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698 化学と生物 Vol. 54, No. 10, 2016

緑茶カテキンセンシング機構とその応用展開

カテキンパワーの引き出し方

生体はさまざまな外部刺激を感知しながら,それらの 刺激に適切に応答することで恒常性を保持している.た とえば,病原細菌やウイルスの侵入はパターン認識受容 体であるToll様受容体などによって感知され,生体を 防御するために必要なサイトカインの産生を誘導する.

食品因子も生体内分子に感知されることで生体に影響を 及ぼすシグナル発動因子としての理解が進みつつある.

ここでは,緑茶の生体調節作用を担う主要な成分である

(−)-epigallocatechin-3- -gallate(EGCG)を生体が感知 するしくみ(緑茶カテキンセンシング)とその応用展開 について紹介する.

われわれは,EGCGセンサー分子として細胞膜タンパ ク質67-kDa laminin receptor(67LR)を同定した(1).そ の後今日にまでに,EGCGの抗がん作用,抗炎症作用,

抗アレルギー作用,脂肪細胞機能調節作用,血管内皮 細胞機能調節作用といった機能性に67LRが関与するこ とが報告されている(2).次に,67LRを介したEGCGの 機能性(抗がん作用)発現を担う分子の解明を進め,

EGCGは67LRを介して内皮型NO合成酵素(eNOS)を 活性化することでNO産生を誘導すること,それに続い て可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)依存的にcGMP 産生を促進すること,さらにcGMPはプロテインキナー ゼC

δ

(PKC

δ

)ならびに酸性スフィンゴミエリナーゼ

(ASM)を活性化することを明らかにした.つまり,

EGCGは67LR/eNOS/NO/cGMP/PKC

δ

/ASMから構成 される新規の細胞致死経路を活性化することを見いだし た(3)(図1

興味深いことに,生理的低濃度のEGCGはNO産生を誘 導するものの,cGMP産生は促進できなかった.そこで cGMPが本細胞致死経路の律速であると予想し,cGMP 分解酵素の発現について検討したところ,cGMP分解酵 素の一種であるホスホジエステラーゼ5(PDE5)がさ まざまながん細胞で高発現していることを見いだした.

また,勃起不全症治療薬として臨床的に用いられている PDE5阻害剤(vardenafil)がマウス腫瘍モデルにおいて,

EGCGの多発性骨髄腫に対する選択毒性を保持したまま,

その致死活性を顕著に増強することを明らかにした.つ まりPDE5はEGCGセンシングにおける抵抗因子である ことが示された(図1).こうしたPDE5阻害剤による EGCGの抗がん作用の増強は,EGCGに低感受性である すい臓がん,胃がん,乳がん,急性骨髄性白血病細胞に おいても観察されたが,正常細胞に対しては毒性を示さ なかった(3)

EGCGによって活性化されたASMの下流におけるイベ ントとして注目すべき点は,脂質ラフトが崩壊しEGF受 容体やIGF受容体をはじめとするさまざまなチロシンキ ナーゼレセプターの活性化が阻害されることである(4). また,ASMによって産生されるセラミドを下方制御す るスフィンゴシンキナーゼ(SphK1)が多発性骨髄腫に おいて高発現しており,SphK1を阻害することでEGCG の抗がん作用を増強できることを明らかにした(4)(図1).

EGCGは67LRを介してメラノーマ細胞に対して増殖 抑制作用を発揮する(5).そこで網羅的遺伝子スクリーニ ング法であるGenetic Suppressor Elements法を用いて,

日本農芸化学会

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今日の話題

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化学と生物 Vol. 54, No. 10, 2016

EGCGのメラノーマ細胞増殖抑制作用を担う遺伝子を探 索し,プロテインホスファターゼ2A(PP2A)を同定し た(6).67LRとPP2Aの関係を解析した結果,EGCGは 67LRを介してアデニル酸シクラーゼ(AC)/cAMP/プ ロテインキナーゼA(PKA)経路を介してPP2Aを活性 化するとともに,がん抑制因子Merlinを活性化すること を見いだした.一方,PP2Aの阻害因子であるSuvar3‒9  enhancer-of-zeste trithorax(Set)がメラノーマにおい て高発現しており,SetをノックダウンすることでEGCG の抗メラノーマ作用を著しく増強できることを明らかに した(6)(図1).また,Ras/Raf/MEK/ERK経路を標的 と す る 薬 剤PLX4720に 耐 性 な メ ラ ノ ー マ に 対 し て,

EGCGはPP2Aの活性化を介してmTOR経路を阻害す ることで,PLX4720感受性を高めることを示した(6)

これまでの抗がん剤の研究開発は,既知のがん細胞の 生存維持機構に基づき,がん細胞の増殖に必須とされる 分子の活性阻害を目指したものが主流である.また,現 在注目されている抗がん剤の標的候補のほとんどが正常 細胞の機能維持においても重要であり,創薬の過程で深 刻な副作用により開発が頓挫するケースが多い.一方,

EGCGはヒト臨床試験において副作用を示さず抗腫瘍作 用を発揮することが報告されており,将来,EGCGセン シングに関する研究成果が新たな抗がん剤開発の一助に なればと願っている.

緑茶抽出物が慢性リンパ性白血病に対するヒト臨床試 験において効果を発揮することが報告されているが,カ テキン類以外の成分の関与については不明な点が多い.

そこで43種類の緑茶抽出物の多発性骨髄腫に対する抗が ん作用を指標に,その作用を担う緑茶の成分組成をメタ ボリックプロファイリング法により解析した.その結果,

カテキン生合成の中間代謝物であるエリオジクチオール が67LR依存的な細胞致死誘導経路を担うAktの活性化 を促進することでEGCGの抗がん作用を増強することを 見いだした(7).また,エリオジクチオールは緑茶摂取に よる脂質代謝異常改善作用,筋萎縮改善作用,IgA産生 促進作用も増強することを明らかにした.こうした成果 は,EGCGセンシングを担う分子機構の解明が,EGCG の機能性発現を高める食品因子の探索や,それらを組み 合わせた食品の開発に活用できることを示している.今 後,こうした研究戦略が,ほかの機能性食品因子にも活 用されることを期待している.

  1)  H. Tachibana, K. Koga, Y. Fujimura & K. Yamada: 

11, 380 (2004).

  2)  立花宏文: , 116, 6 (2014).

  3)  M.  Kumazoe,  K.  Sugihara,  S.  Tsukamoto,  Y.  Huang,  Y. 

Tsurudome,  T.  Suzuki,  Y.  Suemasu,  N.  Ueda,  S.  Yama- shita, Y. Kim  :  , 123, 787 (2013).

  4)  S.  Tsukamoto,  Y.  Huang,  M.  Kumazoe,  C.  Lesnick,  S. 

Yama da, N. Ueda, T. Suzuki, S. Yamashita, Y. H. Kim, Y. 

Fujimura  :  , 14, 2303 (2015).

  5)  D. Umeda, S. Yano, K. Yamada & H. Tachibana: 

283, 3050 (2008).

  6)  S. Tsukamoto  :  , 21, 289 (2014).

  7)  M. Kumazoe, Y. Fujimura, S. Hidaka, Y. Kim, K. Mura- yama, M. Takai, Y. Huang, S. Yamashita, M. Murata, D. 

Miura  :  , 5, 9474 (2015).

(熊添基文,立花宏文,九州大学大学院農学研究院)

図1緑茶カテキンセンシング機構とその 増強

緑茶カテキンセンシングの抵抗因子である Set, PDE5, SphK1を阻害することでEGCGの 機能性を増強できる.

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700 化学と生物 Vol. 54, No. 10, 2016 プロフィール

熊添 基文(Motofumi KUMAZOE)

<略歴>2009年九州大学農学部生物資源 環境学科卒業/2011年日本学術振興会特 別研究員DC1/2014年九州大学大学院博 士課程修了(農学)/同年日本学術振興会 特別研究員PD,  現在に至る<研究テーマ と抱負>ケミカルバイオロジーを武器にが んの弱点を探りたい

立花 宏文(Hirofumi TACHIBANA)

<略歴>1987年九州大学農学部食糧化学 工学科卒業/1991年同大学大学院農学研 究科博士課程退学/同年同大学大学院農学 研 究 科 助 手/1994年 同 講 師/ 同 年 博 士

(農学)(九州大学)/1996年同大学農学部 助教授/2007年同大学大学院農学研究院 准 教 授/2012年 同 教 授/ 同 年 同 主 幹 教 授/2015年日本学術振興会学術システム 研究センター研究員,現在に至る<研究 テーマと抱負>フードケミカルバイオロ ジー,食品因子の機能性に関する分子的基 盤の確立と食による疾病予防への応用展開

Copyright © 2016 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.54.698

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