• Tidak ada hasil yang ditemukan

はじめに 韓国に非熟練外国人労働者の流入が始まったのは

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2023

Membagikan "はじめに 韓国に非熟練外国人労働者の流入が始まったのは"

Copied!
14
0
0

Teks penuh

(1)

はじめに

韓国に非熟練外国人労働者の流入が始まったのは、日本より数年遅れた1980年代の後半、

国内労働市場で3K(危険、汚い、きつい)職種の人手不足が深刻になった時期である。非熟 練部門に非合法的な外国人の就労が広がるなか、使用者側は政府に対して合法的に外国人 労働者を雇用できるよう求めた。その要求に対する政府の答えは、外国人労働者を労働者 としての地位と権利を認めない、法制上学ぶことを目的とする研修生制度を変容させるこ とであった。日本の研修生制度がスタートした1990年から遅れること

3

年、1993年のこと である。

それ以降、日韓両国の研修生制度は、その実情は異なるものの、内外から多くの非難に さらされてきたことは周知のとおりである。ところが

2004年、韓国で非熟練外国人労働者

を合法的に雇用できる雇用許可制が開始され、2007年には研修生制度が廃止されたことで、

日本と別の道を歩み始めた。日本でも2009年、在留資格「技能実習」を新設する「出入国 管理及び難民認定法」(以下、入管法)の改定が行なわれ技能実習制度に一本化されたが、法 制上の基本的な仕組みは既存の制度を維持している。

非熟練外国人労働者をどのような制度的枠組みで受け入れ管理するかは諸外国でも最も 悩ましい移民政策の課題のひとつである。少子高齢化による労働人口の絶対数が減少して いる先進諸国において、外国人労働者受け入れ政策は国内労働市場の再編だけでは対応し きれない社会の基盤変化に伴う総合政策としての意味合いを帯びている。そのうえ、それ が非熟練労働者となれば、問題は簡単ではない。雇用をめぐる自国の労働者との競合、定 住に伴う社会的費用の増加、産業構造高度化の阻害など、経済産業問題のみならず、それ を超える危惧がつきまとう。研修生制度はこのような危惧のなか、日韓両国が選択した政 策であった。では、日本と同じ道を歩んできた韓国はなぜ政策を大きく転換させたのか。

本稿はまず韓国が研修生制度から雇用許可制へ舵を切った理由について、また雇用許可制 はどのような制度なのかについて、検討する。そして雇用許可制が韓国の移民政策全般に どのような意味をもつのかについて論じることにしたい。

1

政策転換の背景

韓国が非熟練外国人労働者受け入れ政策を研修生制度から雇用許可制へ転換させた理由

(2)

は、一文にまとめるならば、未登録外国人労働者(1)を減らすとともに、労働市場で求人が 困難な部門に外国人労働者を供給するためである。だが、この

2つの理由は別に韓国のみな

らずどの国も当然のように挙げている政策課題である。研修生制度が実行されていた期間 を通してみると、通貨危機に見舞われた

1998年を除けば、韓国労働市場の非熟練部門にお

いて外国人労働者の就労は一貫して増大してきた。問題はその大半が未登録労働者の増加 によって占められてきたことである。視点を変えれば、これは研修生制度が外国人労働者 の供給という側面でそれほど機能しなかったと言い換えられる。つまり研修生制度は韓国 において、未登録労働者を減らすことも、外国人労働者を的確に供給することもできなか ったのである。少し詳しくみてみよう。

外国人労働者の流入が始まった1980年代後半まで、韓国では一部の専門職を除くいわゆ る「単純労働者」の就労は皆無に近い状態だった。所得水準が低く、外貨獲得のために外 国に労働者を派遣する送り出し国だった韓国に、外国人が出稼ぎにくることはまず考えら れない。当時の入国管理政策も、1991年にそれまで限定的に実施していた海外投資企業研 修生制度が拡大され、研修生という名の外国人労働者の受け入れが始まるまで、制度上

「非熟練労働者」が就労できる枠組みは存在しなかった。したがって、在留資格の類型別外 国人労働者の推移を示した第

1図のとおり、1991年までに、語学教師や少数の外資系企業に

勤める経営・専門職を除けば、国内に就労している外国人労働者は非合法就労状態であっ たと言える。そして海外との事業実績のない中小企業まで研修生の受け入れが可能になっ た1993年以降、研修生が増加し、未登録労働者が減少する動きをみせるが、それも一時的 な現象にすぎなかった。未登録労働者の割合は1998年通貨金融危機の直撃を受けた韓国経 済が深刻な不況と雇用不安に陥った時期に一時下がったものの、増加の一途をたどった。

こうした未登録外国人労働者の増加は、先に述べたとおり、研修生制度が非熟練外国人 労働者の受給システムとして的確に機能しなかった実態の反証でもある。研修生制度は本

(年)

1987 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 2000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10  法務部「出入国管理統計年報」各年度。

(出所)

研修ビザ 非正規滞在者

就労ビザ 合計 800

700

600

500

400

300

200

100

0

第 1 図 在留資格類型別外国人労働者の推移

(1000人)

(3)

来、韓国企業の海外現地法人で働いている外国人労働者を対象に技術研修を行なうことを 目的とする制度であったが、1992年、中小製造業

10

業種

1

万人のクオータを決め受け入れ を開始し、研修生制度の本来の趣旨と離れ始めた。当時人手不足に直面していた産業界は、

政府に対して人手不足対策として外国人労働者の受け入れを要望したが、政府は外国人労 働者の受け入れは国民的理解が足りないとし、研修生制度の拡大によって対応したのであ る。そして

1993年には人手不足が深刻な中小企業の要望を受け一般中小製造業に業種を拡

大し、使用者団体を運営主体とする「団体推薦型」(日本の団体監理型に類似する)として研 修生制度が本格的にスタートした。その後、研修生制度は完全に人手不足対策として受け 入れクオータの増員を繰り返しながら、2004年雇用許可制が施行されるまでに、事実上韓 国で非熟練外国人労働者を受け入れる唯一の国際的な労働力需給システムとして機能した のである。しかしその需給システムの運営実績は、「研修」という制度本来の機能は言うま でもなく、以下のように、労働力需給システムという変容された機能も低下してきた。

第1に、労働市場において合法的な就労者である研修生に比べて未登録労働者のほうがよ り有利な立場におかれる矛盾した状況が形成された。研修生は法的に労働者ではないため に労働者として保護されず、賃金など労働条件に関する監視機能が欠如していた。その結 果、低賃金、長時間労働、労災に対する不適切な対応、ひいては職場での暴力など人権侵 害の事例が多発した(外国人労働者対策協議会

2001)

。こうした事態に対し、政府は「外国人 産業技術研修生の保護および管理に関する指針」(労働部例規、1995年

2

14

日)を策定し、

研修生に対して労働基準法(韓国では「勤労基準法」と言う)の一部適用(2)を決め研修生保護 の方針を決めた。また2000年から労働部の「外国人労働者民願処理指針」により研修生に 労働基準法を全面適用し最低賃金を保証するなど、研修生の労働者性を認める方向へ政策 を修正するも、「研修生は労働者だ」という認識がすでに一般化していた労働市場に特別な 効果はもたらすことはできなかった。

第2に、公式には非熟練労働者を受け入れない政府の政策基調と中小企業の労働力不足を 補うという2つの政策目標は、外国人労働者の人権問題と未登録労働者の増加のために、次 第に両立が困難になった。研修生の職場離脱と未登録労働者が増え続けるなか、中小企業 の人手不足に配慮した入管や労働行政の監督や取り締まりは形骸化していった。さらに未 登録労働者に対する処罰の免除や出国期限延長など「救済措置」を実施し、政策の正当性 を保とうしたが、使用者と労働者両者に対し不法状態を追認する効果もあり、低下した需 給システム機能の回復には至らなかった。たとえば、1997年に、通貨金融危機によって失 業者が大量に発生するなど雇用状況の悪化への対応に迫られ、未登録労働者の出国を誘導 するために出入国管理法違反の処罰を免除する措置がとられた。しかし外国人労働者の就 労が3K職種など不況下でも求人が困難な部門に集中していたために、未登録労働者の減少 は限定的で、結果的に政府の外国人労働者受け入れ政策は打つ手なしの崩壊状態に陥った のである。

(4)

2

雇用許可制の創設

合法的な非熟練外国人労働者の需給システムとして採用された研修生制度の機能が低下 し、未登録労働者の増加が続く事態は出入国管理に全権を振るう政策当局にとって正統性 の危機となった。一般の中小企業も研修生を受け入れるようになった「団体推薦型」の導 入により(1993年)、外国人労働者受け入れをめぐる議論は政策上「一件落着」したに思わ れたが、外国人労働者を研修生ではなく正規の労働者として受け入れる制度の創設は繰り 返し提起されてきた。外国人労働者に対する需要が拡大し未登録労働者が年々増加する市 場状況に鑑みると、多くの問題を内包している研修生制度では到底対応できないという主 張は、研修生制度が本格化した当初から多く提起された。特に市民団体は研修生制度に起 因する人権問題を厳しく批判し、外国人労働者に関する問題は徐々に社会一般にも広く知 られて社会問題化してきた。また、研修生制度の問題に対する認識は政府内にもみられ、

なかでも当時の労働部は早くから雇用許可制の導入を主張し、第1表のように、実際に研修 生制度に代わる新しい制度の制定に向けた動向もみられた。

ところで、政府内の政策調整が常に「研修生制度対雇用許可制」の構図で一貫していた わけではない。関係省庁間では雇用許可制のほかに、研修生を労働者として就労が可能な 研修就業制度(日本の技能実習制度に類似する)も並行して検討が行なわれ、労働部も政治的 状況によって雇用許可制と研修就業制の間で揺れ動いていた(ソル・ドンフン

1999、455― 462

ページ)。政府内の政策調整は、研修生制度の維持を強く求める中小企業経営者と、その要 求を代弁する当時の通商産業部および中小企業庁の主張どおりに、2年間の「研修」後、1 年間労働者の身分で就労が可能な研修就業制度の導入に決着した(3)。研修就業制度は非熟練 外国人労働者の「労働者」身分を認めたことに制度的に大きな意味がある。しかし研修就 業制度は「研修」を前提とし、使用者団体による供給独占などの既存体制を維持する研修 生制度の延長線上にあったために、「研修生という名の労働者」という基本的な認識がすで に一般化していた現場にとっては、滞在期限が迫る研修生を合法的に雇用延長できる以外 に特段の意味をもちえなかったのが実情であった。

第 1 表 雇用許可制が施行されるまでの経緯

(出所) 筆者作成。

・1995年2月:労働部、「雇用許可制」を推進するが、通商産業部、法務部、中小企業中央会など 企業側の反対で挫折。

・1996年:労働部、雇用許可制を定めた「外国人労働者雇用及び管理に関する法律案」を国会に 提出するが審議されず廃案になる。

・1998年4月:入管法施行令の改定により「研修就業制度」を導入。

・2002年:労働部、雇用許可制を前提とする「外国人労働者雇用及び管理に関する法律」を議員 立法の形式で推進するが法案提出に至らず。

・2003年2月:「外国人労働者の雇用許可及び人権保障に関する法律」、国会環境委員会に提出。

・2003年7月31日:「外国人労働者の雇用等に関する法律」とする上記修正案が国会本会議通過。

・2003年9―11月:「非正規滞在外国人合法化措置」(2003年3月31日基準、非正規滞在4年未満、

対象者約22万7000人中約18万4000人合法化)。

・2003年9月:「非専門就労」を定める「出入国管理法施行令」を改定。

・2004年8月17日:雇用許可制施行。

(5)

この雇用許可制と研修就業制度をめぐる政策選択は、韓国の外国人労働者受け入れ政策 の通時的変遷からみると、1991年既存の研修生制度の拡大に決着した第1ラウンドに次ぐ、

非熟練外国人労働者の導入をめぐる第

2ラウンド政策調整であった。既述したように、これ

らの政策は非熟練労働者を受け入れないことを前提に、労働力需給が逼迫する一部の中小 企業に外国人労働者を供給するものであった。市民団体の批判をかわし労働行政の介入を 広げた研修就業制度の導入も、本質的には既存の政策運営に上乗せするものであったため に、未登録労働者に依存する外国人労働市場の構造を変えるには力不足であったと言わざ るをえない。研修就業制度が運営され始めた

2000年以降も未登録労働者の増加が止まらな

かった実態からもそれは明らかで、2002年には全外国人労働者に占める未登録労働者の割 合が80%近くに達し、研修就業制度を含む既存の政策体系に対する懐疑的な見方が強まり、

政策の抜本的な見直しに向けての動きが再燃したのは必然の帰結であったと言える。

政策転換は大統領選挙という政治的節目を契機に急展開した。キム・デジュン(金大中)

大統領の任期満了に伴う2002年大統領選挙では外国人労働者に関する政策が焦点のひとつ になり、与野党両陣営とも外国人労働者に関して雇用許可制の導入を公約として掲げた。

大統領選挙は金大中政権を引き継ぐ与党が勝利し、2003年2月に発足したノ・ムヒョン(盧 武鉉)政権は政権発足と同時に制度変更に着手し、同年

7月に雇用許可制の創設と非正規滞

在者の合法化措置等を内容とする「外国人労働者雇用等に関する法律」(以下、外雇法)が制 定された。また2003年

9月 1

日、雇用許可制の創設に伴って、その対象となる外国人労働者 に付与される在留資格「非専門就業」を新設する「出入国管理法施行令」が改定され、雇 用許可制の法制化が完了した。以降、約

18

万人の「未登録労働者合法化措置」や送り出し 国との覚書(MOU: Memorandum of Understanding)の交換などの準備を経て、2004年

8月 17日

から雇用許可制は施行された。はじめは使用者側の要望に配慮し研修生制度と並行するか たちをとったが、2007年

1月に研修生制度は廃止され、雇用許可制に一本化された。非熟練

労働者受け入れ政策をめぐる第

3ラウンドは、リベラル政策を維持した新政権の発足という

政治的流れも手伝って、大きく転換したのである。

3

雇用許可制の構造と機能

雇用許可制は、3年ないし4年10ヵ月ローテーションと再入国容認を基本に、中小製造業、

建設業、そして一部のサービス業に非熟練外国人労働者を正規の労働者として受け入れる スキームである。上述したように、韓国の外国人労働者受け入れ政策は、研修生制度を中 心に運用された期間にさまざまな問題が露呈し、雇用許可制の制度設計にはその経験を踏 まえた政策メニューが組み込まれている。以下では、雇用許可制の構造と機能について、

労働市場論の視点から主に製造業を中心に、その仕組みと国際的な労働者需給システムに ついて検討する。なお雇用許可制は、無縁故コリア系在外同胞を「特例雇用許可」として 管理する仕組みも含まれているが、本稿では論点の分散を避けるためにコリア系ではない 外国人を対象とする「一般雇用許可」を中心に議論する。

雇用許可制は、労働者受け入れ制度として下記の

3つの原則を基にしている。

(6)

1) 国内労働市場の補完性

非熟練外国人労働者の受け入れに関する諸外国の制度をみると、採用している具体的な 政策は異なるものの、何らかの制限措置が組み込まれるのが一般的である(4)。その制限措置 は突き詰めて言うならば、外国人の受け入れが国内労働者の雇用に過大に影響を及ぼすこ とを回避し、外国人労働者の雇用と就労を管理するための量や質をコントロールする制度 的装置と言える。韓国の雇用許可制は、国内の労働市場で内国人の雇用を代替する(言い換 えれば韓国人の雇用を奪う)ことを避け、外国から受け入れる労働者の量と雇用可能な業種 と事業所の規模をコントロールする需給調整機能を組み込んだ、補完性の原則に基づいて いる。その具体的な調整方法としては、労働市場テスト、受け入れ人数の総量規制(クオー タ制)と事業所規模別の雇用率である。

第1に、外国人労働者を雇用しようとする事業主には国内労働市場で内国人を雇う努力義 務が課せられ、必要な労働力を国内の労働市場で求人できないことを証明するために、労 働市場テストを行なわなければならない。事業主は日本の公共職業安定所(別名「ハローワ ーク」)にあたる雇用安定センターを通して7日間(新聞に求人広告を出す場合は

3

日間)の求 人活動を行ない、必要な労働力の全部ないし一部を採用できなかった場合、必要な労働力 を国内で求人できないとみなされ、雇用許可の申請が可能になる(5)。すなわち、雇用許可制 は外国人労働者個人に韓国での就労を許可するのではなく、国内労働市場で労働力を調達 できないことを客観的に証明した雇用主に外国人労働者を雇用できる許可を出す、需要側 をコントロールするシステムである。

実際、雇用許可を求める部門は賃金が低いなど労働条件が劣悪な3Kと呼ばれる「忌避」

職種・職場が多く、ほとんどの雇用主は最低賃金で求人票を出すために国内での求人は困 難で、求人努力義務そのものが形骸化していく可能性があり、こうした実態に対して「労 働市場テスト不要論」もくすぶっている(6)。また仕事量の変動が激しく頻繁に雇用調整を行 なう事業所で外国人労働者を雇用の調整弁として活用しようとする例もある。この場合は 仕事が減ると雇用調整を行なう、すなわち景気後退の局面では外国人労働者が先に雇用調 整の対象になる可能性が高く、外国人労働者の失業問題を引き起こす危険性をはらんでい る。外国人労働者は1年契約を行なう場合が多く、本来なら仕事量が減っても簡単に解雇は できない。しかし実際は労働時間を減らしそれに連動して賃金が減るために労働者自身が 事業所変更を希望する例が多い。

第2に、マクロ的に外国人労働者総数をコントロールする年間クオータ制と、ミクロ的に 事業所ごとに雇用できる外国人労働者数を当該事業所の常用雇用労働者を基準にその比率 を定め(雇用率)、補完性の原則をより厳密に運用している。こうした量的規制は、国内労 働市場で求人ができない事業所であることを労働市場テストで証明すれば外国人労働者を 無制限に雇用できてしまうことに歯止めをかける仕組みである。

雇用許可制では、外雇法の規定により国務総理室に設置される「外国人力政策委員会」(7)

において、国内の労働市場の動向を踏まえ、年間クオータと雇用率が調整される(4条)。第

2表が示すとおり、実際の年間クオータは雇用許可制が施行された 2004年から 2008

年まで

(7)

は増加傾向であり、2005年からは

10

万人を超えた。だが、アメリカ発の金融危機から始ま った世界的な景気後退(リーマン・ショックとも呼ばれる)による雇用調整局面に入った国内 労働市場の状況を踏まえ、2009年には新規クオータを

3

4000

人と前年度の4分の1水準に 縮小した。また

2010年には年初に 2

4000人と前年より少ないクオータを決めた後、景気

が回復し前半期でクオータを消化しそうになると、政府の「外国人力政策委員会」は1万人 の追加クオータを決めるなど柔軟に対応している。

2009

年の大幅なクオータ縮小と2010年の追加クオータは、外国人労働者が過剰に移入し た後に未登録労働者が増える事態を未然に防ぐための「入口規制」とみることができる。

マクロ的な雇用調整のために政策手段を積極的かつ機動的に駆使したこの実例は、政府が 外国人労働者の需給調整の主体として前面に登場したことを知らしめ、雇用許可制におけ る政府役割の再定義による正統性の回復を強く印象づけた。年間クオータは研修生制度に も備わっていたが、中小企業経営者の要求に年々増えるばかりで雇用調整の意味はなく、

ほぼ有名無実だったのと対照的である。

補完性のための2つ目の制度的仕組みは雇用率である。雇用許可制を通して外国人労働者 を雇えるのは、製造業の場合、常用雇用労働者300人以下に限る。また、事業所の規模が大 きくなるにつれて雇用率が下がり、規模の小さい企業ほど雇用できる人数が増える仕組み である。たとえば、従業員

10人の事業所は 5

人までで雇用率は

50%、従業員 50人だと 10人

(20%)、従業員

100人だと 15

人(15%)、従業員

200人だと 25

人(12.5%)、従業員

300

人だと

30人

(10%)となる。ただし、従業員

10人以下の事業所の場合は原則 5人までとなっており、

従業員1人の事業所でも

5

人まで雇用ができ、雇用率は500%になり、零細事業所では韓国 人従業員より外国人が多いケースもありうる。研修生制度下では小規模事業所で研修生を 容易に雇用できなかったことが未登録労働者の雇用が増えた原因のひとつであったという 実態を踏まえ、小規模事業所ほど雇用率を高く設定したとみられる。また雇用率は固定さ れたものではなく、業種別労働力不足率が従業員300人未満の中小企業の平均労働力不足率 より低い業種は20%増員するなど労働市場の状況によって雇用率を柔軟に調整している。

2) 労働者の権利保障

雇用許可制により入国した外国人は、労働者として法的地位が保障される。外雇法には

「使用者は外国人労働者であることを理由に不当に差別的処遇をしてはならない」(22条)と 差別禁止が明文化された。外国人労働者は韓国人労働者と同様に就労期間中、「勤労基準法」、

第 2 表 雇用許可制の年間クオータの推移

 合  計 79,000 116,000 105,000 109,600 132,000 34,000 34,000 48,000 57,000 62,000 一般雇用許可 25,000 38,000 35,250 49,600 72,000 17,000 34,000 48,000 46,000 52,000 特例雇用許可 16,000 38,000 38,050 60,000 60,000 17,000

再入国就業者 11,000 10,000

年  度 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(注) 特例雇用許可は在外同胞が対象である。

(出所) 外国人力政策委員会「外国人力導入計画」、各年度。

(単位 人)

(8)

「労働組合法」、「最低賃金法」、「産業災害補償保険法」等の労働関係法律が全面的に適用さ れる(8)。研修生制度下で研修生は労働者としての法的地位が曖昧で、関連労働法に違反する 事例が発生しても法的に保護されず、結果的に深刻な人権侵害を招いたという認識からの 政策転換である。

また、外国人労働者は韓国人労働者と同様に四大社会保険のうち健康保険と労災保険は 義務加入、雇用保険は任意加入、国民年金は相互主義の原則に沿って適用される(9)。そのほ かに外国人労働者を雇用する使用者は出国満期保険と賃金滞納保証保険に、労働者は帰国 費用保険、傷害保険に加入しなければならない。社会保障の充実と各種保険の加入義務は 労働者の権利保護と福利厚生の向上に役立てるという理念のもとで実施されると考えられ る。しかし他方で、使用者にとってみればこれらの費用は外国人労働者の雇用に伴うコス トであり、労働者は賃金収入が減るのをきらい保険加入に消極的な場合も少なくない。

外国人労働者の権利と関連して、事業所異動制限が争点になっている。外国人労働者は 原則として事業所の変更は認められていないが、事業主が同意した場合に限って、滞在期 間3年間で最大3回まで異動できる。また2年間雇用延長される場合はそれに2回を加え、合 わせて5回までとなる。労働者が自由意志により職場を変えることは労働者であれば当然の 権利として保障されるが、それを制限することは労働者の基本的権利が侵害されていると 言える。では、なぜ異動を制限するのか。賃金が高く労働環境のより良い事業所に異動し ようとするのが労働市場の一般的な市場原理であり、外国人労働者の自由異動の容認は、

労働力が足りない部門に労働力を補充するために雇用された外国人労働者がより良い労働 条件を求め異動することを認めることを意味し、労働力が足りない事業所はいつになって もその状況が続く可能性もある。したがって、異動制限からは外国人労働者の自由異動に よって国内労働市場の補完性が保たれない蓋然性を避けたい政策意図が読みとれる。雇用 許可制の補完性は平たく言えば、賃金が低く労働環境が劣悪で国内で求人が困難な部門に 外国人労働者を供給するための政策原則である。このような視点でみると、補完性の原則 は外国人労働者を導入するための「開放」の論理であると同時に、外国人労働者を雇われ た事業所に縛り付けるための「規制」の論理という両面を併せもつ。雇用許可制の3回ない し5回の異動制限は補完性の原則と労働者としての権利保障との間の「妥協点」であるとも 言えよう。

この異動制限の問題は司法の場でも問われている。2013年現在、外国人労働者の異動制 限を規定している外雇法

25

条が外国人労働者の職業選択の自由と勤労の権利を侵害してい るかをめぐって憲法裁判が進行中である。2010年

10

月に開かれた公開弁論で外国人労働者 側は、零細企業を保護するための異動制限は「国家安全保障、公共福利、秩序維持という 基本権制限の事由に該当せず、また職業選択の自由を過渡に侵害し」ていると主張した。

これに対して政府側は、3回の異動制限は「零細事業所の労働力需給と外国人労働者の権益 保護のため」であり、関連条項は異動の「制限」ではなく、「保障」であると主張した(10)。 この裁判の争点は、雇用許可制の補完性を保つために労働者としての基本権を制限できる かという問題である。異動制限に限らず就労可能な業種制限など外国人労働者の権利制限

(9)

は、外国人労働者を国内労働市場の補完的存在と位置づけている雇用許可制の根幹にかか わる核心の部分である。

3) 定住化防止

雇用許可制は、1度の入国に最長

3

年の滞在と就労を認めるローテーション・システム

(短期交替循環)である。帰国後

6ヵ月の入国猶予期間が経過すれば同じプロセスを経て再入

国が認められる。ただし、2009年10月の外雇法の改定により、同じ事業所での再雇用の場 合は1回に限って滞在期間を

2

年間延長することができるようになり(厳密には総滞在期間

4

年10ヵ月以内)、連続滞在期間は最長

4

10

ヵ月になったが、ローテーション原則は変わら ない。

ローテーション・システムは、雇用許可制が外国人労働者の就労を認める一方、定住を 想定しない、あるいは定住化を防止する制限的政策であることを意味する。一見緩和され たとみられる再入国容認も、研修生制度の再入国禁止が非正規滞在者の増加につながった という過去の経験から、再入国容認と未登録労働者雇用に対する使用者罰則規定をセット にして、非正規滞在の増加を食い止め、定住化を防止しようとする政策意図を読みとるこ とができる。また一方で、非熟練外国人労働者のなかで、一定の条件をクリアすれば、熟 練技能労働者として長期滞在が可能な在留資格(「居住」と「特定活動」)への変更が可能な 制度を新設した。たとえば、「特定活動」への在留資格変更の要件は、①過去10年間、非専 門職を対象とする在留資格で

4

年以上就労、②35歳未満で

2

年制大学以上卒業者、③直近1 年間の賃金総額が同一職種の平均賃金以上であること、④韓国語能力試験で

3級以上を取得

などである(法務部

2011)

。この制度によって、限定的であれ、それまでのローテーショ ン・システムに固執した政策に部分的に定住を容認する修正が加えられた。

4

雇用許可制の需給システム

雇用許可制は国内労働市場で必要な労働力を確保できない企業が外国人労働者を合法的 に雇用することを許可する制度であり、その管理システムである。この新制度は、それま で多くの問題を露呈した研修生制度に代わる外国人労働者の需給システムの要になる政策 として、中小企業の労働力需要に対応しながら政策の正当性を回復する政治的狙いもあっ たと思われる。以前の研修生制度と比較して政府の役割が大きくなった雇用許可制の需給 システムは、その政治的狙いが具体化された制度変更と言える。

上述したように、雇用許可制は外国人労働者の年間クオータをはじめ、雇用可能な業種、

事業所規模別雇用率など、詳細にわたって規制され、政府によって管理されている。それ にとどまらず、実際の需給プロセスにおいても政府が主導的な役割を担う。雇用許可制で は、使用者の求人活動、求人側(企業)と求職側(外国人労働者)のマッチングといった国 外にわたる労働者需給に関する全プロセスに政府が積極的に関与する。第2図はそのプロセ スを示した概念図である。使用者は政府機関である雇用安定センターを通じて労働市場テ ストを行ない、労働力が足りないことを証明すると雇用許可が得られ、同センターを通し てのみ国外にわたる求人活動が可能になる。対象になる外国人は政府の「外国人力政策委

(10)

員会」で決められた、韓国政府とMOUを締結した

15ヵ国に限られる

(第

3

表)。韓国での就 労を希望する

15ヵ国の国民は求職登録に必要な条件をクリアすれば

(11)、自国の送り出し斡 旋機関(政府あるいは政府所管の公共団体)の求職者名簿に登載され、韓国側の雇用安定セン ターに送られる。雇用安定センターは使用者の求人票に基づき送り出し国の求職者名簿か ら求人数の3―

5

倍の求職者を提示し、求人側はそのなかから労働者を選び、求職者には求 人側の事業所情報が提示され就業意思が確認されれば両者間で雇用契約を結ぶ、基本的に ドキュメント・マッチングの流れである。

この政府主導の需給システムに民間が関与する余地はほとんどなく、雇用許可と斡旋の ような主要なプロセスは政府管掌のもとで行なわれ、一部の業種別中央団体のみが外国人 雇用にかかわる事務手続きの代行と初期教育を担当する。このような民間排除・政府主導 のシステムは、かつて民間主導で運営された研修生制度の弊害、とりわけブローカー費用 のような労働者の求職コストの削減を目的に、民間が介在する余地を制度的に制限する仕 組みと理解できる。また民間主導の研修生制度から政府主体の需給システムに変えること により、雇用主が負担していた外国人雇用に伴う費用の削減も目的のひとつと言える。外 国人労働者雇用には、内国人雇用にはない、国外にわたる求人コストと雇い入れた後の管 理コスト(通訳など)が伴うのが一般的である。雇用許可制は政府が公共財(公務員と税金)

を投入するかたちでそのコストの一部を負担し使用者のコストを削減している。このよう に雇用許可制の需給システムは外国人労働者の需給にかかわるコスト構造の変更を通して 中小企業を支援する仕組みであり、結果的に中小企業は労働力の確保と雇用コスト削減と いう「二重の利益」を得ていると言える。その代わり、使用者には未登録労働者の雇用禁 止と厳正な雇用管理と労働者の帰国促進が求められる。

使用者 第 2 図 雇用許可制の需給システム 送り出し斡旋機関

(政府・公共機関)

マッチング

求職登録 雇用許可 求人努力

〈韓国〉

〈送り出し国〉

 筆者作成。

(出所)

雇用安定センター

労働者 雇用契約

第 3 表 雇用許可制MOU締結国

2004年 2006年 2007年 2008年

フィリピン、モンゴル、スリランカ、ベトナム、タイ、インドネシア ウズベキスタン、パキスタン、カンボジア

中国、バングラデシュ、キルギス共和国、ネパール、ミャンマー 東ティモール

(出所) 筆者作成。

MOU締結年 送り出し国

(11)

雇用許可制は、上述のとおり、外国人労働者の移動と雇用管理に政府が主役として積極 的な役割を担うスキームであるが、その役割は韓国の国内にとどまらず、送り出し国政府 との間で結んだMOUを通じて送り出し国にまで及ぶ。MOUには政府機関やそれに準ずる 公共機関を送り出し機関とすること、送り出し費用に関しては韓国政府と協議すること、

求職者の募集と選抜方法、事前教育、帰国を誘導するための「事後管理」などが含まれて いる。すなわち、雇用許可制は送り出し国政府に、労働者の募集から帰国(場合によって韓 国への再出国)までの一連のプロセスについて、韓国と同じように送り出し国政府が責任を もって管理し、労働者が負担するコストを削減し、そして韓国で未登録労働者が増えない ように努力することを求めている。また

MOU

を守らなかった場合などの運営上の問題と、

当該国出身の未登録労働者が増大した場合など送り出しの結果に対してさえ、クオータの 縮小や受け入れ停止のようなペナルティー条項を設けて、厳正な管理を求めている。実際、

インドネシアで送り出しをめぐって労働者に金品を要求し出国が遅れるなどの事態が発覚 し、2005年

6

月から

2006年 4月まで送り出しが中断された例があり、この規定がかたちだけ

にとどまらないことが確認された。

政策や制度が実態を完全にコントロールできると思うのは幻想であり、それは雇用許可 制も同じである。また政府がやることが必ずしも公正で人権が守られコストを削減できる とは限らない。ましてやそれが外国であればなおさらである。ここではひとまず、雇用許 可制は外国人労働者が未登録労働者に流れることを防ぐために、送り出し国政府にその責 任の共有を求めている仕組みが組まれた点を指摘しておきたい。

5

雇用許可制の特徴と意義

1980年代初頭まで外国に労働者を送り出した韓国にとってみれば、1980年代の後半から

始まった外国人労働者の流入は労働者の送り出し国から受け入れ国に変わる劇的な転換点 であった。しばらくして採用した研修生制度の拡大は、外国人の非合法的な就労が広がる なか、非熟練労働者の受け入れを原則禁止しながら受け入れのルートとして活用した「サ イド・ドア」政策であり、外国人労働者の地位と権利、国内労働市場との関係、ひいては 将来予想される定住化に伴う諸課題などに関する十分な検討が行なわれないまま施行され た。結果的に、増加する未登録労働者を合法的な労働者に代替できず、雇用現場での人権 侵害も改善されないまま大きな混乱を招いた。雇用許可制は、こうした状況を根本的に変 える目的で実行された政策転換であった。

雇用許可制は、既存の研修生制度に内在していた矛盾と問題に対して制度的にどう対処 するかという政策課題と、国内労働市場を保護しながら外国人労働者を受け入れる制度的 仕組みづくりという政策課題に対する代案であった。研修生制度を含むそれまでの労働者 としての地位の曖昧さに由来する課題は、その地位と権利を認めることで制度的にクリア し、労働者受け入れに関しては補完性と定住化防止を原則に、国内労働市場を部分的に開 放したのである。このように、雇用許可制は外国人労働者を正規に受け入れる制度的仕組 みとして、研修生制度との比較の観点に立てば、韓国の外国人労働者受け入れ政策の大転

(12)

換であった。その意味で、雇用許可制は研修生制度期以前とは完全に断絶しているように みえるが、期限付きのローテーション原則のもとで特定部門に外国から非熟練労働者を供 給する政策意図や目標は、研修生制度の連続線上にあると言える。

外国人労働者を正規に受け入れる制度的仕組みである点のほかに、需給システムの主体 が民間から政府に変更された点は雇用許可制の特徴のひとつとして特筆すべきである。国 境を越える労働者の移動・雇用システムを、民間のビジネス・モデルから公共財を投入す る政府主導モデルへ変更することにより、外国からの労働力の供給が政府の仕事として公 共性を帯びるようになった。政府専管で出入国管理を行なうことが憲法をはじめ法制上認 められているとしても、考え方によっては、中小企業など受益者が一部に限定される労働 者の移動にかかわる仕事を政府が直接マネージするのは、政府の公共性は全国民を便益の 対象とするという形式論理から逸脱するとも考えられる。公共性を獲得するために、政府 は機会あるごとに、産業構造の底辺を担う中小企業の生産活動を支えることが社会全体の 便益につながると、中小企業への円滑な労働力供給の必要性を訴えている。さらに外国人 人権問題に政府が積極的に介入するよう求める市民セクターの要求は、政府による人権擁 護という名分のもとで公共性の承認につながったと言える

雇用許可制への転換は、それまで未登録労働者の増大をコントロールできず危機に陥っ た外国人労働者受け入れ政策の政府の正当性を、公共性を高めることで克服した試みとみ ることもできる。公共財を投入する政府主導の需給システムへの変更によって、外国人労 働者と関連する諸問題は民間だけに責任を押し付けることは容認されにくく、政府の責任 が重くなった。だが、この状況は制度的に政府が介入できる余地が広がった一方で、政府 が積極的に介入せざるをえない状況を作り出した。雇用許可制における政府役割の強化は、

その後の移民政策の転換において関連政策を公共政策として位置づけ、政策遂行において 政府の役割が大きくなる結果につながった。韓国における移民政策の転換は2007年の「在 韓外国人処遇基本法」の成立を起点とすることが一般的であるが、雇用許可制の施行はそ の前段階として政策転換の嚆矢となったと言えよう。

いまひとつ、雇用許可制の政府主導モデルは韓国に限らず送り出し国にまで及んだこと も特徴として挙げられる。MOUによって送り出し国も政府や公共機関が需給システムを直 接マネージしなければならず、韓国と送り出し諸外国間で政府主導の越境的な雇用システ ムが構築され、研修生制度の民間対民間(P to P)から政府対政府(G to G)に完全に変更さ れたのである。それまで労働者の送り出しは民間の紹介斡旋業者が担い、政府は出入国管 理の見地で許可・監督を行なうのが一般的だったのと対照的である。シンガポールなど雇 用許可制を採用している国でも政府機関が求人側と求職側をつなぐマッチングまで行なう 例はほとんどない。このようにして、未登録労働者を減らすために、そして人手不足に悩 む中小企業に労働者を供給するために考案された雇用許可制は、アジアを舞台に政府主導 の新しい移動の仕組みを作り上げたのである。

1

) 外国人の資格外就労や超過滞在者の就労などを「不法就労」とも言う。ところが、不法就労とは

(13)

強制労働や児童労働のように就労や雇用そのものが不法状態を指す場合もあり、ここでは入管当 局に登録してない状態での就労という意味で、未登録労働者(undocumented workers)と記す。

2

) 研修生に対して適用された労働基準は、暴行および強制労働禁止、研修手当の支給および金品の 清算、休憩・休日、時間外・夜間・休日研修の割り増し手当に関する規定である。

3

) 研修就業制度は法律施行後の新規入国研修生に適用されたために、実際に労働者身分の外国人が 出現するのは

2000年4月以降である。2001年には研修1年プラス研修就業2

年になった。

4

) 諸外国の例は、経済産業省(2008)、厚生労働省(2002)、三井情報開発(2003)、労働政策研 究・研修機構(2006、2007)を参照されたい。

5

) 求人努力期間は、雇用許可制がスタートした当初は

1

ヵ月だったが、「長すぎる」という使用者 側の意見に配慮し

1週間に短縮された。

6

) こうした実態は筆者の現地調査でも確認された。外国人を雇用している事業主は求人努力義務を

「形式的」な手続きと認識している場合が多かった。だが、雇用安定センターのヒアリングでは最 低賃金での求人に韓国人の応募がないわけではなく、斡旋が行なわれ雇用される例もあるという。

7

) 外国人力政策委員会は国務総理室に設置され、国務総理室長(日本の官房長官にあたる)を委員 長に、関係省庁の次官級

20人以内の委員で構成され、外国人労働者の受け入れに関する重要事項

を決める最上位の政策決定機能を担っている。

8

) 農林・畜産・水産業の場合は、関係法律によって一部例外的な規定が適用される。たとえば、

「勤労基準法」の「割り増し賃金」(時間外、休日勤務)は適用されない。また、家事サービス業の 場合(雇用特例者)、労働関係法律は適用されないが、「民法」の規定に反しない範囲において契約 自由の原則に従って労働条件について雇用主と契約できる。

9

) 相互主義原則によってベトナム、カンボジア、パキスタン、バングラデシュ、ネパール、ミャン マー、東ティモール国籍の外国人労働者は国民年金適用から除外されている。

(10)「移住労働者の離職制限は違憲? 憲法裁判所で攻防」『聯合通信』2010年

10

月14日。

(11) 国によって求職者名簿登載の条件に差はあるが、最も高いハードルになっているのは韓国語試験 の合格条件である。

■参考文献

[韓国語文献]

外国人力政策委員会「外国人力導入計画」各年度。

移住労働者人権連帯(2005)「雇用許可制実態調査報告書」

外国人労働者対策協議会(2001)『外国人労働者人権白書』、タサングルバン。

国家競争力強化委員会(2008)「非専門外国人力政策改善方案」 韓国労働研究院(2001、2003)「外国人労働者雇用実態調査」

法務部(2011)「熟練生産技能外国人力に対する居住(F-2)資格へ滞留資格変更および滞留管理業務処 理指針」

―「出入国管理統計年報」各年度。

ソル・ドンフン(1999)『外国人労働者と韓国社会』、ソウル大学出版部。

ユキルサン、イキュヨン(2002)『外国人勤労者の雇用実態と政策課題』(改正版)、韓国労働研究院。

ユキルサンほか(2004)『低熟練外国人力労働市場分析』、韓国労働研究院。

労働部(2000)「外国人勤労者雇用許可制導入方案」

―(2005a)「外国人雇用許可制1年の評価および今後の発展方向」、労働部。

―(2005b)「外国人勤労者雇用手順」

―(2007)「外国人雇用許可制施行3周年評価および改善方案研究」

―「労働力需要動向調査」各年度。

(14)

労働部雇用政策室(2004)「雇用許可制ガイドブック」 その他、関連法令・施行令・告示等。

[ウェブサイト]

雇用労働部 http://www.molab.go.kr/

法務部 http://www.moj.go.kr/

産業人力公団 http://www.hrdkorea.or.kr/index.html

[日本語文献]

経済産業省(2008)「アジア諸国における外国人材の活用等に関する実態調査」 厚生労働省(2002)「外国人雇用問題研究会報告書」

宣元錫(2002)「韓国の単純技能外国人労働者の受け入れ政策―制度・実態とその課題」『世代間利 害調整ディスカッション・ペーパー』No. 70、一橋大学経済研究所。

―(2006)「韓国における非専門職外国人労働者受け入れ政策の大転換―『雇用許可制』の導 入:『研修生』から『労働者』へ」『情報化・サービス化と外国人労働者に関する研究ディスカッシ ョンペーペー』No. 2、一橋大学大学院社会学研究科総合政策研究室。

―(2009a)「韓国の『外国人基本法』と『統合政策』の展開」『法律時報』81巻3号。

―(2009b)「動き出した韓国の移民政策」『世界』11月号。

―(2010a)「韓国の『外国人力』受け入れ政策」『総合政策研究』(中央大学)第18号。

―(2010b)「移民政策のマネジメント化―保守政権下の韓国の移民政策」『移民政策研究』(移民 政策学会)第2号。

労働政策研究・研修機構(2006)「欧州における外国人労働者受入れ制度と社会統合―独・仏・英・

伊・蘭5ヵ国比較調査」『労働政策研究報告書』No. 59。

―(2007)「アジアにおける外国人労働者受入れ制度と実態」『労働政策研究報告書』No. 81。

三井情報開発(2003)『諸外国の外国人労働者受入れ制度調査』

そん・うぉんそく 大阪経済法科大学 アジア太平洋センター客員研究員 sunwsjp@gmail.com

Referensi

Dokumen terkait

今の労働システムの問題点がケア労働に鮮明に現れていると思います。 私たちのグループは4年ぐらい前に「週3日労働でも生きさせろ」、「3日労働でも健康で文化的最低 限の生活保障を」と言っていました。これもまた“ 突拍子もない”と言われましたが、求人広告を見ると、 週3日からという仕事は多くあります。雇用はもう現実的に本当に壊れているというのが、私の実感です。