講演報告書
現職教員による国際協力活動の 支援体制について
礒田 正美
筑波大学教育開発国際協力研究センター
平成 18 年 2 月
筑波大学教育開発国際協力研究センター (CRICED) 文部科学省 拠点システム構築事業
派遣現職教員支援課題
青年海外協力隊現職教員特別参加制度担当者等会議 日時:平成17年11月4日(金)13:00~17:00 会場:新阪急ビルスカイルーム
主催:文部科学省、国立大学法人鳴門教育大学
現職教員による国際協力活動の支援体制について
礒 田 正 美
(筑波大学教育開発国際協力センター助教授)
只今,斎藤先生から御紹介いただきました筑波大学の礒田でございます。教育開発国際 教育研究センターに所属しております。私どもは文部科学省拠点システム事業の中で派遣 現職教員支援課題という事業を実施させていただいておりまして,今日はそのお話をさせ ていただきたいと思います。
まず,お祝いを申し上げたいと思います。この度,鳴門教育大学様が教員教育国際教育 センターを開設されましたこと,改めてお喜び申し上げます。センター長の斎藤先生をは じめ,鳴門教育大学の皆様はたいへんな実績をお持ちの方ばかりでございます。私どもセ ンターとしても,たいへん心強いかぎりですし,益々の御発展されるものと確信しており ます。
それでは,中身に入ります。既に,菊池様・白井様・三好様より,制度等について具体 の話がありました。私はその具体がどういうふうに実現されているのか、支援者側からの 私見を含めまして,如何にこの制度が良い制度なのかということをここでお話しさせてい ただきたいと思います。
まず,写真をご覧下さい。これはドミニカ共和国に派遣された福岡の八重尾先生の写真 です。額に光る汗、ご覧いただけるでしょうか。よく見ていただくと分かるのですが,手 鏡を利用して光の実験のワークショップが行われています。現職の先生方であればこそ出 来ることが,この一枚の写真からも読み取れます。
例えば,八重尾先生は理科の先生ですが,当然、ここで研修を受けるドミニカの先生方 は日本の子どものように躓くわけです。そういうことまで予想しながら,ドミニカの先生 方が科学的な探求方法を手作りの道具で学んでいくワークショップ,その工夫を八重尾先 生はなされています。
テレビで最近,国際関係の良い番組がたくさんあります。スターが行って日本語で話し て,なぜか現地の人とやりとりできます。派遣現職教員の先生方は、そんなまやかしは全 くない。例えばドミニカで八重尾先生はスペイン語で話します。そこで実際に仕事をされ ています。こういう方々こそ,明日の日本の教育を担う人材だと,先ほどから皆様がお話 になっていると伺っていました。教育内容を、学ぶ子ども、教える教師の立場に立って現 地語で、教員研修する、それは派遣現職教員であればこそできることなのです。
私どもの事業のお話をスライドで説明させていただきますが,派遣前・派遣中・帰国後 の3つの支援を目標にしています。派遣前は派遣前研修や周知敷衍のための活動などです。
派遣中として私どもの方でさせていただいている支援,それは、先生方なればこそ出来る
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ことを更に高めていくための支援です。加えて帰国後の支援です。教育委員会,文部科学 省,JICA 青年海外協力隊という3つの組織の中で,私どもは文部科学省の拠点システム事 業ということで,派遣現職教員の支援をさせていだいております。
先ほど申し上げましたように,JICA は青年海外協力隊の派遣に対して,たいへんな責任 をもっておられます。先生方は心配しなくて済むような支援をされています。対して、文 部科学省の支援事業として、私達は私どもであればこそできること、派遣現職教員であれ ばこそできることの支援をしています。お配りしたスライド集と順序を変えてお話します が,まずは、派遣前研修からお話しさせていだたきます。
写真をご覧下さい。派遣前研修の時の集合写真です。私は自分がこの事業をやらせてい ただいていて,これほど幸せなことはないと思っています。何故かというと,先生方がこ んな笑顔でいる時というのは,管理職の先生方はいつ御覧になったことがあるかというこ とです。この写真に笑顔で写っていらっしゃる方々が、これから派遣されようとしている 先生方なのです。私も、そのような先生方とワクワクして写真に納まっています。これこ そが明日の日本の教育を担う先生方ではないかと思って,写真をみて、改めて感激いたし ました。そのことを知っていただくために、まずは,この笑顔を御覧いただければと思い ます。
本当にたくさんの先生方,一人ひとりの先生御自身が今海外で赴任国において活躍され ています。その一人ひとりの皆様がこの写真に写っています。私どもは派遣前研修の中で,
こんなことをさせていただいています。派遣前研修そのものは,青年海外協力隊を中心に,
私どもがお手伝いさせていただいているのですが,まず心構えや職務能力・専門性の向上 ということです。
まずは激励です。これは現職の先生方であればこそ出来ることというのは,たくさんあ るのです。当然,新卒の隊員がいます。新卒の隊員をうまくまとめて活躍される先生がい ます。それから開発教育,国際教育です。これは最初にお話しがありましたし,大学とし てもたいへん力を入れているところだと思います。帰国後にその経験がどんなふうに還元 されているか,日本の国際化にどういうふうに貢献するのかということが書いてあります。
あとコンピューター等,体験談についてです。その際には、拠点システム事業全体の成果 についてもお話させていただいています。
次に、派遣中の支援の一例を紹介させていただきます。もちろん協力隊でもなさってい ることですが,私達は教育現場と繋がりがつき易い立場にいるということで,私も教員経 験がありますし,これまで研究もしてきていますので,先生方・学校といろいろと相談し ながら,インターネットライブ授業をさせていただいています。この写真のインターネッ トライブ授業とはどういう授業かというとこの写真です。バナワツと秦野鶴巻小を結んで 行われました。この子供はバナワツの家はどんなもので出来ているのかということで,屋 根を造っている素材を紹介しています。
こちらの子供は日本のことを紹介しています。自己紹介とかですね,着物を着ています。
これもテレビ番組ではない。何がすごいかというと,ここにいる関野先生が,きちんと現 地の言葉でやるのです。バヌアツにも時国先生がいる。現地語を間に入った先生が通訳し て、子供がそれを見る。「うわぁー! すごい!」と思うわけです。これこそが実際の異文 化体験を通して国際人を育むということに繋がっていく,それを実現することになると思 います。リアルタイムで互いの発表形式で授業が進行していくのです。
このスライドは,私どものこれまでの研究、そしてこちらの小原豊先生と中山晴美先生 のライブ授業の結論として示唆されたことです。子供達はこれまでの学習を振り返って,
今の自分のあり方を問い返す中で,自分の本当の思いや願いに気付き,深く広く物事に関 わっていこうとすることが出来るのではないか,こういう夢を持つとか大きな目標を掲げ ることが出来るのではないかということです。
私どものデータベースには,このような授業も含めた様々なデータを入れさせていただ いています。これは,ベトナムへ派遣された清水大格先生の指導案です。見ていただくと 分かるのですが,ベトナムはフランス語系のアルファベットで表されるわけですね。いわ ゆるタイとかラオスとか,そういう所の文字とは文化が違う、越南というくらいですから 中国の漢字かと思いましたがそうでもない。現地語で書かれた指導案ですが,これは現職 の先生方が向こうで活躍したり,また国内で帰国後にデータとして生かしたりということ も含めて作られるわけですが,現地語で書いた指導案や教材,現地の資料などが,e支援 システムに登録されています。
データは帰国した時に,私どもの方からお願いして登録させていただいていますが,普 段からもちろん登録することも出来ます。これは,日本ではやっていない教材ですが,逆 にそういう教材が海外に行くとあるということがあります。これが私どもの派遣現職教員 支援事業の web サイトです。この中にもいろいろ入っています。独自に作っているものと しては,学習指導要領の翻訳とかもあります。
最後になりますが,帰国報告会をやらせていただいています。派遣については,現地の 問題を出し,教材作り,それは私どもと相談しています。もう一方で,たいへん価値のあ る活動ですので,それに対する広報の機会を提供したり,先生方からの教材をデータベー スに蓄積したりしています。
報告会ですが,シンポジウムを兼ねて行っています。160 人ぐらいの先生方が,この会場 ぐらいの場所に来てくださって,帰国隊員とこれから派遣されようとしている隊員,それ から関心のある方が参加してくださいました。今年も1月7日に実施させていただく予定 です。是非、関心のある先生方、担当の指導主事の皆様を送って下さればと思います。派 遣現職教員の優れた活動を紹介することが主題です。今日、ここに集まって下さった関係 者の皆様は、その中身を,どのような活躍をしているのか御存知の方もいらっしゃると思 いますが,必ずしもその活躍内容を御存知ない方も居られると思います。私達は報告書と して、ここに示す冊子を発行しています。各教育委員会宛に、4月にお送りしているので すが,これを見て下さった教育委員会の方は、この部屋にはどれぐらい居られますか? 声
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を掛けていただければ増刷して,すぐにお送りいたします。
この中には,協力隊員が如何に頼もしい活動をし,それが自分達の明日の教育プランを 考えるうえで,如何に役立つかということが記されています。これを読んでいただくと、
その活動の価値が分かると思いますし、是非、わが県からの派遣者を増やさなければと思 うに相違ないと信じています。なにしろ、このように力のある先生方が、帰国後、皆様の 県の教育の国際化、国際教育に貢献することは間違いないのですから。是非,まだ見られ ていない先生,それから新しく担当になって活躍の実際をご存知でない先生は,御連絡く だされば送らせていただきます。
最後に結論です。これはもう既に,今日の担当者会議のタイトルなのですが「地元から 始まる国際化・国際教育・国際協力の推進」,これが出来るのは,もちろん各県内他にもい らっしゃると思いますが,本当の意味では帰国隊員の先生ではないかと思います。ですか ら,もちろん協力隊から新卒の方を採用されるのも大事なことですが,是非、多くの現職 教員を派遣下さればと思います。ご存知のように、今は外務省だけが国際協力を担当して いる時代ではないのです。先生方の県や地域の皆さんが、地元からの国際化を推進する時 代です。先のサッカーのワールドカップの時に,あちらこちらの会場で、地元からの国際 化が進展しました。その時に,ハッとする人材はそういった先生方でした。国際教育で求 められる地球人を育てることができるのも、日本以外で活躍した経験のある派遣現職教員 の先生方であればこそということを是非、ご承知下されば幸いです。
派遣現職教員支援課題としては、派遣現職教員の活躍の場を広げる中で、是非「地元か ら始まる国際化・国際教育・国際協力」ということを推進したいと考えています。今後と も、私どもでは、派遣現職教員の国内外における活動を支援していきます。派遣現職教員 をなお一層派遣下さいます様、並びにそのためのご配慮を下さいます様、そして、私ども のような支援事業の活動につきまして今後ともご理解とご協力を賜れますよう、どうぞ宜 しくお願い致します。
派遣現職教員支援と 支援ネットワークの形成による
支援方法の拡充事業
筑波大学
筑波大学CRICED CRICED
教育開発国際協力研究センター 教育開発国際協力研究センター
礒田 正美
文部科学省拠点システム事業
本事業の目的
派遣現職教員がその職務を一層効果的に 実現しえるように、
◆派遣前(研修等)
◆派遣中
◆帰国後(経験還元)
という3つの側面において、
派遣現職教員の活動を
継続的に支援していくこと。 ドミニカ共和国派遣八重尾先生(福岡県)
教育委員会 文部科学省 JICA青年海外協力隊
保護者
地 域 拠点システム関係者
派遣現職教員支援事業
(筑波大学CRICED)
派遣中
帰国後 応募前
橋渡し
・興味・関心
・作成教材
・現地の問題
・経験
・教材づくり 広 報
提 供
照 会 提 供 ・授業
・活動モデル
・国際教育 ・ワークショップ
派遣国 派遣地域
・文化交流 帰国報告会
派遣前研修 e-支援システム
・データベース
・Webページ
・メーリングリスト
インターネットライブ授業 橋渡し 事業概要
教育委員会 文部科学省 JICA青年海外協力隊
保護者
地 域 拠点システム関係者
派遣現職教員支援事業
(筑波大学CRICED)
派遣中
帰国後 応募前
橋渡し
・興味・関心
・作成教材
・現地の問題
・経験
・教材づくり 広 報
提 供
照 会 提 供 ・授業
・活動モデル
・国際教育 ・ワークショップ
派遣国 派遣地域
・文化交流 帰国報告会
派遣前研修 e-支援システム
・データベース
・Webページ
・メーリングリスト
インターネットライブ授業 橋渡し 事業内容その1
派遣前研修
於:国際協力機構国際総合研修所・筑波大学東京キャンパス、平成17年4月12日、13日 派遣前研修
主催:青年海外協力隊、文部科学省、筑波大学
z 心構え,及び職務能力・専門性の向上
z激励
z開発教育・国際教育セミナー
(帰国後の経験還元)
zコンピュータ及び情報活用研修
z帰国現職教員による体験談 他
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教育委員会 文部科学省 JICA青年海外協力隊
保護者
地 域 拠点システム関係者
派遣現職教員支援事業
(筑波大学CRICED)
派遣中
帰国後 応募前
橋渡し
・興味・関心
・作成教材
・現地の問題
・経験
・教材づくり 広 報
提 供
照 会 提 供 ・授業
・活動モデル
・国際教育 ・ワークショップ
派遣国 派遣地域
・文化交流 帰国報告会
派遣前研修 e-支援システム
・データベース
・Webページ
・メーリングリスト
インターネットライブ授業 橋渡し 事業内容その2
「インターネットライブ授業」
平成17年度は,現在まで,
7月12日 ラカトロ小学校−鶴巻小学校,9月27日 アンバエブル小学校−老上小学校,
9月29日 ラカトロ小学校−鶴巻小学校,10月3・4日 ラカトロ小学校−老上小学校,において実施。
【関野貴之先生】秦野市立鶴巻小学校、 【枝重美香先生】滋賀県草津市立老上小学校、 【時國祐子先生】LAKATORO SCHOOL(ラカトロ小学校実施担当者)
【迫田陽子先生】Malampa Provincial Education Office(ラカトロ小学校実施担当者)、 【鳥居塚一登先生】Ambaebulu Primary School(アンバエブル小学校実施担当者)
z ねらい
z 異文化体験を通 して国際社会人 を育む。
z 特色
z リアルタイム
z 派遣経験の活用
「インターネットライブ授業」
教育委員会 文部科学省 JICA青年海外協力隊保護者
地 域 拠点システム関係者
派遣現職教員支援事業
(筑波大学CRICED)
派遣中
帰国後 応募前
橋渡し
・興味・関心
・作成教材
・現地の問題
・経験
・教材づくり 広 報
提 供
照 会 提 供 ・授業
・活動モデル
・国際教育 ・ワークショップ
派遣国 派遣地域
・文化交流 帰国報告会
派遣前研修 e-支援システム
・データベース
・Webページ
・メーリングリスト
インターネットライブ授業 橋渡し 事業内容その3
拠点システムアーカイブス
(Web上のデータベース)
http://e-archives.criced.tsukuba.ac.jp/
拠点システムアーカイブス
(Web上のデータベース)
拠点システムアーカイブス
(Web上のデータベース) e-archives.criced.tsukuba.ac.jp z 登録されているもの
z 現地語で書かれた指導案
z 教材
z 現地の資料(文章,写真,映像など)
等 z 協力経験の還元
Webページ
http://www.criced.tsukuba.ac.jp/jocv/
独自共有教材の開発:
学習指導要領の翻訳 フリーソフトウエアの翻訳
教育委員会 文部科学省 JICA青年海外協力隊
保護者
地 域 拠点システム関係者
派遣現職教員支援事業
(筑波大学CRICED)
派遣中
帰国後 応募前
橋渡し
・興味・関心
・作成教材
・現地の問題
・経験
・教材づくり 広 報
提 供
照 会 提 供 ・授業
・活動モデル
・国際教育 ・ワークショップ
派遣国 派遣地域
・文化交流 帰国報告会
派遣前研修 e-支援システム
・データベース
・Webページ
・メーリングリスト
インターネットライブ授業 橋渡し
事業内容その4 シンポジウム・帰国報告会
『開発途上国における派遣現職教員の活躍』
カンボジア国派遣:中山晴美先生(長野)
『開発途上国における派遣現職教員の活躍』
―文部科学省主催:帰国報告会―
z 派遣現職教員の 優れた活動を紹介
z 現職教員特別参加制度の紹介
z 国際教育経験の共有
z 国際教育の推進
z 職務能力・専門性の向上
z 国際教育協力への環境づくり
今年度:
東京、一橋記念講堂、平成18年1月7日(土)
教育委員会 文部科学省 JICA青年海外協力隊
保護者
地 域 拠点システム関係者
派遣現職教員支援事業
(筑波大学CRICED)
派遣中
帰国後 応募前
橋渡し
・興味・関心
・作成教材
・現地の問題
・経験
・教材づくり 広 報
提 供
照 会 提 供 ・授業
・活動モデル
・国際教育 ・ワークショップ
派遣国 派遣地域
・文化交流 帰国報告会
派遣前研修 e-支援システム
・データベース
・Webページ
・メーリングリスト
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