化学と生物 Vol. 50, No. 5, 2012 311 今年 (2012) 3月まで4年間,英文誌編集
委員長の任にあったので,
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1につい て書きたい.誌名が*
2の時代にノー トが掲載されて35年,編集担当理事で制 作側に回って15年が経った.この間,著 者全員が非会員でも可とする投稿規定の改 訂,表紙や紙面の変遷,印刷会社の変更,論文賞の制定,投稿システムの電子化,
PDF版全文無償公開などに立ち会った.
農芸化学分野の優れた研究成果を広く全世 界に公開する使命を守り推進するため,い ずれもが慎重かつ遅滞なく進められたの は,学会各委員と事務局員の多大な努力に よるものである.
さまざまな学会活動の中で,大会と学会 誌の2つは際立って重要だ.ただし,大会 は生ものである.講演やシンポジウムが,
参加者にとって如何に素晴らしく,農芸化 学の発展に寄与しても,終わると簡潔な要 旨くらいが記録に残るばかりだ.学会誌 は,地味で面倒な作業が多いが,編集委員 と査読者が評価した学術論文は,人類文明 がある限り残る.今は居室のPCから,前 身 誌
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3の 第1巻 (1924) 巻 頭,藪 田貞次郎先生のコウジ酸の抄録から,印刷 前の早期公開論文まで,全論文が自由に PDFで閲覧できる.農芸化学会が確立し たこの素晴らしい状況は,ぜひ維持し発展 させたい.毎年6月末になると,学術誌の関係者が こぞって気にする数字が現われる.インパ クトファクター (IF) だ.ある雑誌が2年 間に掲載した論文が,3年目に何回引用さ れたかがIFである. は2008年に500, 2009年 に527の 計1027論 文 を 掲 載 し,
2010年 に そ れ が1327回 引 用 さ れ た.
1327/1027=1.292がBBBの2010年 のIFで ある.IFの高い雑誌は多くの研究者が注
目しチェックすると考えれば,論文は高 IFの雑誌に掲載したいし,IFがどれくら い高い雑誌に論文を出せたかが業績評価に 響く. はもちろん我が国の学術誌の 中では上位にあるが,海外にはもっと高い 雑誌があるので気になるわけである.
計算法からわかるように,2年間の論文 が3年目に引用されると,IFは上がる.だ から今流行中の,多数の研究者が引用せざ るを得ない報告のみ少数掲載すればIFは 高くなる.商業誌はこの戦術をとらざるを えないが,学会誌は違うはずだ.学術的に 如何に重要な報告も,流行以前にはIFを 上げない.
筆者は,もう一つ
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4の編集委員長 を引き受けている.坂口謹一郎先生が 1955年 に 創 刊 し た 雑 誌 で,現 在IF= 1.000, 同様に創刊号から全PDF完全 無償公開である.木下祝郎先生のグルタミ ン酸生産菌も,田村學造先生の火落酸(メ バロン酸)も,第1報は本誌に掲載され た.微生物関連の研究に限定されるが,より優れた点が今もある.投稿掲載 費まで,完全に無料なのだ.科研費補助を 受けているが,何よりも理解ある賛助企業 による篤い支援のお陰である.研究費が乏 しい,若手や発展途上国の研究者には救い である.IF以外に学術誌の評価基準があ るのは絶対に間違いない.
経済的に苦しくなってきた , 今後ど うすべきか? サポーターである農芸化学 会会員諸氏に問いかけたい.
巻頭言
Top Column学術雑誌の価値と評価
依田幸司
東京大学大学院農学生命科学研究科Top Column
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