総合研究所・都市減災研究センター(UDM) 研究報告書
(平成 25
年度) テーマ3 小課題番号 3.1-3
1
160mm 500mm
300mm
160mm 500mm
300mm
2020mm 2020mm
160mm
種類 粒の大き さの範囲
粗粒率 および 実積率
絶乾密度
(g/cm3) 吸水率
(%)
骨材 混合比%
(質量)
石灰砕砂 5mm以下 2.85 2.63 1.08 40 陸砂 1.2mm 1.60 2.52 3.23 20 砕砂 5mm以下 3.00 2.62 1.32 40 砕石 20~5mm 60.0 2.64 0.57 50 砕石 20~5mm 60.0 2.64 0.54 50 練混ぜ水
混和剤 セメント
細骨材
粗骨材
上澄水 AE減水剤(P社)
普通ポルトランドセメント (密度 3.16g/cm3)
種類 粒の大き さの範囲
粗粒率 および 実積率
絶乾密度
(g/cm3) 吸水率
(%)
骨材 混合比%
(質量)
砕砂 5mm以下 3.05 2.59 1.29 75 山砂 0.6mm以下 1.50 2.54 2.41 25 粗骨材 砕石2005 20~5mm 60.0 2.65 0.48 練混ぜ水
混和剤
セメント 普通ポルトランドセメント (密度 3.16g/cm3) AE減水剤(F社)
地下水 細骨材
住宅基礎コンクリート性質に及ぼす再振動の影響
花野克哉*1 篠山 彰*1 坂口拓也*2 阿部道彦*3
コンクリート 住宅基礎 再振動 圧縮強度 コア 中性化
1.はじめに
現在、住宅の建設現場ではコンクリート工事の際にバ イブレータを用いて打ち込んだ後、コンクリートの強度 を向上させるため、バイブレータで再振動を与える方法 や、足踏みによる締固め方法が用いられている場合があ る。しかし、この再振動や足踏みが有効であるかは実測 データが少ないため、本研究ではその有効性を確認する こととし、併せて強度管理方法も検討することとした。
2.実験概要
2.1
基礎の立上りおよびスラブ基礎冬期(
2
月6
日)と夏期(7
月23
日、7
月30
日)にそ れぞれ打込みを行った。冬期では基礎の立上りへの再振 動の有効性を比較するため、模擬試験体として再振動し たものと再振動しないものをそれぞれ2
体ずつ作製し、材齢
2
日で脱型し封かん養生した。スラブ基礎については、足踏みによる締固めの検証の ため足踏みしたものと足踏みしないものを
1
体ずつ作製 し、ビニールシートで養生した。以上の試験体からコア を採取し、材齢4
週、13
週で密度、超音波伝播速度、動 弾性系数(JIS A 1127
)、静弾性係数(JIS A 1149
)、圧 縮強度(JIS A 1107)を測定した。なお、基礎スラブに ついてはコアを各材齢6
本採取した。また、乾燥収縮(JIS A 1129-3)と促進中性化(JIS A
1153)の測定も行い、これらのデータから再振動、足踏
みの有効性を検討することとした。夏期では再振動ありの立上りのみ作製し、材齢
13
週で 同様の測定を行い、また促進中性化を行った。2.2
管理用供試体冬期と夏期でそれぞれ管理用供試体を作製し、上記の コアと同様の計測を行った。作製した試験体の養生条件 を表
4
に示す。図 1 模擬試験体(冬期 立上り、スラブ基礎)
図 2 模擬試験体(夏期 立上り)
表 1 使用材料(冬期)
表 2 使用材料(夏期)
*1:東日本ハウス *2:工学院大学建築学科
4
年 *3:工学院大学建築学科 教授 工博総合研究所・都市減災研究センター(UDM) 研究報告書
(平成 25
年度) テーマ3 小課題番号 3.1-3
2
13週
45.5
No.2 2.39 4.69 39.7 47.3 No.2 2.39 4.67 39.3 45.2
75φ✕
150mm
No.1 2.39 4.66 39.6 動弾性
係数
(kN/mm2)
圧縮強度
(N/mm2)
100φ
✕ 200mm
No.1 2.38 4.60 38.9 41.5 供試体
寸法
模擬基礎 記号
密度
(g/cm3) 超音波伝
播速度
(km/s)
材齢
材齢
13週
41.6
No.2 2.39 4.68 38.7 41.8 No.2 2.39 4.66 38.8 39.8
75φ✕
150mm
No.1 2.39 4.65 38.3 動弾性係数
(kN/mm2)
圧縮強度
(N/mm2)
100φ
✕ 200mm
No.1 2.39 4.67 38.5 40.8 供試体
寸法
模擬基礎 記号
密度
(g/cm3) 超音波伝
播速度
(km/s)
48.1
No.2 2.40 4.77 42.2
No.2 2.40 4.74 38.2
2.42 4.81 41.7 54.0 44.6 58.9 バ50φ
No.1 2.41 4.78 39.9 41.3
バ50φ No.1 No.1
53.1
No.2 2.44 4.81 40.8 46.7
バ50φ
再振動No.2 No.2 2.49 4.94
No.1 2.45 4.87 41.8
45.7
コア 7.5φ×15 13週
バ50φ 再振動No.1
38.3
バ50φ No.2 コア
7.5φ×15 4週 バ50φ 再振動
No.1 2.43 4.73 39.4
供試体
寸法 材齢
成形 方法
模擬 部材 No.
密度 (g/cm3)
超音波 伝播速度
(km/s) 動弾性
係数 (kN/mm2)
圧縮強度 (N/mm2)
41.2 54.4 41.3 50.2
足踏みなし
2.41 4.70 38.7 42.8
足踏みなし
2.41 4.79
13週
足踏みあり
2.40 4.73
コア
7.5φ×15 4週
足踏みあり
2.42 4.73 39.9 41.3
コア 7.5φ×15
供試体
寸法
材齢成形 方法
密度 (g/cm
3)
超音波 伝播速度
(km/s)
動弾性 係数 (kN/mm
2)
圧縮強度 (N/mm
2)
時期 水セメント
比(%) 水(kg/m3) 目標 スランプ
目標 空気量
スランプ
(cm)
空気量
(%)
練り上がり 温度(℃)
冬期(2/6) 52.6 173 12 4.5 13.1 1.6 8.5
夏期
(7/23) 8.0 6.2 31.0
夏期
(7/30) 11.5 2.9 29.5
52.1 172 12 4.5
4週 13週 4週 13週
標準養生 ○ ○
20℃封かん ○ ○ ○
現場封かん ○
現場水中 ○
標準養生 ○ ○
20℃封かん ○ ○ ○ ○
現場封かん ○ ○
夏期
100φ 75φ
冬期
時期 養生方法
表 3 コンクリートの計画調合表
表 4 作製した管理用供試体
3.実験結果
3.1
基礎の立上りおよび基礎スラブ冬期に打込みを行った基礎の立上りは、表
5
に示すよ うに再振動したものの方が強度が増す結果になった。こ れは再振動することにより、コンクリートの充填性が高 まり密度が高くなったためと考えられる。このことから 再振動による締固めは有効であるといえる。スラブ基礎は
4
週、13週ともに足踏みなしの方が強度 が大きくなっており、施工時の手間も考えるとあまり有 効ではないと判断される。また、各供試体の圧縮強度の 標準偏差(N/mm
2)が足踏みありでは4
週が2.12
、13
週が2.58
に対し、足踏みなしは4
週が1.06、 13
週が1.01
となった。このことから足踏みは各箇所で強度のばらつ きを生じさせる原因になるといえる。夏期に打込みを行った基礎の立上りは、
7/23
と7/30
の 打込みの両方で100φより 75φの供試体が高い強度を有
していることが確認された。また、各供試体の高さ別強度を図
3~図 6
に示す。あ る程度のばらつきも見られるが、試験体の下部の方が強 度が増していることが分かる。冬期の再振動なしの試験 体は上部と強度がほぼ同じ、あるいは小さい値を示して いるため、このことから基礎の立上りの下部の方が強度 が増大しやすいことが分かった。促進中性化に関しては、JIS A 1153による角柱供試体 と立上りから採取したコアを用いて行った。結果を図
7、
図
8
に示す。角柱と比べるとコア(材齢4
週)の供試体 の方が速く中性化しているが、13
週採取では遅く中性化 している。また、再振動ありとなしで比較すると各材齢 ともに再振動ありのほうがやや速く中性化する結果とな った。なお、昨年度の結果1)では再振動ありの方が、中性 化はやや遅くなる結果になった。また、乾燥収縮は
26
週までに平均約0.12%の収縮が認
められたが、供試体間のばらつきが大きく、測定方法も 含めて今後の検討を要すると思われる。表 5 圧縮強度試験結果 (冬期 立上り)
表 6 圧縮強度試験結果 (冬期 基礎スラブ)
表 7 圧縮強度試験結果 (夏期 立上り 7/23)
表 8 圧縮強度試験結果 (夏期 立上り 7/30)
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(平成 25
年度) テーマ3 小課題番号 3.1-3
3
図 3 高さ別圧縮強度(冬期 材齢 4 週)図 4 高さ別圧縮強度(冬期 材齢 13 週)
3.2
管理用供試体冬期の管理用供試体では、養生条件が同じ場合、4週、
13
週いずれも100φより 75φの供試体の方が高い圧縮強
度を示した。この傾向は夏期の管理用供試体と立上りコ アにも見られるため、供試体寸法の小さい方が圧縮強度 が高くなるといえる。また、100φの供試体では
4
週は標準養生、13週は現 場封かんの方が高い圧縮強度を示した。これは養生水の 温度の高い方が水和反応が進行しやすいことと、低い気 温条件下で長期強度の伸びが大きかったためと考えられ る。夏期の管理用供試体では、4週は
75φと 100φのいず
れも標準養生の方が高い圧縮強度を示した。一方、13週 は、供試体寸法により異なり20
℃封かんと現場封かんの 差が小さかった。これらの理由は4週の標準養生では、養生水の有無が関係しており、コンクリートは水硬性を 有しているため養生水のある供試体の方が強度が高くな る。13週に関しては、養生水がないため、20℃封かんと 現場封かんとの長期強度の差が小さくなったと思われる。
また、現場封かんと採取コアの強度比較は先に述べた 寸法の差が強度に影響すると考えられるため、
100
φの供 試体に関しては各供試体の寸法差による強度の増加率を 求めた。冬期の75φの強度は 100φより約 1.13
倍増加し ており、夏期は約1.03
倍増加している。以上を踏まえた結果を図
9、図 10、図 11
に示す。採取 したコアの強度より概ね現場封かんが低い値を示してい る。よって現場封かんは強度管理に適した養生条件であ ると思われるが、一部高いものもあり、これについては 今後の検討課題である。図 5 高さ別圧縮強度(夏期 7/23 材齢 13 週)
図 6 高さ別圧縮強度(夏期 7/30 材齢 13 週)
図 7 促進中性化(冬期 コア材齢 4 週採取)
図 8 促進中性化(冬期 コア材齢 13 週採取)
4.
まとめ再振動したものと再振動しないものを比較すると再振 動したものは強度が高くなることが認められた。中性化 もやや早くなる傾向が認められたが、その差は小さかっ た。
スラブ基礎における足踏みは、強度の増加が認められ ないこと、各箇所の強度のばらつき、施工の手間などを 考えると有効な手段ではないと判断される。
総合研究所・都市減災研究センター(UDM) 研究報告書
(平成 25
年度) テーマ3 小課題番号 3.1-3
4
供試体
寸法 材齢 養生方法 密度
(g/cm3) 超音波伝
播速度 (km/s)
動弾性係数 (kN/mm2)
圧縮強度 (N/mm2)
7.5φ×15
4週 20℃封かん 2.30 2.31
4週 標準養生 2.32 10φ×20
32.7
4週 標準養生 2.32 4週 20℃封かん
34.0
4.60 4.53 36.7
37.1 36.9 4.61 36.2 4.66 37.6 36.2
38.0 40.4 37.7 10φ×20
39.6
13週 現場封かん 2.30 4.64 13週 20℃封かん 2.30 4.67
7.5φ×15
13週 20℃封かん 2.30 43.3
13週 現場封かん 2.31 4.81 38.6 42.7 4.63 37.6
供試体
寸法 材齢 養生方法 (g/cm密度3) 超音波伝
播速度 (km/s)
動弾性係数 (kN/mm2)
圧縮強度 (N/mm2)
39.0 35.0 36.4
39.7 39.7 37.1
標準養生
38.8 20℃封かん
4週
2.32 4.54
4.67 4.70 2.37
33.4 10φ×20
4週
7.5φ×15 4週
4.76 2.38 2.33 20℃封かん
4週 標準養生
40.3 13週 現場封かん 2.38 4.66 39.8 41.1 13週 20℃封かん 2.32 4.60 37.3 10φ×20
4.64 39.1 7.5φ×15
13週 20℃封かん 2.34 43.0
13週 現場封かん 2.33 4.74 33.3 38.8 4.81 42.0 50.9 7.5φ×15 標準養生
(20℃水中) 2.38 4.83 40.3 46.6
4.79 42.5 47.3 現場水中 2.42 4.79 39.1 39.2
7.5φ×15 20℃封かん
4.80 41.1 43.7 20℃封かん 2.40 4.73 39.1 37.6
現場封かん 2.41 10φ×20
13週
20℃封かん 2.39
2.39 10φ×20
4週 標準養生
(20℃水中) 2.42 4.78 40.6 42.3 供試体
寸法 材齢
成形 方法
密度 (g/cm3)
超音波 伝播速度
(km/s) 動弾性
係数 (kN/mm2)
圧縮強度 (N/mm2)
図 9 現場封かんとの圧縮強度比較(冬期)
図 10 現場封かんとの圧縮強度比較(夏期 7/23)
図 11 現場封かんとの圧縮強度比較(夏期 7/30)
参考文献
1) 篠山彰他:住宅基礎コンクリートの性状に及ぼす締 固め方法の影響(その 1 立上り),日本建築学会大会 学術講演梗概集 pp.375-376,2013.8
表 9 管理用供試体の試験結果(冬期)
表 10 管理用供試体の試験結果(夏期 7/23)
表 11 管理用供試体の試験結果(夏期 7/30)
謝辞
本実験は、工学院大学、東日本ハウスおよび建材試験 センターの共同研究により実施したもので、実験の実施 に当たり関係各位の協力を得ました。記して謝意を表し ます。