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好塩基球研究のルネッサンス - J-Stage

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【解説】

好 塩 基 球 は,末 梢 血 白 血 球 の わ ず か0.5%を 占 め る に 過 ぎ な い極少細胞集団であるが,進化的に多くの動物種で保存され ており,その存在も古くから知られている顆粒球の一種であ る.しかし,アレルギーの原因細胞として注目されてきたマ スト細胞と特徴が多く共通しているため,好塩基球はマスト 細胞のバックアップ的存在であると考えられ,長い間ほとん ど研究の対象とされることはなかった.ところが近年,好塩 基球を解析するツールが次々と開発され,これまで知られて いなかった好塩基球のユニークな働きが次々と明らかにされ た.まさに,好塩基球研究のルネサンス時代の到来といって もよい.今では好塩基球は,マスト細胞とは全く異なる固有 の機能を有した,慢性・即時性アレルギー,および,寄生虫 感染にも重要な役割を果たす,Th2型反応のキープレーヤー として認知される存在である.

はじめに

好塩基球は,その名が示すとおり,細胞内顆粒が塩基 性色素によって染色される白血球であり(1)

,130年以上

も前に Paul Ehrlich  によって初めて発見された.しか

し,今ではその存在が知られているにもかかわらず,最 近まで好塩基球の生体での役割・機能の解明はほとんど 進んでいなかった.その理由として,ヒトやマウスでも 末梢血白血球のわずか0.5%程度しか存在しない極少細 胞集団であり,かつ,寿命も1 〜 3日と極端に短いた め,解析が非常に困難であることが挙げられる.特に,

マウスにおいては,ヒト,ラット,モルモットに比べ,

好塩基性分泌顆粒が少なく,ギムザ染色などで好塩基球 を同定することが困難であったことも関係している.ま た,高親和性IgE受容体Fc

ε

RIの発現や,ヒスタミンを 含むケミカルメディエーターの分泌といったマスト細胞 との共通点が多いことから,『血中循環型マスト細胞』

として認知され,長らく重要視されてこなかったことも 研究遅延の一因であろう.病理組織学的解析において,

アレルギー炎症部位にしばしば好塩基球の浸潤が見られ ることや,寄生虫感染症で好塩基球の増多症および浸潤 が観察されることから,好塩基球とアレルギー疾患や寄 生虫感染との関連性が示唆されていたが,これらの病態 に好塩基球が決定的な役割を果たしているという明確な 証拠は示されなかった.

しかし1990年代に入り,ヒトやマウスの好塩基球が

好塩基球研究のルネッサンス

吉川宗一郎,烏山 一

Emerging Roles for Basophils in Immune Responses

Soichiro YOSHIKAWA, Hajime KARASUYAMA,  東京医科歯科 大学大学院,医歯学総合研究科免疫アレルギー学分野

(2)

活性化すると即座にIL-4などのTh2サイトカインを大 量に産生するという報告がきっかけとなり(2, 3)

,これま

での好塩基球に対する見方が一変することになった.さ らに,ここ数年で好塩基球除去抗体や好塩基球欠損マウ ス,好塩基球特異的Cre発現マウスなど,画期的なツー ルが開発されたことにより,生体内におけるアレルギー 反応や免疫制御において好塩基球が極めて重要な役割を 果たしていることが相次いで報告されてきている.本稿 では,最近明らかとなった好塩基球の役割のなかから,

アレルギー反応・寄生虫感染防御を中心に概説する.

アレルギーにおける好塩基球の役割 1.  好塩基球と皮膚炎症

好塩基球と皮膚炎症との関連研究は,炎症部に非常に 多くの好塩基球浸潤を認める反応として,モルモットで の cutaneous basophil hypersensitivity (CBH) や,ヒ トでの Jones‒Mote hypersensitivity が1970年代に盛ん に研究された(4, 5)

.特に,CBHは好塩基球を主体とする

皮膚炎症の動物モデルとして注目されていたが,抗好塩 基球血清を用いて好塩基球を除去しても炎症に大きな変 化が見られなかったという報告もあり,メカニズムなど 詳細な解析がなされぬまま,しだいに姿を消していっ た.

最近,われわれは,マウスの慢性皮膚アレルギーモデ ルの解析を通して,好塩基球が慢性アレルギー炎症に決 定的な役割を果たしていることを明らかにした(6〜9)

.マ

ウスに抗原特異的IgEをあらかじめ投与(受動感作)し ておいてから,耳介皮内に抗原を投与したところ,教科 書的な2相性の即時型アレルギー性耳介腫脹(30分以内

に起こる即時相と数時間後に起こる遅発相)が出現し,

その後さらに観察を続けたところ,抗原投与後2日目か ら再度耳介腫脹が始まり,4日目には皮膚厚が2倍以上 になるまで腫れあがった(図

1

.病理組織学的には,

好酸球を多数含む強い細胞浸潤があり,表皮の肥厚と角 化が認められ,慢性アレルギー炎症の様相を呈していた

(図1)

.この第3相耳介腫脹は抗原特異的かつIgE依存

的であり,IgEが即時型のみならず慢性型のアレルギー 炎症にも寄与することが明らかとなった.当初の予想に 反して,この慢性アレルギー炎症はマスト細胞欠損マウ スやT細胞欠損マウスでも誘導されることから,マスト 細胞やT細胞とは異なる細胞が責任細胞であることが 強く示唆された(6)

責任細胞を同定するために,第3相耳介腫脹の起こら ないFc

ε

RIの欠損マウスに正常マウス由来のさまざまな 細胞集団を移植して解析したところ,骨髄由来 CD49b 

(DX5) 陽性分画を移植したときでのみ第3相耳介腫脹 を再構築できた.この細胞分画の約20%にはFc

ε

RIを発 現し,分葉核を有した細胞集団が含まれており,この集 団は電子顕微鏡による解析から,好塩基球であることが 判明した(6)

.第3相耳介腫脹における好塩基球の役割を

解明するため,当研究室では,好塩基球を特異的に除去 できるマウス ( DTR) を樹立した.このマウスは,

好塩基球特異的に発現する遺伝子 の3′非翻訳領域 にジフテリア毒素受容体遺伝子を挿入したマウスであ り,好塩基球のみにジフテリア毒素受容体を発現してい るため,このマウスにジフテリア毒素を投与すること で,好きなときに好塩基球を選択的に除去できる(7)

DTRマウスで,抗原投与前に好塩基球を生体から 除去しておくと,慢性アレルギー炎症が起こらないこと からも,好塩基球の重要性が示唆された.しかし,好塩 基球は皮膚に浸潤する細胞のわずか2%ほどしか存在せ ず,好酸球や好中球が浸潤細胞の主体であった.驚くこ とに,皮膚炎症がすでに進行している時期である,抗原 投与後3日目に好塩基球を除去すると,耳介腫脹ならび に炎症の抑制が認められ,同時に好酸球と好中球の浸潤 が激減していた(図

2

.このことは,

好塩基球がエ フェクター細胞として働いているというよりはむしろ,

イニシエーター細胞として働いていることを強く示唆し ており,好塩基球を標的とした慢性アレルギー治療の可 能性を強く示すものである.第3相耳介腫脹のメカニズ ムとしては,抗原によるIgE/Fc

ε

RIの架橋で活性化さ れた好塩基球が,サイトカインやケモカインなどの液性 因子を分泌し,それらが直接的に,あるいは間接的に好 酸球や好中球の浸潤に寄与しているものと考えられる.

図1好塩基球によって誘導される慢性アレルギー性炎症 

IgE-CAI

抗原特異的IgEで受動感作したマウスの耳介皮内に抗原を注射す ると,第1相目(30分以内),第2相目(数時間後)の耳介腫脹に 引き続き,抗原投与後2日目より非常に強い第3相目の耳介腫脹が 出現した(左図).第三相耳介腫脹病変部では好酸球を含む細胞浸 潤,表皮の肥厚と角化が認められた(右図).(文献6より引用,

改変)

(3)

一方で,最近われわれは好塩基球が発現しているトリ プターゼが皮膚炎症に寄与していることを突き止めてい る(8)

.これまでマスト細胞から多種類のプロテアーゼや

トリプターゼが同定され,これが細胞浸潤や炎症の誘発 などに寄与していることが報告されてきた.好塩基球の 発現するトリプターゼを解析したところ,マスト細胞で はほとんど発現が見られない,Mouse mast cell prote- ase-11 (mMCP-11) が好塩基球で恒常的に発現している ことがわかった(9)

.このリコンビナントmMCP-11をマ

ウスの耳介皮下に投与すると,数時間内に浮腫を伴った 耳介腫脹が観察され,これはプロスタグランジンの関与 によって血管透過性が亢進していることが示唆され た(8)

.IgE-CAIにどれほどmMCP-11が関与しているか

はわからないが,好塩基球の発現するプロテアーゼもア レルギー炎症に寄与することを示した興味深い知見であ る.

2.  好塩基球と全身性アナフィラキシー

われわれは,急性アレルギー反応である全身性アナ フィラキシーの誘導にも好塩基球が関与していることを 明らかにした.アナフィラキシーは,全身的に起こる急 性かつ重篤なアレルギー反応であり,一般的にIgEとマ スト細胞,ヒスタミンを介する経路がよく知られてい る.好塩基球もFc

ε

RIによる刺激でヒスタミンやロイコ トリエンC4を分泌することが知られているが,マスト 細胞と比べて非常に数が少ないため,好塩基球が全身性 アナフィラキシーに関与しているかどうかはよくわかっ ていなかった.

ところが,さまざまな動物実験モデルの解析から,今 まで知られていたマスト細胞を介した「古典的」な経路

では説明できないアナフィラキシー病態が存在し,IgE ではなく,IgGを介するアナフィラキシー誘導経路の存 在が明らかとなった(10)

.好塩基球除去抗体

(11)を用いた 解析から,好塩基球がIgEを介する古典的な経路には関 与しないが,IgGを介する新たな経路に重要な役割を果 たしていることが明らかとなった(図

3

.すなわち,

アレルゲンとIgGが結合してできた免疫複合体によって 活性化した好塩基球が血小板活性化因子 (PAF) を放出 して,全身性アナフィラキシーを引き起こす.PAFは ヒスタミンに比べて強力なアナフィラキシーを引き起こ すことができるので,ごく少数の好塩基球でもアナフィ ラキシーを誘導することができる.現在のところ,この 好塩基球‒IgGを介した新規経路がヒトでも存在するの か定かではないが,ヒトのアナフィラキシーでもPAF が関与すると報告されている(12)

3.  好塩基球とそのほかのアレルギー疾患

ヒトにおいては,重篤なぜんそく患者の肺組織や気管 支の生検,アレルギー性鼻炎患者の鼻腔洗浄液中に,多 図2好塩基球は慢性アレルギー炎 症のエフェクターではなくイニシ エーターとして働く

マウスをアレルゲン特異的IgEで受 動感作したのち,アレルゲンを耳介 皮内に注射した.アレルゲン投与前 に好塩基球を除去すると耳介腫脹は 全く起こらなかった.アレルゲン投 与後2日目に好塩基球を除去すると,

耳介腫脹が次の日から軽減した.

図3好塩基球を介する新たな全身性アナフィラキシー誘導メ カニズム

(4)

くの好塩基球が浸潤しているという報告は過去にされて

いるが(13〜16)

,これらの病態に好塩基球がどのように関

与するかはまだ不明な点も多い.

しかし,アレルギー性鼻炎患者に抗原を経鼻的に投与 した際の後期反応は,好塩基球によるヒスタミンの放出 によって引き起こされることが示唆された報告もあ り(17)

,最近ではブタクサ花粉を用いたマウス鼻炎モデ

ルにおいても好塩基球の関与が示唆されて(18)

,好塩基

球と鼻炎には強い関連性があると考えられる.

また,共生細菌の減少によって誘導される過剰なアレ ルギー反応にも好塩基球が関与すると報告されてい る(19)

.腸管内に存在する共生細菌 (commensal bacte-

ria) とアレルギーには古くから関連性があることが言 われているが,そのメカニズムはほとんどわかっていな かった.しかしこの報告によると,幼児期に抗生物質の 投与で共生細菌を除去してしまうと,MyD88依存的な シグナルがB細胞に入らず,血清中のIgE値が上昇す る.さらに,このIgEが好塩基球に結合することでその 前駆体の分化が促進され,それに伴って好塩基球数も上 昇し,Th2反応が亢進してしまうことが明らかとなっ た.好塩基球を除去するとこのTh2反応の亢進が減少 することから,共生細菌と小児アレルギーの関連に好塩 基球が密接に関連していることが示唆されている(19)

寄生虫感染に対する生体防御における好塩基球の役 割

多くの動物種で進化的に保存されてきた好塩基球がア レルギーを起こすために存在するとは考えにくく,動物 の生存にとって有利な働きをすることが本来の役割であ ろう.多くの寄生虫感染では,血中IgEの上昇,好酸球 浸潤などといったTh2型免疫応答が強く誘導され,血 中の好塩基球数の増多や組織への好塩基球浸潤がしばし ば観察される(20, 21)

.しかし,好塩基球が寄生虫排除な

らびにTh2型免疫反応誘導に寄与しているという明確 な証拠はこれまで示されてこなかった.近年の報告か ら,外部ならびに内部寄生虫に対する生体防御に好塩基 球が深く関与していることが明らかになってきた.

1.  好塩基球と外部寄生虫感染

吸血性の外部寄生虫であるマダニは,ライム病を含 む,さまざまなヒトの疾患を引き起こす病原体のベク ターであることが知られており,ヒトではマラリアベク ターとして知られる蚊に次いで,2番目に重要な感染症 媒介節足動物である.マダニが媒介する病原体は,ウイ ルス,リケッチア,細菌,原虫,寄生虫などほぼすべて の種類の病原体の伝播に関与することが知られており,

その危険性から世界的にも重大な問題になっている.そ の一方,多くの動物種で,マダニ吸血に対する耐性獲得 が報告されている(22)

.すなわち,一度マダニに感染す

ると宿主動物に抵抗力ができて,2度目以降の感染では

図42度目のマダニ感染のときに 好塩基球は重要な役割を果たす マダニ吸血部位の皮膚の組織像.茶 色い細胞が好塩基球を示す.(A) 皮 膚で吸血しているマダニ (

) (B) (垂直断面) 

(C) (水平断面) (D) 好塩基球を除去 したときのマダニの吸血量の変化.

DTRマウスで好塩基球を2度目 の感染前に除去しておくと,マダニ に対する抵抗性が消失した.(E) は そのイメージ.

(5)

マダニの吸血が減弱する.それに伴い,マダニによって 伝播される病原体の感染も起きにくくなる(23)

.この耐

性メカニズムが明らかになれば有効な抗マダニワクチン の開発に役立つことになるが,これまで耐性獲得に関わ る細胞,分子に関してはよくわかっていなかった.過去 の報告では,マダニに対する抵抗性を獲得したモルモッ トにおいて,マダニ吸血部位に多数の好塩基球と好酸球 が集積しており,好塩基球の関与が強く示唆されていた が(24)

,マウスにおいては好塩基球の浸潤が検出されず,

代わりにマスト細胞が重要な役割を果たしていることが 報告され(25)

,好塩基球の重要性は謎のままであった.

近年われわれは,最新の解析システムを導入して,マ ウスのマダニ感染モデルにおける好塩基球の役割を再検 討した.2度目の感染ではマダニ吸血部位に多数の細胞 浸潤が見られたが,ギムザ染色では以前の報告どおり好 塩基球の浸潤が検出されなかった.ところが,好塩基球 特異的モノクローナル抗体(9) (好塩基球特異的に発現す るセリンプロテアーゼであるmMCP-8に対する抗体)

を用いて組織染色をしたところ,皮膚に挿入されたマダ ニの吸血口を取り囲むようにして多数の好塩基球が浸潤 していることが明らかとなった(7) (図

4

.マダニ吸血部

位に浸潤する好塩基球の役割を解明するために,好塩基 球を特異的に除去できるマウスである, DTRを用 いて解析を行った.その結果,2度目のマダニ吸血前に 好塩基球を除去しておくと,マダニに対する耐性がなく なり,マウスでのマダニ耐性獲得に好塩基球が重要な役 割を果たしていることが初めて証明された(7) (図4)

.さ

らに,この耐性獲得には好塩基球上のFc

ε

RIが必須であ ることも判明した.しかし,過去の報告どおり,マウス ではマスト細胞もマダニの耐性獲得に必須であるが,好 塩基球とは異なり,Fc

ε

RIは必須ではなかった(7)

.2度

目以降の感染ではマダニの抗原に対するIgE抗体ができ ているため,抗マダニIgE抗体で武装した好塩基球がマ ダニ吸血部位まで浸潤することで好塩基球が活性化さ れ,プロテアーゼやケミカルメディエーター,サイトカ インなどを分泌することで抗マダニ作用を発揮するもの と考えられるが,マスト細胞が一体どの部分でマダニ耐 性獲得に関わるのかは全くの謎である.どのように好塩 基球とマスト細胞が協力してマダニ感染防御に関与して いるのか,現在解析を進めている.

これらの知見を踏まえ,今後の研究で分子メカニズム を明らかにすることにより,効率的なマダニワクチンの 開発が進むことと期待される.ヒトのマダニ感染防御に 好塩基球が関与しているかは不明であるが,好塩基球と 好酸球を欠損している患者で重篤な全身性疥癬(外部寄

生虫の一種でヒゼンダニによる感染症)が発症するとの 報告(26) があることから,ヒトでも外部寄生虫に対する 生体防御に好塩基球が重要な働きをしているものと推察 される.

2.  好塩基球と内部寄生虫感染

もっとも研究されている内部寄生虫は 

 (Nb) で,ヒトの鉤虫感染症のモデルと して解析されている.消化管からのNb排除にはT細胞 とTh2型サイトカイン(IL-4とIL-13)が必須であるが,

T細胞にのみTh2型サイトカインを欠損するマウスでも Nb排除が起こることから,T細胞以外の自然免疫系細 胞の分泌するTh2型サイトカインが重要な役割を担っ ていると考えられてきた(27)

.近年,好塩基球特異的

Cre発現マウスが開発され,これにより好塩基球特異的 にIL-4やIL-13を欠損させたマウスを作り出すことがで

きた(28, 29)

.このマウスではNbの排除が起こりにくくな

り,好塩基球のIL-4やIL-13がNbに対する免疫獲得に 重要な役割を果たしていることがわかった(28)

.また,

生体イメージングの解析によって,Nb感染末梢組織に おいて好塩基球とCD4

+T細胞が頻繁に接触している

ことが判明し,この直接的相互作用によって好塩基球の IL-4産生が増強されることが示唆された(28)

.すなわち

これは,T細胞による好塩基球のIL-4産生増強がNb排 除に大きく寄与している可能性を示唆している.一方,

好塩基球を除去したマウスで,Th2型反応やNb排除が 正常に起こるという報告(30〜32) も存在し,今後のさらな る解明が必要である.

2度目以降のNb感染では,免疫獲得に好塩基球の関 与が大きいようである.2度目の感染では,CD4

+T細

胞除去マウスやマスト細胞欠損マウスではNb排除に影 響はないが,好塩基球除去マウスではTh2型免疫反応 は 正 常 に 誘 導 さ れ る が,Nbの 排 除 が う ま く い か な

(32, 33)

.2次感染時の好塩基球によるNb排除の分子メ

カニズムは不明であるが,好塩基球の分泌するTh2型 サイトカインが重要な役割を果たしているようであ る(33)

また最近になって,鞭虫である に対 する生体防御にも好塩基球が重要な役割を果たしている ことがわかってきた(34)

.多くの寄生虫感染では,IL-3

によって血中の好塩基球数が増え,活性化され,これが 寄生虫の排除に関わってくることが知られているが(35)

この寄生虫に関してはIL-3ではなくTSLPが好塩基球の 増殖や活性化に重要な役割を果たしていることがわかっ た(34)

.IL-3とTSLPによってそれぞれ分化誘導される

(6)

好塩基球では遺伝子の発現パターンが大きく異なってい ることから(34)

,生体は状況に応じて好塩基球を活性化

させるサイトカインを使い分けているのかもしれない.

おわりに

好塩基球は,今回紹介したアレルギー疾患や寄生虫感 染だけでなく,自己免疫疾患によって引き起こされる腎 炎や,高IgD症候群などにも大きく寄与していることが 報告されている.好塩基球の研究が遅れていた最大の原 因は解析ツールの欠如であったが,これらの克服によ り,このような,今まで誰も予想だにしていなかった疾 患に好塩基球が関与していることが判明してきた.マウ スモデルを用いた研究で得られる知見をもとに,ヒトに おける好塩基球の機能解析へと発展させることで,さら なる好塩基球の存在意義が明確になることを期待してい る.

文献

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新 谷  尚 弘(Takahiro Shintani) <略 歴>1997年東北大学大学院農学研究科博 士課程後期修了/1996年JSPS特別研究員

(DC2, PD, 東北大学)/1998年JSPS特別研 究員(PD,基礎生物学研究所)/2001年米 国ミシガン大学分子細胞発生生物学部博士 研究員/ 2004年東北大学大学院農学研究 科准教授<研究テーマと抱負>酵母・カビ における環境ストレスに応答したタンパク 質分解.麹菌を用いた異種タンパク質生産

<趣味>山歩き,野宿,自転車,銀塩写真 など(すべて,今はお休み)

鈴木 克己(Katsumi Suzuki) <略歴>

1992年名古屋大学大学院農学研究科後期 課程修了/1992年北海道農業試験場(科 学技術特別研究員)/1994年国際農林水産 業研究センター沖縄支所/2002年野菜茶 業研究所<研究テーマと抱負>施設野菜の 多収技術および高温障害抑制技術の開発

<趣味>家庭菜園,読書

鈴 木  俊 二(Shunji Suzuki) <略 歴> 1991年三重大学農学部農学科卒業/1999 年三重大学大学院生物資源学研究科博士後 期課程修了,博士(学術)取得/1999年カ リフォルニア大学デイビス校医学部薬理 学/毒物学研究室ポストドクトラルリサー チャー/2002年秋田県立大学生物資源科 学部生物生産科学科流動研究員/2003年 愛媛大学医学部生理学第一講座助手/2006 年山梨大学大学院医学工学総合研究部附属 ワイン科学研究センター助教授/2009年 同上,准教授,現在に至る<研究テーマと 抱負>醸造用ブドウの遺伝子解析ならびに 植物生理学的解析.醸造用ブドウの研究 で,ワイン先進国および新興国と互角の戦 いをする<趣味>子供と遊ぶこと,野球観 戦(主にテレビ)

玉 木  秀 幸(Hideyuki Tamaki) <略 歴>1998年筑波大学第二学群生物資源学 類卒業/2004年同大学院農学研究科応用 生物化学専攻博士課程修了(農博)/2004

年産業技術総合研究所生物機能工学研究部 門博士研究員/2006年同研究所同部門任 期付研究員/2009年米国イリノイ大学大 学院環境科学工学研究科客員研究員/2011 年産業技術総合研究所・生物プロセス研究 部門研究員,現在に至る<研究テーマと抱 負>未知微生物の探索とその新技術の開 発.地球環境に広く存在する未知微生物の 深淵な新生物機能を解き明かし,環境中で の未知微生物の生き様を明らかにしたい

<趣味>飲むこと,食べること,歌うこ と,そして,柏レイソル

中 村  努(Tsutomu Nakamura) <略 歴>1992年京都大学理学部卒業/1997年 京都大学大学院理学研究科化学専攻修了/

1997年科学技術特別研究員/1998年工業 技術院大阪工業技術研究所/2001年(独)

産業技術総合研究所に改組<研究テーマと 抱負>主に抗酸化システムをターゲットに したタンパク質科学<趣味>ランニング,

トランペット,旅行

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