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微小管ダイナミクスはエンドソームの成熟を制御している

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化学と生物 Vol. 52, No. 8, 2014

微小管ダイナミクスはエンドソームの成熟を制御している

新規微小管ダイナミクス阻害剤の発見と利用

真核生物の細胞骨格の一つである微小管は

α

/

β

チュー ブリンヘテロダイマーが重合して形成される繊維状の構 造体であり,細胞分裂時の紡錘体形成や細胞内シグナル 伝達,細胞遊走,細胞内オルガネラの位置決定などのさ まざまな細胞内機能にかかわっている.微小管の特筆す べき性質として重合・脱重合を絶えず繰り返す動的不安 定性(微小管ダイナミクス)が挙げられる.微小管ダイ ナミクスは

β

チューブリンに結合しているGTPの加水 分解によって

α

/

β

チューブリンヘテロダイマーの構造変 化が誘起されることにより起こる脱重合反応(カタスト ロフ)や,カタストロフから再度重合に移行するレス キュー,また重合・脱重合ともに停止したポーズの状態 に分けられる(図

1

これまでに微小管重合阻害剤ビンカアルカロイドや微 小管重合安定化剤タキサンをはじめとする微小管作用薬 が抗がん剤として用いられてきた.微小管作用薬は紡錘 体形成に作用してがん細胞のM期チェックポイントを 活性化させ,細胞周期をG2/M期で停止させることによ り細胞死を誘導する.しかしながらこれらの化合物は末 梢神経障害などの副作用を引き起こすことが問題となっ ている.微小管作用薬が副作用を引き起こす詳細なメカ ニズムは明らかにされていないが,これらの化合物は高

濃度において微小管細胞骨格の構造自体を変化させるた めに,微小管が重要な機能を果たしている神経系に影響 が生じるためと予想されている(1)

こうした背景の下,現在微小管ダイナミクスそのもの に作用する化合物が抗がん剤として注目されている.微 小管のプラス端に結合して微小管ダイナミクスを阻害す るエリブリン(エーザイ株式会社)は米国,欧州,日本 において再発乳がんに対して使用されている.また現在 種々のミエローマに対する第二相臨床試験が行われてい る微小管ダイナミクス阻害剤ノスカピンは,これまでに 鎮咳薬として使用されているが重篤な副作用を示さない ことから,副作用の少ない新たな抗がん剤となることが 期待されている(1).しかしながら微小管ダイナミクス阻 害剤の分裂期紡錘体形成以外への作用はほとんど理解さ れておらず,微小管ダイナミクスの細胞内機能の詳細な 解析は,薬剤の副作用予測のために非常に重要である.

Glaziovianin A(図

2

)は,横須賀らがブラジル原産 マメ科植物から単離したイソフラボン系化合物であり,

動物細胞に異常な紡錘体(染色体配向異常,多極紡錘体 など)を誘導して細胞周期をG2/M期で停止させる.さ らにヒトがん細胞パネル(現 文部科学省新学術領域

「がん研究分野の特性等を踏まえた支援活動 化学療法

図1細胞内微小管の動態

微小管は,細胞内で α/β ヘテロダイマーの α チューブリン側(−端)が中心体の γ チューブリン複合体と結合し,安定であるのに対し,β チューブリン側(+端)は細胞質に出ており,常にヘテロダイマーの結合・解離が起こっている.この微小管動態は,+端に連続してヘテ ロダイマーが結合していく「伸長(elongation)」,解離していく「短縮(shortening)」,および結合・解離が止まった「ポーズ(pause)」

の状態(phase)に分けられる.また各状態間での遷移のうち,伸長・ポーズから短縮への変化は「カタストロフ(catastrophe)」,短縮・

ポーズより伸長に転じる変化は「レスキュー(rescue)」と呼ばれる.

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今日の話題

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基盤支援活動」)の結果,微小管重合阻害剤と類似した 細胞毒性選択性を示すことが明らかとなった(2).そこで glaziovianin Aの微小管に対する作用を詳細に解析した ところ,glaziovianin Aは間期微小管ネットワークを壊 さずに,微小管の伸長・短縮といった細胞内微小管ダイ ナミクスを抑制することを見いだした(3).このことから glaziovianin Aは新たな微小管ダイナミクス阻害剤であ り,細胞内微小管ダイナミクスの機能を特異的に解析す るツールとして有用であると予想された.

では,微小管ダイナミクスがかかわる細胞内機能とは 何だろうか? ここでわれわれはエンドサイトーシスに 注目した.エンドサイトーシスは,細胞外の物質を細胞 膜ごとエンドソームと呼ばれる小胞として取り込み,細 胞内を輸送するシステムである.このエンドソームの輸 送には微小管ネットワークが必要なことが,種々の微小 管阻害剤を用いた研究から明らかになっていた(4).しか しいずれの研究も微小管ネットワークが破壊される条件 下でしか検討されていなかったため,微小管ネットワー クが運搬のレールとしてのみ必要なのか,あるいは伸長・ 短縮といった微小管ダイナミクスも必要なのかについは 不明のままであった.興味深いことに,伸長している微 小管のプラス端に集積するタンパク質であるEB1が,

初期エンドソーム制御にかかわるRab5のGEF(GDP/

GTP交換因子)であるGapex-5を微小管先端にリクルー トすることが報告されていた(5).このことは微小管が単 なるレールとしてのみではなく,その伸長・短縮といっ たダイナミクスそのものがエンドサイトーシスを制御す る可能性を示唆している.Glaziovianin Aは微小管ネッ トワークそのものには影響を与えず,微小管伸長を阻害 することでEB1の微小管先端への集積を阻害するため,

エンドソーム制御への微小管ダイナミクスの関与を調べ るのに有用なプローブになると考えられた.

そこでglaziovianin Aのエンドサイトーシスに対する 作用を解析したところ,glaziovianin Aは微小管ネット ワークやEGF取り込みには影響を与えず,EGF刺激時 のエンドサイトーシスによるEGFRの輸送を抑制するこ とが明らかとなった.同様の結果は,微小管ネットワー ク構造を変化させない極低濃度のビンブラスチンやタキ ソールを用いても見られたことから,エンドソーム輸送 阻害はglaziovianin Aのオフターゲット効果ではなく,

微小管ダイナミクス阻害の結果だと考えられる(3, 6).さ らにEGFRはエンドサイトーシスに伴い,エンドソーム 内で脱リン酸化,分解されることでEGFR下流への増殖 シグナルの伝達が負に制御されることが知られている が,glaziovianin AはEGFRの脱リン酸化・分解を抑制 し,EGFRの下流に位置するリン酸化酵素であるERK の活性化を延長した.以上のことから微小管は単なる レールとしてのみではなく,そのダイナミクスがエンド ソームの輸送・成熟に重要であり,微小管ダイナミクス 阻害はエンドソーム成熟を阻害することでEGFRの増殖 シグナルを延長する可能性が示唆された.

V-ATPase阻害剤であるbafilomycin A1や,イオノフォ アであるmonensinを用いた研究から,通常一過性であ るEGFRの活性化が長時間続くと細胞死が誘導されるこ とが報告されている(7, 8).同様にglaziovianin AもEGFR の活性化を延長させることからEGFR高発現細胞A431 に対するglaziovianin Aの作用を検討したところ,EGF 濃度依存的に細胞死を誘導した.Glaziovianin Aと同様,

微小管ダイナミクス阻害剤であるノスカピンは,多極紡 錘体などの異常紡錘体形成を誘導することで抗腫瘍効果

微小管ダイナミクス

エンドソームの輸送・成熟 二極紡錘体構造の維持

その他

微小管ダイナミクス阻害剤

図3微小管ダイナミクスの細胞内機能

微小管ダイナミクスは,細胞分裂期における正常な二極紡錘体形 成に必要なことが知られていたが,今回エンドソームの輸送や成 熟にも重要なことが明らかとなった.微小管ダイナミクス阻害剤 を用いることで,そのほかの微小管ダイナミクスの機能が明らか になることが期待される.

図2Glaziovianin Aの構造

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化学と生物 Vol. 52, No. 8, 2014

を示すことが報告されているが,EGFRが高発現してい る細胞においてはエンドソーム成熟阻害を介しても抗腫 瘍効果を発揮しうると考えられる(図

3

今回われわれは,glaziovianin Aを微小管ダイナミクス 阻害剤として利用することで,エンドサイトーシス制御 に微小管ダイナミクスが必要なことを明らかにしたが,

現在のところそのメカニズムについては不明のままであ る.また,微小管ダイナミクスがかかわる細胞機能もエ ンドサイトーシス以外にあると考えられる.今後glazio- vianin Aをはじめとする微小管ダイナミクス阻害剤を用 いることでさらなる微小管ダイナミクスの細胞内機能が 明らかになることが期待される.

  1) C. Dumontet & M. A. Jordan : , 9,  790 (2010).

  2) A. Yokosuka, M. Haraguchi, T. Usui, S. Kazami, H. Osa-

da, T. Yamori & Y. Mimaki : , 

17, 3091 (2007).

  3) T. Chinen, S. Kazami, Y. Nagumo, I. Hayakawa, A. Ikedo,  M. Takagi, A. Yokosuka, N. Imamoto, Y. Mimaki, H. Ki-

goshi  : , 8, 884 (2013).

  4) M. Anitei & B. Hoflack : , 14, 11 (2012).

  5) M.  Kitano,  M.  Nakaya,  T.  Nakamura,  S.  Nagata  &  M. 

Matsuda : , 453, 241 (2008).

  6) H.  Li,  Z.  W.  Daun,  P.  Xie,  Y.  R.  Liu,  W.  C.  Wang,  S.  X. 

Dou & P. Y. Wang : , e45465 (2012).

  7) Y. Yoshimoto & M. Imoto : ., 279, 118 (2002).

  8) J. S. Rush, L. M. Quinalty, L. Engelman, D. M. Sherry & 

B. P. Ceresa : , 287, 712 (2012).

(知念拓実,臼井健郎,筑波大学大学院生命環境科学 研究科)

プロフィル

知念 拓実(Takumi CHINEN)   

<略歴>2010年筑波大学第二学群生物学 類卒業/2012年同大学大学院生命環境科 学研究科博士前期課程修了.現在,博士後 期課程在籍中/2012年日本学術振興会特 別研究員DC1/2013年ドイツハイデルベ ルク大に短期留学<研究テーマと抱負>微 小管細胞骨格系に作用する新規阻害剤の開 発を目標に研究を行っています<趣味>読 書,飲酒

臼井 健郎(Takeo USUI)  

<略歴>1991年東京大学農学部農芸化学 科卒業/1994 〜 1995年日本学術振興会特 別研究員DC2/1995年東京大学大学院農 学系研究科博士課程修了/同年理化学研究 所抗生物質研究室/2001年英国Beatsonが ん研究所博士研究員/2002 〜 2003年英国 Patersonがん研究所博士研究員/2003年 理化学研究所長田抗生物質研究室/2006 年筑波大学生命環境科学研究科准教授<研 究テーマと抱負>ケミカルバイオロジー.

小分子化合物の標的分子同定を通し,生命 機能を明らかにしていきたい<趣味>猫と 戯れること

Referensi

Dokumen terkait

沈着パターンを決定している.表層微小管は重合,脱重 合を繰り返すダイナミックな挙動を示すこと,表層微小 管同士の接触により束化や脱重合が引き起こされるこ と,表層微小管の側面から表層微小管が重合されること が明らかとなり,このようなダイナミクスと相互作用を 通じて表層微小管の配向が自発的に形成されると考えら れるようになった(1).しかしながら,表層微小管が二次