• Tidak ada hasil yang ditemukan

書館 文 - J-Stage

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2023

Membagikan "書館 文 - J-Stage"

Copied!
6
0
0

Teks penuh

(1)

書 館 化学 生物

澱粉は食料の中で非常に重要なカロリー源として用いられ てきたため,古い時代から研究の対象とされてきた.食品,

製紙や繊維の糊料として必要な種々の物性や利用に関する研 究は行なわれていたが,化学的な面で著しい進歩が見られた のは1940年の前後数年の間である.本稿の御依頼は「澱粉 の科学 ― 異性化糖の開発」であったが,異性化糖の研究が 開始される背景となった日本の澱粉科学および澱粉関連産業 の過去50年の研究の流れと,その中で筆者自身の歩んだ道 を関連させながら述べさせていただくことにした.

  1940年以前の澱粉科学

1940年以前の澱粉科学をまとめた総合書の一つにRobert  P. Waltonが編集した  A Comprehensive Survey of Starch  Chemistry  (1928)(1)がある.アイオワ州立大学で研究をし ている際にDexter French教授の書棚にあるのを見て,初め てこの本の存在を知った.French 教授は筆者の誕生祝に全 冊をゼロックスコピーして製本したものをプレゼントしてく ださった.今も筆者の大切な宝物である.この本が日本にあ ることは今まで聞いたことがなく,論文や解説の中で引用さ れたのを見たこともない.発行部数がそれほど多くなかった のかもしれない.

本書の序文でWaltonは以下のように述べている.「他の分 野の研究と同じように,この分野でも観察とその理論がすべ ての研究者に受け入れられるほど完全に一致しているわけで はなく,多くの議論と相容れない観察が含まれている.澱粉 の分子構造の複雑性とコロイド化学的な性質の関連性の不十 分な説明,酵素による澱粉の分解性など十分に説明できてお らず,また矛盾する説明も見られる.本書の読者には混乱を 招くところが多いと思うが,それぞれの著名な研究者の実験 結果,考え方をまとめたものである」.

本書は2分冊で構成されており,第1分冊 (240頁)は当時 広い分野で研究されていた澱粉がそれぞれの分野の第一人者 によってまとめられている.澱粉の成分であるアミロースと アミロペクチンの化学構造がはっきりしていない時代の著述 で,現在の知識および用いられている用語とはかなり異な り,読んでいて混乱する部分がある.しかし,澱粉の熱分

解,細菌による分解,パンの中での澱粉の役割および老化現 象,発酵原料としての澱粉,澱粉製造法,製紙,繊維産業に おける澱粉の役割などの研究成果が広く収録されている.著 者 と し て James C. Irvine, Hans Pringsheim, Max Samec,  Carl L. Alsberg, Johann R. Katz, George M. Mofettなど著名 な炭水化物科学者の名前が並ぶ.日本人名の唯一の著者は澱 粉分解酵素の章を担当した Jokichi Takamine Jr. (Fleisch- mann Laboratories) である.

第2分冊(360頁)は文献集であり,1928年以前の澱粉の 研究論文の要約集である.掲載されている文献数は約3,500 で,1800年代から始まる古典的な澱粉に関する研究論文が 紹介されている.コンピューターのない時代によくぞ整理し たものと思う.

この本は,当時の知識を総合的にまとめた優れた澱粉科学 の専門書である.ただ,Waltonが述べているように,澱粉 の成分について当時の用語では  Amylose ,  Amylopectin   のほかに粒の外部を 

α

-amylose,  内部の成分を 

β

-amyloseと 呼称し,またamylocelluloseなどの名称が出てくるなど,現 在用いられていない用語が多く混乱するが,試行錯誤で進ん できた澱粉研究の流れを知る意味では大変興味深い.

この本を最近詳しく読んでみたが,本の章立ては,現時点 で新刊の出版を考えても必要なものは,ほぼ網羅されてい る.澱粉は一成分ではないということがわかっていること以 外は構造がほとんど判明していない時代の解説としては,現 象が精細に著述されていることに驚愕している.もちろん,

知識,手法,機器が進歩した現在の教科書の内容とは異なる が,現在においても本質が解明されていない構造,現象が多 い.1940年以前の澱粉の研究については二国(2) が詳しく解 説しているので,興味のある方は見ていただきたい.

  近代澱粉科学の黎明

Waltonの著書の時代には構造的概念が判然としていな かったアミロース,アミロペクチンに関し,1940年にK. H. 

Meyerはアミロペクチンの樹状構造を提案し,温水で抽出 されるアミロースとの構造的な相違点を明確にした(3).そし て,すでに用いられていたアミロース,アミロペクチンとい

日本の澱粉科学と産業の発達史を辿って

Ⅰ.澱粉の科学―古典から近代まで

貝沼圭二

九州大学大学院農学研究院特別顧問

(2)

う名称に次のような新しい定義を与えた.すなわち,「枝分 れしない分子で 

β

‒アミラーゼによって完全に糖化される炭 水化物をアミロースといい,枝分れ分子で 

β

‒アミラーゼに よって限界デキストリンまでしか分解されない炭水化物をア ミロペクチンと定義する」とした.これは現在の澱粉化学の 第一歩を踏み出した研究であり,それまで混乱していた問題 に構造を基礎にした明解な回答を与えた.同じ名称のアミ ロースとアミロペクチンであるが,1940年以前に用いられ ていた名称とはまったく異なり,化学構造をもとにした命名 基準によっているので,古い文献を読む場合には気をつける 必要がある.

この時期には,その他注目すべき研究成果が多く出現し,

澱粉科学は一つの新しい時代を形成した.アミロースを選択 的に沈殿させる -ブタノールを用いたアミロースの分画法が

T. J. Schoch(図

1

)により発見され(4),この方法は現在も利 用されている.1939年にK. Freudenberg(5)は,シャールジ ンガーデキストリンが環状物質であることを発表した.さら に1942年,French & Rundle(6)がX線回折によって,この 物質を構成するグルコースの残基数を明らかにした.すなわ ち,

α

‒シャールジンガーデキストリン,

β

‒シャールジン ガーデキストリンはそれぞれ6個,7個のグルコースが結合 している環状糖であることを明らかにし,サイクロヘキサア ミロース,サイクロヘプタアミロースと呼ぶことを提案した のである(図

2

.さらに,X線回折を用いてV-アミロース のシングルヘリックス構造が,Rundle & Frenchにより発 表された(7).これは天然高分子として初めてのヘリックス構 造の提案であった.近代の澱粉科学の基礎ができた1940年 前後は澱粉科学のルネッサンスと捉えても間違いない大きな 変革が起きた時期であった.

  日本における近代澱粉科学と澱粉産業―澱粉の基礎 科学の進展

世界の澱粉科学に急激な変化が生じた時期は,第二次世界 大戦の開戦直前から戦中で,日本は科学情報から隔離された 状態にあり,ルネッサンスから10年間は外国文献にまった く触れることができなかった.

二国二郎先生(図

3

)は1951年に出版した名著『澱粉化 学』において,「不幸にして我が国は新澱粉化学誕生の翌年 太平洋戦争に突入して鎖国状態に入ってしまった.1945年 の敗戦以降,我々が第一にしなければならなかったことは新 澱粉化学発展のあとを辿り,速やかに澱粉化学の現状を理解 することであった」と緒言に述べている(8)

情報鎖国状態にあった我が国の澱粉科学は急速に先進国に 図1T. J. Schoch教授

Cornell大学の研究室にて (1969)

図2Dexter French 教授が描いたSchardinger Dextrinの生 成模式図

原図は教授の御逝去後に筆者が書斎から持ち帰ったもので,年代 不詳.アミロースのへリックス構造が示されていることから1943 年以降で,Schardinger Dextrinと呼んでいること,酵素はstruc- ture unknownと書かれているところから判断して1950年代初期

に描かれたものと思われる. 図3二国二郎先生 1975

(3)

追いつき,その後日本では『デンプンハンドブック』(9),『澱 粉科学ハンドブック』(10),『澱粉科学の事典』(11)と,日本の 澱粉研究の成果を反映させた専門書が次々に出版されてき た.そして2010年には,澱粉研究懇談会創設50年を記念し て澱粉科学と技術を総括する『澱粉の科学と技術―澱粉研究 懇談会50年の歩みと展望』が出版された(12).二国先生を頂 点に,鈴木繁男先生,中村道徳先生などの先駆者が確立され た基盤が,現在でも受け継がれている.先生方の偉業に深い 敬意を表したい.

1970から80年代になると,澱粉の基礎研究の中で重要な 発見や仮説の提案において日本人の名前が出現するようにな る.二国の一粒一分子説に基づく澱粉粒モデルと房状構造

(図

4

(13),Kainuma & FrenchのDouble Helix 仮説(14) およ び澱粉粒内でのアミロペクチンクラスターの配列モデル(図

5

(15),Fuwa & Glover のトウモロコシの遺伝子変化と澱粉

の構造との関係(16),Hizukuri のアミロペクチンの定量的な 構造モデル(図

6

(17) の提案,Hanashiro & Takedaの新し い構造研究手法に基づくアミロースの重合度の決定(18)など,

世界の澱粉の教科書を書き換える成果が出始めた.ルネッサ ンスから30年が経過して,日本の澱粉科学も世界に比肩す る レ ベ ル に 到 達 し た.1966年 にAmerican Association of  Cereal Chemistsに 創 設 さ れ たAlsberg Award (現 在 の AACC International の Alsberg-French-Schoch Award) は 澱粉の基礎科学における最高の賞とされており,2年から4 年の間隔で受賞者を選出しているが,賞の創設以来22名の 受賞者の内,日本の受賞者は二国二郎氏 (1980),檜作進氏 

(1991),貝沼圭二 (1995),竹田靖史氏 (2007) と4名を占め ている.

  国内における澱粉生産技術の高度化と過剰滞貨澱粉 の社会問題化

日本の澱粉科学と技術の急速な発展に大きく寄与した事項 として,国内産澱粉の生産過剰による滞貨問題を避けて通る ことはできない(19).その背景を簡単に説明しておきたい.

日本の澱粉生産では,1955年頃から北海道において,小規 模の馬鈴薯澱粉工場を統合して,西欧型の大型合理化澱粉工 場が建設され,高品質の馬鈴薯澱粉が供給されるようになっ た.もう一つの国産澱粉である甘藷澱粉では,製造工程の合 理化は進行したものの,大型工場への移行はなかった.数多 くの比較的小規模の工場が,鹿児島,宮崎を中心にして,三 重,千葉,茨城などで70万tを超える生産を行なっていた.

当時,我が国における澱粉の用途は,水飴,片栗粉(商習慣 としての精製馬鈴薯の名称)などの形で利用する食品,製 紙,繊維などが主流であり,国内で生産される澱粉を完全に 消化しうる市場はなかった.

過剰に生産された澱粉は滞貨農産物となり,政府が毎年支 払う保管料が嵩み,社会的な問題に発展した.1957年に,

農林大臣の諮問機関として澱粉調査会が設置され,学識経験 者により新規用途を開拓するための技術的,経済的な問題点 の検討が行なわれた.この答申に基づき,1958年に澱粉を 原料にしてブドウ糖を製造する結晶ブドウ糖産業の育成要領 図4二国の一粒一分子説に基づく超高分子澱粉モデル 1969

図5貝沼の澱粉粒子内 のアミロペクチン分子の 配列モデル(1980

図6檜作の定量化されたアミロペクチンのクラスターモデル 

1986

(4)

が決定され,1959年には甘味資源の自給力強化対策が閣議 承認されるに及んで,政治的にも高いレベルで甘味資源自給 を目的にした産学官の研究体制が構築された.1960年には,

政府の滞貨澱粉は30万tに到達した(20).この量は現在の澱 粉需給量300万t以上に対する30万tとは異なり,当時の年 間生産量の30%以上に相当し,生産計画,滞貨澱粉の保管 料とも大きな社会問題になった.

  農芸化学研究者の農業政策への貢献

この時期の農芸化学分野の先輩の活躍は目覚しく,研究お よび技術に基づいた発言で国の政策決定に大きな影響を与え た.すでに鬼籍に入られたが,官学界からは鈴木繁男氏,二 国二郎氏,福本寿一郎氏ら,産業界からは頼富憲三郎氏,小 巻利章氏および澱粉糖化に関係した企業の技術者の方々がこ れに加わった.

このような方針に基づいて研究が促進され,澱粉の完全酵 素糖化法による結晶ブドウ糖の生産法が完成した.この技術 の基本となったのは,当時の長瀬産業(株)の小巻利章氏の細 菌 

α

‒アミラーゼによる澱粉の連続液化技術と,辻阪好夫氏 と福本寿一郎氏のカビのグルコアミラーゼによる完全糖化技 術であった.それまでは蓚酸を用いた澱粉の酸糖化が中心で あったブドウ糖生産が,世界に先駆けて完全酵素糖化法に置 換された時期であり,塩酸や硫酸による酸液化と酵素糖化の 組み合わせで澱粉を糖化していた欧米の技術を完全に凌駕し た.我が国の農業政策を推進しながら澱粉の科学と技術は急 激な発展を遂げた時期であった.

この後に,ブドウ糖の甘味増強を目的にしたブドウ糖の果 糖への異性化の研究がなされ,年間100万tを超える異性化 糖(果糖・ブドウ糖液糖)が大量生産されるようになった.

このあたりは本誌で山中啓氏が述べているので参照された い(21).現在,日本が世界に誇る糖化酵素,糖転移酵素を利 用する各種オリゴ糖類,糖アルコールなどの新規糖質産業の 発展の基礎形成は,ブドウ糖の完全酵素糖化の技術的な完成 に負うところが多い.

しかし,現在産業に用いられている澱粉の主原料は国産の 馬鈴薯澱粉,甘藷澱粉ではない.開発された技術を用い,価 格の低廉な輸入トウモロコシから製造される澱粉が主流に なっている.

  澱粉工業学会と澱粉研究懇談会

日本の澱粉科学と産業を語るに際し,澱粉工業学会と澱粉 研究懇談会が果たした貢献を述べておきたい.この2つの会 が車の両輪となり,現在の澱粉科学と澱粉産業を先導してき たからである.ここでは,これらの会の誕生の経緯と現在の 活動を簡単に紹介したい.

澱粉工業学会(現日本応用糖質科学会)

澱粉工業学会は1952年に設立された.その後学会は名称 を変えて,日本澱粉学会,応用糖質科学会となり,現在に至 る.その間,学会の機関誌も「澱粉工業学会誌」,「澱粉科 学 」,「応 用 糖 質 科 学 」,「 」 と名称を変え,2011年には学会誌として,英文原著論文を

扱う「 」の他,和文誌とし

て「応用糖質科学 」が創刊

された.

澱粉工業学会の初代会長尾崎準一先生は,「本学会名に特 に工業とうたったのは,理論よりも実際に重点をおくことを 示したものである」と会の性格を明瞭に示された.この時期 の掲載論文を見ると,澱粉製造技術に関係するものが圧倒的 に多い.技術が大きく変化した時代で,澱粉の高い比重を利 用して沈澱を繰り返し,精製していく古典的な工程から,遠 心力を用いて連続的に精製していく工程に変換する際に遭遇 した問題の解決に向けたものが圧倒的に多い.国内における 澱粉工業の近代化の流れの中で本学会の果たした役割は非常 に大きいものがある.

第二代会長の二国二郎先生は,この学会を工業にとどまら ず,澱粉の基礎科学から産業までを網羅する学会に転換する という方針で,会の名称を「日本澱粉学会」,機関誌を「澱 粉科学」と改称し,世界の澱粉科学の中で議論ができる基礎 科学の研究と発展に努められた.

このような理念を受けて本学会の産学協同にかけた思いは 歴代会長に継承され,日本独自の澱粉由来,他の糖質由来の 応用糖質科学の進歩に大きく貢献している.学会の変遷につ いては岡田厳太郎氏の随想に詳述されている(22)

澱粉研究懇談会 Japan Starch Round Table

澱粉研究懇談会(別名スターチラウンドテーブル)は 1960年 に 創 設 さ れ た.米 国 のCorn Refiners Association 

(CRA) が1940年代から行なってきた Starch Round Table 

(SRT) をモデルとしている(23).米国のSRTは,すべての費 用をCRAがもち,学界参加者は完全招待制のクローズドの 会合であった.米国のSRTの魅力は,結論が出る前の研究 を持ち寄り,大家の研究者も,初心の研究者も同等の立場の 自由な雰囲気の中で,ジョークを交えながらも非常に厳しい 議論を行なう伝統にあった.二国先生はアメリカ留学中に SRTに出席されて,日本にない文化に衝撃を受け,日本に もこのような研究会が必要であるという強い思いを抱いて帰 国された.その後,準備期間を経て食品総合研究所に事務局 を置いて,1961年に第一回の澱粉研究懇談会が高野山にお いて開催された.開催地は信州上林,那須を経て,現在は伊 東で毎年2泊3日の会をもっている.

この研究懇談会は,通常の学会とかなり趣を異にした運営 をしているので少し説明をさせていただく.講演の発表後に 長い討論時間を設け,内容を十分に議論することを旨として いる.会の参加者は130名程度とし,食品産業界からの出席 者は年会費を納め,学界参加者は招待を受け,自己費用で出 席する制度を守っている.特に学界出席者にはその役割とし

(5)

て,会への貢献(新しい研究成果の発表,議論への参加,産 業界の抱える問題解決への協力など)を求め,単に勉強に来 るだけの出席者は翌年の招待枠から外れていく仕組みにして いる.

日本の文化によるのだろうか,畳の大広間で食事をし,ア ルコールの入った後の討論を畳の談話室で車座になって行な い,一つの和室に4, 5人で雑魚寝をして,3日間寝食を共に するうちに参加者全員に大きな連帯感が生まれてくる.大風 呂の温泉に一緒に入ることもきっと効果を高めているのであ ろう.このような雰囲気から人的な繋がりをもとにした共同 研究が始まったものも多く,さらに各府省庁の予算のもとで 進められる産学官共同研究に発展したものも少なくない.

  50周年を迎えた澱粉研究懇談会

二国先生が昭和30年代に求められた産学の連携,産業ど うしの共同研究の理念は今も続いており,糖質酵素の研究,

オリゴ糖,糖アルコールなど,日本が世界に誇る新規糖質の 研究とその産業化の実現が成果の一つである.企業間の競争 は当然のこととして存在するが,無駄な重複を省いて国際競 争に打ち勝つ研究力と技術力の養成に澱粉研究懇談会が果た した役割は大きい.

この会の創立は筆者自身が澱粉科学の研究を始めた年とも 重なる.2010年に創立50年を迎えた記念に,この会で育っ た日本の澱粉科学の研究者,技術者を中心にして『澱粉の科 学と技術―澱粉研究懇談会50年の歩みと展望』を出版し た(12).そこでは会の歴史と第1回から第50回までに提供さ れたすべての話題とグループ写真(図

7

,澱粉科学の現状,

50年間に開発された新商品,社会の変遷に合わせた澱粉科 学と技術が俯瞰できる年表などを網羅した.さらに,読み物 としても楽しくなるような新規糖質の開発秘話,澱粉科学に 纏わるエピソードの閑話休題なども加えて編集した.

澱粉研究懇談会は世話人制で運営している.初代の二国二 郎先生,鈴木繁男先生,中村道徳先生(図

8

)についで筆者 は現在代表世話人を務めている.  (つづく)

文献

  1)  Robert P. Walton : A Comprehensive Survey of Starch  Chemistry", The Chemical Catalog Co., Inc., 1928, Vo. I 

(pp. 240), Vol. II (pp. 360).

  2)  二国二郎: デンプンハンドブック ,二国二郎(編),朝 倉書店,1961, p. 20.

  3)  K. H.  Meyer  &  P.  Bernfeld : , 23,  875 

(1940).

  4)  T. J. Schoch : , 64, 2957 (1942).

  5)  K. Freudenberg : , 8, 81 (1939).

  6)  D. French & R. E. Rundle : , 64, 1651 

(1942).

  7)  R. E. Rundle & D. French : , 65, 1707 

(1943).

  8)  二国二郎(編): 澱粉化学 ,朝倉書店,1951, p. 540.

  9)  二国二郎(編): デンプンハンドブック ,朝倉書店,

1961, p. 731.

  10)  二国二郎(監修),中村道徳,鈴木繁男(編): 澱粉科学 ハンドブック ,朝倉書店,1977, p. 632.

  11)  不破英次,小巻利章,檜作 進,貝沼圭二(編): 澱粉 科学の事典 ,朝倉書店,2003, p. 554.

  12)  山本和貴,松木順子,貝沼圭二(編): 澱粉の科学と技 術―澱粉研究懇談会50年の歩みと展望 ,澱粉研究懇談 会出版,佐藤印刷所,水戸,2010, p. 232.

図7澱粉研究懇談会集合写真 2008

図8中村道徳先生(左),鈴木繁男先生(右)

京都国際会議場にて(1975)

(6)

  13)  二国二郎:調理科学,2, 6 (1969).

  14)  K. Kainuma & D. French : , 11, 2241 (1972).

  15)  貝沼圭二:調理科学,13, 83 (1980).

  16)  Y. Ikawa, D. G. Glover, Y. Sugimoto & E. Fuwa : / , 33, 9 (1981).

  17)  S. Hizukuri : , 147, 342 (1986).

  18)  I.  Hanashiro  &  Y.  Takeda : , 306,  421 

(1998).

  19)  貝沼圭二:日本農業研究所報告「農業研究」,第15号,1 

(2002).

  20)  鈴木繁男:澱粉科学,27, 211 (1980).

  21)  山中 啓:化学と生物,48, 643 (2010).

  22)  岡田厳太郎:応用糖質科学,1, 4 (2011).

  23)  二国二郎:澱粉工業学会誌,4, 38 (1956).

小 川  道 永(Michinaga Ogawa) <略 歴>1994年東京大学農学部農芸化学科卒 業/ 1996年同大学大学院生命科学研究科 応用生命化学専攻修了/同年(株)ヤクルト 本社中央研究所/ 1999年東京大学医科学 研究所博士課程進学/ 2003年同博士課程 修了(医科学博)/同年同研究所細菌感染 分野助教,現在にいたる<研究テーマと抱 負>病原細菌に対するオートファジー認識 解析と赤痢菌エフェクターの機能解析<趣 味>車,祭,高校野球,ラーメン 尾 間 由 佳 子(Yukako Oma) <略 歴>

1997年東北大学農学部応用生物化学科卒 業/ 2003年同大学大学院農学研究科応用 生命科学専攻博士課程後期3年修了(農 博 )/ 同 年 日 本 学 術 振 興 会 特 別 研 究 員

(PD,甲南大学大学院自然科学研究科特別 研究員)/2006年東北大学大学院農学研究 科研究支援者,現在にいたる.この間,

2004 〜 05年フランス・ストラスブール大 学IPCB研究員<研究テーマと抱負>細胞 核内アクチンファミリーによるクロマチン 機能制御<趣味>手芸

貝沼 圭二(Keiji Kainuma) <略歴>

1959年東北大学農学部農芸化学科卒業後,

農林省食品総合研究所炭水化物研究室長,

食品工学部長,米国アイオワ州立大学客員 准教授,農林水産省バイオテクノロジー課 長,農林水産技術会議事務局長を経て,

1993年国際農林水産業研究センター初代 所長,農林水産省退官後,生物系特定産業 技術研究推進機構理事,(財)農業技術協会 会長,帯広畜産大学監事を経て,現在,九 州大学大学院農学研究院特別顧問,カゴメ

(株)技術顧問,農林水産技術同友会会長,

澱粉研究懇談会代表世話人<研究テーマと 抱負>1960年代の強酸による木材糖化,

1980年代の微生物・酵素を用いたバイオマ

ス変換技術の時代を経て,2010年代の研 究・技術はどこまで進化したのか.減原発 が多く語られる現在,再生可能なエネル ギー資源としての農地,林地のバイオマス 賦存量と可能性,エネルギー変換技術の日 本の実力を現段階で見極めるため,行政,

研究,技術の専門家の協力を得て研究会を 開いている<趣味>旅行,ゴルフ,美術館 で名画をゆっくり鑑賞すること

加地 留美(Rumi Kaji) <略歴>1997 年お茶の水女子大学生活科学部卒業/

2000年東京大学大学院農学生命科学研究 科修士課程修了/ 2004年同博士課程修 了/同年(株)ヤクルト本社中央研究所,現 在にいたる<研究テーマと抱負>腸管恒常 性の維持における腸内細菌の役割を解明す る<趣味>SNS

嘉 糠  洋 陸(Hirotaka Kanuka) <略 歴>1997年東京大学農学部獣医学科卒 業/ 2001年大阪大学大学院医学系研究科 修了/ 2004年東京大学大学院薬学系研究 科講師/ 2005年帯広畜産大学原虫病研究 センター教授/ 2011年東京慈恵会医科大 学熱帯医学講座教授,現在にいたる<研究 テーマと抱負>マラリアなどの病気を媒介 する蚊を眺めていると,その恐るべき存在 の中に,生命現象の美しさが入れ子になっ ていることに気がつく.そのすべてに興味

<趣味>飛行機内での映画鑑賞,同じ本の 多読

北 岡  直 樹(Naoki Kitaoka) <略 歴> 2007年北海道大学農学部生物機能化学科 卒業/ 2009年同大学大学院農学院応用生 物科学専攻修士課程(博士前期課程)修 了/同年同博士課程(博士後期課程)進 学,現在,在学中.2009年日本学術振興 会特別研究員 (DC1)<研究テーマと抱

負>植物ホルモンジャスモン酸類縁体の代 謝機構の解明および生物活性の評価<趣 味>カヌー,マラソン,水泳

高 妻  篤 史(Atsushi Kouzuma) <略 歴>2003年東京大学農学部生命工学専修 卒業/2005年同大学大学院農学生命科学 研究科応用生命工学専攻修士課程修了/

2008年同博士課程修了/同年(独)科学技 術振興機構 (JST) ERATO橋本光エネル ギー変換システムプロジェクト研究員,現 在にいたる<研究テーマと抱負>微生物に よるエネルギー変換<趣味>ピアノ,野球 観戦

田 中  裕 也(Yuya Tanaka) <略 歴> 2002年名古屋大学大学院理学研究科生命 理学専攻博士課程修了/同年日本学術振興 会特別研究員 (PD)/ 2005年米国ニュー ジャージー医科歯科大学ポスドク/ 2006 年(財)地球環境産業技術研究機構研究員/

2009年同機構主任研究員,現在にいたる

<研究テーマと抱負>コリネ型細菌糖代謝 系遺伝子発現制御メカニズム<趣味>読 書,音楽鑑賞,モータースポーツ観戦 恒 松  雄 太(Yuta Tsunematsu) <略 歴>2006年名古屋大学理学部化学科卒 業/ 2008年同大学大学院理学研究科博士 課程(前期課程)修了/ 2011年京都大学 大学院薬学研究科博士後期課程修了(薬科 学博)/同年静岡県立大学大学院薬学研究 科博士研究員,現在にいたる<研究テーマ と抱負>生合成遺伝子を利用して新規有用 化合物を獲得すること.驚くような生物活 性,構造をもつ化合物を発見し,その作用 を解析したい<趣味>ビール.たまに自転 車

プロフィル

Referensi

Dokumen terkait

Ⅱ ■出題のねらい コイルを回転させた交流の発生や変圧器,および発電所や変電所での送電を題材とし,これ らに関する電磁気学の基本事項について問いました。これらは教科書にも載っている内容なの で,しっかり理解しておいてください。 ■採点講評 この問題は,教科書の中では電磁気学の後半に出てくる内容なので,受験者にとっては少し 難しかったのかもしれません。この大問

12, 2012 914 調に酵素の研究を進め,成果を学会発表とともに論文にする ことになっていた.ある日,大学院生のSimmons氏が最近 出た論文だと言ってKennyらの「DPP4がエンドペプチダー ゼ活性ももつ」(2) とタイトルに書かれた論文のコピーをもっ てきて,私が研究しているPOPはDPP4と同じ酵素ではな