パラグアイの夕べ
11月 講演、カルデロン先生のゼミナール ました。藤掛洋子先生(横浜国立大学教授)の基調 化ウィーク2019「パラグアイの夕べ」を開催し 19日に、スペイン語学科主催、外国語学部文
が集まり、とても賑わいました。 交換会を行いました。当日は予想を超えて多くの人 るアルパ(パラグアイハープ)の演奏、そして情報 ラグアイ文学の朗読と寸劇、ルシア塩満さん他によ 3年生によるパ
基調講演「テネリフェ島とパラグアイの作り手から
考えるニャンドティの過去と現在」
藤掛洋子先生の講演は、パラグアイの民族工芸品であるニャンドティについて知る良い機会となりました。藤掛先生は青年海外協力隊としてパラグアイへ渡った後、NGOミタイ・ミタクニャイ子供基金を設立されました。その後はパラグアイと 本国を結ぶ架け橋としてご活躍されています。
ニャンドティとは先住民族グアラニーの言葉で「蜘蛛の巣」を意味し、色鮮やかな糸で多様な模様を作るレース編みのことです。モロッコの隣にあるスペイン・テネリフェ島のレース編みが元になったといわれています。そしてパラグアイの文化と融合し、ニャンドティが発達しました。その証拠に、宣教師により持ち込まれた十字架、土着信仰由来のジャスミンの花、ランタンなどの文様が多いそうです。元々白い糸を使用した物が多く、宗教祭事に使われることが主でしたが、近年は色鮮やかな糸で織られ、洋服やアクセサリーなどに幅広く使われるようになりました。製作方法でテネリフェ島のレース編みと異なる点は、木枠の使用です。テネリフェ島ではピンクッションを土台にしますが、パラグアイでは木枠に布を張り、モチーフの外枠を縫い付けます。模様を織った後に糊付けし、乾燥させた後、布地を取り除き完成です。この布地を取り除く作業は、モチーフが繊細になればなるほど難易度が増し、とても集中力が必要な仕事であると伺いました。
また、ニャンドティ制作に従事するパラグアイ人女性たちが抱える問題についても学びました。ニャ ンドティは、昔から女性の労働でした。「ニャンドティが作り終わるまで、外遊びはしてはいけない」と言われていたそうです。藤掛先生は、現在、このニャンドティの労働が、本当に作り手の生活を支えているのかを調査されています。調査の結果、ニャンドティの収入は最低賃金にも満たないことが分かっています。そのため、製作技術を受け継ぐ若者が不足しています。田舎に住んでいる製作者は、市場に売りに行くことが困難であるため、仲介業者のサポートが必要です。そのため、作品が売れたとしても仲介業者にマージンを取られてしまいます。さらに、ニャンドティ製作に必要な糸を買うために、借金をする人もいるそうです。
このような現状を改善するために、藤掛先生の研究室では、現地の製作者に日本から製作を依頼し直接買う”フェアトレード“を行うことで支援活動をしています。その際、日本で売れそうな柄・色・物(例えばティッシュケースやアクセサリー)など、日本でも馴染みやすく手に取りやすいような製品を企画・提案しているそうです。
また、ニャンドティは同じモチーフを作っても個体差が出る手作りの工芸品で、これも魅力のひとつ 石橋 佳門外国語学部 スペイン語学科
3年千葉しおり 水谷 萌
● スペイン語学科 パラグアイの夕べ
基調講演(藤掛洋子先生)
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です。現在は日本でもニャンドティ作りの本が出版されるなど、日本とパラグアイを繋ぐ工芸品として、パラグアイ文化を広めることにも貢献しています。
パラグアイ文学の朗読と寸劇
第
脅かされていた 隣国との武力衝突に常に 戦争やチャコ戦争により、 この作品には、三国同盟 朗読と寸劇を行いました。 ス著『汝、人の子よ』の ウグスト・ロア=バスト ンゼミの学生たちが、ア 2部では、カルデロ
ら 19世紀か 様子が描かれていました。 20世紀のパラグアイの 普段はあまり他のゼミナールの活動を見る機会がないのですが、今回のイベントで同級生の努力の成果を見ることが出来ました。短い期間での準備にも関わらず、ただセリフを覚えるだけでなく感情を込めて演じていたので、見ている私達も引き込まれました。
アルパ(パラグアイハープ)ライブ
アルパとは、パラグアイやメキシコ、ペルー、ベネズエラで演奏されるハープで、民族楽器の一つです。今回は、ルシア塩満さん、歌田みゆきさん、塩満友紀さんに特別に演奏していただきました。 ルシア塩満さんは、日本を代表するアルパ奏者で、長年の日本とパラグアイの音楽・文化の普及活動が認められ、パラグアイ政府から文化功労賞や、「国家功労勲章・コメンダドール位」を受賞されています。アルゼンチンやパラグアイ、ベネズエラで、音楽祭への出場や単独コンサートを実現された他、大統領の御前演奏など、国内外の要人のレセプションパーティーでの演奏を務められています。また、今回共演された歌田みゆきさんと塩満友紀さんは、ルシア塩満さんが指導し育て上げた「ラス・カンパーナス」のメンバーで、各種イベントで活躍されています。
アルパを実際に見ることも聞くことも初めての人がほとんどで、今回のライブはとても貴重な体験となりました。アンコールを含めたくさんの曲を演奏していただき、一つの楽器が織りなす多彩な音色を聞くことができました。音の強弱や弦だけで演奏するのではなく、胴を叩いて音を出すなど、楽器全体を使った演奏で、演奏者と楽器とが一体となっているように感じました。アルパ
な、そんな空間でした。 で、時の流れが止まったような、別世界にいるよう るとは思えないほどの迫力と、心地よいハーモニー 3台だけで演奏してい 情報交換会
最後に、参加者全員で食事をしながらの情報交換会が行われました。食事にはパラグアイ料理も出され、エンパナーダとソパ・パラグアージャをいただきました。エンパナーダは、スペイン語圏で食べられるもので、パラグアイのものは牛肉、鶏肉などをパイ生地で包んで揚げたものです。少しスパイスの効いたもので、食べ応えがありながら何個でもいけるおいしさでした。ソパ・パラグアージャは、パラグアイの国民食で、昔トウモロコシスープを作ろうとして水分を飛ばしすぎてケーキになってしまったものが起源だそうです。トウモロコシの甘味とチーズが抜群の相性でした。
学生、先生方、来賓の方々、一般の方々が分け隔てなく、食事をしながら様々な話をできた、とても貴重な時間だったと思います。特に、アルパ演奏者の方々が、学生にニャンドティの衣装やアルパにつ
寸劇(『汝、人の子よ』より)
アルパ演奏(ルシア塩満さん他)
情報交換会 ニャンドティに興味津々
緻密に編まれたニャンドティ
第2部 学生の活動・ゼミナール活動 ●
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いて教えてくださったのが印象的でした。アルパ演奏者は全員がニャンドティの衣装で参加され、とても華やかでした。職人の手で作られた衣装は、一着一着デザインが異なり、それぞれが個性豊かで、実際にその衣装を近くで見ると、その繊細さや色使い、多種多様な模様がとても美しかったです。さらに、その衣装ができるまでの工程や、ルシア塩満さんとニャンドティ制作者たちとの交流など、様々なお話を聞くことができました。会の最後には、私たち学生にアルパを実際に触らせてくださいました。アルパは身長より少し低いくらいの丈ですが、見た目ほどの重さはありませんでした。しかし、弦はとても強く固く、音を出すにはとても力が必要でした。弦の上から下へと指をなめらかに動かすことすら一苦労で、とても難しい楽器だと感じました。
最後に
と意義を再確認しました。 し、人を繋ぐ大切な文化を守り続けることの難しさ た。伝統文化の継承、その在り方と歴史を再度見直 巻く問題にも焦点を当てるべきだと気づかされまし ことができました。それと同時に、伝統文化を取り 文化について学び、その魅力と素晴らしさを知る に興味を持ったのではないでしょうか。今回は伝統 をすることができました。多くの人がパラグアイ 「パラグアイの夕べ」では、普段は出来ない体験
● スペイン語学科 パラグアイの夕べ
アルパの手ほどきを受ける学生たち
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