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新興国の台頭とグローバル・ガバナンスの将来 政策提言のまとめ

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Academic year: 2025

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新興国の台頭とグローバル・ガバナンスの将来 政策提言のまとめ

1 総論新興国を取り込みグローバル・ガバナンスを強化すべし

(1)急速なグローバル化と世界的な社会変動の結果、地球環境の悪化、国内統治の弱さ と破綻国家の登場、非国家主体による不法行為(テロリズム)など、国際社会は互いに協 力して解決に取り組むべき課題(グローバル・イシュー)に直面している。こうしたグロ ーバル・イシューに対し、多国間主義的な協調をもって効果的に対処することが、グロー バル・ガバナンスとして求められている。

(2)他方、グローバル化の進展は新興国の台頭を促した。新興国は急速な経済成長を背 景に国際社会における影響力を高めているが、これが時として、グローバル・ガバナンス やそれを可能としたリベラルな国際秩序を脅かすことが懸念されている。だがグローバ ル・イシューに対処しなければ先進国・新興国ともに共倒れとなってしまう。またグロー バル化時代の国際関係は多面的、複合的であり、かつてのようなゼロサム的に国力を競う 状況にはない。したがって、グローバル・ガバナンスの規範を強化しつつ、そこに安全保 障面、経済面で新興国を取り込む政策を策定することが必要である。

(3)その際、新興国の発言権を現行秩序に適切に反映させると共に、新興国が現行のリ ベラルな国際秩序を受け入れ応分の責任をはたすことを慫慂し、新興国に対して、現行秩 序の中で成長が可能であり、現行秩序を支えることにメリットがあると認識させることが できれば、グローバル・ガバナンスが発展する基盤も維持される。

以上の認識に立ち、以下個別イシューについて、政策提言を示す。

2 安全保障ガバナンス

(1)新興国、とりわけ中国の台頭は、グローバルな安全保障システムに大きな影響を与 えつつある。中国の軍事力の増強とそれに対するアメリカのアジア太平洋への戦略拠点の 移動に示されるように米中関係は大国間の角逐という伝統的な安全保障を想起させる。し かし他方で、米中関係は経済的には深い相互依存関係にあり、安全保障上の競争と経済的 な協力が同時進行するという複雑な様相を呈していることにも注意を払う必要がある。

(2)中国の台頭が多面的かつ複合的な事象であることを適切に認識し、経済面では協力 を推し進め、安全保障面ではリスクを回避するための(時には集団的な)ヘッジングを怠 らないことが肝要である。具体的には、日本は、同盟国アメリカとの協力を深めるととも

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に、韓国やオーストラリア等友好国とのスポーク間連繋を拡大してゆくべきである。

(3)同時に、新興国とは同じ国際社会の一員として、内戦の予防や平和維持・平和構築、

核不拡散、国際テロや海賊などへの対策、途上国における貧困の撲滅やインフラ整備など で協力してゆくべきである。

(4)核不拡散については、相対的に影響力を強めつつある中国やインドといった新興国 との協力が欠かせない。しかし自国本位に動きがちな新興国に対しては、核不拡散秩序の 維持がグローバル・コモンズであることを納得させ、既存の秩序の維持のために自覚的に 役割を果たしてゆくように働きかけることが必要である。また、「核不拡散秩序はグローバ ル・コモンズである」という認識の普遍性を高めていくうえで、日米をはじめとするいわ ゆる「有志国」が協調していく意義は極めて大きい。

(5)国際的な平和活動については、新興国と適切に役割分担をしつつ、効果的な取り組 みを進めていく必要がある。現在多くの新興国がPKO地上部隊の派遣に積極的であるため、

要員の不足は問題ではない。他方で例えばヘリコプターによる物資空輸、インフラ整備の ための施設部隊派遣など高度な技術が必要な分野における日本の貢献に対する需要は大き い。ここに新興国との役割分担の可能性が示されている。また新興国(BRICS)の中でも民 主主義を標榜するインド、ブラジル、南アフリカ(IBSA)と中国、ロシアとの間では、平 和活動への対応において相当な違いがある。日本は、IBSAとの交流、情報交換、共同プロ ジェクトを積極的に検討していくのが適切である。

3 多角的貿易レジームにおけるガバナンス

(1)特に2008年のリーマン・ショック以降、新興国の世界経済における存在感が飛躍的 に高まっている。国際経済規範・ルールの構築において、新興国の広範かつ全面的な関与 は不可欠となっている。

(2)一つの課題は、WTOドーハ・ラウンド交渉の膠着状況の打開である。その原因の一 つは新興国側の強硬な姿勢にある。だが、新興国側の強硬な姿勢を過大に評価するのは避 けるべきであろう。交渉の場において強硬な姿勢を取ってはいても、新興国側に現在の国 際通商レジームを根本から覆すという考えはない。自らの成長を支えたWTOの形骸化や先 進国が主導するFTA の蔓延は新興国にとって歓迎できることではない。また、新興国と一 口に言っても、お互いに利害が対立し、結束にほころびが見える箇所も多々ある。新興国 は決して一枚岩的に先進国と対立しようとしているわけではない。交渉枠組みを柔軟に設 定すべきである。

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(3)こうした状況を踏まえ、新興国や途上国が一致団結して先進国と対峙するようなこ とにならないよう意識せねばならない。また同時に、新興国側に自由貿易体制の存続と発 展が利益になることを根気強く説得し、新興国や途上国との妥協点を見出す努力を惜しん ではならない。さらに、WTOの意思決定の仕組み(一括受諾)を改変し、ドーハ・ラウン ド合意のできているところから実行に移すような柔軟な対応が求められる。

4 マクロ経済政策協調

(1)2000 年代半ば以降急速に拡大した主要国間の経常収支不均衡(グローバル・インバ ランス)は過去に類を見ない規模となっている。不均衡の解消は今日までの開放的な国際 経済関係を維持してゆく上で避けることはできず、主要国間で政策協調が求められている。

(2)70年代から80年代にかけて、経常収支黒字国である日本およびドイツが、基軸通貨・

ドルの重要性を認め、自国通貨の対ドルレート上昇に向けた協調介入を受け入れ財政金融 政策の協調を図ったのに対し、今日の不均衡の中核メンバーである新興国(中国)は、「黒 字国側の積極的な調整」を受け入れておらず、多元的な国際通貨システムへの移行による ドル一極構造からの脱却を目指すと公言してはばからない。

(3)一方、中国としても、実際にドルを基軸とする通貨体制から離脱することは容易で はない。外貨準備の代替投資先がないことに加え、米中両国が相互に深く依存する関係に なっているからである。中国をはじめ新興国が台頭してきているとはいえ、彼らに現行の 国際通貨システムを覆す能力も意志もあるとはいえない。したがって、結局のところ、現 行ガバナンスの規範的ルールを新興国側も受け入れざるを得ないであろう。

(4)こうした現状を踏まえ、日本としては、まず米中両国に対し不均衡の是正に向けた 調整コストを受け入れるように働きかけることが肝要である。とりわけ中国に対して、黒 字国側による調整コストの負担の受け入れを説得することが求められる。中国には1980年 代の日本の対米協調(とその後の経済不振)を反面教師として捉える傾向があるので、プ ラザ合意以降、日本は決して衰退したわけではなく、高度成長の終焉後も着実に経済・産 業の質的改善を進めてきたことを中国側に示していかなければならない。

5 気候変動問題

(1)中国など新興国の急速な経済発展に伴うエネルギー消費の急増は、国際社会の持続 可能性にとって大きな懸念材料となっている。その一方で、中国等は、地球温暖化問題は 主として過去の先進国による温室効果ガスの排出が原因であるとして、自らの政策を国際 的な約束により縛られることに強く抵抗し、気候変動問題に関する交渉は難航している。

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(2)新興国による温暖化ガス排出の割合が増加していることを踏まえれば、気候変動問 題は、先進国・新興国が協力して解決していかなければならないグローバル・イシューの 典型である。日本は交渉においていかにして中国等の前向きな姿勢を引き出すかを真剣に 検討しなければならない。同時に、これまで様々な省エネ技術やノウハウを企業レベルと 政府レベルの両方で蓄積してきた日本は、中国の巨大な環境・再生可能エネルギー市場に おいてそれらを生かしてゆくことができる。そうした事業を進めることは、中国、日本双 方の利益になるだけでなく、中国の温暖化ガス排出を実質的に削減することにより、気候 変動問題というグローバル・イシューに対する大きな貢献ともなる。

(3)同時に、日本は、自らの気候変動緩和策の実施に真剣に取り組む必要がある。日本 国内に排出取引制度(cap and tradeシステム)を導入して明確な温室効果ガス排出の総量規 制の下、企業に更なる技術革新を促すインセンティヴを作り出す必要がある。国内におい ては絶え間ない技術革新を促し、国際社会に対しては新技術による貢献を積極的に図って ゆくことは、日本の産業構造を高度化し経済成長の質を高めるばかりか、外交資源を強化 することにもつながろう。

6 地域制度とグローバル・ガバナンス

(1)アジアにおいては今後も多様な地域制度が併存する状況が続くと考えられる。今後 地域制度がさらに増加し、「地域制度の乱立」を招く可能性もある。そうした地域制度の形 成や運用の一つの流れに中国が深くかかわってきた。中国はこれまでのところ国際制度の ルールや規範と矛盾・対立するルールや規範を唱導してはいないが、今後は海洋の安全保 障といった分野では多国間主義的なルールを嫌い、固有のルールや規範を強く打ち出して くる可能性も否定できない。

(2)こうした状況に対し日本としては二つの取り組みが必要である。一つは、強く普遍 的な原則にたつ国際制度を構築し、アジアの多様な地域制度をそれらに組み込んでゆくこ とである。もう一つは、国際制度の強化という点で共通の利益を有する国々との連携を通 じて、普遍的な国際制度と整合的な地域制度の発展を促すことである。アジアの地域制度 を巡る今日の状況は、この地域の国際関係をどのようなルールと規範の下に置くかを巡る 争いでもある。その争いの行方は今後のアジアにおける国際関係に大きく影響する。日本 は、一層積極的にアジアにおける制度戦略を構築することが望まれる。

(3)日本の経済発展にとって、アジア経済の役割は今後ますます大きくなるだろう。そ の際、重要となるのは、普遍的で透明性のある経済制度を発展させることである。とりわ け中国の経済実行が国際的な基準に見合った高度なものになることは日本にとって望まし

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い。TPP、ASEAN+3、ASEAN+6のいずれにも関与している日本は、一方でTPP交渉に積極

的に関与してアジアの経済交流のルールと規範をより高度なものにすると同時に、他方で TPP交渉を基盤に東アジアのFTA 交渉を先導し、それをより高度なものに変えてゆくべき である。

Referensi

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