ウイロイドは最小の植物病原体であり,動物細胞からは検出 例 が な い マ イ ナ ー な 存 在 で あ る.ま た,環 状 のnon-coding RNA(ncRNA)という独特の構造である点においても特異 な 存 在 で あ っ た.し か し な が ら,近 年,ncRNA, さ ら に は 200塩 基 以 上 のlong non-coding RNA(lncRNA) に 関 す る 研 究が進展し,それらの生体内における役割や動態についても 明 ら か と な っ て い る.ま た,環 状lncRNA(circRNA) が 動 物細胞から大量に見つかり,それらの役割についても明らか になりつつある.今後はウイロイドがマイナーな存在ではな く,自 律 複 製 能 を も っ たcircRNAと し て 着 目 さ れ る こ と を 期待したい.
ウイロイドとは
ウイロイド(Viroid)は一本鎖環状RNA(250〜400 塩基)のみからなる最小の植物病原体である.1971年 にDienerによってタンパク質をもたない病原体として
(PSTVd)が最初のウイロ イドとして同定された(1).ウイロイドはタンパク質をも
たないだけでなく,そのゲノムRNAはタンパク質を コードしないことが知られている,いわゆるnon-coding RNAである(タンパク質に翻訳されるRNAを一般的に mRNAといい,一方でタンパク質へ翻訳されずに機能 す るRNAの こ と をnon-coding RNA(ncRNA) と し,
tRNAやrRNAなどはそれにあたる)(2).第9回国際ウイ ルス分類委員会(International Committee on Taxono- my of Viruses; ICTV)報告においてはウイルスの分類 と 同 様 の 基 準 で2科(family),7属(genus),28種
(species)に分類されている(3)(表1).ポスピウイロイ ド科( )のウイロイドは,5つの構造ドメ イン(左末端領域,病原性領域,中央保存領域,可変領 域,右末端領域)で構成される棒状の2次構造を形成 し,属に特徴的な中央保存領域を有する(4)(図1).アブ サンウイロイド科( )のウイロイドの多 くは,枝分かれした棒状の2次構造を形成し,中央保存 領域は見られないが,ハンマーヘッド型リボザイムの保 存配列を有する.アブサンウイロイド科のウイロイドは お互いに保存された配列などがなく,ポスピウイロイド 科とも塩基配列の相同性やRNAの二次構造上の相同性 に乏しい.
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【解説】
Viroids: Origin, Spread, Evolution
Yosuke MATSUSHITA, 農業・食品産業技術総合研究機構花き研 究所
ウイロイド
起源 ・ 伝播 ・ 進化について
松下陽介
複製と移行
ポスピウイロイド科のウイロイドは,感染細胞の核
(nuclear)で非対称型ローリングサークルと呼ばれる様 式 で 複 製 す る.複 製 は 宿 主 のDNA依 存RNAポ リ メ ラーゼ(DdRP) IIによって行われ,RNAの環状化には DNAリガーゼIが用いられる.環状化した+鎖RNAは 核膜を経て細胞質へ至る(1, 5).一方で,アブサンウイロ イド科のウイロイドは,感染細胞の葉緑体(chloro-
plast)において対称型ローリングサークルで複製する.
このウイロイドは自己の配列がもつリボザイム活性に よってRNAを自己切断することができる.
ウイロイドは細胞間を原形質連絡(Plasmodesma)
を通って隣の細胞に移行し,篩管を通じて全身移行す る.基本的にウイロイドは宿主植物に全身感染するが,
茎頂部や胚珠などの生殖器官など特定の器官への侵入が 限定されていることがある(図2).茎頂部へのウイロ イ ド の 侵 入 に 関 し て はRNA-dependent RNAポ リ メ 表1■ウイロイド一覧表
アブサンウイロイド科( )
アブサンウイロイド属( )
パレモウイロイド属( ) (キク退緑斑紋ウイロイド)
(モモ潜在モザイクウイロイド)
エラウイロイド属( )
ポスピウイロイド科( )
ポスピウイロイド属( ) (キク矮化ウイロイド)
(カンキツエクソコーティスウイロイド)
(ジャガイモやせいもウイロイド)
(トマト退緑萎縮ウイロイド)
ホスタウイロイド属( ) (ホップ矮化ウイロイド)
コカドウイロイド属( ) (カンキツバーククラッキングウイロイド)
-
(ホップ潜在ウイロイド)
アプカスウイロイド属( ) (リンゴくぼみ果ウイロイド)
(リンゴさび果ウイロイド)
(ブドウオーストラリアウイロイド)
(カンキツベントリーフウイロイド)
(カンキツ矮化ウイロイド)
(カンキツウイロイドV)
(カンキツウイロイドVI)
(ブドウ黄色斑点ウイロイド1)
(ナシブリスタキャンカーウイロイド)
コレウイロイド属( ) (コリウスウイロイド1)
Di Serio (2014)らの記載より一部改変(3)
日本語名は日本植物病理学会植物ウイルス分類委員会の表記に従った.
図1■ (PSTVd)の分子構造モデル
TL; 左末端領域,Pathogenicity; 病原性領域,central; 中央保存領域,variable; 可変領域,TR; 右末端領域
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ラーゼ6(RDR6)が関与していることが示唆されてい る(5).また,茎頂部におけるウイロイドの感染は同じウ イロイドであっても感染する品種によっても分布が異な ることが知られており,その違いは茎頂部におけるカ ロース(直鎖の
β
-1,3-グルカン)の集積の有無が関連し ている可能性が示唆されている(6).茎頂部は将来,花芽 を形成する際に胚珠や花粉を形成する元となる組織であ ることから,この部位への感染の有無は種子への伝播に 係る重要な過程である.種子への感染はウイロイドを後 代へ残す重要なステップであることから,感染茎頂部や 胚珠などの特定の組織への移行に関する研究は今後の重 要なテーマの一つである.宿主範囲と病徴発現
ウイロイドの宿主範囲はウイロイド種によってさまざ まである.ポスピウイロイド科の代表的なウイロイドで あるPSTVdはヒユ科,キク科,ナス科,ムラサキ科,
キキョウ科,ナデシコ科,ヒルガオ科,マツムシソウ 科,ムクロジ科,ゴマノハグサ科,オミナエシ科の植物
160種に感染することが可能である(7).一方でアブサン ウイロイド科のウイロイドは実験上の宿主も含めても非 常に狭い宿主範囲しかもたない.たとえば,
(CChMVd)は栽培ギ クを含めた数種のキク属植物のみしか感染しない(8).
宿主植物として自然宿主と実験上の宿主があるが,こ れまでにウイロイドが検出された自然宿主のほとんどが 栽培種である.たとえば,PSTVdはナス科に多く感染 するが,検出例があるのはトマト,じゃがいも,ナス科 観葉植物(Brugumansiaなど)などである(7).在来の野 生種トマトやじゃがいも,ナス科雑草などからの検出事 例はこれまで報告されていない.栽培種の検出事例もほ とんどが栽培圃場や温室内のトマトや植物検疫における ものがほとんどである(7).したがって,野生種や雑草な どにウイロイドが潜伏感染し,発生源となっている可能 性や宿主植物の原種に感染している可能性については議 論の余地があり,ウイロイドの起源を知るうえで重要な 視点である.
PSTVdは幅広い植物種に感染すると前述したが,実 は発病する宿主は非常に少ない.図3において各ウイロ イドの代表的な感染植物における病徴を示したが,
PSTVdに感染した場合に明瞭な病徴を示す植物種はト マト(萎縮,葉の黄化,葉巻など(図3A))やじゃがい も(塊茎の亀裂,小型化葉の黄化など)くらいしかな い.PSTVdはトマト・ジャガイモと同じナス科植物で あるピーマン,トウガラシ,ナス,タバコ,ダチュラ,
Brugumansiaなどに全身感染するが明瞭な病徴を見い だ す こ と は で き な い(9).CChMVdや
(CSVd)はキクの栽培種でおいてのみ激し い 症 状 を 示 す(10)(図3B, C).ま た,
(TCDVd)もPSTVdと同様にナス科・キ ク科などに幅広く感染することが可能だが,主に症状を 図2■感染植物おけるウイロイドの感染分布
(A) (CSVd)に感染したキクの茎頂
部断面,(B) (TCDVd)に感染した
トマトの子房断面.紫色の部分がウイロイドの感染を示している.
lp; 葉原基,ov; 胚珠,ow; 子房壁,sp; 茎頂分裂組織,vb; 維管束.
図3■ウイロイドに感染した植物における 病徴
(A) (PSTVd)
に 感 染 し た ト マ ト,(B)
(CChMVd) に 感 染 し た キ ク の 葉,(C)
(CSVd) に 感 染 し た キ ク,(D)
(TCDVd)に感 染したトマトの葉,(E)TCDVdに感染した トマトの果実.
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示す宿主植物はトマトとジャガイモくらいである(11)
(図3D, E).激しい病徴を示すトマトを用いたウイロイ ドの病徴に関する研究がこれまで多くなされており,病 徴の強弱はウイロイドRNAの塩基配列に依存している ことが報告されている(12).ウイロイド感染個体からは 大量の21〜24塩基ウイロイドRNA由来のsmall RNA
(vd-sRNA)が検出されていることから,RNAサイレン シングがウイロイドの病徴発現に関与していることが指 摘されており,現在のウイロイド発病機構の有力な仮説 である.ウイロイドの病徴とRNAサイレンシングにつ いては佐野(2010)の総説(2)を参考にされたい.
ウイロイドの伝播
ウイロイドは西暦130年頃に
(CEVd)によると見られる症状のエトログ(カンキツ の一種)とされる最古のウイロイド症状の記述があ る(13).また,近代にはいってからは1920年代には北米 や旧ソ連領域内でやせいも症状のジャガイモが見つかっ ている.ウイロイドの伝染方法は汁液接種および栄養繁 殖による伝染,種子伝染,花粉伝染である.一般的に昆 虫媒介や土壌伝染はしないとされている.例外としてマ ルハナバチによる媒介が知られているが,これは花粉運 搬のために花の柱頭をかじる行為による一種の汁液接種 であると考えられる.汁液接種は主に人為的な作業によ るものであり,自然界では起こりにくい伝染方法である ことから,人類の農耕が開始するまでは主に栄養繁殖に よる伝染や種子伝染,花粉伝染によって後代へウイロイ ドを伝えてきたものと推測される.たとえば,ジャガイ モは塊茎による栄養繁殖によって増殖し,トマトやペ チュニアは種子によって増殖する.実際にトマト,ペ チュニアにおけるPSTVdの種子伝染率はそれぞれ2〜
23%,51〜78%であり,かつ種子の胚(発芽した際に子 葉と根になる部分)にまでPSTVdが感染することが確 認されている(14).ウイルスでは種子伝染を成立させる ためのルートは2つあり,1.胚の元となる卵細胞やそ の前の分裂組織,受精卵などに感染し,そのまま感染し た胚が発生する場合(間接侵入),2.発達中の胚に周辺 細胞を経由して感染していく場合(直接侵入),の2と おりがあり,PSTVdの場合は1の間接侵入によるもの であることが判明している(14).これらの種子伝染の成 立の有無はウイロイドと宿主植物品種の組み合わせに依 存しており,PSTVdの場合においてはトマトやジャガ イモ,ペチュニアでは種子伝染が確認されているが,タ バコなどでは確認できない.また,PSTVdの近縁種で
あるTCDVd(PSTVdと塩基配列が80〜85%一致)は トマトでは種子伝染せず,実際にPSTVdは胚珠内部ま で感染が確認できるが,TCDVdは胚珠内に感染するこ とはできない(図2B).このような生殖器官における移 行のメカニズムは不明であるが,種子伝染はウイロイド にとって重要な生き残り手段であることを考えると,分 裂組織や卵細胞,胚へ侵入できるかどうかはウイロイド の進化の点で重要な過程である.感染宿主が栄養繁殖で ない場合,虫媒伝染も土壌伝染もできないウイロイドに とって種子伝染できないことは,そこで消滅するしかな く大きな選択圧となる.つまり,進化の過程で種子伝染 可能な塩基配列をもつウイロイドとそれを可能とする宿 主植物種の組み合わせが成立したのであろう.さらにそ こに病徴発現の程度による宿主植物の種子形成の有無へ の影響も関与してくる.当然ながら,発病によって感染 植物が枯死または種子形成阻害を起こしてしまえばウイ ロイド自体も消滅するしかない.発病程度が小さいほど ウイロイドは感染植物の子孫へ効率伝播できるであろ う.前述したようにPSTVdに感染して激しい病徴発現 を示す植物種はトマトやジャガイモくらいしかなく,ほ とんどの宿主植物種が無病徴感染であるのは,ウイロイ ドの生き残り戦略の一つなのかもしれない.
ウイロイドの起源
ウイロイドの起源としては,①レトロトランスポゾン 起源説(レトロトランスポゾンは自身をRNAに複写し た後,DNAとなってゲノム上を移動することができる)
や②イントロン起源説などがある(15).イントロンとは 転写されたRNA産物のうち,スプライシング反応に よって除去される配列であり,アミノ酸に翻訳されない non-coding RNAの1種である.切りだされたイントロ ン配列は,それぞれ投げ縄構造を形成し,mRNA前駆 体から除去される.残った配列がアミノ酸に翻訳される mRNAとなるエクソン配列となる.また,最近ではイ ントロン配列が環状RNA(ciRNA)となり,miRNA
(20〜25塩基のncRNAで他の遺伝子の発現を調節する 機能を有する)との結合サイトをもち遺伝子発現の調整 を行うものも報告されている(16).このように飛び出し たRNA配列が自律複製能をもってウイロイド様RNA が発生したのではないかとするのがイントロン起源説で ある.イントロンの形成機構が「転写→切断→投げ縄構 造の形成」といった,ウイロイドの複製機構に類似して いることを根拠にしている.イントロン以外にもたとえ ば,エクソン由来のlncRNAの中で環状になるRNAも
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存在し,それはmiRNAとの結合サイトをもち遺伝子発 現の調整を行うことが知られており(16),エクソン配列 からも「転写→切断→環状RNAの形成」のステップを 経るものがあり,今後もさまざまなウイロイドに類似し たRNA構造体が発見されるかもしれない.
しかしながら,いずれにしても現在までにウイロイド 様配列は植物ゲノム上からは見つかっていない.一方 で,近年ウイルスでは植物ゲノム上にウイルス配列が発 見されるようになっている.DNAウイルスの一種であ るパラレトロウイルス(例 )は宿 主ゲノム上においてDNAウイルスが存在し,高温や乾 燥ストレス,組織培養などによって植物ゲノムからウイ ルス配列が出現し,ウイルス粒子を形成することが知ら れている(17).最近ではDNAウイルスだけなく,RNA ウイルスにおいても植物ゲノム上にその配列が存在して いることが報告されている(18).また,サテライトウイ ルス(ウイルスに寄生するウイルスで,親ウイルスの増 殖環境下のみにおいて増殖可能)においてもその配列断 片がタバコのゲノム上からも発見されている(18).した がって,今後の植物ゲノム解析次第ではウイロイド様配 列も植物ゲノム上から発見されるかもしれない.
ウイロイドの進化と新しいウイロイドの発見 ウイロイドの起源については興味深いテーマではある が,一方でこれから新しいウイロイドが発見されるの か,または新たに発生する可能性はあるのか今後の課題 としては重要なテーマである.ウイロイドは進化速度お よび宿主への適応が最も早い生物体とされている(5). PSTVdは配列多様性をもつ種(類似した種quasispe- cies)を形成し,それらが新しい宿主へ適応するための 源になると考えられている.つまり,数種類の一定の変 異をもったPSTVdの集団が存在し,何らかの選択圧
(新しい宿主植物における複製・移行など)によって 残った変異体が優占種として新たに発生することとな る.実際にウイロイドを接種源とは別種の植物に接種す ると新しい変異体を得ることができることが可能であ る(5).複製・移行の項目で述べたように,ウイロイドは 宿主因子を利用して複製しているのでそれらが選択圧に なるのは容易に想像できる.また,細胞間移行や全身移 行に関してもウイロイドの立体構造が関与していること から(19),変異体の構造がより移行に適した形態である ことが優占種となる条件であろう.宿主への適応が迅速 に行われることを考慮すると,汁液接種,接木作業,交 雑など人為的作業によって新たなウイロイド種が発生す
ることは難しいことではないだろう.ただし,宿主範囲 が極端に狭いアブサンウイロイド科についてはその限り ではないかもしれない.
ウイロイドはこれまでに植物以外では発見されておら ず,動物細胞からの検出例はない.実験上では酵母にお いて複製が確認された例があるが,自然宿主植物として 報告例があるのは被子植物のみであって,裸子植物やコ ケ,シダ,藻類などからの検出事例はない.実際,被子 植物以外を自然宿主とするウイロイドは存在しないの か,未発見であるだけなのかは不明である.ウイロイド の検出は主にRT-PCRなどが用いられており,ポスピウ イロイド属は共通配列が存在するので,そこをターゲッ トしたRT-PCRによって簡単に新規ウイロイドの検出が 可 能 で あ る.実 際 に や
などがその方法によって新規に発見さ れている(5).しかしながら,アブサンウイロイド科のよ うに共通配列などないウイロイドの場合はRT-PCRによ る検出は不可能であり,専ら古典的な方法であるポリア クリルアミド電気泳動によって環状RNAを分離して塩 基配列を確認する方法に頼るしかない.そこで期待され るのがRNase Rと次世代シークエンサーを用いた解析 による新規ウイロイドの検出である.RNase Rはほぼ すべての直鎖状RNAを分解する3′→5′エキソリボヌク レアーゼであり,投げ縄構造または環状のRNAは分解 しないため,ウイロイド様環状RNAを効率的に得るこ とが期待される.それらの処理を経て次世代シークエン サーによって環状RNAを得てウイロイド配列情報を効 率的に解析することが報告されている(20).
Long non-coding RNAとしてのウイロイド non-coding RNA(ncRNA)の中で200塩基以上のも のをlong non-coding RNA(lncRNA)と定義されてお り,100 kbまでの長さのものが報告されている(16).その 点ではウイロイド(250〜400塩基)もlncRNAともいえ る.lncRNAは発生・分化などにおける調節因子の役割 が報告されており,かつて唱えられたようなジャンク遺 伝子ではない.また,最近になって環状のlncRNAが脚 光を浴びている.かつて環状RNAというのはマイナー な存在であったが,哺乳類においては内因性の環状 ncRNA(circRNA)が数千も存在しており,さらにそ れらはmiRNAの機能を調節していることが報告されて いる(16).ヒトのcircRNAではあるCDR1asはmiRNA-7 との結合鎖を60以上もっており,miRNA-7の吸着と放 出の調整をしている(miRNA sponge).このCDR1as
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の機能不全による発がんやパーキンソン病との関連が示 唆されている.circRNAについては従来の分析法では 単離と解析が困難であることから数年前までは全く進展 が見られなかったが,次世代シークエンサー技術などに よって大規模な解析が可能となった.circRNAについ ての研究が盛んに行われることは,環状RNAであるウ イロイド研究の進展につながるかもしれない.また,生 体内で作られる環状RNAの合成様式はさまざまある が,今後,ウイロイドの複製様式に近似したものも見つ かるかもしれない.それらはウイロイドの起源と進化に ついて何かのヒントを与えてくれるだろう.
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Ma, J. Cheng, Y. Xu, M. Lu : , 10, e1004553 (2014).
プロフィール
松下 陽介(Yosuke MATSUSHITA)
<略歴>2005年京都大学大学院農学研究科農学専攻修士課程修 了/2005年農業・食品産業技術総合研究機構花き研究所研究員/
2010年京都大学大学院農学研究科論文博士取得,現在に至る<研 究テーマと抱負>ウイロイド種子伝染機構の解明,ウイロイド抵 抗性機構解明など<趣味>旧東欧・旧ソ連地域への旅行
Copyright © 2016 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.54.170
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