既存橋梁の最適維持管理計画策定支援システム - 山口大学

既存橋梁の最適維持管理計画策定支援システム

山口大学 山口大学

○宮本文穂  中村秀明

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         1．はじめに

 本研究では，従来より開発を行ってきた「コンクリ ート橋耐用性診断エキスパートシステム」i）の診断結 果を基に，予定の供用年数（余寿命）を満たすための 維持管理計画が策定できるシステムの構築を行った．

この維持管理計画問題は，対象とする橋梁の損傷程度 に応じて，多数の補修・補強工法と施工時期との組み 合わせによる組み合わせ最適化問題に帰着される．本 研究で対象とするような組み合わせ最適化問題は，問 題の変数，規模が非常に大きくなり，厳密な最適解を 得ることが実用上困難である．このため，必ずしも最 適ではないが実用上支障をきたさない程度の準最適解 を効率良く求める方法として，近年生物の遺伝と進化 を模倣した遺伝的アルゴリズム（GA）が注目されてお り，本研究においては，GAを用いた既存橋梁の維持 管理計画の最適化を試みた．

      2．本支援システムの概要

2・1 本支援システムの目的 本支援システムは，

その困標を「橋梁管理者がある既存橋梁のメンテナン スプランを考慮する際に，その意志決定の支援となる 維持管理計画案が作成可能なシステムの開発」とし，

図1に示される処理を行う．なお，本支援システムは 統合型システムであり，「橋梁診断エキスパートシス テム」および「メンテナンスプラン最適化システム」

を有する．以下には，各システムの概要を記述する．

2・2 橋梁診断エキスパートシステム1）本システ ムは，橋梁の維持管理に長年携わってきた専門技術者 の橋梁診断における経験的な知識をコンピュータ上に 移植し，橋梁台帳や簡易な目視点検結果等から得られ たデータより，橋梁の総合的な性能評価を行う．

2・3 メンテナンスプラン最適化システム 本シス テムは，予想劣化曲線より部材劣化の現在までの進行 経路と，これからの余寿命を予測し，対象橋梁の寿命 が予定供用年を満たさないと判断されると，維持管理 費用の最小化等を考慮した維持管理計画を作成する．

ここで，主桁に対する維持管理計画の策定では，これ に対して考慮される維持管理対策は，10通り（対策の 必要なしを含む）あり，計画対象期間の各年において 1対策が選択されることから，この策定問題は，組み 合わせ最適化問題とみなすことができる．

2・4 画面表示による本システムの流れ 本支援シ ステムの流れを実際の画薗を用いて説明する．図2は，

診断システムへの橋梁諸元および点検結果入力画面で ある．図3は，診断結果の出力画面である．この画面 中のHowボタンを押すと，どのような推論により現在

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また，図3中の劣化予測ボタンを押すと，メンテナン スプラン最適化システムへ移る．続いてユーザは，現 在対象としている橋梁の予定供用年数を入力する．こ の入力が終わると，図4が提示され，対象橋梁の余寿 命および劣化曲線が提示される．ここで，対象橋梁が 予定供用年数を満足することができない場合は，費用 最小化を目的としたメンテナンスプランが探索される．

図5は，システムが提案したメンテナンスプランであ る．図6は，このプランを採用したときの劣化予測と その余寿命を示す画面である．これにより，予定供用 年数を満足させるための最小コストが分かる．

   3．遺伝的アルゴリズムの有効性の検証  表1には，費用最小化を目的として，解の全探索手 法により得られたある橋梁に対する最適維持管理計画 を示す．また，表2には，同じ橋梁に対して，GAを用 いて最適化を行った結果を示す．GAは，解析期間が 10年程度の場合では，かなりの頻度で最適解の探索を 可能としていたが，表2に示されるように解析期間が 15年程度になると，最適解が求まらない場合が多くな った．ただし，解析期間15年の計算時間は，同じ計算 機を用いて，全探索手法では1GO秒またGAでは5秒 であり，GAは高速に近似最適解を求めることができた．

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       4．まとめ

本研究は，既存橋梁の最適維持管理計画策定支援シ テムの開発を行った．また，維持管理計画策定問題 対するGAの有効性を検証した．

       参考文献

1） 宮本文穂，河村圭，中村秀明，山本秀夫：階層構造ニ    ューラルネットを用いたコンクリート橋診断エキス    パートシステムの開発；土木学会論文集，No．644

   ／VI−46， pp．67−86， 2eOO．3．