大きな白い空間の左手には、四頭の黒い馬が観覧者達をじっと見下ろしていました。時折聞こえてくる大きなラッパのような音は、馬たちを形作っている映画フィルム製の黒い角笛です。この作品は、フィリピンを拠点に活躍しているカワヤン・デ・ギア氏が手掛けたものです。彼は社会的・政治的問題を皮肉やユーモアに包んだ作品を得意とし、馬の像に使われているフィルムは、映画撮影のために大量廃棄されたものを使用しているそう。
私たちが訪ねたのは、2016年の秋に愛知県内
中心に実施された「名古屋地区」へ足を運びまし 催された3地区の中で私たちは、名古屋駅付近を 進気鋭のアーティスト達が参加していました。開 ないフィリピンやビルマなどの東南アジアまで、新 国や韓国、さらには普段あまり目にすることの少 は、日本だけではなく、アメリカやヨーロッパ、中 2016」です。この大規模な現代アートの祭典に 3地区で開催された「あいちトリエンナーレ 紹介します。 文化センターと、名古屋市美術館エリアについて た。今回は、その名古屋地区の中でも、愛知芸術
まずは、愛知芸術文化センターについて。このエリアでは、冒頭でも紹介したギア氏の「Trojan
おり、参加していた作品はじつに 中心に、いくつかの階でそれぞれ展示が行われて す。またこの文化センターでは、8階と10階を House」がお出迎えしてくれま
に、圧倒されます。 展示室を抜けるたびに異なる雰囲気を見せる空間 いて、彼らの世界が様々に入り混じっていました。 日本・アジアのアーティストを中心に展示されて の中でも比較的大規模なエリアでした。ここでは、 35!名古屋地区
多くの作品の中でも、印象に残った作品を一つ、紹介しましょう。その作品は、三田村光土里氏の「今が知る時なの、その重さを」です。一部屋まるごと彼女の作品に充てており、そのスケールとボ
あいちトリエンナーレ
2016
外国語学部 中国語学科
3年小橋風音
↑トリエンナーレポスター愛知芸術文化センター会場にて
31
リュームは圧巻の一言です。兵隊のおもちゃや本、コップ、フォークに写真、壁に縫われたタコ糸……一見様々なものが入り乱れているようにも見える部屋には、彼女からのメッセージが文字になって、形になって潜んでいます。所々に散りばめられている短い一言には、共感できたり、考えさせられたりと、どれも心に残るものばかりでした。ちなみに、彼女は愛知県出身で、現在は東京に拠点を置いて活躍しているそうです。
次に、名古屋市美術館エリアについて紹介しま す。このエリアには
した。 く、美術館の資料も一緒に見学することが出来ま す。入館するとトリエンナーレの作品だけではな ど、普段見ることの少ない地域の方が多かったで 加アーティストもモンゴルやブラジル、メキシコな 12の作品が集まっており、参
印象に残った作品は、小杉武久氏の「LightMusic
で一つの楽器のようでした。また、マリアナ・ テーブルのあちこちから聞こえてくるのは、まる 間隔で音が鳴るというもの。パタタタという音が コードが様々に組み合わされた作品で、不規則な Ⅱ」です。この作品は、小さいモータと
K・
デバル氏のトーテムポールも見ごたえのある作品でした。二階の展示室に立ち並ぶ、でこぼこした個性的な形のトーテムポールは見ごたえがあり、どれも表情が少しずつ異なり興味深かったです。
今回、あいちトリエンナーレを見学してみて、日ごろあまり触れることのない様々な現代アートを観賞することが出来ました。普段は現代美術に対して、個人的に難しいイメージがあったのですが、このアートイベントで現代美術に触れるきっかけが作れたように思います。また、アーティストたちが何に関心を持ち、どのようなメッセージを作品に込めたかったのかを考えることによって、作品と向き合うことがとても面白く、現代アートを観賞・理解するうえで大切だと感じました。
↑三田村光土里氏「今が知る時なの、その重さを」
↑三田村光土里氏「‥」
↑カワヤン・デ・ギヤ氏「Trojan House」
↑刘 韡(リウ・ウェイ)氏「緑地」
学生が見た世界●