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現代の世界各地の武力紛争を見回して気づくことの一つに

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Academic year: 2024

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現代の世界各地の武力紛争を見回して気づくことの一つに、いつから武力行使が 始まったのかは比較的明確に認知できるのに対して、いつ終結したのか実にわかり にくいことが挙げられる。

その最たる事例は、2003年

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月の米英軍による先制攻撃で開始されたイラク戦争 である。同年

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月、ブッシュ大統領により戦争終結が宣言されたが、いまだにこの 国では戦闘がやまず、犠牲者の数は増大し続けている。開戦の当事国がどんなに

「戦後復興」と国際的にアピールをしても、武力対立は頻発し、世界中の民間人が安 心して馳せ参じ、「復興」事業に専念できる状態ではない。アフガニスタンの「戦後 復興」も規模の相違こそあれ、同様の観測を免れない。

もっとも、現代史において、大規模な武力紛争の終結状態を見るとき、すべてが 明確な形では終了してはいないことに気づく。1948年の第

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次中東戦争は、翌年に パレスティナ休戦協定が調印されたが、以降、度重なる戦争で、停戦は存在してい るものの、長期休戦の目安は立っていない。朝鮮戦争も

1953

年に停戦協定が調印さ れたものの、いまだ緊張関係は続き、戦争終結は宣言されていない。

こうしてみると、「平和構築」と言っても、まず第一にぶつかる課題は、この「平 和構築」支援を可能にする紛争終結をめぐる、知りうる限りの正確な背景と介入範 囲の認定作業であろう。とりわけ、国連の平和維持活動が集中しているアフリカ地 域では、他のどこの地域にもまして、武力紛争の終結を認定しにくい事例を多く抱 えている。

実際、現代のアフリカの武力紛争の背景と進展を国際政治経済学から見るとき、

従来の戦争ないし武力紛争を見る枠組みでは必ずしも見えてこないいくつかの特質 が浮かび上がってくる。

冷戦後の武力紛争の変容―アフリカを事例に

まず、現代のアフリカ地域における主要武力紛争の数を、冷戦終焉直後の

1990

年 代初頭のそれと比較すると、約

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件とほぼ変化していないことに気づく。1990年代 初頭、明確な武力対立はスーダン、ソマリア、ルワンダ、アンゴラ、モザンビーク、

国際問題 No. 564(2007年9月)1

◎ 巻 頭 エ ッ セ イ ◎

Katsumata Makoto

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リベリアで存在していたが、2007年

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月現在のスーダン、ソマリア、エリトリア、

エチオピア、コンゴ民主共和国、コートディボワールの

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ヵ国と同数である。こう したことからきわめて総論的に言えるのは、冷戦終焉により複数政党制と市場の自 由化の本格的導入を通じてこの大陸に平和と繁栄が訪れる、という当初のシナリオ の実現が、いまだ不透明なものにとどまっているという点であろう。

そして、紛争の背景を見るとき、実に多様であることに気づく。古典的な国家間 戦争は、戦闘当事者が明確な形で展開し、中断ないし終結するが、今日のアフリカ の紛争では、エリトリアとエチオピアの間の戦争のみがこのカテゴリーに入り、他 の多くは、内戦が近隣国にまたがる半内戦、半二国間対立という複合形態ないしハ イブリッド型である。

たとえばスーダンでは、2005年に包括和平協定で半世紀近く続いた南北間武力対 立に一応終止符を打ったが、2003年には同国の西部において、ダルフール紛争が勃 発し、現在も続いている。スーダン政府はその関与を否定すると同時に、隣国チャ ドにも武力対立が持ち込まれている。

ソマリアに至っては、2006年にイスラームを前面に出す「イスラーム法廷連合」

が支配地域を拡大し、首都モガディシオの支配を実現した。これにより広域統治安 定化の兆しが見えたのも束の間、この勢力のなかに国際テロ組織が存在するとする 米国の懸念で、内発的実効統治の道は中断された。米国の反テロ戦争に積極的に協 力してきたエチオピアが米国の支援でソマリアに進攻し、実効支配地域が限られて いた親西欧の暫定連邦政府の軍とともに「法廷連合」を敗退に追いやった。ここに きて、ソマリアの紛争は、破綻国家問題に加えて、米国の反テロ戦争を担う代理戦 争の形をとるに至り、その余波は、国際的次元に拡散することになってしまってい る。

大統領の後継者争いに端を発するコートディボワール内戦は、一時は隣国リベリ アの内戦と複合形態をとる可能性も否定しきれなかったが、2007年

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月、ブルキナ ファソの首都において、大統領は座にとどまり、一応反乱軍の指導者が首相となる 和平協定が調印された。フランス、ガーナ、南アフリカと、それぞれ異なる調停者 による数度にわたる和平合意の破綻の上に実現した合意である。

紛争の史的背景と「平和構築」の課題

次に、アフリカのこれらの紛争の特質として、これら主要武力紛争国では紛争前 から、ネーション・ビルディングという植民地期の区画内に単一国民国家を形成す るというプロセスが未完であったという点が挙げられなければならない。

実際、アフリカ現代史は、多くの新興国指導層が東西対抗の援助競争のもとで、

米中ソを中心とする援助大国からおもねられる顧客として、植民地からの独立の熱

巻頭エッセイポスト冷戦期の武力紛争と「平和構築」の課題

国際問題 No. 564(2007年9月)2

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気も加わり、自信を強めたが、国内の住民に対して自らの権力の正統性を納得させ ることには必ずしも成功しなかったことを教えてくれている。実際、援助国の暗黙 の了解のもとで、力づくで国内住民の要求を抑えつけた独裁政権も少なくなかった。

したがって、武力紛争が終わった後、再び直面するのは、単に紛争中に破壊され たさまざまなインフラストラクチャーや行政サービスの復興という当面の課題のみ ならず、領域内に国民としての一体感をどう醸成していくかという独立以来引きず っている構造的課題である。

そもそも、ネーション・ビルディングという現代史における旧植民地からの独立 期の課題には、自国内の産業と国内市場の発達が不可欠な経済目標としてあった。

産業の拡大が国内に雇用を生み、その所得が国内市場で循環し、再び産業の裾野が 広がっていくという所得分配と雇用の正規化を通じて、責任ある国民が形成されて いくシナリオが想定されていた。

しかし、1次産業中心の産業構造の高度化を通じたネーション・ビルディングは、

アフリカ地域を取り巻く内外の諸マイナス要因から、多くの場合挫折し、対外債務 だけが累積することになった。その返済を迫られるなかで、数年ごとの返済プラン の実施に追われ、この国民による国民のための経済は未完のプロジェクトにとどま ってきたのが現状である。その結果、アフリカ地域での紛争およびポスト紛争期に おいて、情報、文化のグローバル化によって、農村住民も都会でのチャンスを夢み て、都市人口は増大するものの、雇用は必ずしも確保されず、若年層を中心とする 圧倒的な都市住民は、麻薬販売や他の犯罪を含む都市雑業活動で生計を立てざるを えないような経済のインフォーマル化が進行していく。このインフォーマル経済の 規模は、武力紛争のないアフリカ諸国においても国内総生産の半分以上を占め、コ ンゴ民主共和国では、9割とも推定されている。

こうした状況では、治安にあたっての国軍と警察による暴力の占有と、国民への 基本的サービスの提供を可能にする徴税の独占という近代国家の

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大統合ファクタ ーは実現せず、逆に富裕層向け民間警備会社や、紛争時の紛争当事者の民間軍事関 連会社(PMC: Private Military Company)の請負活動を急増させることによって、ネー ション・ビルディングのプロセスをますます先送りにしてしまっている危惧を伴う。

かくして「平和構築」という、対象社会と国家の持続的安定を外部の介入によっ て実現しようとするすぐれて国際協力行政の専門用語(jargon du métier)を実効性の ある活動内容にしていくためには、当面少なくとも二つの側面をしっかりと把握す ることが不可欠と思われる。

一つは、緊急支援という時間の制約のなかでも安易なマニュアル化を避け、武力 紛争前(ante)と後(post)の個々の政治、経済、社会、文化状況の実証的・総合的 評価と診断をぎりぎり試みることである。もっともそのためには、この分野での研

巻頭エッセイポスト冷戦期の武力紛争と「平和構築」の課題

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究者や専門家を養成し、紛争の背景と形態の類型をしっかりと幅広く確立し、さま ざまな事態に対応できる分析の枠組みを精緻化するという中・長期的課題が付け加 えられなければならない。もう一つは、日本の国際社会におけるアイデンティティ ー・カードたる現行の憲法の枠内で、実効性のある紛争後の非軍事的国際貢献をき め細かく探ることであろう。

巻頭エッセイポスト冷戦期の武力紛争と「平和構築」の課題

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かつまた・まこと 明治学院大学教授

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