語教育と中学・高校におけ. る外国語教育をどのように関連させていくか、小学校にお. いて既に学習した子どもとそうでない子どもの格差をどう埋めていくかも重要な議論で ある。. ②「学力」の評価の新しい視点 外国語学習に限らず、”質的”なものの評価方法の困難性を考慮しながら、知識偏重主 義の”量的’’学力から、新しい観点・広義の意味での’’質的’’な評価の必要性。. ③「言語教育」か「国際理解教育」か 「言語」を学ぶのか、「国際理解」の一端として「言語」を道具にするのかをまず明確 にする必要がある。それをせずに流れで外国語を導入することは、子ども・教師・親を 始めとした現場での混乱をきたしかねない。. ④従来の外国語学習観の転換・英語教育の見直し 従来の「読み・書き」などの文法を中心としたメソッドから、コミュニカティブ・アプ ローチなどのように「聞く・話す」ことに重点をおいた学習、言葉を完璧にマスターす るというよりはそれぞれの段階に応じて自分に自信を持ち、相手の立場を尊重しながら 言いたいことを伝え、相手の言いたいことが理解できる実際の「コミュニケーション」 能力、学習者にとって意味のある外国語運用能力を育成するような外国語学習が望まれ る。同時に従来の文法重視の詰め込み暗記型の日本の英語教育を問い直す必要がある。. ⑤保護者や地域の人々も含めた社会全体の「外国語」に対する意識改革 ’’受験のための’’「英語」という観念から脱却し、何のために外国語を学ぶのか、な ぜ公教育において「外国語」を学ぶのかということを再認識し、「外国語=英語」では 必ずしもなく、学ぶ側に選択の余地があるような外国語選択の自由が保障されなければ ならない。. ⑥「多文化英語」としての英語、複数の英語’’Engはshes’’注24 多文化英語とは「さまざまな国の人々がお互いの意思の伝達を図るために用いる英語」 (Smith1976)で、「英語使用国への言語的同化・文化的同化が必ずしも要求されない 口語・文語の英語」(遠山1979)である。英語は一つの言語であるが、同時に多くの異 種があり、どの国や地域の英語も「多文化英語」の一つであり同等の価値を持ってい 注㍊若林俊輔教授による(朝日新聞. 96.6.24付朝刊). 注24森住p.10.. −6−.
(12) る。英語は脱英米化し、「多文化化」「多様化」「土着化」しなければならない。注25. 第3章. 新聞の論調. 世論を形成したり、傾向をつくりだすのに’’メディア”は多大な影響力をもっているこ とは先にも述べた。我々は与えられた情報をそのまま受けとめがちであるが、そこに潜む 危険性を認識する必要がある。 早期外国語教育も90年代に入り、新聞・テレビ・雑. 誌 (特に英語教育関連雑誌)等の. メディアに注目されるようになった一一つの話題だが、果たしてそれがどのように取り上げ られているのか、ここでは全国紙である毎日・朝日・日本経済新聞の3紙に絞ってこの問 題に対する各紙の動向を検討する注26。 *<「外国語教育の改善に関する調査研究協力者会議」の答申に関して(93年7月30日)> ● 「英語の先生会話力で採用を」「コミュニケーション能力向上に改善 毎日新聞 策」「文法偏重の授業にはクレーム」. (93.7.31). 小学校における「英語学習」に関する推進論はマスコミでは日本経済新聞が 1980年代に先行したと言われるが注27、唯一一、この答申の記事を小さな記事だ が翌日の朝刊に掲載。答申の内容を簡単に明記し、報告に留めている。 *<小学校への英語導入の動きに関して(前述の答申が出た時点で)> 前述の答申が出された後、3紙とも同時期に社説や論説の記事の中でそれに対する記事 を掲載注28。 (93.8.3) ●”積極論”「『小学校英語』前向きに検討を」 同答申を「いささか慎重な構え」と枇判、小学校から英語に親しませる機会を設け. 毎日新聞. ることに積極的な検討を文部省に求める。 (93.8.4) 日本経済新聞 ●”慎重論’’「『生きた英語』の教育を」 「コミュニケーション能力の育成」を重要課題としていることに対して「教員の能 力向上が先決」「大学の外国語教育の改革が必須」としている。 (93.8.31) 朝日新聞 ◆’’消極論”「『使える英語』教育への転換を」 現行の英語教育に疑問を投げかけ、小学校での英語導入の動きに関しては「積極的 な自己表現の欠如は英語の授業だけの問題ではない」として、日本の学校教育全体 が変わらなければならないことを主張。 ●「文部省. 導入には慎重」として文部省の慎重な態度を掲載。(94.3.7). 注25中山pp.36∼39より抜粋。 注26各記事は、筆者が各新聞年鑑の教育関係欄の目次、朝日新聞オンラインデータベース(DigitalNews Archives)、日経オンラインデータベース(日経テレコン21)、毎日デイリ}クイック (tlttP://ⅥⅦW.Webnik.ne.jp/dalbr−Click)を用いて調べた。早期外国語教育に関して大きな動きがあっ た時、早期外国語学習に関するいくつかのキ}ワードをもとに3紙の記事を検索し、その中からいくつか ピックアップしたものであるので、全ての記事を網羅しているわけではない。 注27後藤(1997)p.17. 注28<資料⑤>参照。. −7−.
(13) *<「第15期中央教育審議会」が再開されたことに関して(95年4月26日)> ● 中教審、論議を開始」 朝日新聞 「公立中高一貫・学校5日制・‥. (95.4.27). 唯一、中教審の4年ぶりの再開を翌日に取り上げているが、「21世紀を展望した 教育改革全般に論議が及びそうだ」として早期外国語教育については特に触れてい ない。. *<文部省が研究校を全都道府県に広げる方針を決めたことに関して(95年8月17日)> ● 文部省研究校を全国展開へ」(95.8.18) 朝日新聞 「『小学校の英語』実験拡大 1面で取り上げる。同月就任した島村宜伸文相が国際化社会をにらみ、小学校での 英語教育の導入に強い意欲を示していることを受け、96年度からの研究開発校の 全国展開と研究開発校以外が英語教育に取り組むのを支援するために、JETプログ ラムによる英語の指導助手をさらに増員する文部省の方針を記載。「いずれは公立 小学校に英語教育を採り入れることを視野に入れている」と述べている。 ● 「小学校での英語教育 全都道府県に実験校」(95.8.18) 日本経済新聞 社会面で取り上げる。内容は朝日と同じことを記載しているが、今回の方針は「小 学校での英語教育の是非を問うための議論を深めるため」「今回の措置が直ちに小 学校での英語教育の本格導入に結びつくものではない」と述べ、近日開かれると見 られている教育課程審議会とともに「これらの審議の中で小学校での英語教育がど のように位置づけられていくかが今後、大きな焦点となる」と締めくくっている。 *<中央教育審議会第二小委員会が出した「審議のまとめ」の報告案について (96年5月13日)> 朝日新聞. 「小学校で英会話『親しむ機会を』」. ●. (96.5.14). 唯一、1面のトップ記事に、2面には報告案の骨子も掲載。「小学校段階で英語を 道具として覚えることには意義がある」との意見で一致した小委員会の報告に対し て「研究校で一定の成果をあげている」と述べながらも教育界での慎重論も述べて いる。. *<中央教育審議会第二小委員会が出した「審議のまとめ」中間報告について (96年5月17日)> 朝日新聞. 「小学校での英語を了承」. ●. 「教員の確保が急務. 中学入試への影響懸念」(96.5.18). 同日に総合面と社会面で扱っている。「小学校でも英語教育が行われることになっ た」と始まる。 日本経済新聞. ●. 「インターネット活用を 「小学校で英語教育」. すべての学校接続」 (96.5.18). 中間報告の骨子を掲載。見出しば’インターネット”の方が大きく書かれており、 英語導入はあくまで「国際理解教育の一環として」行うことを明示する。 *<中央教育審議会総会について(96年5月24日)> 「時間、人材どう確保」「『先進』小学校で始まった英語教育」 毎日新聞 ●. −8−.
(14) 「中学英壬丘 ローコヽ 改善を」. (96.5.25). 「教育21世紀へ」の特集で取り上げる。中央審議会が打ち出した方針を受けて、 「小学校で英語教育が本格的に始まるのだろうか」と始まり、「先進」校のリポー トから疑問を投げかける。 ●. 日本経済新聞. ●. 朝日・日経とも「/ト学校英語大筋で了承」として中央教育審議会総 会において、「中間報告」が了承されたことを小さく掲載。. 朝日新聞. (96.5.25). *<文部省が新学習指導要怒案を発表したことに関して(98年11月18日)> ● (98.11.19) 朝日新聞 「21世紀、学校が変わる」 「『総合的な学習の時間』は、公教育が息を吹き返すきっかけになるだろうか」と 始まり小・中学校の新学習指導要嶺案の要旨を掲載。同時に、関係者3人の座談会 からその期待と不安や課題を探る。同社が全国の私立中学校50校を対象に行った アンケート(46校が何答)では「小学校での英語教育が盛んになることを踏ま え、中学入試に英語の要素を導入するか」という設問に対して、入言式英語に対して は否定的・疑問視する声が多かったとする。 日本経済新聞. 新学習指導要嶺案の要旨を掲載することにとどめる。(98.11.19). ◆. *<研究校での取り組みに関して> ● 「試行錯誤続く『実験授業』」 朝日新聞. (94.3.7). 全国で最初に文部省指定を受けた実験校での英語教育の取り組みを紹介。 「英語『分かるかな』」. ●. (98.11.19). 先行実施の小学校での取り組みを紹介。「英語塾が繁盛/高学年で『嫌い』増」と して子供の英語に対する好き嫌いが極端になった意識調査や、教え手の苦悩をあげ ている。. 日本経済新聞. ●. 「英語の実験授業. 好評呼ぶ」. (94.8.27). *<「新学習指導要嶺」・「総合的な学習の時間」・「国際理解教育」に関して> ● 毎日新聞 「自治体の格差拡大 余裕のない学校現場」(98.11.26) 日本語が分からない外国籍児童・生徒が増加し続けてるが、対策が後退している現 状を受けて「こうした教育格差を放置しておくと、今後も進む教室の’’国際化’’に 対応できなくなり、『国際理解を推進する』も絵にかいたもちになりかねない」と 指摘。 ●. 「国際化で必要性高まる」「『能力向上策』は模索中」(99.2.13). 教育欄「教育21世紀へ」の「キーワードの軌跡」で、この週のテーマを「コミュ ニケーション」に設定。「総合学習に期待」としながらも「目的や方法論をきちん と詰めていく必要がある」と述べ、「違い」を受け入れる耕しさを強調。 ● (99.3.20) 「どうなる『総合的な学習の時間』」 このままでは総合学習の時間がパソコンと英語の時間になってしまう、という懸念 から「生きる力」を育てるためにどう立ち向かえばいいかを対談形式で掲載。 ● 「『国家』の枠を越え広がる”生き方の教育’’」 (99.6.5). −9−.
(15) この週のテーマは「国際理解」。「総合学習の時間」の中でより幅広い国際理解教 育が進むことが期待されている、として様々な取り組みを紹介し「自分を知ること が必要」と述べている。 朝日新聞. ●. 「…配思念瓜な豊普段噂鼠軋.盟二兎と.して 2002年、小学校の英語教育が始まる注29 へへ/ヽ/ヽへハレ\′へ/ヽへへ/へ′∨ヽ/へ∼ヽへ/ヽヽへ1/ヽヘヘへし′へ/㌧ノヽ′㌧㌧/ヽ′ヽ/\′ヽ′ヽ/\ハ∨\1vヽ\/ヽ㌧㌧′㌧1ノ. ー少子化がすすむ一方で、児童英語の市場が拡大する」注訓 という大見出しで始まる全面広告。「こどもたちを『英語好き』にするための教 師、教材、メソッドが求められている」というCICカナダ国際大学のサマースクー ルの広告に、「英語」がますますクローズアップされる、という早稲田大の中尾教 授の主張や、「早期教育が『英語好き』を育てる」「2002年の追い風がすでに吹 いている」というような幼児英語教室の教師の声、「児童への英語教育開始年齢 (各国比較)」といった表が掲載されている。この広告は、大見出しに目を奪われて この情報だけを鵜呑みにしてしまった特に幼児・子どもの親に、”あと3年で小学 校に英語が本格的に入ってくるのなら、うちの子どもにも今のうちからやっておか せよう”という意識を高めるのに一役買っているだろう。「小学校で英語」という 部分に目を奪われがちで、’’「総合的な学習の時間」の一環として’’という部分 は本当申し訳程度にしか触れられておらず、これを見逃してしまう人の方が多いよ うに思われる。 (99.5.24夕刊) ● 「異文化への関JL、引き出す」 (98.11.21) 日本経済新聞 連載「21世紀の時間割一新学習指導要裔」の中で「変わる外国語教育」を取材. し、「必ずしも英語にこだわる必要はない」とする。 21世紀への改革の備え点検」(99.1.10) ●「今年の教育界の課題 「目標へ針路明確に」「総合学習、学校の知恵の見せ所」とし「総合学習の時間」 での特色作りへの期待と不安を盛り込む。 ● 「国際理解へ導く地域教育」. (99.4.18). 小学校の実践報告から「様々な人々との触れあい通じ多文化と『共生』学ぶ」と。 一方「総合的な学習の時間現場教師に戸惑いも」「求められる創意工夫」とも。 ● 「総合学習」の課題、「寄せ集め」避ける工夫を (99.6.13) 「体験学習、主題失わずに地域に合った実践不可欠」「教師’’情報収集’’に懸命」 *<早期外国語教育に関して> ● 「入試過熱が目に見える 毎日新聞. 教えなくても困らぬ」. 「国際語、子供なら自然に. 楽しければ負担ない」. (94.10.10). 「小学校からの英語教育」に関して賛否両論併記にとどまった93年7月の文部省協 力者会議の報告書を受けて、早期外国語教育賛成派の野上氏と反対派の若林氏の対 論を掲載し、論議を投げかける。 (96.6.24) ●’’慎重論’’「大丈夫?小学校での英語」 中教審が6月18臼に公表した「審議のまとめ」の中で小学校への英語教育の導入を 提言したことを受け、教育欄において特集を組む。現場での懸念や早くも動き出し. 朝日新聞. ている塾産業への影響をリポートしながら、問題を問いかける。 注弟下線は筆者による。 注別<資料⑥>参照。. −10−.
(16) 日本経済新聞. (99.5.2) ●”積極論’’ 「早期外国語教育日本、立ち後れ」「国際社会で不可欠」. 「早期外国語教育は、今や世界中で大きなうねりとなっている。それだけに、文部 省の小学校外国語教育に対する姿勢に疑問を抱かざるを得ない。」という伊藤克敏 氏の積極論をメインに掲載しているが、「/ト学校の英語学習”中学の予習’’警戒 も」という慎重論も同時に掲載。 *<文部省が「地域における子供の外国語学習支援事業」を予算に盛り込んだことに 関して> 毎日新聞. ●. 「文部省の子供英会話教室」. (99.9.11). 「ゆとり」か英会話か−−。「ゆとり」「生きる力の育成」を掲げてきた文部省が、 小学校からの英語教育の必要性を強調し始め、新年度事業として来年度から民間の 塾などに委託して小学生向けの英会話教室を開く制度のために「地域における子供 の外国語学習支援事業」を予算に盛り込んだことを受けて、「塾委託に戸惑い」 「はっきりしない具体像」「土日利用で家庭は?」として文部省の矛盾、あいまい な姿勢と責任を追求する。「キーワードの軌跡」を一回休んで取り上げているとこ ろからもその問題意識の大きさが伺える。 、ナ. 、′■. 」. 」. 数年の3紙の動向を見てきたが、新聞の傾向というよりは論者の傾向ともいえるの. で、ただでさえ多くの論点があるこの間題に関して一概に「00新聞は00論」とは言い 切れない。ただ、社説や論説はその性格上、比較的各紙の姿勢が色濃く反映しているので はないかと思う。日本経済新聞は教育面で毎週特集を組んでこれらの問題を取り扱い、実 際の取り組みの紹介や今後の課題について論じたり、早い時期から積極的にこの問題に対 して取り組んでいる感を受けた。毎日新聞では「教育21世紀へ」という数年来続いてい る毎土曜日の教育欄で、タイムリーな話題を積極的に取り上げ、その中の「キーワードの 軌跡」では、毎回一つのテーマを取り上げて特集している。教育に関して大きな動きが あった時は「キーワードの軌跡」を休んでそれを取り上げるなど、臨機応変かつ敏感に対 応する姿勢が見られる。各紙とも手放しに賛成論を述べることはしていないが、朝日新聞 はどちらかといえば現場の苦悩や困難な現状も積極的に取材しながら「慎重論」を述べて いる。また、若者の国語力の低下や日本の「英語病」を憂う論説、英米出身者を優先的に 雇用している語学学校を取り上げるなど、この間題に対する様々な切り口からの問いかけ をし、文部省の動向にも敏感であると感じた。 新聞は世論を大きく反映していることを考えると、90年代以降この問題を取り上げる 各紙の記事が増加していることから、一般の人々のこの問題への関心の高さが分かる。ま た、世間一般の人々だけでなく現場関係者からも大きな注目を集めているといえるだろ う。新聞広告などをはじめとして、書き方一つで事実が歪曲して伝わってしまう危険性を 改めて感じるとともに、それを受けとめる側も書かれていることを鵜呑みにせず、つねに 問題意識を持つことの重要性を感じた。. −11−.
(17) 第4章. 他国の外国語教育との比較. 世界の主要38ケ国のうち初等・中等教育段階で外国語を必修としていないのは、現在 ニュージーランドと日本のみである。さらに、学習できる外国語が事実上1言語に限られ ているのは日本のみで、少なくとも3言語、多くの国が4∼7言語を選択肢として用意し ており、イギリスでは19言語、フランスでは22言語もの言語が選択肢として提供され ている。必修外国語の数も2∼4言語が多い。小学校段階から外国語教育を行っている国 は28ケ国。そのうち英語が突出して主流になっているのは日本のみ。他 国の外国語教育の実情と比較してみると、こんな結果が出た注31。 具体的には、お隣の韓国では1997年度から小学校において英語教育を実施すること を決定した(英語の他に6言語の選択を設置)。韓国教育部は、小学生は「成長過程から 見ると言語を認識し、習得するのに一番良い時期にある」という見解を発表している。中 国では原則的には4年生から英語を導入し(地域差はあるが)、大都市では中学入学統一 試験の科目となっている。教科担当制やダイレクトメソッドがとられ、「中学での学習の 準備をする」という位置づけで行われている注32。台湾では教育部の教育基本計画として、 2001年から小学校5年生から英語が必修になる。タイでは1996年から、英語を必 修ではないが小学校1年生から教えることができるようになった。だが、5・6年生のは ぼ全員が英語を学習しているという注33。 EC(EU)内の外国語教育を質・量ともに改善してゆくことを目的として89年に発表 されたLhgua. 汁0さ汀meは、全加盟国の児童・生徒に対しては、幼い段階からの外国 語教育を開始して、中等学校修了時までに母語以外のEC公用語(11言語)のうち少な くとも2つの外国語の必修を推進している。これは、今世紀における2回の大戦の悲惨な 体験をもつヨーロッパ諸国がその教訓の一つとして、文化の相違を越えた人間同士の相互 理解の努力が必要であることを痛感しているからであるとも言えるだろう。EU諸国を中 心とした国々では顕著な外国語教育の低学年化・早期化傾向が見られる。それまでは外国 壬五 日ロ. を義務教育としてこなかったイギリスが外国語教師4000人の不足のまま、1992. 年からやっと義務教育段階の11歳から16歳までの全ての児童・生徒に対して5年間の 外国語履修を義務づける教育改革を断行したのも、準備は万端には整っていないが他国に 遅れを取りたくないという思いが伺える。その上、イギリス・アメリカなどでは長年「英 壬丘 ロIコ文化中心主義」への反省から、’’1ess wideレusedlanguages”の学習を奨励する 動きも現れはじめている注別。. おわりに. 大まかに早期外国語教育の変遷とその気運の高まり、論点とそれぞれの主張、メディア の動向、他国との比較を見てきたわけだが、この間題が複雑化しているのは、様々な論点 の異なる議論がいっしょくたにされているからだ。つまり、大きく分ければ「外国語教 注31大谷泰照の調査による(96年11月現在),<資料⑦>参照。 注32伊藤(1997)pp.19∼21、木村pp.46∼48. 注∬「アジアにおける小学校の英語教育」『英語教育』pp.53∼57. 注封大谷(1996)pp.20∼22,(1997)pp.41∼46.. −12−.
(18) 育」を小学校のように早期から導入する必要があるのかどうか、開始年齢を数年間早めて も週2・3時間の学習で果たしてどれはどの効果が出るのかという論点と、では早期外国 語教育を導入するとしてはたして「外国語教育」. 「英語教育」のままでいいのか、それ. とももっと他の言語の多様性に門戸を開くべきなのではないか、到達目標の重点を” 習得”に置くのか”異文化理解’’に焦点をあてるのかという論点になるだろう。これらの 論点が入り交じってしまって、そこに次々と研究報告や研究結果、事例報告がここぞとば かりに掲げられてくるので、論じる方もどちらの論点を論じているのかが不明確になって いるのである。. さらにこの問題をややこしくしているのは、3年後に全面実施される新学習指導要観で 創設される「総合的な学習の時間」の曖味な位置づけと、方向性がはっきりとしない文部 省の態度である。「国際理解教育」はそのはんの一例に過ぎないと明記されているはずな のに、このままではなし崩し的に大半の小学校が何らかの形で「英語」を導入することに なると言われている。 壬丘I}. ’’何らかの外国. ロロ. を小学校段階から導入することに私は基本的に賛成であるが、はじ. めからその選択肢を「英語」だけに限定してしまうことには反対である。なぜなら、まだ 柔軟性があり、何でも受け入れられる吸収力を一番もち合わせている年頃だからこそ、そ の時期に自分とは異なる多様な世界を知る’’きっかげ’となるものを広く与えるべきであ るし、それこそが本来の教育のあるべき姿だと思うからだ。それを大人のもつ先入観や固 定観念で、学校・教師側が勝手に限定したものを子どもに与えるのは、かえって幼い頃か らの偏見や先入観を助長してしまう結果になりはしないだろうか。この頃に培われた素地 や周囲に対するものの見方は、その後の子どもの価値観や考え方にも大きく影響してく る。幅広く吸収する力をもっている年齢だからこそ早期外国語教育は「言語教育」か「国 際理解教育」かという議論とともに慎重に行われなければならない。 平成7年度の文部省の調査によると、日本の公立小・中学校で日本語教育の必要がある とされている外国人児童・生徒の数は、1991年の調査では5千人程度であったのに対 して、その4年後には約1万2千人にのぼっている(そのうち小学校では8192 人)。該当する子どもが在籍する学校数も急増しており、今や日本の学校の約10校に”一 つは外国人児童・生徒を在籍させていることになる注35。また平成10年末現在における 外国人登録者数は過去最高を更新し、我が国の総人口に占める割合は1.2%となった。 出身地域別に見ると、アジア地域と南米地域の出身者で外国人登録者総数の92.5%を 占めている。入国管理局の統計では未登録の外国人は1995年で28万人を上回ってい るとも言われており、日本に住む外国人の数は年々増加の途を辿っている注36。本来なら ば「国際理解教育」などと肩肘を張る必要はない。異文化の背景をもつ子どもたちが同じ 教室・学校・町にいるという国際化の状況がこのように目前にあり、その数は益々増加 傾向にあるのだから、社会・学校・教師さえそういった環境をボジティブに生かしていく 工夫をする気があればいいのである。そうすれば、「国際理解」は特別な枠を設けなくて も自然な形で行われるだろうし、最も身近なものとして感じることができるのだと思う。 それこそが「国際理解」の理想的な形であると私は考える。 結局のところ、指導要顧がどうであろうと何らかの形で英語に触れている子どもが多 注35文部省「平成7年度日本語教育が必要な外国人児童・生徒の受入れ状況等に関す調査」より, <資料④>参照。 注36法務省入国管理局「平成10年末現在における外国人登録者統計」より,<資料⑧>参照。. −13−. 言責丘. 仁コロロ.
(19) く、研究指定校以外でも大半の小学校がすでに英語教育を導入しているという現状があ る。それならば早期外国語教育を導入する方向に決めてしまって、その上で中身をどうし ていくか、ということを実践報告や研究結果と平行して議論していかないかぎり、このま まではこの問題はいつまでも五十歩百歩のままだろう。明確な「答え」が出る問題ではな い上、動き出した船(世論も含めて)はもう止められないのは誰の目にも必然である。そ れより「外国語=英語」「外国=英語圏」「英語=アメリカ・イギリス英語」的な思考か ら脱却し、子どもから大人までが文化・言語の多様性に目を向けることができるような開 かれた環境の整備と意識改革が早急に求められているのではないだろうか。メディアや世 古河ヽ 世界的な動向や理想論ばかりが先走りして、それに付随する形でのなし崩し的な「早. 三△.. 期外国語教育」導入は、ただでさえ学級崩壊やいじめなどの深刻な問題が山積みになって いる学校現場をさらに混乱させることになるだけである。地に足をつけ、現実を見据 えた実践的なステップを重ねていくことが必要である。. ∼参考文献∼ アダチ徹子他(1999)「小学校の英語教育一英語教育の原点」『英語教育』大修館. 6月号 PP.40∼41. 安藤昭一(1993) 飯野至誠(1985) 伊藤嘉一(1997) 伊藤嘉一(199ア). 「指導要額の変遷と教育現場」『英語教育』8月号 :「英語教育の目的」『英語の教育一変遷と実践−《改訂版》』大修館書店 「アジアの早期英語教育」『英語教育』11月号 pp.19∼21 「韓国の英語教育」「北京・天津の英語教育」「上海の英語教育」『英語教育』 各1月号・2月号・3月号. 〈1996). 一谷浩史 遠藤克弥(1998). 「小学校で英語を学んだ生徒を受け入れて」『英語教育』10月号pp.32∼34. 大高博美(1996). 「公立小学校に英語科が導入される日」『英語教育』6月号. 大谷泰照(1996). 「もしも小学校から英語があったら」『英語教育』3月号. (1997) 沖原勝昭(1998). :「諸外国における外国語教育改善の方向」樋口忠彦偏『小学校からの外国語教育』 「英語教育界への大きな課題」『英語教育』3月号pp.34∼35. 奥田祥子(1998). 『ボーダレス時代の外国語教育』未来社. 梶田正巳ほか偏(19. 『国際化理解と教育』川島書店 pp.32∼35. 97)『外国人児童・生徒と共に学ぶ学校づくり』ナカニシヤ出版. 河合忠仁(1998). 「第2言語学習の開始時期}諸外国の事情から考える−」『英語教育』6月号. 北. 『環境と国際理解の教育∼これからの学校・授業∼』東洋館出版社 「韓国の英語教育改革から学ぶこと」『英語教育』ア月号. 俊夫(1996). 木村由利子(1998) 後藤典彦 (1997) 後藤典彦. (1996). :「経緯と展望」樋口忠彦偏『小学校からの外国語教育』 「文部省、小学校「英語」実践研究を拡充」『英語教育』7月号. 斎藤英行. (1996). 「小学校英語教育についての意識調査から」『英語教育』10月号. 白畑知彦. (1998). 「外国語学習の臨界期をめぐる議論」『英語教育』6月号. 高橋正夫. (1996). 「外国語教育一何を目指してどう行われるべきか−」『英語教育』6月号. 寅屋照夫. (1989). 『国際感覚を養う英語教育』あすとろ出版. 中山行弘. (1997). :「ボーダレス時代の外国語の役割」樋口忠彦偏『小学校からの外国語教育』 『外国語教育理論の史的発展と日本語教育』アルク. 名柄. 辿著(1989). p73. 日本英語教育改善懇談会「日本の外国語教育の改善に関する提言」『英語教育』 pp.76∼79 1998年3月号 樋口忠彦はか偏(1997)『小学校からの外国語教育∼外国語教育改革への提言∼』研究社出版. −14−.
(20) 松川豊子(1998)「小学校英語教師の養成∼だれがどのように教えるか∼」『英語教育』1月号 森住衛(1996)「<外国語教育=英語教育>でよいのか?」『英語教育』6月号. pp.8∼10. 矢村篤子(1996)「英語導入は、小学校教育改革の起爆剤」『英語教育』8月号. p.73. 渡辺寛治(1999)「外国語会話等の授業で子どもは何を青むのか」『英語教育』 6月号. pp.28、29. 「アジアにおける小学校の英語教育」『英語教育』1998年9月臨時号 「英語教育界への大きな課超」『英語教育』1998年3月号 「小学校の英語教育」『英語教育』1998年9月臨時号 卜. 集集集集 特特特特. 卜 「 卜. pp.34、35 pp.40∼59. 日本の外国語教育は現状のままでよいのか」『英語教育』1996年6月号. PP.8∼19. 子どもに焦点を当てた外国語教育」『英語教育』1996年10月号 外国語学習と年齢」『英語教育』1998年6月号 pp.8∼21 早期英語教育の可能性」『英語教育』1999年10月号. pp.8∼34. pp.8∼29. http://sh.cru.orJp/LIBRARY/KODOMO/ヽrOIj(ChildResearchNet「季刊 こども学」) 「ぶんりじゃ−なる」2号) http://www.bunri.co.jp/山kuパournal/vo12.htm(文理 http://www.e.招.yamagata−u.aC.jp/KOKUSAI_和KAI/syoug−eigo.html(小学校からの英語教育) http://www.klsarazu.acjp/∼aW如i/El刀/AmCLE/teigen97.html(日本の外国語教育の改善に関 する提言) http://www.1it.osaka−Cu.aC.jp/∼ikad/childノつastec.htm(日本児童英語教育学会) http://www.md.goJp/PRESS/99053卜1.htm(法務省入国管理局 http://m.moIlbu.gojp/printing/sldou/00000002/♯029(文部省. 平成10年末現在における外国 人登録者統計について) 学習指導要領平成元年度版). http://www.monbu.gojp/news/00000209/(文部省「平成7年度日本語教育が必要な外国人児童・ 生徒の受入れ状況等に関す調査」) http://www.monbu.gojp/news/00000317/卜galko2.htId(文部省. 新学習指導要額). http://www2.ascii.cojp/keI−血yusha/mag/gendai/databank/koikeO.html (「外国語教育の改善に関する調査研究協力者会議」報告書) http://www2.ascii.co.jp/kenkyusha/mag/gendai/databank/shogaku.h.html. (「公立小学校での外韓語教育」簡易年表) 『朝日新聞』. 93.8.31,94.3.7,95.4.27,95.8.18,96.5.14,96.5.18,96.5.25,96.6.24,. 96.12.27,98.11.19,99.3.12夕刊,99.5.9,99.5.24夕刊,99.6.10 『毎日新聞』. 93.7.31,93.8.3,94.10.10,96.5.25,98.11.26,99.2.13,99.3.20,99.6.5, 99.9.11. 『日本経済新聞』. 93.8.4,94.8.27,95.8.18,96.5.18,96.5.25,98.11.19,98.11.21,. 99.1.10,99.4.18,99.5.2,99.6.13. (記載のないものは全て朝刊). −15−.
(21) <資料①> 出払二仇′WW.mmbu.gptわ力】eWS/0000()298/s−SOSO女u.加mJより第J章農工射第3を顔粋 (下顔は筆者によるノ ○文部省告示第175弓 学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)第25条の規定に基づき,小学校学習指導要領(平 成元年文部省告示第24号)の全部を次のように改正し,平成14年4月1日から施行する。平成12年4 月1日から平成14年3月31日までの間における小学校学習指導要領の必要な特例については,別に定め る。. 平成10年12月14日 文部大臣. 有馬. 朗人. 小学校学習指導要嶺 第1章. 総. 則. (略). 琴/軍′//琴今埠卒学草野弊層甲現勢シ/ラ 1. 総合的な学習の時間においては,各学校は,地域や学校,児童の実態等に応じて,横断的・総合的な. 学習や児童の興味・関心等に基づく学習など創意工夫を生かした教育活動を行うものとする。 2. 総合的な学習の時間においては,次のようなねらいをもって指導を行うものとする。 (1)自ら課題を見付け,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よりよく問題を解決する資質や能力 を育てること。 (2)学び方やものの考え方を身に付け,間遠の解決や探究活動に主体的,創造的に取り組む態度を育 て,自己の生き方を考えることができるようにすること。. .3……各登校.におふ三て温‖…2‥に示まねら女王盈踏まえJ….観えば鼠際理解∫‥‥債軋…腰塩,…慮祉‥:‥健康 風∴絵念飽な課題ふ…児童彪興廃‥∴腐心に基ゴ.く.課題ん..地戚や登校の特色に応じた課題な.ど.にコもミニ.… 実態.に応.じた貨忍法敷盈行.乏ものよま.る月… 4. 各学校における総合的な学習の時間の名称については,各学校において適切に定めるものとする。. 5. 総合的な学習の時間の学習活動を行うに当たっては,次の事項に配慮するものとする。 (1)自然体験やボランティア活動などの社会体験,観察・実験,見学や調査,発表や討論,ものづく りや生産活動など体験的な学習,問題解決的な学習を積極的に取り入れること。 (2)グループ学習や異年齢集団による学習などの多様な学習形態,地域の人々の協力も待つつ全教師が 一体となって指導に当たるなどの指導体制,地域の教材や学習環境の積極的な活用などについて 工夫すること。. (3)貝原理解.に屈ま.る誉召.のこ温としエの外国語会話箋査定.う.と豊.はふ‥誉佼.の実態箋.に応.じん 用議.に触わたり,人…外用盟生活や文化な.ど.に慣わ親.と∠んだ.り.ま.るな.どd上誉振段願.にふミ な誉男鹿亨行われるよう‥にま.るエ.と月…. (略).
(22) <資料②> 加わノル血wゼ.∂SC〃.co力〕パわ†確yLJSム∂/mag/セeJ〕daj人f∂ねbぉ止/セム碓発汝u九力山7Jより顔粋. 「公立小学校での外国語教育」簡易年表(’72∼’96). 1972年度より. 千葉県下の公立小学校において「英語教室」(クラブ活動)を開始(15校)。. 1980.11.16. 日本児童英語教育学会(JASTEC)設立。 横浜市立小学校において「国際理解教室」(前身)開始。 1986年度より 改善懇第19回大会、「小学校における国際理解教育について」のアピールを採択。 1990.12.1/2 1991.4.16 「外国語教育の改善に関する調査研究協力者会議」発足。 1992.1.24 日教組第41次教育研究全国集会にて大場昭委員長が「小学校の早い段階から生活言 語としての英語教育」の実施を提唱。 1992.2.20 文部省初等中等教育局長・坂元弘直氏が「小学校外国語教育」につき検討の対象とする 可能性を示唆。 1992.5.22 鳩山邦夫文相が大阪市立真田山・味原小、同高津中を研究開発校に指定し、英語学 習を実験的に導入することを表明。 研究開発校に鹿児島大学附属小学校と千葉県東金市立鴇嶺小学校の2校を追加。 1993年度より 1993.7.30 「外国語教育の改善に関する調査研究協力者会議」が「中学校・高等学校における 外国語教育の在り方について(報告)を発表。「小学校段階での外国語教育」に関 しては推進論と慎重論の併記に止まる。 研究開発校に新たに12校が指定され、教科、特別活動など多様な取り組みを開始。 1994年度より 1994.11.18 研究開発校の大阪市立真出山・味原小において公開研究会を開催。 改善懇第23回大会「アピール」に、小学校における外国語を含む「国際理解・異文 1994.12.10./11 化理解」教育について、「高学年(4∼6年)で必修教科とし、週当り1時間以上 1995.3. 1995.4.12 1995.4.26 1995.4.28 1995.6.11. 1995.8.24 1995.12.23ノ24 1996.1.26 1996.3.21 1996.3.27. 1996.5.13. 1996.6.18 1996.8.27. の授業時数を確保する」ことなどを提唱。 東京都外国語教育問題懇談会(小池生夫座長)「報告書」を提出。「制度の改革」 の−一環として小学校からの外国語教育を提唱。1995年度予算に「カリキュラム構成 等に関する調査研究費」を計上。(私立小学校における外国語教育の実施状況に関 する2年間の調査を実施) 日教組21世紀ビジョン委員会(大内秀明座長)が最終報告を横山委員長に提出。「小学校 から生活英語を導入。JErプログラムを拡充し、小・中・高校に1人を配置」などを提言。 「第15期中央教育審議会」が再開。 「教育課程に関する基礎研究協力者会議」発足。 JASTEC第16回全国大会にて「小学校から外国語教育を!JASTECアピール」を採 択。文部省初等中等教育局長宛に提出。 中教審総会。第1/ト委員会「学校5日制の完全実施」および第2小委員会「国際 化、情報化、科学技術の発展など、社会の変化に対応する教育の在り方」の設置を決める。 改善懇第24回大会開催。中教審宛「要望」として「アピール」の内容を討議。小学 校における外国語教育に関しては根強い慎重論を反映。 東金市立鴇嶺小学校で公開研究会を開催。 中教審、総会開催。「学校5臼制」の完全実施を求める第1小委員会の中間報告。 中教審第2小委員会、小学校での英語教育について、「教科としては導入しない」 が、各小学校が特別活動や総合学習の時間を活用して自主的に英語教育に取り組む ことについては推進・支援する方針を打ち出す。 「小学校での外国語学習」に関する研究開発校、新たに指定される(昨年8月18 臼、島村文相が約束していたもの)。継続13校、新規34校。 中教審、「審議のまとめ」を公表。3月27日に発表された方針を確認。 教育課程審議会、再開。.
(23) <資料③> 1998年10月21日. 教育課程審議会 会長 三浦朱門殿. 日本の外国語教育の改善に関する提言(後) 日本外国語教育改善協議会. びを実感できるようにすること。 V.小学校における外国語教育について. また,私たちが繰り返し主張しているように,「国際理. 解」教官「外国語」教育,「英語」教育,「英会話」を単 1.「総合的な学習の時間」の具体的学習活動につい. 純に同一視してはならない。. て許述することは望ましくない。. r答申』は,「総合的な学習の時間の教育課程上の位置 付けほ,各学校において創意工夫を生かした学習活動で. 2.実施する前に解決すべき諸問題がある。 小学校段階で外国語を何らかの形で児童に学はせるの. あること,この時間の学習活動が各教科等にまたがるも. であれは,言語教育の一環として,母語である日本語の教. のであること等から考えて,国が目標,内容等を示す各. 育と関連づけて教育課程に位置づけるために,小学校に. 教科等と同様なものとして位置付けることほ適当でほな. おける「外国語教育」としての「カリキュラムおよび教材. いと考える」との判断の下,「各教科等のように内容を 規定することはしないことが望ましいと考える」と述べ. の開発」「教員の確保と養成」「施設・設備の拡充」な ど,前もって解決すべき諸問題に早急に取り組む必要が. ている。この通り実現することを望む。 しかし,また,同F答申』ほ,小学校の「総合的な学習の 時間」において,「国際理解教育の一環としての外国語会. ある。. また将来,多くの小学校で実施されるようになれは,. 話等が行われるときには,各学校の実態等に応じ,児童. その「実施を踏まえ」て中等学校の入学者選抜などで「国 際理解・外国語会話」の学習内容が出題され,それがま七. が外国語に触れたり,外国の生活や文化などに慣れ親し. 小学校の教育内容に影響を及ばす可能性も現状では否定. んだりするなど小学校段階にふさわしい体験的な学習活 動が行われるようにすることが望ましい」と述べている。 「外国語会話等」と具体的学習活動を例示することによ. できない。. り,実質的に小学校で「英会話」を学習する機会を設ける ことを促す意図がうかがわれる。「総合的な学習の時間」 の具体的学習活動について詳述することは望ましくない。 文字通り「国際理解」を目標とするのであれは,その学 習活動が「英会話」に偏することほ,真の意味での国際理 解をかえって阻害する要因ともなりかねない。私たちが かねてから主張しているように,「国際理解」に関する目 標についてほ次の4点に留意すべきである。 く1)生活習慣や考え方の異なる人々と積極的に触れ合 い,理解しようとする態度を育てることを目標とす ること。. 〈2)様々な文化・言語に壊する槻会をつくること。 (3〉様々な人々と実際に触れ合う機会を持てるように すること。 く4)様々な言語を使ってコミュニケーシ五ソを行う喜. ¢英語教育』大修潜J999年2月号. β.ア0より.
(24) <資料④> 平成7年度日本藷教育が必要な外国人児童・生徒の受け入れ状況調査結果 学校種別. 区分. 小学校. 中学校. 計. 高等学校. 学校数. 2.611校. 1,237校. 3.848校. 73校. 児童生徒数. 8,192八. 3,350八.. 11,542八. 264人. 母語別. 替ポルトガル綿. 「■■■. 小・中学校 書萱丘 口. P口. ポルトガル語. 人数. 人数. (割合). (割合). 4,244八. □中国語. 高等学校. 蔓云;. フイリピノ語. 廿ベトナム綿 1英語. 26八. (36.8%). (9.8%). 3.726八. 182八. ●●●●●. その他(40拍). ●●●●● ●l●■l●●. 中国語. (32.3%) スペイン語 フイリピノ語 ベトナム語 英語 その他(40語) 計. 1,423八 (12.3%) 494八 (4.3%) 405八. (68.9%) 17八 (6.4%) 9八 (3.4%). (3.5%). 6八 (2.3%〉. 391八 (3.4%). 4八 (1.5%). 859八 (7.4%) 1,542八 =00%). スペイン語. 3.. 盗芋.4%  ̄ ̄−一■●●●●●. ●●●●●●■●●. 3. 20八 〈7.6%). 0 0. 32.3%. 264八 (100%) l. せグラフは左の表をもとに筆者が作成. 加地二仇ww.monbu.go血力】eⅥ愕/00000209/舶abJeJより (文部省学術国際局国際企画課).
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