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精密分子設計に基づく糖鎖プロセシング酵素の蛍光プロー

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Academic year: 2023

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—        —13 精密分子設計に基づく糖鎖プロセシング酵素の蛍光プロー ブ開発と生細胞マルチカラーイメージング

日本大学生物資源科学部生命化学科 袴田 航

研究の背景と目的

真核生物におけるタンパク質の主要な翻訳後修飾である 糖鎖修飾は,新生タンパク質の品質管理機構の主役を担っ ている.タンパク質の品質管理は,小胞体・ゴルジ体を経 て,細胞質でのタンパク質のフォールディング,輸送・分 解の過程を包括するものであり,これらの過程において糖 鎖が重要な役割を果たす事が数多くと報告されている.こ れらの糖鎖修飾に関与する糖鎖プロセシング酵素は,創薬 における抗ウイルス薬開発の有力な分子標的となってお り,これら酵素の特異的な阻害剤は抗ウイルス薬のリード 化合物となりうる.我々は,これら阻害剤がインフルエン ザ,B 型・C 型肝炎ウイルス (HBV・HCV), HIV, SARS 等の様々なウイルスに抗ウイルス活性を示すことを総説に まとめ報告を行った1)

これら酵素の特異的阻害剤を得る事を最終的な目標とし て,これら酵素に対する蛍光プローブ(基質)を精密分子 設計・合成し,糖鎖プロセシング酵素の活性を生細胞中で 同時に可視化することを目的とした.これら蛍光プローブ は,細胞内での糖鎖プロセッシング酵素の機能解明に資す るものと考えている.

研究の結果と考察

本研究では,小胞体グルコシダーゼ II・ゴルジ体マンノ シダーゼ・リソソームフコシダーゼを標的酵素として研究 を行った.以下,小胞体グルコシダーゼIIの詳細を述べる.

他の酵素についても,同様な手法を用いて研究を行った.

これまでに我々は,小胞体グルコシダーゼ II が 2-デオ キシグルコシダーゼ活性を有していることを報告してい る2).これらの結果に基づき新規蛍光プローブの分子設計 は,標的酵素または相同性の高い酵素の 3次元構造を用い た in silico ドッキングシミュレーションもあわせて行っ た.標的酵素の小胞体グルコシダーゼの活性部位は,グリ コン認識部位 (Subsite-1) とアグリコン認識部位 (Sub- site+1) で構成される.そこで,蛍光プローブは,Sub- site-1 に 2-デオキシグルコース残基,Subsite+1 にはベ ンゼン環,活性部位の外側に分子サイズの大きな蛍光団と なるように分子設計を行い,ドッキングシミュレーション により,酵素とのドッキングモデルを作成した.その結果,

酵素活性部位の Subsite-1 と Subsite+1 には目的の残基 が位置し,活性部位の外側に蛍光団が位置する事が予想さ

れた.図1 にグルコシダーゼと設計した赤色蛍光プローブ のドッキングモデルを示した.

さらに,蛍光プローブ分子の分配係数Log D を細胞膜 透過性の指標として用い,cLog D を計算する事によりプ ローブ分子の構造最適化を行った.低分子化合物の分配係 数Log D と化合物の細胞膜透過性については詳細な研究 がなされており,化合物の分子量が 400‒500 のとき Log D の値が 3.4以上,分子量が 500以上のとき Log D の値が 4.5以上の場合,良好な細胞膜透過性を有することが報告 されている3).今回設計した蛍光プローブは,すべて本条 件に当てはまるように設計を行った.

次に,分子設計を行った蛍光プローブを有機合成手法に より合成した.2-デオキシグルコースを出発原料にして,

1 グルコシダーゼと赤色蛍光基質のドッキングモデル.

2 蛍光プローブの合成スキーム.

(2)

—        —14 イミデート法を用いてベンジルアルコールを導入し,その ベンジルアルコールと各蛍光団のフェノール性水酸基を光 延反応により脱水縮合することにより目的化合物を得た.

図2 に小胞体グルコシダーゼに対する赤色・青色・緑色の 3色の蛍光プローブの構造と合成スキームの一部を示し た.

このように,標的酵素(小胞体グルコシダーゼ II・ゴル ジ体マンノシダーゼ・リソソームフコシダーゼ)に対し て,それぞれ赤色・青色・緑色の 3色の蛍光プローブ,合 計9種類の糖鎖プロセシング酵素の蛍光プローブの設計と 合成に成功した.そこで,これらの蛍光プローブを 3種の ヒト培養細胞(HT1080: 線維芽肉腫細胞,HeLa: 子宮頸部 癌細胞,SK-N-SH: 神経芽細胞種)へ投与し,共焦点レー ザー顕微鏡を用い細胞の観察を行った.また,これら蛍光 プローブの染色部位の特定には,小胞体特異的染色マー カーである ER-Tracker, ゴルジ体特異的染色マーカーで ある Golgi ID Green, リソソーム特異的染色マーカーであ る Lyso ID Green を用いた.更なる染色部位の特定のた め,ブレフェルジン A によるゴルジ体分散作用・クロロ キンによるリソソーム肥大作用なども用いて蛍光の染色部 位の特定を行った.その結果,設計したすべての蛍光プ ローブが標的酵素の存在する細胞内オルガネラを特異的に 蛍光染色することを明らかにした4)‒6).その結果の 1部で あるが,ゴルジ体マンノシダーゼの結果を図3 に示した.

これら合成したプローブを用いて生細胞での糖鎖プロセ シング酵素の可視化法を確立することができた.現在は,

複数の蛍光プローブを用いて複数の糖鎖プロセッシング活 性を同時に検出可能であるかを試みている.このように,

「細胞内糖鎖プロセシング酵素の活性を可視化できる蛍光 プローブ」の開発に成功し,「複数の糖鎖プロセシング酵 素の活性を同時に可視化可能なマルチカラー蛍光イメージ ング法」の確立を目指している段階である.

このようなヒト培養細胞を用いた糖鎖プロセシング酵素 のマルチカラーイメージング法を用いる事により標的酵素 阻害剤のハイコンテントスクリーニングが可能となり,細 胞レベルで作用する阻害剤を効率的に探索することができ る.また得られた阻害剤は,抗ウイルス薬のリード化合物 として非常に有力であり,かつ糖鎖生物学上の重要なツー ルとして未解明な部分の多い糖鎖修飾により発現する非ゲ ノム的生命現象の分子レベルでの解明に資すると期待して いる.

謝   辞

最後に本研究にご理解とご援助を下さいました財団法人 農芸化学研究奨励会に深く感謝いたします.また,ともに 実験を行った共同研究者の方々にも厚くお礼申し上げま す.

   

1) W. Hakamata et al., Curr. Top. Med. Chem., 9, 3 (2009).

2) W. Hakamata et al., J. Carbohydr. Chem., 23. 27 (2004).

3) M. J. Waring, Expert Opin. Drug Discov., 5, 235 (2010).

4) 田村沙緒里,小林拓人,袴田 航,平野貴子,西尾俊幸:

2013年度日本農芸化学会大会 (3C21p18).

5) 鈴木敦子,袴田 航,平野貴子,西尾俊幸:2013年度日本 農芸化学会大会 (3C21p17).

6) 三浦一輝,袴田 航,平野貴子,西尾俊幸:2013年度日本 農芸化学会大会 (4A37a02).

3 蛍光プローブによるゴルジ体特異的蛍光染色.

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