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ピリドキサルリン酸依存性転写調節因子の機能発現メカニズム

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化学と生物 Vol. 54, No. 5, 2016

ピリドキサルリン酸依存性転写調節因子の機能発現メカニズム

ビタミン B6 に依存する細菌転写制御因子

ビタミンB6はピリドキサル5′-リン酸(PLP)の形で,

主としてアミノ酸代謝関連酵素の補酵素として働くと理 解されている.しかしPLPは細菌の転写調節因子の構 成成分として,遺伝子の発現制御にも関与することが知 られている.細菌の転写調節因子であるGntRスーパー ファミリータンパク質は,保存性の高いN末端側の DNA結合ドメインと多様性に富むC末端ドメインで構 成される.C末端ドメインはオリゴマー化とエフェク ター結合に関与すると考えられているが,GntRスー パーファミリーの一つであるMocR/GabRサブファミ リーに属するタンパク質のC末端ドメインは,PLP酵素 であるアミノトランスフェラーゼと高い相同性を有す る.MocR/GabRサブファミリーの中で最も研究が進ん でいる のGabRは

γ

-アミノ酪酸(GABA)

の資化にかかわる転写調節因子であり,Belitskyらによ りその生理的役割が解明された(1, 2).GabRは,自身を コ ー ド す る 遺 伝 子 と こ れ と 逆 向 き に 隣 接 す る オペロンの間に結合する. ,  はそれぞ れGABAと

α

-ケトグルタル酸の間のアミノ基転移反応 を触媒するGABAアミノトランスフェラーゼ(GAB- AT)とコハク酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ

(SSDH)をコードする.GABAT反応の結果グルタミ ン酸とコハク酸セミアルデヒド(SS)が生成し,SSは SSDHによってNAD依存的にコハク酸に酸化される.

GabRはGABA非存在下で プロモーターを抑制 し,GABA存在下で活性化する.すなわちGabRによる 転写の制御はGABAの資化に対し合目的的に機 能している.

GabRはPLPを有するが,転写調節においてPLPはど のような役割を果たしているのだろうか.X線結晶構造 解析の結果では,GabRのN末端ドメインとC末端ドメ インは29アミノ酸残基からなるリンカーで結合し,

head-to-tail型のホモダイマーを構成している(3, 4)(図 1A).C末端ドメインは  HB27の 2-ア ミ ノ ア ジ ピ ン 酸 ア ミ ノ ト ラ ン ス フ ェ ラ ー ゼ

(AAA T)などと高い相同性を有する.GabRはGABA と

α

-ケトグルタル酸との間のアミノ基転移反応は触媒し ないが,アミノトランスフェラーゼにおいてその活性発

現に必要な残基の多くを保存している.Belitskyらはそ のような残基の変異によって,GabRが の転写活 性化能を消失することを報告しており,GabRによる転 写活性化がアミノトランスフェラーゼ反応(図1B)と 共通の過程を経て起こる可能性が示唆されていた.

GabRとGABAの反応はアミノトランスフェラーゼ反 応のどの段階までを共有しているのだろうか.GABA の添加はGabRの吸収スペクトルの420 nmのピークの 減少と330 nmのピークの増加をもたらす.反応後の補 酵素の解析や蛍光スペクトル分析の結果から,増加した 330 nmピークはPLPとGABA間で形成される分子外 シッフ塩基(図1B, (II))に由来すると考えられ,GabR とGABAの反応はこの段階で平衡に達するものと予想 された(4)

精製GabRとGabR結合領域を含む51 bpのDNAフラ グメントとの結合について,等温滴定カロリメトリー

(ITC)を用いた熱力学的解析が行われた.その結果,

GabRのリガンドであるGABAとPLPの有無でGabRと DNAとの結合におけるΔ bindingすなわちGabRとDNA の親和性は変わらないものの,Δ bindingに対するΔ と Δ の寄与が大きく変化することが明らかとなった(4). リガンドの非存在下ではΔ の寄与がΔ の寄与より大 きく,リガンド存在下ではΔ の寄与がΔ 寄与より大 きかった.またGabRモノマーとDNAフラグメントの 結合モル比( )はリガンドの有無にかかわらず2 : 1で あり,GabRはダイマーとしてDNAに結合するものと 考えられた.ITCの結果は,リガンドの添加によって GabRとDNAフラグメントの結合比や親和性は変わら ないものの,結合の様式が変化することを示している.

すなわちDNAに結合したGabRはGABAと分子外シッ フ塩基を形成して構造変化を起こし,DNAから遊離す ることなくDNAとの結合様式を変化させ,結果として 転 写 の 活 性 化 を も た ら す と 推 測 さ れ た(4). AAA Tなどのアミノトランスフェラーゼでは,基質の 結合によってopen型からclosed型へのコンフォメー ション変化が起こる.GABAの結合によるGabRの構造 変化はこのアミノトランスフェラーゼのコンフォメー ション変化に対応するものと考えられる.

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304 化学と生物 Vol. 54, No. 5, 2016

ところでGabRのN末端およびC末端ドメインに相当 するペプチドN′-GabRとC′-GabRはそれぞれ単独で

の可溶性画分に発現するため,各ドメインは独立し たフォールディングユニットとして振る舞う可能性が高 い(5).なおN′-GabRとC′-GabRは共存させてもオリゴ マ ー 構 造 は と ら な い.N′-GabRは,単 独 で も ま た C′-GabRの共存下でも上記のDNAフラグメントとの結 合能を示さない.一方,野生型GabRのC末端ドメイン 部 分 を,ダ イ マ ー 構 造 を 有 す る の AAA Tと置き換えた融合タンパク質はDNAと結合で きるため,DNA結合には二量体化が必須であると予想 された.なおゲルシフトアッセイによればこの融合タン パク質はAAA Tの基質である2-アミノアジピン酸の添 加によってDNAとの親和性を変化させたことから,

GabRのC末端ドメインを交換することによりアクティ ベーターとして働くアミノ酸を変更できる可能性がうか がわれた(5)

以上のようにGabRは結合PLPのユニークな機能とと もに,そのモジュール構造においても興味深い.また MocR/GabRスーパーファミリーに属する転写調節因子 は,グラム陽性菌,グラム陰性菌を問わずさまざまな細 菌に広範に存在することから,GabRの研究は将来的に は転写調節の撹乱を目的とした新たな抗生物質の創成に 役立つかもしれない.

  1)  B.  R.  Belitsky  &  A.  L.  Sonenshein:  , 45,  569 (2002).

  2)  B. R. Belitsky:  , 186, 1191 (2004).

  3)  R.  Edayathumangalam,  R.  Wu,  R.  Garcia,  Y.  Wang,  W. 

Wang, C. A. Kreinbring, A. Bach, J. Liao, T. A. Stone, T. 

C.  Terwilliger  :  , 110

17820 (2013).

  4)  K. Okuda, S. Kato, T. Ito, S. Shiraki, S. Kawase, M. Goto,  S.  Kawashima,  H.  Hemmi,  H.  Fukada  &  T.  Yoshimura: 

95, 245 (2015).

  5)  K. Okuda, T. Ito, M. Goto, T. Takenaka, H. Hemmi & T. 

Yoshimura:  , 158, 225 (2015).

(吉村 徹,名古屋大学大学院生命農学研究科)

プロフィール

吉 村  徹(Tohru YOSHIMURA)

<略歴>1979年京都大学農学部農芸化学 科卒業/1984年同大大学院農学研究科農 芸化学専攻博士課程単位認定退学/1985 年京都工芸繊維大学繊維学部助手/1989 年京都大学化学研究所助手/1997年同助 教授/2003年名古屋大学大学院生命農学 研究科教授<研究テーマと抱負>D-アミ ノ酸の生理機能と代謝酵素,ビタミンB6 酵素の構造と機能,発酵熱の生成機構,な ど<趣味>マイナーな作曲家の音楽を聴く こと,山歩き

Copyright © 2016 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.54.303 図1A GabRの ダ イ マ ー 構 造.(B

GABAを基質としたアミノトランスフェ ラーゼ反応の半反応

(A)PDBファイル4 mgrを基にPyMOLにて 作製した.(B)(I)分子内シッフ塩基,(II)

分子外シッフ塩基,(III)キノノイド中間体,

(IV)ケチミン中間体,(V)コハク酸セミア ル デ ヒ ド と ピ リ ド キ サ ミ ン5′-リ ン 酸

(PMP).GABAとα-ケトグルタル酸からグ ルタミン酸とコハク酸セミアルデヒドを生成 する反応(全反応)では,生成したPMPと α-ケトグルタル酸が反応して,上記の過程を 逆に進行してPLPとグルタミン酸が生じる.

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