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化学と生物 Vol. 56, No. 3, 2018

次の100年に描く夢

阿部圭一

国立健康・栄養研究所

2017年4月,民間企業出身では初めての 国立健康・栄養研究所の所長に就任した.

国立健康・栄養研究所は,農芸化学会創設 の4年前にあたる1920年9月に世界で初め て国立の栄養研究所として設立された.設 立者は,「栄養の父」とも称される医師,佐 伯矩博士である.「営養」とも記されていた 表記を「栄養」に統一する提案をしたこと で,以降表記は定着した.また,当時,国 民病であった脚気の原因が精白米食による ものであり,米糠が脚気を予防できること が解明されると,安価でかつ消化吸収,美 味しさも考慮した現実的対処方法として,

七分精米の無洗米を食べることを推奨した.

これにより,多くの国民を脚気から救ったと いう功績が残されている.そして,米糠中 に抗脚気作用を示す栄養素オリザニンとし て,ビタミンB1を発見したのは,日本農芸 化学会を創設した鈴木梅太郎博士の大きな 功績である.黎明期の農芸化学の発見が,

栄養学を通じて,国民の健康維持につな がったリレーの歴史があった.

農芸化学と栄養学はともに,間もなく次の 100年の歴史を迎えようとしている.歴史を 振り返りながら,新たに前向きな大目標を設 定することが必要な節目と考える.2017年9 月に一億総活躍社会実現という旗のもと,人 生100年時代構想推進室が内閣官房に設置 された.100歳まで寿命を延伸するという大 きな命題に加え,いくつになっても新しいこ とにチャレンジすることができる社会づくり を目指すという議論が始まった.農芸化学と 栄養学にとっても,こうした社会実装課題 は,次の100年の歴史をつくるための大きな チャレンジ目標になるものと考える.

農芸化学研究のチャレンジの歴史を振り 返ると,2017年ガードナー国際賞を受賞さ れた遠藤章先生のコンパクチンの発見と研 究のブレークスルーが,まず思い浮ぶ.微生 物研究者,生理活性物質研究者をはじめと する多くの研究者にも賛同いただけるものと 思う.この糸状菌由来生理活性物質コンパ クチンの発見が,のちにノーベル生理学・医 学賞を受賞した米国のゴールドスタイン,ブ ラウン両博士によるコレステロール代謝研究 に大きく貢献した.このことは,多くの研究 者に夢を与えてくれた.学術的な成果だけに とどまらず,世界一の売り上げを誇ったコレ

ステロール低下薬,スタチンの世界的開発 競争につながる大きな発見としても語り継が れてきた.しかし,コンパクチン開発の初期 にはラットに効かなかったことで,普通なら 医薬品としての開発の途は途絶えかけてい た.この状況を乗り越えたのは,まさに遠藤 先生の深い科学的洞察力と執着心によるもの で,まさに大きなブレークスルーがあった.

私のような研究者にとっては,こうした ブレークスルーを達成するのは難しいが,

それに近づく方法はあるように思う.ヒン トとなるのは,遠藤先生が今回のガード ナー国際賞受賞の際に語った「大きな夢と 目標をもって,それに向かって努力してほ しい」という言葉である.何よりも重要な のは,仲間や研究者と夢の議論を交わすこ とかと思う.それぞれの夢を膨らまし,そ の実現に向けた議論の中から,ブレークス ルーにつながるチャレンジの道筋を見つけ ることができるかもしれない.

農芸化学は,世の中の役に立つ,そして オープンな学問という特徴を有する.100 年前のビタミンB1の発見や,コンパクチ ン発見が,数々の連携を通じて大きな成 果,社会貢献につながっている.オープン ディスカッション,連携がなじむ研究分野 として,改めて農芸化学研究の可能性の大 きさに気づかされる.

これまで,酵素,微生物,生理活性物質 など,遠藤先生とキーワードが重なる研究 にも携わってきた.もしかすると,セレン ディピティの神がすぐ近くに来ていたのかも しれない.それを見逃さないサイエンス洞 察力,夢に向かってチャレンジする姿勢,

そして途中であきらめない執着心が十分 あっただろうかと,今さら心配になる.自問 の中で振り返ると,これまでの多くの研究 や夢の議論のシーンが思い出される.そん なシーンでいつも寄り添ってくれていたのは 酒と研究仲間だと気付く.そして,研究仲 間の間で歌い継がれてきた歌が遠くから聞 こえてきた.

「楽しさは,酒の中から湧いてくる,酒 の中から,ドントドントドント,湧いて くーるー♪」

Copyright © 2018 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.56.133

日本農芸化学会

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プロフィール

阿部 圭一(Keiichi ABE)

<略歴>1981年東京大学農学部農芸化学 科卒業/1983年同大学大学院農学系研究 科修士課程修了/同年サントリー株式会社 入社/1987〜1991年東京大学大学院研究 員、 農 学 博 士/2008年 セ レ ボ ス パ シ フィック社(シンガポール)副社長(R&

D統括)/2013年サントリーグローバルイ ノベーションセンター株式会社取締役/

2017年医薬基盤・健康・栄養研究所理事,

国立健康・栄養研究所所長,現在に至る.

農学博士<研究テーマと抱負>健康長寿に 資する運動・栄養エビデンス研究と社会実 装<趣味>ハーブ栽培&Wine&ヘルシー グ ル メ<ホ ー ム ペ ー ジ>http://www.

nibiohn.go.jp/eiken/

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