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書道運筆時における速度パターンの抽出

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Academic year: 2024

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(1998年10月5日受理)

1.はじめに

人間が行っている仕事の中には,ロボットには実現できないような高度な作業が数多く ある。人間はその作業に携わることで,作業の行程やその特質を「経験」や「こつ」といっ た暖昧な情報に変換・構築を行い,その作業を達成していると考えられる。こうした暖昧 なすなわち,知的な‘情報を工学では“スキル(技能),,という。これをできるだけ定量化・

定式化することによって,ロボットにも人間と同じような高度な仕事ができるのではない

かと考えられる。

このスキルが必要な作業の一つに書道がある。人間が書道を行うとき,まずお手本を見 て筆の目標軌跡を作る。そして,今までに書道を行ってきた「経験」や「こつ」から筆圧 の強弱や筆の緩急')を決めていると考えられる。これらの作業において定量化・定式化でき るスキルは,お手本から抽出できるスキルと,お手本から抽出できないスキルに分けられ る。前者のお手本から抽出できるスキルは,お手本の文字画像から骨格画像を形成し得ら れる筆の3次元目標軌跡である。また,後者のそれは「経験」や「こつ」から得られる筆 圧の強弱や筆の緩急である。筆者らはこれまでにお手本から抽出できるスキルについての 考察は行っている2)が,お手本から抽出できないスキルについての考察は行っていない。そ こで,本論文ではお手本から抽出することのできないスキルのうち筆の緩急に注目する。

すなわち,筆の緩急をあらわす書道運筆時の速度パターンの抽出を行う。しかし,各文字 の速度パターンについてすべて調べていたのでは膨大なデータとなってしまう。そこで,

少ない速度パターンで多くの文字に対応できるように,書道の基本的な筆使いの8つの要 素がすべて入っている“永字入法''3)の各要素に注目した。このうち2対の要素については 同種のものと考えられるため,書道運筆時における速度パターンの抽出は残りの6つの要

素について行う。

2.お手本から抽出できるスキル

ロポットに筆を使って文字を書かせるために,まず人間が文字を書くときのようにお手

本を見て軌跡を作る。その方法は,図’に示すようにCCDカメラでお手本の文字画像を

(2)

(枠線抽出〆

"中心線画像,,

- (=値化)

"骨格画像”

恒値願託

"お手本の文字画像,,

“枠線画像,,

図1“し"の骨格生成

取り込む。その画像を二値化し,二値化した画像を枠線抽出と細線化処理を行い,それぞ れ枠線画像と中心線画像を抽出する。これらの二つの画像から手本文字の骨格画像が形成 される。この骨格画像の中心線からロボットの紙面に水平な方向に設定したXY座標の目 標軌跡が得られる。また,骨格画像の中心線と枠線との最短距離から文字の“太さ”が求 められる。この結果およびこれと筆の沈み量と太さの関係式から筆の沈み量がわかり,紙 面に垂直な方向に設定したZ座標の軌跡が求められる。

3.お手本から抽出できないスキル

骨格画像から得られた3次元の目標軌跡をロボットで追従させるだけでは,人間の書く ような文字は書けない。人間は,文字を書くときどのような速度でどのくらいの力をかけ ればよいか過去の経験などを無意識的に参考にしている。そこで,書道の“スキル,,とし て考えられる筆圧の強弱と筆の緩急などの中から,筆の緩急,つまり書道運筆時の速度パ ターンを調べることにより,人間のスキルの一端がわかるのではないかと思われる。そこ で,実際に人間が文字を書くときの速度パターンを調べる。

4.測定する要素について

人間の書道運筆時の速度パターンを抽出するために,すべての文字についての速度パター ンを測定していたのでは,データの量が膨大となり,また複雑にもなる。そこで,本論文 では,“永字入法”に注目する。“永字入法”は,漢字の基本的な筆使いである8つの要素 が入っている。すなわち,この“永字八法,,の各要素について調べることによってデータ

(3)

5.測定装置

書道運筆時の速度パターンを抽出するためにポジションセンサ4)(コントローラ,LEDター

ゲット,CCDカメラ),コンピュータ,作業平面,筆を使って図4に示すような測定装置 を製作した。

LEDターゲットは1個につきX座標,Y座標の2次元位置データが測定できる。このLED

5.

6.

4 □

図2永字八法

-1、

(1)横画 (2)竪画 (3)点

(4)はね (5)左払い (6)右払い

図3測定する6つの要素

(4)

画像データ

,記cc。

鰯鬮露M

OO

蝋□&

UHIU1H臼

図4測定装置

ターゲットを筆の上端部に3個,作業平面に4個決められた位置に取り付けた。

このLEDターゲットの光点位置を高さ約2mの位置に取り付けられているCCDカメ ラの受光素子で測定する。コントローラは,CCDカメラから得られたLEDターゲットの 光点位置の電気信号を演算処理してX座標,Y座標電圧として出力する。また,作業平面 に取り付けられた4つのLEDターゲットは決められた位置に取り付けられているため,

それらと筆に取り付けられた3つのLEDターゲットの位置を比較することによって,コ ンピュータはコントローラから出力されたX座標,Y座標電圧から作業平面の中心からの LEDターゲットのX座標,Y座標の2次元位置データを求めることができる。つまり,筆 の位置が求められることになる。この位置データは,サンプリング時間が10,secごとに測 定されているため,1サンプリング時間の移動距離からコンピュータは人間が文字を書く

ときの速度を算出する。

6.測定方法

“永字八法,,の6つの要素について,5人の被験者にそれぞれ3回ずつ直筆法3)を意識し て書いてもらった。直筆法とは紙面に対して筆を垂直に立てて書く方法である。計測した 部分は図5の矢印に示す“打つたて”と“終筆”と呼ばれる部分を除いた“おくり,,部分 のみとした。また,図3に示した(1)横画と(2)竪画については,4cmから12cmまで2cm ごとに長さを変えた5種類の要素について書いてもらった。図6は,3人の被験者に書い てもらった横画の一例である。

(5)

被験者A 被験者B 図6被験者が書いた横画

被験者C

v/v

1.0

v/v

lO

0.5 05

0.0 00

0.0 OS

(i) '0t/t, 00 0.5

(ii) 10t/t,

図7横画と竪画の測定結果

表1横画の各おくり長さにおける所要時間と最高速度

おくり長さに、) 4681012

所要時間:tKsec) 1.201.381.531.812.06 最高速度:v,(cm/sec)5.957.708.559.709.69

表2竪画の各おくり長さにおける所要時間と最高速度

おくり長さ(c、) 4681012

所要時間:tKsec) 1.121.391.681.631.99 最高速度:v'(cm/sec)6.337988.8810.4910.30

7.測定結果

各要素の測定結果を,図7から図9に示す。また,表1から表6は各おく

行安系の側疋給未を,凶7から凶9に汀;す。また,表lから表6は各おくり長さにおけ

る所要時間と最高速度を示す。グラフの横軸は時間(t)を所要時間(t,)で割って無次元 化したもの,グラフの縦軸は速度(v)を最高速度(v,)で割って無次元化したものである。

各要素とも5人の平均をとったもので横画と竪画は長さ別に5人の平均をとったものである。

(6)

v/v1.0

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0.5

(ii)

'0t/t, 00 0.5

(i)

00

図8点とはねの測定結果

表3点の所要時間と最高速度 表4はねの所要時間と最高速度 所要時間:tKsec)

所要時間:t,(sec) 0.82 0.37

最高速度:v'(cm/sec)7.11 最高速度:v,(cm/sec)4.81

v/vlO

v/V1.0 ●-

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0.5

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1.0t/t, 0.0 0.5

(i)

00

図9左払いと右払いの測定結果

表6右払いの所要時間と最高速度 表5左払いの所要時間と最高速度

所要時間:tKsec)

所要時間:t,(sec) 0.86 2.35

最高速度:v,(cm/sec)6.87 最高速度:v'(cm/sec)9.16

、1横画と竪画の測定結果

図7の(i)は横画の測定結果,(ii)は竪画のそれである。無次元化した長さの異なる

7.1

図7の(i)は横画の測定結果,(ii)は竪画のそれである。無次元化した長さの異なる5 種類の要素のグラフを重ねると,横画の場合も竪画の場合も,ほぼ同じような波形のグラ フになっている。また,これらのグラフは速度のピークまで単調増加,それ以後は単調減 少している。速度のピークは横画が時間が約70%経過したとき,竪画の場合は約80%経過

(7)

したときである。また,はねの速度パターンはほぼ等加速度の単調増加の波形となっている。

7.3左払いと右払いの測定結果

図9の(i)は左払いの測定結果,(ii)は右払いのそれである。左払いの結果ははねの場 合と同じように,等加速度の単調増加の速度パターンになっている。また,右払いの場合 は時間が約80%経過するところまでは,横画・竪画などと同じように単調増加・単調減少 であり,速度のピークは時間が約50%経過したところである。後半は,はね・左払いの場 合と同じように単調増加の波形になっている。

7.4測定結果のまとめ

“永字八法”のうち6つの要素について5人の被験者の速度パターンを測定した。この うち,横画と竪画を無次元化したグラフは,長さが異なっていてもほぼ同じ波形になって いた。また,6つの要素の速度パターンは,単調増加・単調減少の速度パターン,単調増 加の速度パターン,もしくはこれらを組み合わせた速度パターンで表せることがわかった。

8.おわりに

書道から定式化・定量化できるスキルのうち,お手本から抽出できないスキルの1つで ある筆の緩急についての考察を行った。また,永字入法に各要素に注目し,その6要素の 速度パターンの抽出を行った。その結果,横画や竪画は長さが異なっていても,速度パター ンはほぼ同じ波形になることがわかった。また,速度パターンは3つのパターンに分類さ れることがわかった。これらの得られた速度パターンから,各文字における速度を算出し,

そのデータをスキルとして書道ロボットに与えることにより,人間に近い文字を書かせる ことができると期待できる。また,これらのスキルを用いた文字と用いない文字とを比較 するために,定量的に文字を評価する方法を見つけることは今後の課題である。

参考文献

1)戸田,野口:槽書の光と陰一線の深さから始める学習法-,木耳社,p、8(1986).

2)高見,藤本,逢坂:書道ロボットによる人間の書いたひらがな文字の再現,日本機械学会,中国四国支 部第36期総会・講演会講演会論文集,No.985-1,pp267-268(1998).

3)本間:小筆字の美しい書き方―やさしく学ぶ細字の基本一,新星出版社,p、9,p、6(1995).

4)浜松ホトニクスカタログ:ポジションセンサC5949(1996).

(8)

ExtractionofVelocityPatternin

WrittenLetterswithaBrush

AkiraYAMAsAKI*,ShinsakuFuJIMoTo**andKazumasaOHsAKA**

*GTZ〃αねSbh00L

**DGpa汀加c"jq/、/Vbc/zcz"jczz/DZgj"CeブカZg Ftzc"/bノq/E〉29かzeem2g OノhZy[z”αU)zjUe7qs/l1yq/Sb伽ca R沈如-ch0I-I,OhcZy[z〃zz〃0-00砿ノヒZ,α〃

(ReceivedOctober5,1998)

Humanscanwritebeautifulletterswithabrushsimply・Howeveritisdifficultthat robotscanwritebeautifulletters,becausewrittenlettersneedhumanskiUSkillis necessarytoexecuteadvancedhuman-liketaskforrobots・Inthispaper,weselected calligraphyfromtheadvancedtaskswithskilLThewrittenletterswiththebrushare composedofskillsthataredividedintotwofactors・Oneisthepressureofthebrush andtheotheristhevelocitypatternofthebrushinwrittenletters・Weconsiderthe velocitypattern,andmeasureditinordertoextracttheskilLWechosesixelements from“EIJIHAPPO".“EIJIHAPPO,,containseightfundamentalwaysofwritten

"KANJI”lettersFivesubjectshavewrittenthesesixelementseachthreetimesOn non-dimensionalgraph,thesevelocitypatternsaredividedintothreekindsofvelocity patterns、Infirstpattern,non-dimensionalvelocityincreasesmonotonouslyuntilthe peaklnsecondpattern,itdecreasesmonotonously・Inthirdpattern,itcombineswith firstandsecondpatternsFromtheseresults,wecalculatewrittenvelocityeachletters frommeasuredvelocitypattern.

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