組織の持つ文化
組織行動論
第10回 組織文化
組織文化について
♦ 組織文化は、組織行動の文化的な環境で あり、従業員の共通の意識・視点である
♦ 組織文化を通じて、従業員は環境や世界 を捉えている
♦ 組織文化を変えることが、組織行動を変え ることにつながる
アサヒビールの文化変革
食品産業の競争の特質
♦
食品産業の難しさ–
ブランド・マネージメント–
品質管理–
伝統と流行–
食文化の担い手♦
顧客の求めるものを理解する–
顧客との対話的マーケティングをどうするか?♦
会社の文化と顧客の考え方のギャップがあると=> 売上や市場シェアの低下につながりやすい
♦
事例:アサヒビールのドライによる躍進–
若い世代の顧客の食文化を読み取り躍進アサヒビールの概要(2005)
♦ 代表者名 荻田 伍
♦ 本社所在地 東京都墨田区吾妻橋1−23−1
♦ 設立年月日 昭和24年9月1日
♦ 資本金
182,531(百万円 2005.12)
♦ 売上高
1,054,161(百万円 2005.12)
♦ 事業内容 (連結)
– 酒類事業 – 飲料事業 – 食品・薬品事業
– その他の事業=不動産販売・賃貸・管理等,麦芽の製造・販売,外食事業,卸事 業,物流事業,金融事業,他
♦ 沿革
– 昭和24年9月大日本麦酒(株)の第2会社として東京,大阪,広島,四国,九州 の5支店,吾妻橋,吹田,西宮,博多の4工場を継承し,資本金1億円で朝日麦 酒(株)設立。
– 64年1月商号をアサヒビール(株)に変更。平成6年7月北海道アサヒビール
(株)を合併。
業績
売上高、利益の推移
0 200,000 400,000 600,000 800,000 1,000,000 1,200,000 1,400,000 1,600,000
2001 2002 2003 2004 2005 売上高 経常利益 当期利益
2005年の売上構成(連結)
71%
19%
2%8%
酒類事業 飲料事業 食品・薬品事業 その他事業
アサヒビールの沈滞
♦
戦前の名門=>長期低迷–
社員:ドイツの一流の技術?•
生産者の求める味に終わってしまっていた–
市場戦略の失敗:家庭市場への対応遅れ–
社員の意識改革と顧客志向のマーケティング♦ 1984年の消費者イメージ調査:イメージの悪さ
–
時流に乗れない–
積極性に乏しい–
宣伝広告が今ひとつ–
新製品開発に熱心ではない戦後のビール業界のシェア推移
アサヒビールの改革
♦
住友銀行からの二人–
1980年代の村井勉と樋口廣太郎♦
意識改革:経営理念–
消費者志向/品質志向♦
新たなCI:「コクとキレ」♦
全社的品質管理運動AQC–
社内連携の再構築♦
新たな製品開発:ドライビール–
洋食へのマッチング村井の改革
♦ 1982年の村井社長就
任と「意識改革」
–
新経営理念•
消費者志向•
品質志向•
人間性尊重•
労使協調•
共存共栄•
社会的責任♦ AQCの展開
–
全社品質管理運動の 展開–
組織全体で仕事や活 動の連携を考え直す–
生産者志向から消費 者志向への意識の転 換を図る新製品の開発
♦
食品の味=流行の移り変わりの早さ–
食文化の大きな変化:外食・洋食化・女性♦
生産技術陣に市場調査をさせ意識改革–
選ばれない個性のないビールを認識♦
市場調査の実施–
「苦く、濃く、ホップの香り」を求めていない–
コクとキレを求める消費者の声♦
「コクとキレ」のあるビールの開発–
従来の生産設備を捨て、新規に切り替え♦ 1986年に新ビール開発
♦
さらに「スーパードライ」へ新しいCIの導入
♦ 新たなCorporate Identityの導入
–
企業個性のイメージ♦ 1984年にCI導入委員会発足
♦ 1986年に新たな企業マークの導入
–
キレとコクのある企業をイメージ–
斬新なイメージを訴える新たなアサヒビールのロゴ その後のアサヒビール
♦ 1986年に樋口廣太郎が社長に
– 88年には年間売上高伸び率70.2%増大
♦
サッポロビールを抜き2位へ♦
転換社債の活用– 86年から5年間で4000億円調達 –
生産能力を5倍に♦ 1996年に「スーパードライ」シェアトップ
–
以来、連続首位を守る♦ 2001年、アサヒビールビール市場占有率首位へ
スーパードライの猛追 討論点
♦ なぜ、アサヒビールの社員は、世間と違っ た見方をするようになったのだろうか。
♦ 村井と樋口は何を変えたのだろうか。
♦ 従業員の見方や意識を変えるのに何が効
果的なのだろうか?
市場占有率の推移
ビールの市場占有率推移(1999-2001)
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0
1999 2000 2001 年度 市
場 占 有 率
アサヒ キリン サッポロ サントリー その他
図 ビールの出荷量の推移
0 1,000,000 2,000,000 3,000,000 4,000,000 5,000,000 6,000,000 7,000,000 8,000,000
1 9 8 0 1 9 8 2 1 9 8 4 1 9 8 6 1 9 8 8 1 9 9 0 1 9 9 2 1 9 9 4 1 9 9 6 1 9 9 8 2 0 0 0 2 0 0 2 2 0 0 4 年度
出 荷 量
組織文化の考え方
組織文化について
♦ 組織の意識を変えることの持つ意味
♦ 組織文化のまとまりとその混乱がもたらす 結果
♦ 組織文化をどう変えていくのか
企業文化の変革
♦ 企業文化とは
–
企業の持つ価値観、考え方、行動の仕方♦ 経営理念とCorporate Identity
♦ 変革:意識の変革
–
新たな価値観の創出と行動計画–
社員教育研修:経営理念の共有–
各部門での行動変換–
CIの作成♦ 変革者=シンボリック・マネージャー
–
神話、儀式、コミュニケーション1.組織文化の定義
♦ 定義
組織の中でそれらを構成する人々の間で共有 された価値や信念、あるいは習慣となった行 動が絡み合って醸し出されたシステム
2.行動環境の主観的な認知
♦ 組織文化とは組織の主観的な認知
–
「(環境の)変化は変化として認知されなけれ ば行動を変えない」–
認知過程=要因群と判断・行動の間に介在–
環境の認知=物理的+心理的(Lewin,
1951)
♦ 組織のメンバーによって複合的に構成さ れた主観的な世界(生活空間)
→メンバーの判断や行動を実質的に規定
組織の持つ雰囲気
♦ 組織の持つ雰囲気である
♦ 組織風土=組織文化のプロトタイプ
–
組織や職場集団が、ほかのメンバーや外部の 人々と相互作用するパターンや物理的環境な どによって生み出される雰囲気。–
「暗黙の了解」♦ 組織メンバーに共有、行動を暗黙に制約
–
組織デザインの個人的認知シンボルの体系
♦
組織文化はシンボルの体系1.
儀式やセレモニー2.
シンボル3.
隠語4.
物語の伝承♦
文化を強く共有する場であること–
文化的にも官僚制化への動きにつながる3.形成
♦ 形成=社会的相互作用の反復がにたよう な考え、見方の共有を進める:組織アイデ ンティティの共有
♦ 組織文化の形成要因
(1)近接性
(2)同質性
(3)相互依存性
(4)コミュニケーション・ネットワーク
(5)帰属意識
4.機能
♦
規範性と斉一化–
規範性•
客観的な事実とは関係なくメンバーの信じるべき価値・情報 解釈・思考様式である•
会社の常識、社会の非常識–
斉一化•
凝集性の高い集団•
社会的圧力がかかる 例:村八分♦
強い文化と弱い文化–
強い文化である•
確固とした信念体系と保持していること=構造安定化–
同調圧力の高さ機能(2)
♦
組織らしさを作り出す–
重たさ、軽さ–
慎重な取り組み、活気にあふれている♦
組織文化をどう測定するか(Litbin & Stringer)1.
雰囲気の構造化2.
自律的な責任3.
報償4.
挑戦への危険負担(リスクテーキング)5.
あたたかさと支持6.
葛藤5.発展
4つの発展時期 1.誕生・成長期 2.発達期 3.成熟期 4.変革へ
発展(2)
1.誕生・成長期
♦
コアとして:創業者の個人的思考様式–
「水道哲学」♦
問題発生:経営者交代♦
変容:(1)自然な進化:有効な思考・行動様式を吸収 一般的進化/特定的進化
(2)組織セラピーやハイブリッド人材 強み・弱みの再認識、新メンパー
(3)外部の人材の登用
–
アサヒビールの樋口慶太郎発展(3)
2.発達期:創業者一族が中心でなくなる時
♦
組織文化:制度化され定着–
経営理念、スローガン、社是、社訓♦
挑戦:文化改革への契機–
環境の変化により業績悪化–
下位部門間での権力闘争♦
変容1.
組織開発2.
技術を媒介とする誘導的変革3.
スキャンダルや神話を利用した変革4.
斬新主義発展(3)
3.成熟期:成長の限界
♦ 組織文化のコアが機能障害
♦ 既に既成の組織文化が阻害要因に 4.変革へ
1.
強制的説得2.
方向転換3.
再編・破壊・新生:リストラ、買収6.革新
♦ 組織文化はどうして革新するのか
–
パフォーマンス・ギャップ他組織との比較、競争相手との比較、他部署との競 争
–
社会の倫理と折り合い•
管理道徳•
環境問題への取り組み、消費者への対応革新(2)
♦
シンボリックマネージャー–
ディールとケネディが提唱–
組織文化の維持、形成、発展を担う経営者や管理職 のことを指す♦
トップ経営者や中間管理職が組織文化を率先し て変える役割を強調–
会社の価値理念、ヒーロー、儀式を工夫–
強い組織文化を創り出そうとする→シンボリックマネージャーとしての村井、樋口
革新(3)
♦ 変革の過程( Zaltman et al., 1973 )
–
導入•
知識の喚起、態度形成、決定–
実行•
初期の実行、修正、ルーティン化♦ 組織開発:組織文化の意図的な変革
–
組織デザインにおける構造・制度の変更•
バーゲニング、合従連衡、支配集団との連携、内 部分裂–
その難しさ再びアサヒビールへ
♦ 村井はシンボリックマネージャーとして何を したのだろうか
♦ なぜ、アサヒビールは弱い組織文化を持っ ていたのだろうか
♦ どのように強い組織文化へと変わったのだ
ろうか