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リンゴ由来プロシアニジン類の機能評価と機能性表示食品の開発

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はじめに

霊長類140種類以上の主食を調査したところ,果物を 食べる霊長類は,葉を主食とする霊長類よりも約25%

大きな脳をもっているという興味深い研究が報告され た(1)

.果実のほうが,葉などよりも栄養成分が豊富であ

ることから果実を摂取することでエネルギーを多く得る ことができるだけでなく,果実が実る植物の種類や生育 している場所,道具を使う食べ方などを記憶する必要が あることから,果実を摂取する霊長類の脳は大型化し,

進化するのに役立ったと考えられている.一方,欧米諸 国をはじめとする先進国では,豊富な食糧を得て糖尿 病,心疾患などの生活習慣病が増加し,大きな社会問題 になっている.果実の摂取が糖尿病,虚血性心疾患など 生活習慣病の予防と関係していることが疫学研究によっ て示された(2〜5)

.果実に含まれるポリフェノール類やカ

ロテノイド類などのファイトケミカルが抗酸化作用や 糖・脂質代謝などのさまざまな生体調節機能をもつこと が報告され,われわれの健康維持や生体調節に深く関与 していると考えられている.摂取したポリフェノール類

図1リンゴ由来プロシアニジンの主な生体 調節機能

日本農芸化学会

● 化学 と 生物 

セミナー室

機能性農産物開発-5

リンゴ由来プロシアニジン類の機能評価と機能性表示食品の開発

腸内環境に着目したリンゴの機能性研究

庄司俊彦

農業・食品産業技術総合研究機構果樹茶業研究部門生産・流通研究領域

(2)

が生体の臓器や組織で抗酸化作用や生体調節機能を発揮 するためには,適切な量を摂取し腸管から体内へ吸収さ れ,肝臓や脂肪組織などで作用することが必要である.

そのため,ポリフェノール類の生体調節機能の作用メカ ニズムの一つとして生体利用性が研究されている.食品 には,さまざまなタイプのポリフェノール類が含まれて いるが,お茶のカテキンやダイズのイソフラボンなど,

多くのポリフェノール類が腸管から吸収されることが報 告されている(6)

.一方,リンゴなどの果実に含まれてい

るプロシアニジン類は比較的分子量が大きく,ほかのポ リフェノール類と比較して生体利用性が低いことが報告 されているが(7)

,糖・脂質代謝調節機能,肥満予防など

さまざまな生体調節機能が報告されており(図

1

,作

用メカニズムには不明な点が残されていた.本稿では,

リンゴ由来プロシアニジン類の生体調節機能について紹 介するとともに,近年プロシアニジン類の生体利用性に 着目することで明らかになった腸内細菌などの腸内環境 への変化や脂質代謝に与える影響について解説する.ま た,リンゴ由来プロシアニジン類を関与成分とする「機 能性表示食品」の開発について解説する.

リンゴ由来プロシアニジン類

プロシアニジン類はカテキンまたはその異性体である

エピカテキンが複数結合したフラボノイド類の一種で,

結合位置や結合数,カテキン類の組合せによって多くの 異性体が報告されている(8)

.果実では,リンゴのほか

に,ブドウやクランベリーなどの落葉果実全般に含まれ ている.果実によって,プロシアニジン類の重合度やカ テキン類の種類が異なるが,マトリックス支援レーザー 脱離イオン化飛行時間型質量分析計(MALDI-TOF/

MS)による分析では,リンゴには15量体のプロシアニ ジン類まで存在していることが示されている(9)

リンゴ由来プロシアニジン類の血糖値の上昇抑制作 用

リンゴ由来プロシアニジン類は抗アレルギー作用(10)

抗腫瘍活性(11)

,抗加齢作用

(12)など多くの研究が行われ,

さまざまな生体調節機能が報告されている.また,肥満 糖尿病モデルマウス / マウスを使った研究では,

4週間リンゴ由来プロシアニジン[0.5%(w/v)]を前 投与した後,経口糖負荷試験(OGTT; 1 gグルコース/

kg体重)を行い,血糖値の変化を測定した.その結果,

リンゴ由来プロシアニジンを摂取していたマウスでは,

コントロールに比べて血糖値上昇が抑制されていた(13)

しかし,単回投与による経口糖負荷試験での血糖値への 影響は見られなかった.また,インスリン負荷試験

(2Uインスリン/kg体重)を行い,血糖値の変化を評

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赤ワインや緑茶のポリフェノールが強力な抗酸化 作用を持つことが示され,ポリフェノール類の生体調 節機能が注目された.ポリフェノール類が脂質の酸 化を抑え,抗肥満や抗動脈硬化などの生体調節機能 に関係していることが明らかにされてきた.リンゴ やブドウなどの果物は,多くのポリフェノール類を 含み,それらの抗酸化作用や糖・脂質代謝などのさま ざまな生体調節機能が次々に明らかにされている.

ポリフェノール類が臓器や組織で抗酸化作用や生体 調節機能を発揮するためには,適切な量を摂取し腸 管から体内へ吸収されることが必要であるため,ポリ フェノール摂取後の生体利用性の研究が行われてき た.しかし,非栄養素であるポリフェノールは脂質 やタンパク質などの栄養素のように体内へ取り入れ るシステムがないためか,体内への吸収効率は低く,

特に,プロシアニジン類は吸収量がほかのポリフェ ノールと比較しても少ないことが報告されている.

そのため,プロシアニジン類の生体調節機能の作用機 序には不明な部分が残されている.近年,次世代

シーケンサーや質量分析計の開発によって,腸内フ ローラや代謝物などの腸内環境について多くの情報 が得られるようになってきた.高脂肪・高ショ糖食 を摂取させた肥満マウスを用いた実験によって,リ ンゴから調製したプロシアニジン類を摂取すること でカロリーの低い普通食を摂取していたマウスと同 等の腸内フローラに改善することが示された.また,

腸内細菌によって分解,代謝されたプロシアニジン 類の一部には,抗炎症作用や抗酸化作用があること も報告されている.リンゴ以外にもブドウやクラン ベリーのプロシアニジンが腸内フローラを改善する ことが報告されている.腸内フローラを改善する食 品成分としては食物繊維が知られていたが,ポリフェ ノールの摂取による腸内フローラなどの腸内環境の 改善に着目した新たな機能性研究が重要になると考 えられる.今後,プロシアニジン摂取による腸内フ ローラへの影響はヒトでの検証を行う必要があるが,

プロシアニジンによる腸内フローラの改善を作用機 序とする「特定保健用食品」や「機能性表示食品」の 開発が期待される.

コ ラ ム

(3)

価したところ,リンゴ由来プロシアニジン投与群で有意 な血糖値の低下が観られた.さらに,インスリン抵抗性 の指標であるインスリン抵抗性指数(HOMA-IR)値も 有意に低下したことから,リンゴ由来プロシアニジンの 摂取によって,インスリン抵抗性が改善していると考え られた.その作用メカニズムとしては,インスリン刺激 による肝臓でのプロテインキナーゼB(Akt)のリン酸 化が対照群に比べ,リンゴ由来プロシアニジン投与群で 亢進していることが認められたことから,糖新生が促進 されている可能性が示された.また,肝臓では腫瘍壊死 因 子(Tumor Necrosis Factor-alpha; TNF-

α

) や イ ン タ ー ロ イ キ ン-6(IL-6) な ど 炎 症 性 サ イ ト カ イ ン の mRNA発現が有意に抑制されていたことから,肝臓へ の脂肪の蓄積による炎症が抑制され,インスリン抵抗性 を緩和している可能性が考えられた.

2型糖尿病はがんや認知症などさまざまな疾病の危険 因 子 と 考 え ら れ て い る.The Diabetes Epidemiology  Collaborative Analysis of Diagnostic Criteria in Europe

(DECODE)では,耐糖能異常や空腹時血糖異常が虚血 性心疾患による死因のリスクを上げることや,OGTT 後2時間での耐糖能異常値が虚血性心疾患のマーカーと なることを報告している(14)

.また,久山町研究や舟形

町研究など日本で行われた疫学研究では,空腹時血糖値 が正常高値(100〜109 mg/dL)の場合であっても,将 来,<100 mg/dLの正常値の方に比べ高確率で糖尿病を 発症していることが示されている(15, 16)

.また,OGTT

を行えば,正常高値の約25〜40%が境界型や糖尿病で あると診断されることから糖尿病の予防には,食後血糖 値の管理が重要であると考えられている.

そこで,リンゴ由来プロシアニジンの摂取が血糖値上 昇に及ぼす効果を検討することを目的に二重盲検ヒト介 入試験を行った(17)

.被験者は静岡県掛川市在住の健康

診断で空腹時血糖値が正常高値および境界型(110〜

125 mg/dL)の30歳以上60歳未満の男女を募集し,試 験参加条件に適合した88名をリンゴ由来プロシアニジ ン摂取群とプラセボ群の2群に無作為に割り付けた.リ ンゴ由来プロシアニジンはリンゴ果汁から調製し,錠剤 として1日1回,リンゴポリフェノールとして600 mgを 12週 間 被 験 者 に 摂 取 さ せ た.空 腹 時 血 糖 値 お よ び OGTT後30分,2時間の血糖値を測定し,血糖値上昇に 与えるリンゴ由来プロシアニジンの影響を検討したとこ ろ,プラセボ群と比較してリンゴ由来プロシアニジン摂 取群ではOGTT後30分の血糖値が有意に低値を示し,

血糖値上昇を抑制していた.さらに,糖尿病の診断基準 にしたがって,試験開始時に測定した空腹時血糖値と

OGTT後2時間の血糖値を用いて被験者を正常値と,正 常高値および境界型に分け層別解析を行った.正常値の 被験者では,プラセボ群とリンゴ由来プロシアニジン摂 取群のいずれにおいてもOGTT後の血糖値上昇に違い は見られなかった.一方,正常高値と境界型の被験者で は,リンゴ由来プロシアニジンを摂取することで血糖値 の上昇が有意に抑制されていた.残念ながら,リンゴ由 来プロシアニジン摂取によって,アディポネクチンや TNF-

α

, IL-6などのサイトカインの有意な変動を確認す ることはできなかったが,動物モデルにおけるリンゴ由 来プロシアニジンの試験結果と同様に,長期摂取によっ て経口糖負荷試験後の血糖値の上昇を抑制することが示 された.ヒト介入試験でリンゴ由来プロシアニジンの長 期摂取がインスリン抵抗性の改善や血糖値の上昇抑制効 果を示すことが初めて確認された.今後,被験者の選定 方法や試験期間を改善し,より詳細な験証が必要である と思われる.

高分子プロシアニジン類の脂質代謝への影響 リンゴ由来プロシアニジン類は,これまでに膵リパー ゼ阻害による脂質吸収の抑制やモデル動物の脂肪組織に おける脂肪分解関連遺伝子の発現増加などが報告されて いた.また,リンゴ由来プロシアニジン類の生体利用性 研究では,HPLC-ESI/MSによってプロシアニジン類の 4量体までは血中で検出されたが,5量体以上の高分子 プロシアニジンは血中で検出されなかったことから高分 子プロシアニジンの生体調節機能については不明であっ た(7)

.そこで,われわれは順相クロマトグラフィーを用

いてリンゴ由来プロシアニジン類を体内への吸収が確認 された4量体までの低分子プロシアニジン画分(OP)

と,吸収が認められなかった5量体以上の高分子プロシ アニジン画分(PP)とに分け,生体利用性の違いによ る動物モデルにおける脂質代謝への影響を検討すること にした.

高脂肪・高ショ糖(HFHS)食を20週間連続摂取さ せた肥満マウス(C57BL/6Jマウス)にOPとPPをそれ ぞれ摂取させ,体重の増加や脂質代謝に与える影響を検 討した(18)

.HFHS食のみを摂取していたマウスでは,

飼育期間とともに体重が大きく増加するが,OPを摂取 させたマウスでは有意に体重の増加が抑制されていた.

非常に興味深いことに,PP摂取群においても体重増加 が有意に抑制されていた.同様に,肝臓や脂肪組織重量 の増加も有意に抑制されており,PPを摂取したマウス では,従来の生体利用性に基づいた作用メカニズムとは

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異なる脂質代謝制御があると考えられた.そこで,マウ スの盲腸内容物を採取し,16S rRNAを抽出し,次世代 シーケンサーによる腸内細菌叢の解析を行った.HFHS 食を摂取したマウスでは, 門/

門(F/B)比が普通食群と比べ有意に増加していたが,

PP摂取群では,F/B比の増加が有意に抑制されていた.

面白いことに,この現象はOP摂取群では認められな かった(図

2

.近年,腸内フローラの変化が宿主のエ

ネルギー代謝や栄養摂取,免疫機能などに影響し,肥満 や糖尿病などの代謝異常と密接に関係していることが示 されている.Gordonらは,肥満者の腸内細菌を移植し た無菌マウスと,痩せた人の腸内細菌を移植した無菌マ ウスを調整し,普通食を摂取させたところ,肥満者の腸 内細菌を移植したマウスは痩せた人の腸内細菌を移植し たマウスよりも体重が増加することを報告した(19)

.ま

た,肥満者の腸内フローラは 門が増加し,

門が減少していることを報告し,F/B比を 制御することが重要であると考えられている.さらに,

属レベルでの解析結果からPP摂取群では,HFHS食を 摂取したマウスに比べ 菌が有意に増加し,

特徴的な変化を示していた. 菌は日和見菌 の一種で腸管バリア機能を向上させることが知られてい る.そこで,腸管上皮組織のアルシアンブルー染色を行 い上皮性粘液(ムチン)を染色したところ,PPを摂取 したマウスではアルシアンブルーに青く染まる部分が増 加していた.さらに,腸管上皮のタイトジャンクション 関連因子(Occludin, ZO-1)の遺伝子発現が増加してお り,PP摂取によって腸管バリア機能が向上していると 考えられた.肥満などによって脂質代謝異常が亢進する と,腸管バリア機能が低下し,代謝性エンドトキシンの 原因物質であるリポ多糖(LPS)の体内への流入が増加 することが知られている.LPSは肝臓での脂質代謝を抑 制することや,脂肪組織での慢性炎症の亢進に関与して

いる.PP摂取群では,血中のLPS値が有意に減少し,

脂肪組織から放出される炎症性サイトカイン(TNF-

α

,  IL-6)の増加を抑制していた.このことから,PPを摂 取することによって, 菌を介した腸管バリ ア機能が向上し,LPSの流入や慢性炎症が抑制され脂質 代謝異常が改善しているものと推定された.PP摂取に よる腸内環境への影響については,現在,ほかの腸内フ ローラへの影響について詳細に検討している.

吸収されなかったOPの一部は,腸内細菌によって分 解され,分解物の一部には抗酸化作用や抗炎症作用が認 められるとの報告があるが(20, 21)

,生体調節機能にどの

ように関与しているかはいまだ不明な点が多い.一方,

われわれが行った研究では,PPは腸内細菌による分解 や低分子化は受けていないことを確認した.また,高速 液 体 ク ロ マ ト グ ラ フ フ ィ ー-飛 行 時 間 型 質 量 分 析 計

(HPLC-QTOF/MS)によって尿中の代謝物を解析した ところ,PPを摂取したマウスでは,いくつかのアミノ 酸代謝物が変動していた.腸内におけるトリプトファン やチロシンなどのアミノ酸代謝物が生体恒常性に関与し ていることが報告されている(22)

.腸内フローラの変動

と内在性の代謝物との関係を解析する必要があると考え ている.

腸内フローラを改善する食品成分としては,食物繊維 が知られていたが,ポリフェノール類であるプロシアニ ジン類が腸内フローラに影響し,生体調節機能に関与し ている可能性が示されたことは非常に興味深い.クラン ベリーやブドウなど,プロシアニジン類を含む果実でも 長期摂取によって血糖値の上昇を抑制し,F/B比の改善 など 腸 内 フロ ーラ が 変 動 す ること が 報 告 さ れ て い

(23, 24)

.食品には,プロシアニジン類以外にも食品の製

造工程で生成する分子量が比較的大きいポリフェノール 類があることが知られている.たとえば,赤ワインポリ フェノールは醸造工程や貯蔵,熟成期間にプロシアニジ ン類などが複雑に重合し,高分子化していることが知ら れている.欧米人は脂質の多い食事の摂取が多く,心疾 患による死亡率が高いにもかかわらず,フランスでは心 疾患の死亡率が低いという「フレンチ・パラドックス」

には赤ワインポリフェノールが関与していると考えられ ている.レスベラトロールなどのポリフェノール類が強 い抗酸化力をもつことから心疾患の予防に関係している のではないかと考えられていたが,含有量は非常に少な く機能性にどの程度関与しているか疑問である.一方,

フランス国内の産地ごとにワイン中のプロシアニジン類 含量と住民の心疾患との関係を調査し,プロシアニジン 類の含量が高いワイン生産地域ほど心疾患のリスクが低 図2リンゴ由来プロシアニジン摂取による腸内フローラへの

影響

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いことが報告されている(25)

.摂取したワインのポリ

フェノール類が吸収され,抗酸化作用によって心疾患が 予防されていると考えられてきたが,プロシアニジン類 が腸内フローラに影響し,腸内環境を改善することに よって心疾患が予防されている可能性があり,今後の研 究の進展が期待される.

リンゴの機能性表示食品の開発

国内のリンゴ生産量は平成2年の105.3万トンから平 成26年には81.6万トンに,約23%減少している(農水 省果樹出荷統計)

.果実の食べやすさや高い価格が消費

者離れの原因の一つであると考えられている.平成27 年4月に施行された「新しい機能性表示食品」制度で は,農産物などの生鮮食品や加工品で健康機能性を表示 することが可能となり,国産リンゴ生鮮や加工品の高付 加価値化に貢献することが期待されている(図

3

「機 能性表示食品」の登録には,食品中の機能性(関与)成 分量を担保する必要があることからリンゴ生鮮や加工品 中のプロシアニジン量の測定法を確立し,リンゴの品 種,栽培法や貯蔵期間による変化,リンゴの等級や大き さなど品質によるリンゴ由来プロシアニジン量のばらつ きを検討している.一方,「機能性表示食品」では,ヒ ト介入試験や国内外の文献調査によるシステマティック レビューによって農産物などの食品の健康機能性につい て科学的エビデンスを証明する必要がある.農研機構で は,リンゴの機能性成分であるプロシアニジン類に着目 し,動物試験やヒト介入試験によって糖・脂質代謝の改 善による血糖値の上昇抑制や肥満予防などの生活習慣病 予防効果を研究してきた.また,システマティックレ

ビューを行いリンゴ由来プロシアニジンを摂取すること による血中LDL-コレステロール値を低下作用など健康 機能性の有効性を検討している.現在,リンゴ生鮮およ ぶ加工品の「機能性表示食品」の登録を目指している.

おわりに

腸管は「第二の脳」とも言われ,免疫や代謝,炎症な どの宿主の生体恒常性に関与していると考えられてい る.リンゴ由来プロシアニジン類の生体調節機能は,従 来の抗酸化作用など生体利用性に依存した効果に加え,

腸内フローラや代謝物など腸内環境への作用が関係して いることが明らかになりつつある.ヒト介入試験でリン ゴやポリフェノール類の健康機能性を評価している研究 報告はあるが,リンゴ由来プロシアニジン類による腸内 フローラや代謝物の変動がどのように健康機能性に関与 しているのか評価する必要がある.また,リンゴの健康 機能性に関する研究報告は増えつつあるが,ヒト試験の 被検者の条件など機能性表示食品制度でのシステマ ティックレビューに合致する研究報告は多いとはいえな い.現在,生鮮品の「機能性表示食品」は2品目しかな く,リンゴをはじめとする農産物での「機能性表示食 品」を増やすためには,ヒト介入試験によって農産物の 健康機能性に関する科学的エビデンスを増やしていく必 要がある.

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プロフィール

庄司 俊彦(Toshihiko SHOJI)

<略歴>1990年北海道大学農学部農芸化 学科卒業/同年ニッカウヰスキー(株)入 社,北 海 道 工 場/1994年 ニ ッ カ ウ ヰ ス キー(株)生産技術研究所/同年農林水産省 食品総合研究所食品機能部機能成分研究室 研究出向/2001年アサヒビール(株)未来 技術研究所出向/2003年農学博士(北海 道大学)/2004年日本果汁協会技術賞受 賞/2008年ニッカウヰスキー(株)生産技 術部/2009年日本食品化学学会奨励賞/

2010年農業・食品産業総合研究機構果樹 研究所/2016年国立研究開発法人農業・

食品産業総合研究機構果樹茶研究部門ユ ニット長,現在に至る<研究テーマと抱 負>機能性研究,ポリフェノール<趣味>

サッカー,釣り

Copyright © 2017 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.55.631

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