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コメの生産性を規定するアンモニウム同化系酵素の新規な役割

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化学と生物 Vol. 54, No. 12, 2016

コメの生産性を規定するアンモニウム同化系酵素の新規な役割

イネにおける窒素代謝に依存した分げつの生長制御

世界人口が90億人を超えると予想される2050年まで には,世界の食糧生産量を2倍に増やす必要があり,食 糧の増産と持続的安定供給系の構築は,人類が直近で解 決すべき課題の一つである.特に,わが国の食糧自給率 は約40%にすぎず,かつ,国土面積も狭いことから,

耕地面積当たりの作物生産性の向上に貢献する分子育種 的知見の集積と応用研究は急務であると言える.コメ は,日本を含めた東アジアの食糧供給上の基幹穀物であ り,イネでは,穂は主茎(稈)と分げつ(枝分かれ)で 実る(有効分げつ)

.分げつは,主に栄養成長期に主稈

の各節の葉腋の芽(腋芽)から成長し,さらに分げつの 節の腋芽からも生じる.また,イネの成長とコメの収量 の増進には,多量の窒素栄養の施肥が必須である.田植 えされた苗から,茎が何本くらいに増えるのか? 本稿 では,コメの収量増加に重要な分げつの窒素栄養に依存 した生長制御の仕組みの一端を紹介する.

還元的環境の冠水下の水田で栽培されるイネ(

 L.)は,主に土壌中のアンモニウム(NH4)を外 来窒素源として吸収利用する(1)

.植物では,NH

4は主に グルタミン合成酵素(GS)とグルタミン酸合成酵素

(GOGAT)の共役酵素反応により,グルタミンへと初 期同化される(1)

.イネゲノムには,各1分子種のプラス

チド型GS2とフェレドキシン(Fd)依存性GOGAT,

ま た,3分 子 種 の サ イ ト ゾ ル 型GS1(GS1;1, GS1;2,  GS1;3) と2分 子 種 のNADH依 存 性GOGAT(NADH- GOGAT1, NADH-GOGAT2)の遺伝子がコードされて いる(1)

.私たちは,時期・組織特異的な発現解析や内在

性レトロトランスポゾン 挿入遺伝子破壊イネ突 然変異体を用いた解析から,根表層細胞群のGS1;2/

NADH-GOGAT1がNH4初期同化系を担い,老化葉身維 管束組織のGS1;1/NADH-GOGAT2と未熟葉身・登熟初 期子実維管束組織のNADH-GOGAT1が窒素リサイクル 系を担うことを立証してきた(1)

ここで,GS1;2欠損イネ変異体およびNADH-GOGAT1 欠損イネ変異体においては,穂数の減少によるコメの減 収が生じ,特にGS1;2欠損イネ変異体では分げつ数が減 少した(1)

.栄養成長期に窒素栄養が不十分だと有効分げ

つ数は減少し,十分だと分げつ数は増加する(2)

.しか

し,体内窒素栄養環境が分げつの発達を制御する分子機 構はよく理解されていない.分げつの成長は,分裂組織 を含む腋芽の形成とその伸長で進行する(3)

.GS1;2欠損

イネ変異体においては,NH4供給下で腋芽の伸長が抑制 され,この表現型は自己プロモーター制御下の   cDNAを導入した相補系統では回復した(4)

腋芽の伸長制御には外的要因(光の強度・波長,物理 的障害,土壌の栄養状態など)と内的要因(代謝と植物 ホルモン)が複雑に影響し合う(3)

.NH

4供給下の野生型 イネにおける腋芽や節およびSAM(茎頂分裂組織)を 含む地上部の基部では,  mRNAは,主に縦走大 維管束や分げつへの代謝産物の輸送に重要な節網維管束 の篩部伴細胞・柔細胞および分げつ大維管束で発現蓄積 した(4)(図

1

.特に篩部伴細胞は輸送物質の篩管への積

み込みを調節する細胞とされ,GS1;2が篩部伴細胞で腋 芽の伸長に必要な窒素の転送形態であるグルタミンの生 合成を担うことが示唆された.また,NH4供給下GS1;2 欠損イネ変異体の上記地上部基部の全窒素含量と全炭素 含量および乾燥重は,野生型と比較して顕著に減少し,

葉鞘には糖貯蔵形態のデンプンが著しく蓄積した(4)

.他

方,分げつの生長では,リグニン蓄積による木化も伴う が,リグニン合成初期反応のフェニルアラニンアンモニ アリアーゼ(PAL)酵素反応ではNH4が発生する(5)

NH4供給下GS1;2欠損イネ変異体の地上部基部のリグニ ン蓄積量は顕著に減少し,相補系統では回復したことか ら,GS1;2は,PAL酵素反応由来のNH4の再同化も担 い,リグニン合成系と緊密に関連することが示唆され た(4)

.さらに,トランスクリプトーム解析結果は上記知

見を支持し,NH4供給下GS1;2欠損イネ変異体の地上部 基部では,リグニン合成やアミノ酸合成,糖転送形態の ショ糖の合成およびデンプン分解に関連した遺伝子の発 現低下が認められた(4)

.このように,NH

4供給下GS1;2 欠損イネ変異体幼植物の地上部基部では,内的要因とし ての窒素・炭素代謝の撹乱とこれらの栄養素の利用性の 低下ならびにリグニン合成阻害が生じ,結果として腋芽 の伸長阻害が生じていた(4)(図1)

次に,腋芽伸長制御のもう一つの内的要因である植物 ホルモンに着目した.頂芽優勢(茎の先端の芽の生長が

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優先され,腋芽が休眠すること)は,頂芽で合成された オーキシンが極性移動して,腋芽基部の節において,腋 芽を伸長させるサイトカイニンの生合成を抑制すること に起因する(3)

.また,オーキシンは,腋芽伸長を抑制す

るストリゴラクトンの生合成を正に制御して分げつ発達 を抑制していると考えられている(3)

.しかし,GS1;2欠

損イネ変異体と野生型のストリゴラクトン含量は同程度 に低く,NH4供給下GS1;2欠損イネ変異体での腋芽の伸 長抑制は少なくともストリゴラクトンに依存していない ことが示唆された(4)

.一方,イネのサイトカイニン生合

成鍵酵素遺伝子の

( ) と は,グルタミンまたはその代謝産 物により発現制御されることから(6)

,GS1;2欠損イネ変

異体の分げつ数減少とサイトカイニンとの関連性を今後 詳細に解析する必要がある.

筆者らは,窒素の代謝・利用効率の低下が腋芽伸長の 分子制御機構に与える影響を解明し,イネにおける窒素 栄養に応じた分げつ数の人為的最適化や窒素欠乏条件下 における植物の生存戦略機構の理解に貢献していきたい

と考えている.この研究は,低窒素栄養肥料施肥下での 持続的環境低負荷かつ高生産性の農業体系構築における 極めて重要な分子基盤情報を提供すると期待される.

  1)  T. Yamaya & M. Kusano:  , 65, 5519 (2014).

  2)  Y. Liu, D. Gu, Y. Ding, Q. Wang, G. Li & S. Wang: 

5, 1019 (2011).

  3)  M.  A.  Domagalska  &  O.  Leyser: 

12, 211 (2011).

  4)  M.  Ohashi,  K.  Ishiyama,  M.  Kusano,  A.  Fukushima,  S. 

Kojima, A. Hanada, K. Kanno, T. Hayakawa, Y. Seto, J. 

Kyozuka  :  , 81, 347 (2015).

  5)  F. R. Cantón, M. F. Suárez & F. M. Cánovas: 

83, 265 (2005).

  6)  T. Kamada-Nobusada, N. Makita, M. Kojima & H. Sakaki-

bara:  , 54, 1881 (2013).

(大橋美和,小島創一,早川俊彦,東北大学大学院農学 研究科)

プロフィール

大橋 美和(Miwa OHASHI)

<略歴>2014年東北大学農学部応用生物 化学科卒業/2016年同大学大学院農学研 究科応用生命科学専攻博士課程前期課程修 了/同年同後期課程進学,現在に至る<研 究テーマと抱負>植物における窒素代謝お よび形態形成<趣味>読書,旅行

小島 創一(Soichi KOJIMA)

<略歴>1997年東北大学農学部応用生物 化学科卒業/2001年日本学術振興会特別 研究員/2002年東北大学大学院農学研究 科応用生命科学専攻博士課程修了/同年 Universität Hohenheim Wissenschaftlicher  Mitarbeiter/2007年理化学研究所植物科 学研究センター研究員/同年東北大学大学 院農学研究科助教,現在に至る<研究テー マと抱負>植物の根における窒素栄養の輸 送と代謝の分子生理学<趣味>歴史,文学 早川 俊彦(Toshihiko HAYAKAWA)

<略歴>1988年東北大学農学部農芸化学 科卒業/1990年同大学大学院農学研究科 農芸化学専攻博士前期課程修了/1992年 日本学術振興会特別研究員/1993年東北 大学大学院農学研究科農芸化学専攻博士後 期課程修了/同年同大学農学部応用生物化 学科助手/2001年同大学大学院農学研究 科応用生命科学専攻助教授/2007年同准 教授/2009年同農学研究科附属先端農学 研究センター准教授/2016年同応用生命 科学専攻准教授,現在に至る<研究テーマ と抱負>植物における窒素吸収・代謝の分 子制御機構<趣味>読書

Copyright © 2016 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.54.867 図1NH4供給下で栽培した野生型イネ(A)とGS1;2欠損イ

ネ変異体(B)の各幼植物の地上部基部でのGS1;2の組織・細 胞分布の概念図(左)と腋芽の生長(右)

分げつへの代謝産物の転送に重要な節網維管束や分げつ大維管束 のGS1;2欠損は,窒素代謝と炭素代謝の撹乱およびリグニン蓄積 阻害を引き起こし,結果として腋芽の伸長が阻害される.スケー ルバーは,0.1 mm(左)と1.0 mm(右)を示す.

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