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デジタル聴診器と触診センサシステムの開発 - 山口大学

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Academic year: 2025

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デジタル聴診器と触診センサシステムの開発

研究代表者 理工学研究科 江鐘偉

研究の目的

1.研究背景

 近年、中高年ビジネスマンの突然死や高齢化社 会の到来などに伴い、人々の関心は健康管理や医 療福祉に集まっている。日頃に自分の健康状態モ ニタリングと健康管理が簡単かつ有効にできれ ば、病気の早期発見を促し、早期治療への効果が 極めて大きい。そのため、日常の定期的な診断を 病院に通うことなく家庭や会社でいつでも行うこ とのできる遠隔診断システム(図1)の開発が急ピ ッチに進められている。

図1 遠隔診断システムの概要図

本研究では遠隔診断システム開発ための基礎研究 として、デジタル聴診器と触診プローブおよび信 号採集・解析・診断システムの試作開発を目指し ている。さらに、心音や呼吸音から疾患を自動識 別できる診断支援ソフトの開発を行う。

2.聴診システム

 本研究で開発する聴診システムの概略を図2に 示す。聴診器は最も古い医療診断器具の一つであ るが、心音・呼吸音などが計測でき、多くの疾 患・病態を診断できる。また、家族やペットの健 康管理のために聴診器を所有する家庭が近年増加 しており、各家庭においても容易に使用できると 思われる。本研究で提案する聴診システムはデジ

タル聴診器とコンピュータに搭載する診断支援ソ フトから成る。本研究で目指している聴診器はそ の他の診断器具に比べ、安価で携帯に便利である こと、遠隔診断の計測デバイスとして使用できる

こと、さらに使用ユーザの体系に個別対応できる ことなどの特徴が挙げられる。一部市販されてい るデジタル聴診器は通常の聴診器に多い聴診音の 消失や共鳴を抑え、特に心音を聴診しやすいよう に音量の調節・聴診周波数の変更ができるように 設計されたものである。本聴診器システム(図2)

では、ヘッドプローブで得た心音および呼吸音を マイクロホンにより電気信号へ変換、マイコンで 制御されるフィルタによって聴診しやすい信号を 抽出増幅、さらにAD変換により聴診音をコンピ ュータにデータとして取り込み、電子カルテ(デ ータベース)として保存すると同時に、信号の録 音再生や波形表示を行う。

図2 デジタル聴診器システム

 図3に、デジタル聴診器を用いたコンピュータ への聴診音データ取り込みから診断支援ソフトに よる診断までの流れを示す。近年、医療分野の細 分化に伴い、医師の担当する分野の専門家が進ん でいる。そのため、医師が開業医になった場合に 専門でない疾患に関しては、それに気づかない場 合も考えられる。そのような場合に症例の自動識 別機能は医師に注意を促し、病を早期発見するた めに重要となる。また、聴診器を用いて心臓や肺 の雑音を区別するには大変な熟練が必要であると いわれており、聴診音の自動識別は、未熟な医師 にとっても心・肺雑音の区別を容易にできるよう になる。すなわち、聴診熟練期間の短期化を図る

(2)

ことができる。従って、診断支援ソフトは医師の 診断サボ・一一一トと研修医の学習補助に有効が大きい

と言える。

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1の 1

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図3 聴診システムを用いた診断のフローチャート

 また、本聴診システムは、デジタル聴診器によ る聴診後はコンピュータ画面のボタンクリックで 簡単に症状を診断してくれるような使いやすいシ ステムを目標としているため、各家庭で自己診断 用に用いることもできる。

研究成果1

1.デジタル聴診器の試作

 現在、デジタル聴診器は市販の聴診器にマイク ロホン・アンプ・スピーカをコンパクトにまとめ たものを実装し、改良したものを用いている。し かしながら、聴診器自体の周波数帯域が狭く、新 たなデジタル聴診器の開発が必要である。現在

(株)ヨシミエレクトロニクス社に依頼し、試作を 行う予定である。

2.診断支援ソフトによる信号処理と波形表示  コンピュータに記録した聴診データを信号処理

し、グラフィカルに表示する(図4)。これにより聴 診データをわかりやすくとらえることができる。図 4において、左側の波形は時間波形を、右側は周波 数波形を示している。時間波形側にあるツマミとボ

タンによりボリュームを調整し、聴診音を再生でき る。ボタン操作で処理が行え、初めて使用する人で も容易に扱える。解析に関しては周波数解析のみな らず、心臓・呼吸系の病態に対応する有効なデータ 解析表示法を探索していく予定である。

図4 信号処理と波形表示

3.症例の自動識別

 診断支援ソフトを用いた症例の自動識別のため にニューラルネットワーク(NN)を適用する。

NNはパターン認識に有効であり、コンピュータ において手書き文字や音声の認識に適用されてい る。NNはネットワークに入力とそれに対する教 師データを与え、学習を行わせることにより望ま

しい出力がなされるようになる。

4.対象とした心症例

 今回対象とした心症例は、僧帽弁閉鎖不全症

(MR)と大動脈弁狭窄症(AS)の2例で、それと 正常心音(NOR)とを分類することのできるNN の構成を目指した。聴診音は 心音のCD :南 江堂出版という心音を収録したCD−ROMのものを 使用した。また、市販のデジタル聴診器を用いて 山口大学医学部で来院患者に対して聴診を行い、

それぞれNORを1例、 MRを2例収録した。 MRの2 例は同じ患者で聴診部位が異なり、一つは心尖部

(Apex)、もう一つは第4左胸骨辺縁(4LSB)であ る。これは部位の違いがあってもNNが妥当な出 力をするかどうか調べるためである。なお、測定 条件として、医学部での聴診時に使用している録

音装置に合わせ、サンプリング周波数:

11025Hz・量子化ビット数:8bit・チャンネル:

monoとした。心音は低周波でおよそ1000Hz以下 であるので、採用したサンプリング周波数に問題 は無いと思われる。

5.NNの構成

 NNは図5に示すような標準的な階層型3層のネ ットワークを構成した。入力層の素子数は後に示 す入力データのサイズに合わせ32個、中間16個、

出力は3種の分類であることから素子数2個とし た。伝達関数は出力データ値を0〜1とするため シグモイド関数を用いた。

82

(3)

83

R 2

e

e

INPUT HIDDEN OUI PUT

32 16 2

図5 構成したニューラルネットワーク

g 1

v

6.入力データの加工

 予備実験において、心音やその周波数波形をそ のまま用いても情報量が多すぎてNNが肥大化し てしまうだけで、学習結果は良くなかった。そこ である程度情報を限定するために時間波形を一心 拍毎に切り出し、それぞれ症例識別することにし た。一心拍に症例識別のための情報は存在するた め波形切り出しに問題は無いと考えられる。そし て、時間波形は切り出し方により波形パターンが 大きく変化しパターン認識させにくいので、FFT により周波数波形を求め、これを実際の入力デー タに用いた。データ点数は0〜500Hz間で均等に 32点をとった。表1には使用データの心拍数内訳

を示す。

表1使用データの心拍数

Condition       Number of beats CD sample data

NOR 9

MR 11

AS 13

Clinic test data NOR(Apex) 10

MR(Apex) 8

MR(4LSB) 6

7.NNの学習

 NNの学習には入力・教師、そしてNNを評価す るために試験データが必要となる。入力データは CDデータから3つの各症例についてそれぞれ4個 の計12個とした。また、教師データは以下に示す

ものである。

NOR 一〉 [O O]

MR 一 [O 1]

AS . [1 O]

 学習アルゴリズムはローカルミニマム(局所解)

に陥りにくいモーメンタム付きバックプロパゲー ションを用いた。これにより、安定した学習が行 われる。学習停止のトリガーは誤差曲線の勾配が 10−10になったときとし、十分に誤差を減少させた。

学習の後にNNに試験データを入力し、識別率、

すなわち、ある症例の内旨割心拍データが正しく 識別されたかを調べ、NNの評価とした。表2に学 習結果を示す。

表2 NNの学習結果

Condition Distinction rate(%)

CD sample data

NOR 100

MR 81.8

AS 92.3

Record data

NOR(Apex) 50.0

MR(Apex) 87.5

MR(4LSB) 100

 表2においてNOR(Apex)の聴診データ以外は 80%を越える識別率で実用レベルのNNが構成で きたと考えられる。聴診部位の異なる症例に対し ても、識別が出来ている。NOR(Apex)に関する認 識率は使用したデジタル聴診器の性能差によって 聴診音の波形をうまく捕らえることができなかっ たためと思われる。新たにNOR(Apex)を学習デー タとするなど繰り返し学習を行うことで識別率は 改善され、すべての症例に対して80%を越えるこ とができた。しかしながら、再学習を必要とする ことは、ネットワーク構城の初期において医師の 多大なるサポートが要求される。今後、優秀な医 師の診断とNNによる識別をどのようマッチング させるか、また、学習データの自己修正を如何に 行わせるか検討していく必要がある。

8.今後の予定

 症例の自動識別について、心症例について3種 を識別することを目標としたが、実際には症例は

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数多くより大規模なNNを構成する必要があると 思われる。また、現在は識別を個々のソフトを用 いることで行っているが、自動識別のソフトとし て開発を行う。さらに、低侵襲携帯しやすい聴診 プローブを開発し、デジタル聴診システムを完成 する。完成したシステムを企業の協力により、実 際に現場に適用し有効性を検証する予定である。

研究成果2

1.触覚センサの試作

 図6にPVDFフィルムを用いて試作した触覚セ ンサを示す。本センサは、PVDFに導電性接着剤 を用いてエナメル線を接着した受感素子を人の 指形状の型に入れ、柔らかめの液体シリコンゴ ムを流し込んで製作したものである。さらにセ ンサ表面を市販の特殊ビニール手袋で覆い、指 紋の役割とシリコンゴム表面の保護を果たして いる。本センサを用いて皮膚表面を擦ったり、

押したり、叩いたりした場合に得られた触覚情 報をさらにマイコンによる表示するシステムを 試作した。今後、本センサを用いてしこりの硬 さの診断や、皮膚感覚のような触覚情報の計測 に応用する予定である。

Cover

15

PVIDF Ac践l base

図6 柔軟触覚センサ

産業技術への貢献

 デジタル聴診器システムを適用することで未熟 な医師にとっては聴診熟練期間を短期化すること ができる。また、使用簡便かつ安価な聴診器シス テムは家庭用自己診断健康用品としても用いるこ とができる。また、本システムは最終的には近未 来的な遠隔診断システムを目標としているため、

新たな診断様式の可能性を見出すことができる。

 また、本研究で開発した触覚センサは、撫でら

れた場合や叩かれた場合などに関する触覚情報を 計測可能であるため、今後ペットロボット用の皮 膚センサあるいは触覚センサとしておもちゃ産業 への応用が期待される。

グループメンバー

氏名 所属 職(学年)

江 鐘偉 松崎益徳 木戸尚治 藤井崇史 河村武郎 山田和弘

理工学 医学 理工学 医学 医学 理工学

教授 教授 教授 助教授

MD

Ml

連絡先

電話 0836−85−9137 FAX 0836−85−9137

E−mai1 : jiang@po.cc.yamaguchi−u.ac.jp

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Referensi

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