まえがき
第1回整数論オータムワークショップの報告集をお届けします。ワークショップのテーマ
は「Koecher Maass 級数について」ということで1998年9月10日から14日まで白
馬での合宿で行われました。2名の外人参加者を含む、のべ42人の参加でした。当日行 われた全講演が記録されています。これらの活動は、平成10年度より平成12年度の文 部省の科学研究費、基盤研究B(1)(代表 伊吹山知義)のプロジェクトの一環であり、講 演者、参加者の旅費の一部や報告集の作成の経費は、ここから支払われております。
今回の研究集会のテーマは、Koecher Maass 級数について現在までにわかっていること を総まとめして、次の研究につなげることでした。もちろんこのようなテーマを取り上げ たのは、この比較的省みられることの少なかったテーマについて、はっきり見直しの機運
(意義ある新しい研究)があり、さらには新たなる発展があると確信していたからです。一 方で時間的制約により、将来的な研究の展望について述べる時間がプログラムに入れられ ませんでした。(当初は予定していたのですが、収まり切らなくなったので省略したわけで す。)このため将来展望について、哲学であろうと思弁であろうと予想であろうと問題提 起であろうと、本報告集にはっきり述べられなくなったのは残念だった点ではありますが、
将来の報告に待ちたいと思います。
いくつか謝辞を述べたいと思います。まず大変熱心に準備してくださった講演者の皆様 に感謝したいと思います。今回は講演者の皆様には過度の要求をしたように思います。テー マが「Koecher Maass級数」というかなり特殊な話題で、しかも大部分が他人の仕事の紹 介という、非常に面倒な内容だったにもかかわらず、主催者の勝手なプログラムに従って 快く講演をお引き受けくださいましたのは、準備の初期段階でこころ強く感じました。講 演者の皆様にはかなり早い段階で、まず講演の概要の説明をお願いしたり、更には外国人 参加者のためにかなり詳しい英文アブストラクトをお願いしたり、また、最終的な報告集 は日本語にしていただいたりで、なかなか面倒をおかけしました。おかげでさまでアブス トラクトは出席者(特に外国人)には大変好評でしたが、本報告集には講演者の意向もあっ てこのアブストラクトは収録しておりません。しかし報告集本文は十分なページ数を取っ ていただくようにお願いしましたのでいずれも力作であると思います。今までの到達点の 理解や、新しい研究の資料として活用されることを切に願っております。
別表の参加者名簿からもおわかりの通り、参加者の分野は当初考えていたよりも多岐に わたっておりますことも主催者の望外の喜びとするところです。実はこのようなテーマで、
これほど多くの方の参加が得られるとは考えていませんでした。
残念ながら日本にはドイツの Oberwolfach研究所のような合宿研究施設がないので、研 究合宿をするときには宿泊所について、その時々で苦労することになります。しかし今回 の宿泊施設は大変好評で、この点、講演会場その他を快適に保つべく努力していただきま した宿泊施設のスタッフの方々にも感謝したいと思います。
われわれのグループは1993年以来、毎年整数論サマースクールを続けてきておりま した。これには、自分たちの興味のある研究をまとめて文献を残すという目的と大学院生へ のサーベイをおこなうという目的の2つの側面があったのですが、当初の目的から少し離 れて一般的になりすぎたきらいもあるので、これとは別に、あらたに現場の数学者のため
の、テーマ限定、研究密着型のサーベイコンファレンスという趣旨でワークショップをたち あげたというのが一応整数論オータムワークショップの趣旨といえると思います。おなじプ ロジェクトでとりあえず3年間続ける予定ですが、プロジェクトの実りある発展を願ってお ります。次回はEisenstein級数関係ということで、すでに準備中ですので、どうぞよろしく。
1999年1月31日
第1回整数論オータムワークショップ世話人 伊吹山知義